『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱   51

2019-06-24 04:33:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テカリオンの言葉を聞いて、二人は互いに感謝の言葉を交わす、アエネアスが答える。
 『テカリオン殿、このクレタの地に上陸以来、我々は、貴方にとても世話になっています。こちらこそよろしくと願っています』
 『統領殿、ありがとうございます。いい言葉をかけていただいて。これからも末永く、私は誠意でもって務めさせていただきます。約束申し上げます』
 テカリオンは語る話に句読点を打つ、間を取る、休話の時を過ごす、一同に声をかける。
 『皆さん!これについて話を聞きたい、そのような要望があれば言ってください』と言って、一同と顔を合わせる。
 彼らは、過ぎたトロイ戦役後の世の中の顛末の成り行きを耳にして、彼らなりの始末を心の中でつけている、彼らは未来を見つめていると察する。
 テカリオンは、『彼らが抱いているトロイ戦役は、もうすでに遠い昔になっている』と感じとった。
 前に向かって歩を進める彼らの心のあり方、生き方を察知する、一同に向かって声をかける。
 『これからする話、次の話は、チョットした私の商売仇きの話ですが聞かれますかな』と言って一同と目を合わせる。
 『まあ~、商売仇きと言っても互いに商いをやる、交易する相手、商いをする相手が違う、交易する地域が違うわけです。商売仇きと言うより競争相手ということになりますな』
 ぶどう酒を一口、口にする、喉を湿らせる。
 『皆さんも知っているアテネの港ピレウス、そのピレウスが面しているサロニカ湾にアイギナと言う島(現在のエイ―ナ島)があります。この島の西海岸の北部にエイーナと言う都邑があります。私らのような交易人がたくさん寄ってきています。ポリスとしてアテネと張り合っているのですが、まあ~、今はポリスとして張り合っているのですが、遠い未来においてはどのようになるかはわかりませんが、とにかく今は、アテネと張り合っています。私にとっては活動の拠点にしているところです。その競争相手もここを拠点にして活動しているのです。この競争相手の男の名前は、ソストラトスと言います。出身地が定かではありませんが、このアイギナ島の近辺の小島の生まれであるらしいと言われています』
 ここまで話して息をつぐ、テカリオンの話が弾んでいる。
 『アテネとピレウス、アテネにとってピレウスの港の重要性は、交易港として重要であるのは解ります。あれだけ大きく力のあるアテネを控えているのですから。そのピレウスが重要なのは造船です。ピレウスには造船を生業としている者がたくさんいます。その造船所も大きいものから小さいものまでいれて数えきれないくらい多いですな。アテネとエイーナ、そのエイーナには造船所が無いに等しい状態です。このエイーナには、最初に言ったように交易を生業にしている者がたくさん集まります。そのソストラトスという男は『俺は世界の果てまで交易をやる』と豪語して、ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡)までと地中海の西の果てを目指して交易の手を広げているのです。ペロポンネソスから西へ、シラクサ、カルタゴ、サルデニア、コルシカあたりまで足を延ばしていると耳にしています。陸地の沿岸を伝って航海していくわけだからどうってことはないと言っています。それにしても大変だろうと思いますがね』
 テカリオンは、話を聞いている彼らの顔をまじまじと見つめた。