『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  157

2013-11-29 13:06:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 その柔らかい気配が接近してくる。パリヌルスは身構えた。体温を感じるまでに接近してきた。その者の手がパリヌルスに触れる、彼は即座にその手をつかんだ。二人のいる空間は、闇の静寂が支配している。つかんだ柔らかい手の感覚が彼に決断を促した。女の手が彼のいち物をめがけて伸びてくる。別の生きものであるいち物が反応する。彼は素早く、闇の中に目を走らせて周りを見回した。動物的ともいえる彼の夜目は、右手の少々先の灌木の茂みに目を注いだ。女を茂みの影に誘っていく。彼は『いいだろう』と心に決めた。
 彼は、やおらに女の腰に手を回し引き倒した。本能のおもむくままに手順を運んでいく。女の着衣の裾を割った。左手は、乳房をもみあげる。右手は秘所をなぞった。潤っている。女は、手にした彼のいち物をしごきもみあげた。
 彼は女の耳にささやく、
 『お前、あのときの女だな』
 『そうだ、お前が好きだ』
 女はうなずいた。彼は腰に回した手に力を込めて女を引き寄せた。女はいち物を秘所にあてがう、彼は腰を前に突き出す、いち物はぬめる女の秘所に入り込んでいった。女はくぐもったうめきをあげる、パリヌルスの律動がひたひたと女を衝く、彼の体圧が女の気を昂ぶらせていく、女の腰が彼の律動に合わせて動く、二人は、互いの絶頂を求めて体動した。女は動きに合わせて、低く呻き、声をあげる、パリヌルスの胸に顔をうずめて声を抑えた。女に絶頂が訪れようとしている。女が腕に力を込めてすがりついてきた。顔を彼の胸に押し付けて、歓喜のよがり声を上げた。
 パリヌルスの律動も昂ぶる気にせかされて激しく女を衝いた。彼にそのときが訪れた、彼は精を放った。
 彼は、挿入したまま残心を漂わせて、おだやかな衝きで女をなごませた。
 おだやかな、なごませ律動を繰り返しているうちに、彼のいち物が再び力をみなぎらせてきた。心身、いち物ともに猛りの感情が燃えあがってきた。おだやかで優しい律動が激しく女体をゆする律動に変わっていく、彼の激しい律動に女は燃え盛る感情で身を震わせて答えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  156

2013-11-28 07:59:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは、焚き火を囲み、魚を焼き、舌鼓を打った。人間の営みの秩序がはぐくまれつつある古代の食事風景であった。
 陽が西の海に身を沈めつつある。
 『おう、アレテス、旨かった。俺たちは帰る、あとのことよろしく頼む。ギアス、行こう』
 アレテスがギアスに声をかけた。
 『おう、ギアス、毎日、ありがとな。お前に深く感謝している。明日もよろしく頼むな』
 かける言葉にアレテスに情感があふれていた。
 風向きは、変わってきている、南からではなく強めの西風に変わりつつあった。宵の色が彼らを包み込もうとしていた。
 浜に帰り着く、浜を見渡した。夜の張り番の者たちが焚き火を囲んでいる。パリヌルスは、彼らに声をかけた。
 『おう、ご苦労。作業は終わっているな』
 『はい、この通り終えています』
 『おう、よくできている。オキテスたちは?』彼は彼らに問いかけた。
 『少し前に、ここを引き上げました』
 『何か伝言を聞いているか』
 『いえ、それは聞いていませんが』
 『そうか、よし。あとはよろしく頼む。何かあった時は連絡だ。俺の宿舎はここだ』砂地に線を引いて説明した。
 『おう、ギアス。お前はどうする?』
 『隊長、ご心配なく。私たちは艇を浜にあげて対処して、係りを残し引きあげます』
 『判った。俺の考えを必要としたら、宿舎のほうへ連絡してくれ』
 『判りました』
 彼はひとりで宿舎への道をたどった。肌に当たる風は強さを増してきている。彼は何とはなしに歩を運ぶ、ただ一人で歩いていた。
 身を包んでいる闇の中にやわらかい人の気配を感じた。歩を止めて気配を探った。危険は感じない『これは何だ?』彼は何かを思い出して『かもしれない』と考えた。
 思いついたことは『もしや女では』であった。そのようなやわらかい気配であったのである。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  155

2013-11-27 08:18:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アレテスは、パリヌルスがもたらした嵐情報に対応して浜を整備した。
 『おう、アレテス、いいだろう、万全だ。お前らも充分に気を配って事故のないようにしてくれ。事故はよくない』
 『そうですね。充分に気配りいたします』
 『そうしてくれ。そのようにして、安全第一こそ大事なことだと俺は思っている』
 ギアスの舟艇が、彼らの夕食を積んで浜に戻ってきた。
 『アレテス、もうそろそろ夕めしの頃合いだ。暗くならないうちに夕食をすませばいい』
 『え~え、そのようにします。隊長もみんなと一緒にいかがですか』
 『うっう~ん、ありがとう。俺たちが一緒に食べるとなると足りなくなるぞ』
 『その心配は無用です。心配に及びません』
 『ギアス、アレテスが言ってくれているのだが、彼らと一緒に夕めしを食べないか』
 『しかし、我々の分もあるのかな?それさえオーケーならば彼らと一緒に食べます』
 『アレテス、どうだ。足りそうか』
 『え~え、大丈夫です。足ります』
 『よし!そうであれば、皆と一緒に夕食を食べる、喜んで馳走になろう』
 パリヌルスの返事を聞いたアレテスは、手すきの者を呼び集め、夕食の場づくりを指示した。
 『夕食は、パリヌルス隊長たちも一緒だ。夕食の場を作ってくれ。このように焚き火のシマを造り、全員で大円陣で夕食を食べる。判るな。トッカスに言って昼に釣った魚を焼いて食べるから、そのようにするようにと言ってくれ』
 アレテスは、手にした棒ぎれで砂地に図を描いて説明した。
 『隊長、今日、昼に魚釣りをやったのです。思いのほか大漁でした。新鮮な魚が充分にあるのです。一緒に食べましょう』
 『ほう、大漁だったと』
 『え~え、そうなんです。このあたりの海、私たちが想像するより魚影が濃いようです。魚の自給自足がいけそうな気がします』
 『それか、それはいいことを耳にした。早速、イリオネス、オロンテスに話して、そのことを検討しよう。アレテス、ありがとう』
 夕食の時が訪れた、準備が整った旨の連絡がくる。
 炎を上げている焚き火のシマ、彼ら全員が焚き火のシマを囲んでの大円陣である。焼ける魚の香ばしい匂いが漂い、鼻をついてくる。
 アレテスが声をかける。
 『隊長、いきましょう』
 『おう、行こう、馳走になる。ギアス、行くぞ』
 彼らは大円陣を組んでいる食事の場へと足を運んだ。
 『おう、これは旨そうだ。ここで焼いた魚にあえるとは』
 『ギアス隊長、とれたての魚、うれしいですね』
 彼らは、大円陣に加わった。拍手がわく、彼らが歓迎してくれている、彼らの気持ちが、ジイ~ンと伝わってきた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  154

2013-11-26 08:03:24 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス、二人で浜の作業指示をやろう。そのあと俺は、アレテスのいる小島に向かう』
 『判った、即、やろう』
 彼らはてきぱきと事を運んだ。広場にいる全員を集め、100人くらいを集落地の建物の処置にあたらせ、他の全員を引き連れて浜へと急いだ。二人は浜をざあ~っと見回り、作業の指示をしていく。
 『船を波打ち際よりもっと奥に移せっ!』
 『船に縄をかけて両端に重石だ、それで固定するのだ。判ったな。5番船、6番船は荷を積んでいるから大丈夫とは思うが、念のためだ、縄に重石で固定をはかれっ!いいな』
 作業は進んだ。
 『では、オキテス、俺は小島のほうへ出かける。あとはよろしく頼む』
 『おう、承知!判った』
 『お~い!ギアス、俺を小島へだ』
 『判りました』
 パリヌルスは、ギアスの舟艇で小島に向かった。
 陽は、西に傾き、夕焼けの頃合いに近づいていた。思いより早く小島に着岸した。
 『おう!アレテス隊長は?』
 『あっ!隊長は、向こうで作業の陣頭指揮です』
 『そうか、判った。俺がそちらに行く。ギアス、一緒に行こう』
 アレテスは、島の中央にある小屋の補修作業にあたっていた。
 『おう、アレテス、作業の進み具合は?』
 その声にアレテスは振りむいた。
 『あっ、パリヌルス隊長。作業はもう少しで終わります』
 『そうか。アレテスはソリタンを知っているな。そのソリタンの天気予報だ。今夜、夜半に嵐が来るそうだ。嵐になっても心配せずともいいようにしてくれ。船は、まだ洋上にいるが、揚陸して嵐が到来してもいいように万全の状態にしてくれ。島の小屋は大丈夫だと思うが、一応点検して嵐に備えてくれ。まあ~、以上だ。ところでだな、この小島を我々の生産と交易の基地に使うようになるかもしれない。それを念頭に置いて小島の事を考えてくれ』
 『判りました』
 アレテスは、手すきの者たちを連れて浜に向かった。
 『お~い、手すきの者、皆来るのだ。船を浜にあげる。夜中に嵐が来る!』
 アレテスは、一同を叱咤した。
 パリヌルスは、ギアスにささやいた。
 『もう、夕食を運ぶ頃合いではないのか、お前、浜に戻れ』
 ギアスは小島を離れた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  153

2013-11-25 07:59:42 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスが手をあげた。
 『おう、パリヌルス、何だ?』
 議事進行役のイリオネスが声をかけた。そのとき、ソリタンが姿を見せた。
 『オキテス、ソリタンが来た。何か用事があるのかな』
 パリヌルスがソリタンに声をかけた。
 『おう、ソリタン、何か用か?』
 『はい、パリヌルス、オキテス両隊長に聞いてもらいたいことがあります』
 彼は、そのように言って空を指さした。
 『このように薄曇りで南からの生暖かい風。冬に向かうこの季節に吹くと嵐になります。この風が強い西の風に変わり、今夜、夜半から嵐になると思われます。対処を考えたほうがいいと思いまして、その旨を伝えに来ました。以上です』
 『おっ!そうか、それはありがとう。判った、対処する』
 パリヌルスとオキテスは顔を見合わせた。
 『よかろう、会議も終わりにちかづいている。すぐ、対処にかかろうではないか』
 二人は言い合わせて、会議の場に戻った。
 『おう、何だった?』
 『ソリタンは、けっこう天候に詳しいのです。小島の攻撃の際にも彼の天候診断が役に立った。彼の伝達事項は、この薄曇り、この風では、今夜半には嵐が来ると言っています。私ら二人は、その対処に向かいます。オロンテスの部署はオロンテスに任せます』
 イリオネスが口を開いた。
 『では、会議は、これにて終了。次回会議は明後日だ。調査隊の編成、区割り、建設計画に関する打ち合わせ会議となる。各自、具体的な計画を立案して、事を決定の方向に向かわせる。いいな、以上だ。あ~あ、パリヌルス、さきほどの手を上げた用件は何だ?』
 『はい、それは、小島で捕縛した女たちの事です。女たちの処遇を考えていただきたいことです。あいまいに放っておくと、後々問題の種になります』
 『判った。明後日の議題に加えて、その場で決定する。それでいいか』
 『それでいいです。私たちは、これから、浜と小島に向かいます、嵐に対する処置作業をやります』
 『判った。会議は終わりだ。嵐の件よろしく頼む』
 パリヌルスら二人は、急ぎ広場に向かった。二人は、予期される嵐の到来を簡単に告げ、作業の指示を発した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  152

2013-11-22 07:49:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスが話を続ける。
 『今、我々は、冬という季節を目前にしている。クレタの冬は如何なる冬か判っていない。小島にいる者たちを別にして、700人の者たちが20棟の建物に分宿起居している。建物の大きさからいって、窮屈な状態である。これを何とかしてやらねばと思っている。それがひとつ、オロンテスの発言にあった件を何事にも優先させて整備したい。彼は、我々全体の台所を預かっている。彼と彼らが日常の作業をやりやすくしてやらねばならない。俺の考えでは、一番に区割り、二番に全員が起居する建物の建設、砦の事は、冬が過ぎて春先に建設に取り掛かる。そのように考えている。この段取りでどうであろうか。一同の意見を聞きたい。統領の考えはいかがですか』
 『あ~、俺の考えか。パリヌルスら三人の意見を聞いてから俺に聞いてくれ』
 『判りました。では、パリヌルス、お前の意見は?』
 『軍団長の考えで結構です。いま、言われた当面の急務についての段取りでいいと思います』
 『次は、オキテス、お前の意見を聞きたい』
 『軍団長の意向でいいです』
 『次だ、オロンテス、お前の意向、考えが大切なのだ。どうだ?』
 『軍団長の考えに賛成です。宜しくお願いします』
 『統領、ここにいる一同の意見は聞かれた通りです。統領の考えを聞かせてください』
 『おう!一同が軍団長の意向に賛意を示している。俺もお前の考えに賛成だ。それでいい、その段取りでスタートだ。パリヌルスとオキテスの発言についての俺の考えは、調査隊を編成して、即、調査にかかろう。調査項目にしたがって隊を編成し、行動に移ってくれ。築砦、城市の建設は、第一次の事業を終えて、第二次、第三次と進める。俺の言ってるように物事を為すについては『始計第一』だ。パリヌルス、オキテス小島の使用計画と事業計画だ。モノを造る、そして、交易をする。これについて思考を尽くせ。俺は強い集団をつくりあげることに思考を尽くす。以上だ』
 統領の発言は、今日の会議の結論を言い表していた。イリオネスが口を開いた。
 『今日の会議は終わりににさしかかっている。ほかに討議する件があるか、あれば言ってくれ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  151

2013-11-21 08:17:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 話に区切りをつけたオキテスは、話をパリヌルスに引き継いだ。
 『オロンテスが危惧している件もあります。このクレタの地において、我々が武力に訴えなければならない軍事的な事変の起きる可能性についての事情も探る必要があります。そのような状況の中で我々民族の安泰を図り、入るを計り、出るを制して、財を蓄える。このことに力を入れて事を運ぶには、調査を行って方針を決めることを提案いたします。このクレタの過去には、造船で栄えた時代があったとか、それを耳にしています。我々にも造船の技術があります。そのほかにも『方角時板』また、オキテスの思いつきによる『風風感知器』の技術もあります。これらをもって交易をおこない入るを計っていく。我々が手に入れた小島を生産の拠点に、また、交易の拠点にと考えています』
 二人の話が終わった。アヱネアスもイリオネスも二人の話に感じ入り、深くうなずいた。
 『おう、パリヌルスにオキテス。君らの考えていることがよく判った。そのような条件でこの地における行動展開をするべきと理解した。充分に理解した。この件は、これでよしとして、軍団長。築砦の討議をやろう』
 『判りました』
 答えたイリオネスは、一同と目を合わせて姿勢を正した。彼は、おもむろに話し始めた。
 『オロンテスの提案から始めて、パリヌルスにオキテスの担当している部門の考えを理解した。君らの提案で我々民族の目指す方向が見えてきている。君たちの提案を尊重して『これから』を考え、行動に移していこう。では、これより懸案の築砦の件についての討議に入る』
 彼は、言葉を切り、再び、列席している四人の目と目を合わせた。
 『諸君、見てくれ。これが現在の集落の状態だ。現在の使用状況も書き入れてある。また、建物が使用に耐えれるかどうかについても触れてある。○、□、×の印をつけてある。築砦のカタチは、砦、城市の形成、それをどのような形態とするかを考えてもらいたい』
 『軍団長。これは入念に調査されて書いてありますね。状況が見えます』
 パリヌルスら三人は、その木板に見入った。
 20数棟ある建物について、イリオネスは評価していたのである。×印の付いた使用に耐えない小屋らしき建物が3棟、少々手を入れれば使用できる建物が8棟残る16棟が現状で充分に使用できると評価されていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  150

2013-11-20 07:45:26 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『次は、オキテス、お前の番だ。オキテス、話し方はお前だ』
 『判った。パリヌルスに代わって、私が話を継ぎます』
 オキテスは、そのように言って一同と目を合わせた。彼らはパリヌルスの話を聞いて、目が熱を帯びて輝いていた。オキテスも感情が昂ぶり心が燃えた。
 『私は、パリヌルスのようにうまく話し運びができるか、どうか自信がない』と言って話し始めた。
 彼は話の起点をうまくつかめないらしい。
 『築砦に取り掛かる、手段、諸策は、彼の言った通りです。それに継いで、私が言いたいことは、我々が強くあらねばならないことです。我々がこれから手がけていく、そして、手がけた以上は、いい結果を納めなければならないことです。それにはどうあらねばならないか。軍事、海事、交易は、我々の身内ではなく、他人、他民族、他の集団と渡り合うわけです。ここでの条件として、言えることは、我々が強くあらねば、我々の意志を通すことができないというわけです。これから我々に求められることは、入りを図ることに注力していかねばならないことです。交易でもって生きることを目指していく必要があります。その交易の原点に取引の値段決めがあります。力の弱い集団であれば、対手の言うがままの条件で取引が終わります。強い集団をもって取引に及べば、相手に乗じられることはありません。また、我々が遭遇する事案の平和的解決を望む場合においても強い集団であれば不利な条件で事案の解決に追い込まれることはありません。我々は、強い集団を造らねばならないのです。富める集団、強力な集団を構築していかねばならないのです。パリヌルスの言ってくれた『人こそ砦』これの実現は、何が何でもやらねばなりません。それは一朝一夕にできることではありません。日夜、そのことに尽力していかねばならないのです。そのための調査を行う必要があります。己を知って、相手を知る。そして、策を講じる。如何なる事案に遭遇するも我々が有利に事案を処理する要諦であると考えています』
 オキテスは心の内を滔々と述べた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  149

2013-11-19 08:19:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『我々がこの事業をやり遂げる。自分たちの思いをカタチにする。それをやるには、強い意志力の集団であることが大切です。強い意志力を持った集団が事を進めていく、それでもってスタンスして、衆知を集め、事を進めて、カタチを作り上げていく』
 パリヌルスは、作業に立ち働くたちの姿を頭中に描いて言葉を連ねた。彼は話を継いでいった。
 『オキテスが言いました。彼は『人こそ砦』といったのです。このスタンス、この想いで、築砦を考えようと二人の意向を決めたのです。私たちはこのクレタに来たばかりです、上陸して日も浅く、我々がクレタについてよく知っているのかどうかということです。第一次の砦の構築は簡素に、日を追って、第二次、第三次と計画して、砦、城市を築いていく、そのように考えています。砦建設の資材が充分に調達できるか、それも課題です。建設にふさわしい資材が、建設に対する量が、調達できるかです。建設計画ができた、いや、資材の調達、それができないでは話にならない。ここはエノスと違います、築砦に使用する良材が豊富にあるか否か、また、それを簡単に調達できるか否かも、この築砦にかかわってきます。やると決めた以上、知力、体力、持てる力の全てを注ぎ込んで、このことを成し遂げねばならないのです。やる以上は短い時日でもいい必要としている条件の調査から手を付けていかなければならないと考えています』
 パリヌルスの長い話が終わった。しかし、まだ話は続くよといった、一区切りであった。
 『話をもうちょっと続けます。築砦は、まず、構想、計画、調査、計画の見直し、再度、計画の立案、調査、確認と段取りして、資材調達、建設に着手です。やりましょう!万全を期して、この築砦計画を成功させようではありませんか』
 力を込めて話を結んだ。一同が大いに賛意を示した。
 『パリッ!お前の言うとおりだ。クレタを知っているかと問われたら、返答に迷う。そのような自分を知らせれたな』
 アヱネアスは感慨を口にした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  148

2013-11-18 07:53:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オロンテスは、春から夏にかけての主食の原料となる小麦の保有に関する危機感について述べた。
 『その時機の到来には、まだ間があります。しかし、対処する方策を探り、その後に及んで、泥棒を見て縄の状態にならないように心せねばなりません。この場にいる5人が事情を共有して事にあたらなければなりません』と結んだ。
 アヱネアス以下、イリオネスら三人は大きくうなづいた。イリオネスは、この件についての見解を述べた。
 『今、オロンテスからの発言にあった主食原料の小麦の件であるが、このクレタに着いた折にオロンテスとは一度、話し合っている。その時には、オロンテスと解決策について意見の交換をしている。時が来れば会議を開き、手だてを考えて方策の実行を検討しよう』
 イリオネスは、言い終えて、次の議題へと進んだ。
 パリヌルスとオキテスの二人が担当している役務部門へと移っていく。
 『では、次に移ろう。パリヌルス、オキテス、君ら二人が連携して行っている役務は、広い範囲にわたっている。軍事、海事、交易、建設、そして、営繕、ときには生産業務にもあたっている。我々一族の全体の運営に関して広く関わっている。このたびの築砦に関しても深く関わることになる。では、討議に入る』
 イリオネスは言葉を結んで、二人と目を合わせた。アヱネアスもオロンテスも、じぃ~っと二人を見つめた。目線がからんだ。
 オキテスの目は、パリヌルスに『お前から話せ』と告げていた。パリヌルスは、目でうなづき、アヱネアス、イリオネス、オロンテスと目線を交わして口を開いた。
 『先ず、本題に入る前に聞いていただきたいと思っていることを話します』
 彼はここで話を区切り一同と目を合わせた。築砦の志向を何とか伝えたいといった強い目線で皆と目線を合わせた。
 『これから話すことは、オキテスと話し合った二人の志向です。我々民族全員が、考えていることを実現しようとする心構えです。全員がその志を強く持って、この事業と取り組んでいく、取り組んでいかねばならないと考えています。その心構えと志向は、、、、』
 彼は、言葉を切って、訴える目線で一同と目を合わせた。