『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  20

2020-01-31 05:58:54 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスに感動の言葉を述べたぺリオスが身体をイリオネスにむける、言葉をかける。
 『軍団長殿、アエネアス統領殿から携わってもらう作業のことを聞かれたかな?』
 『はい、聞いています。城壁構築と港湾整備作業の件ですね。城壁構築現場のほうへは私が隊を率いて携わります。港湾の整備作業には統領が隊を率いて携わります。ぺリオス領主殿の要望を聞いて、作業隊の割りふりを決めたいと考えています』
 『作業隊の総員は290人と聞いている。190人を城壁構築の現場へ。100人を港湾の作業現場へ頼みたい』
 『解りました。城壁構築の現場には、パリヌルス隊とアレテス隊。港湾の作業現場には、オキテス隊を派遣します』
 『了解!双方の現場を管理監督している者が同道してきている。各隊の隊長と顔合わせをする』
 『いいでしょう』
 ぺリオスに同道してきている作業現場の監督の役務を担当している者と隊長役務の三人が顔を合わせる。
 今日の午後イチに作業隊がかかわる現場におもむく旨を打ち合わせる、アエネアス、ぺリオス、イリオネスの三人が打ち合わせを終える。
 『では、軍団長、昼食を終えたら城壁構築の作業隊は、館のほうへ来てくれ、待っている』
 『了解しました』
 ぺリオスが同道の三人の監督を連れて停留の浜をあとにする。
 イリオネスがアエネアスに事の次第を報告する。
 『おう、打ち合わせが終わったか。少し早いが昼めしにする。昼を終えたら出発する。港湾の作業現場は近いが、城壁構築の作業現場へは少々時間を要する。そういうことだ』
 アエネアスがパリヌルスら三人に声をかける。
 『おう、航海予定外の業務だが、俺の考えでは、四か月くらいと考えている。よろしく頼む』
 『了解しました』
 彼らは、昼食を終える。イリオネスが率いる城壁構築作業部隊がぺリオス領主の館に向けて出発する、停留の浜をあとにする。
 
 アエネアスの率いる港湾の作業部隊が停留の浜から、ほど近い港湾の作業現場に向かう。
 現場の作業監督が彼らをむかえる。
 アエネアス、オキテス、現場監督の三人が作業要領の打ち合わせを終える、午後の作業開始まで少々時間がある、小休止である。
 『オキテス隊長殿、よろしく頼みます』と監督が手を差し出す、二人が握手を交わす。
 オキテスが作業開始を待機している一同のところに戻る、作業要領を一同と打ち合わせる、作業に着手するスタンバイが整って作業開始を待つ。

 城壁構築作業に携わるイリオネスが率いるパリヌルス、アレテス隊は、ぺリオス領主の館に待っている作業監督とともに城壁構築作業の現場へと館をあとにした。

 

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  19

2020-01-30 05:57:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船団の者ら一同がオロンテスの留守部隊、ぺリオスの業務支援の作業部隊の編成を終える。
 協議して船の揚陸の適地を決める。
 イリオネスがアエネアスに声をかける。
 『統領、今、指示したことのほかに用務がありますか?』
 『おう!』と言って、一同に告げる。
 『一同、ありがとう。城壁構築作業隊は俺が引率して現場に向かう。港湾作業隊のほうは、軍団長、お前の担当とする』
 『統領、それは反対ですな!城壁構築隊は私が担当します。統領は、港湾作業隊のほうを担当してください。合わせて停留の浜の管理のほうもやっていただきたいのですが』
 『そうか、城壁構築については、お前のほうが詳しいはずだな、解った。一同、そういうことだ』
 『了解しました』
 『一同、即、船の揚陸作業に取り掛かってくれ!それを終えたら昼食とする』
 イリオネスが隊長役務の四人に指示をする、停留の浜が船団の者らの活動で騒然とする。
 船の揚陸作業が終わる、パリヌルスら三人が船を念入りに点検する、必要とする作業をオロンテスに説明する、船の管理方を引き継ぐ。
 
 太陽が頭上にはまだ到っていない、停留の浜に陽光を降り注ぐ、イリオネスが空を見あげる、時を計る。
 ぺリオス領主が現場の監督の役務を担当している者、三人を連れて停留の浜に姿を見せる、イリオネスが彼ら四人を迎える。
 『あ~っ、ぺリオス領主殿、先日は大変世話になりました。準備いただいた浜を停留に使わせていただきます』
 『おう、イリオネス軍団長、心おきなく使ってください。アエネアス殿は?』
 『領主の姿を見て、只今、統領を呼びに行っています』
 『あ~あ、軍団長、先に伝えて置きます。あなた方が使う薪のこと事だが、今日の午後、係りの者がここは運びます。受けとってください』
 『ありがとうございます。世話をかけます』
 アエネアスが来る。
 『おう、ぺリオス領主、待っていました。話はついている。安心されたい。作業隊の編成も完了している。10人小隊10隊をもって編成した隊が2隊、9隊をもって編成した隊が1隊、各隊の隊長、小隊には、小隊長でもって編成されている。ぺリオス領主殿の意向を聞いたうえで隊の役務を指示することにしている。軍団長と打ち合わせてほしい』
 『ありがとう!アエネアス。アエネアス統領殿、感謝感謝です。アエネアス統領殿に頼んだ甲斐がありました。このような強力な精鋭そろいの手を借りれるとは心強い限りです』
 ぺリオスが感動の言葉を述べた。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  18

2020-01-29 06:01:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスの問いかけにアエネアスが答える。
 『おう、了解!その件について説明する。私情もからんでいる、それは許してもらいたい。まずひとつは、我々の西に向けての航海についてだが、その航海に関する見通しだ。それを出来るだけ詳しく知りたい。それについてこの地において、できるだけ多くの情報をとりたい。この半月に及ぶ航海で目的の地に少しは近づいたという実感を持っている。情報の入手、それをもって航海の不安を失くしたい。それについてだが、ぺリオスがある程度だが詳しく知っているらしい。またそれに関する神託の件もある』
 そこまで言ってアエネアスは一同と目を合わせる、一同の理解を探る、話を続ける。
 『ふたつめだが、ぺリオスと俺とのつながり、そして、アンドロマケとの関係がある。ぺリオスとアンドロマケと俺との絆だ。そう言うわけで期間を定めて、力を貸す!そのように俺の勝手で決めたわけだ。相談が事後になった不手際は許せ、心から詫びる』
 『そうですか。解りました』とイリオネスが答える、一同と目を合わせる、一同に問いかける。
 『おう。一同!統領が言われたことを理解したな。君らの意向を聞く』
 イリオネスが統領の意向に賛同するべく、ささやかな作戦を志向する、問いかけの順番を定める、まず、アレテスに声をかける。
 『アレテス、お前の意向は?』
 アレテスがドッキリする、なんで俺にいの一番に問いかけると気にする、答える。
 『はい!私は統領の意向に従う、そのように考えています』
 『次、オロンテス、お前の考えは?』
 『私は、統領の意向に賛同です』
 『おう、パリヌルスにオキテス、二人はどのように考えている?』
 『はい!全く、異存はありません。統領の意向で諸事を遂行いたします』
 イリオネスがアエネアスに体を向ける。
 『統領、聞いての通りです。私にも異論はありません。対応して体制を即刻整えます。船団としての停留計画を勘案して体制を整えます。人員島の割り振りをして業務参画の体制を整えます。ぺリオス方の意向もあると思います。それは話し合いの上で決めるということで対処します』
 言い終える、オロンテスに声をかける。
 『オロンテス、お前に頼みたいのは、この地のおいて、長期の滞在となる。食事の件、そして、揚陸した船の管理について担当してくれ。その陣容を整えてくれ』
 『その業務を遂行していく陣容は、80名くらいです。私の決定でよろしいですね』
 『おう、それでいい!パリヌルス、オキテス、アレテス、三人はオロンテスが編成した陣容以外の人員をもって三隊を編成する。各隊に10人編成の小隊10隊をもって隊を編成する。いいな!小隊長の役務を担当する者を決めておくこと!以上だ』
 『了解しました』
 三人が返事を返す、作業部隊の編成にとりかかった。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』  第2章  プトロトウムにて 17

2020-01-28 04:45:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ぺリオスとアンキセスと話し合って一夜が過ぎている。
 アンキセスの腹立ちが失せていない、館の門を出てから彼がつぶやく。
 『ヘレノスの奴め!一軍を率いて起たなければならない奴が!あの臆病者め!』とぶっきらぼうにつぶやいてから、ひと言も口をきかないでいる。
 船団停留の浜に帰り着く、アエネアスは、事情が解っているだけに父アンキセスと口を交わすことなく船団停留の浜に帰ってきたのである。
 帰り着いたアエネアスは、船団の一同と顔を合わせる、停留の浜を眺める、状況を把握する、出むかえに近づいたイリオネスに声をかける。
 『おう、軍団長、今日の予定はどうなっている?』
 事情が解っているのにこの問いかけである、イリオネスが答える。
 『その件で統領の帰着を待っていました』
 『そうかそうか、よし!いいだろう、役務担当の一同を呼び集めてくれ。相談事がある』
 アエネアスの言い出しに深慮に基づく謙虚さがある、イリオネスは、これは何かあるなと勘ぐる。
 役務担当の一同が間をおくことなくアエネアスとイリオネスを囲む。
 『おう、軍団長、落ち着いて打ち合わせたい用件がある。場をつくってくれ』
 『解りました』
 イリオネスが一同を連れて浜を歩き巡る、草が生えている浜の一隅に立つ。
 『ここはどうだ?』
 オキテスが声をあげる。
 『軍団長、いいじゃありませんか。好適地です』
 アエネアスが場に立つ。
 『おう、軍団長!ここはいい場所だ。この地にいる間はここを会議、打ち合わせの場とする』
 『了解しました。一同、いいな?』
 一同がうなずく、会議の場とする草地に腰を下ろす、アエネアスが口を開く。
 『即刻だが、君らにはからねばならない事態、事項がある。軍団長が船団を迎えにキルケラに戻った後、二日間、ぺリオスが手掛けている作業現場、城壁構築の作業現場、港湾の整備現場の2か所だ。作業現場を見て回ったあとにぺリオス領主から事情説明を聞いたのだ。そこで相談された』
 一同と目を合わせる。
 『相談事は人手のことであった。人手が不足しているので貸してくれないかとの要請を受けた。当方の航海予定もある、要請を受けるか、受けれないか、軍団長とはからねば答えられないといったのだが』
 『期間はいつ頃までですかな?』
 『この季節いっぱいぐらいだと言う。俺は考えた。まあ~、それくらいなら、ぺリオスと俺との関係もあり、いい返事ができるであろうと答えた。そのような成り行きだ。この件について君らの考えを聞きたい』
 『今、我々は目的を持っての航海の途上にいるわけです。航海に関しての統領の意向がどうなのかが、この件の意思決定に関係します。統領の意向を聞きたいものです』
 イリオネスがアエネアスの意向について質してきた。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  16

2020-01-27 05:54:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 プトロトウムに先着しているアエネアスにむかえられて、指定された停泊の浜で一夜を過ごした船団の者らは、プトロトウムの朝を迎える。
 放射冷却現象である、肌寒さを感じて寝てはいられない。
 星が眠りにつき始める、薄明るい浜に人影が動く、彼らが起き始める、朝行事へと海へ歩を運ぶ。
 ギリシアとアルバニアとの国ざかいである、浜が背にしている山並みの稜線の一点が明るみ始める、陽の出の刻が近づきつつある。
 朝行事を終えた彼らが浜に立つ、風景を眺める、対岸に目にするケルキラ島、彼らが目線を右へと振っていく、プトロトウムの港の風景を目にする、さらに右へと目を移していく、陽の出を控えている山の稜線に見入る、目線を巡らす、昨日、懸命に櫂漕ぎで航走した海を眺めて我に返る。
 我に返ったひとりが口を開く。
 『俺が考えていることがある』と言って、目を半眼に閉じる、指を折り始める。
 『今日で、クレタを出て、18日目になる。考えてみれば遠くに来たもんだな。しかしだ』
 そのように言って周りにいる者らと顔を合わせる。
 『こうして停泊しては海の水を口に入れてみるのだが、クレタの海の水の味とここの海の水の味と塩辛さに変わりがないんだよな!イッツも少しは違うかと考えて口に含んでみている』
 『バッカ!考えてみろや、ここの海もクレタの海も同じタライの中の海だ!違うわけがなかろうが』
 話し合っている者らのところへイリオネスが近づいてくる。
 『軍団長、おはようございます。いい朝です。ケルキラ島ってでっかい島なんですね。昨日、あれだけ海を渡ってきたのに島の海岸線がさらに北に向かって伸びています』
 『お前の言う通りだ。俺も島のデカさに驚いている』
 集まっている者の一人から声があがる。
 『お~い、陽が昇るぞ!』浜にいる者ら一同が東に見える山稜の一点にまなざしを向ける、昇り始めた大陽をむかえ見る。
 船長の役務を担当している四人がイリオネスを囲む。
 『軍団長、おはようございます、いい朝です!』
 『おう、おはよう、いい朝だ!』
 『軍団長、今日の予定は、どのような段取りでいきますか?』
 『おう、今日の予定か。統領の到着を待って決めようと考えている。それまでに朝めしを済ませて待機だ』
 『オロンテス、食糧計画はうまくいっているのか?』
 『はい、明日は、パンを焼きたい!その段取りでいます』
 『パリヌルス、オキテス、アレテス、三人の責務での予定はどうなっている?』
 三人は顔を見合わせる、パリヌルスが答える。
 『このままでの船の洋上停留は、船体に貝がこびりつきます。停留予定によって、船の揚陸を考えねばならないと考えています』
 『解った。答えは、統領と打ち合わせて、即、出す。オロンテス、朝食の準備を頼む』
 『解りました』
 彼らが朝食を始める、時間をかけることなく朝食を終える。
 
 ぺリオスの館をあとにしたアエネアスらが船団の停留の浜に帰り着く、彼らを迎えるイリオネスと船団の者ら一同。
 アエネアスが一同に声をかける。
 『おう、いい朝をむかえたかな?おはよう!』
 『おはようございます、いい朝です!』
 アエネアスが船団の者ら一同と顔を合わせる、朝の挨拶を交わす、船団の者らの様子と周囲の光景に目をやりながら口を開く。
 『やっぱりな!お前らと共に過ごす、ここが俺の居場所だな』
 彼らと顔を合わせる、アエネアスがしみじみとした口調で告げた。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  15

2020-01-24 05:54:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 二人が明日からの処理課題の話し合いに移る。
 『おう、ぺリオス、明日のことについて話し合おう。明朝だが、引け受ける業務について当方の体制を整えねばならない。俺のほうは昼めしまでに役務担当と打ち合わせして体制を整える』
 『了解した。多勢の配置だ、齟齬があってはいけない。受け入れる俺のほうもそれに対する体制を整える。それを終えて停留の浜に出向く。それでいいな』
 『おう、心得た!』
 『夜も更けた、休もうではないか』
 『おう!では、明朝にな』
 二人は、打ち合わせを終える、立ちあがる。
 『あ~!アエネアス様、寝屋の準備ができています。心おきなく休んでね』
 『おう、アンドロマケ、ありがとう。身体を心して大切するんだぞ!いい子を産むんだ!解っているな』
 『充分にわかっている。ぺリオスと私の未来が腹の中にいる!愛おしい限りだわ』
 『今夜は世話になる。明日からは、ぺリオスが準備してくれた浜で過ごす』
 アエネアスは、整えられた寝屋におちつく、いろいろあった今日を振りかえる、眠りの訪れが早い、彼は深い眠りをむさぼった。

 朝が明ける、かってを知った館の庭の池で朝行事をすませるアエネアスとユールス。
 ぺリオスが姿を見せる、水浴をすませたぺリオスと並んで庭に立つ、言葉を交わす。
 『おう、おはよう!アエネアス。俺は驚いた、まさかであった。アンドロマケの腹に子がいるとは考えてもいなかった』
 『この鈍感め!』と言ってぺリオスの胸を拳で突く。
 『めでたいことだ、喜こべ!アンドロマケをだいじにしてやれよ。いいことだ!』
 『ありがとう。お前は、いい奴だ、俺を理解してくれる、手を貸してくれる。お前だけだ。感謝感謝だ』
 二人は、ユールスを連れて、朝食の準備が整っている応接の間に足を向ける。
 そこには、アンキセスとアカてスがテーブルについて茶を飲んでいる。
 アンキセスは席から立たない、アカテスが立ちあがる、ぺリオスが一同に朝の挨拶をする。
 『おう、皆、おはよう。雲ひとつない青空だ、いい朝だ』
 アンキセスを除いた一同がぺリオスの言葉に挨拶言葉を返す。
 『おはようございます』アエネアスが言葉を付け加える。
 『いい朝です!』『おう!』ぺリオスが答える、席に就く、朝食が始まる、静かな朝食である。
 ぺリオスがアンドロマケに今日の予定を伝えて朝食が終わる。
 アエネアスがぺリオスに礼を述べる、アカテスを促してぺリオスの館をあとにした。
 

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』 第1章  プトロトウムにて  14

2020-01-23 05:58:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ぺリオスが感動の声を上げる、目を潤ませてアンドロマケと目を合わせる。
 『おう!アンドロマケ、それ!本当なのか?』
 『ぺリオス!喜んで!本当よ!』
 ぺリオスがアンドロマケの肩に手をかけて、見つめる、胸を見る、アンドロマケを目でなぞる、目線を腹部に注ぐ、ぺリオスがアンドロマケを両手で力強く抱きしめた。
 『アンドロマケ!俺はうれしい!』
 アエネアスは、二人の情景を目の当たりにする、感動の場面である、そこにぺリオスとアンドロマケの二人の未来を見る、このうえない感動の嵐が襲う、二人の愛を大切にしてやるべきと考えた。
 『これは、ぺリオスを説得すべきか、諦めるべきか?』とアエネアスが逡巡する、
 アエネアスが建国の経緯を考える。
 干戈を交えて建国をするか、干戈を交えることなく国を建てるか、ここは、ぺリオスの考えに踏み込んでいくべきではないと心に決める。
 ぺリオスがアエネアスに声をかける。
 『アエネアス、お前の言う国の再興は、俺の願いでもある。強く強くこの胸にある。今の俺は、剣を手にしてそれをやろうとは考えてはいない。俺の想いは、必ずそれを実現する。それについては、長い長い時をかけてやり遂げる。今はそれをやる時ではないのだ。お前が参画を促そうとも俺がお前に力を貸すことはない。俺は、今、俺に与えられている役務に懸命に尽くしていく。それが今の俺の全てなのだ』
 『了解した。お前の気持ちを充分に理解した』
 『お前こそ、その望みを達しうる力量とその備えが充分といえる。やってくれ!俺がお前に出来ることは、力を尽くしてお前を援ける。お前は、お前の国、俺は俺の国を建てる。お前と俺が軍団を率いての国の再興はやらない。アンドロマケのこれまでの苦労に答えてやる!そういうことだ。許せ!』
 アエネアスは、ぺリオスの心のありかたを納得する。しかし、アエネアスの心の中における想いは葛藤している、アエネアスが想いをぺリオスに伝える。
 『ぺリオス、お前の想いを俺なりに納得したが、心の底からではない。その想いを消すことのできない残心が残っている』
 二人は、ジイ~ッと見つめ合う、アエネアスが自分の潜在意識に気づいていない。
 彼の潜在意識には、『如何なる者の力を借りることなく、俺のみにて建国をやり遂げる!如何なるものの力も必要としない』とする意識が存在していたのである。
 独立自尊、我意達成、他の者の参画を拒む信念を持していたのである。
 ぺリオスとアエネアスの建国への想いの話し合いが終わる。
 二人には、処理すべき眼前の業務と事情が存在していたのである。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation 『建国の地へ』  第2章 プトロトウムにて 13

2020-01-22 06:07:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アンドロマケが伏し目がちにアエネアスと目を合わせる。
 胸にこみあげる思い、そして、今、自分が胸に抱いている想いをどのようにアエネアスに伝えようかと気をもむ、何としても仔細を伝えねばと話を筋だてる。
 アンドロマケが話し始める。
 『先ほどまでここにいた、ユールス、大きくなったわね!アエネアス、父として楽しみでしょう』
 『それは、まあ~!これから俺がやることを考えると、どのようして育てようかと深く考える時もある』と言ってアエネアスは言葉を継ぐ。
 『アンドロマケ、アステアナクスが生きていたら、いくつになるかな?』
 ぺリオスは、二人が交わす言葉を静かに聞いている。
 『うう~ん、そうね、五つになるわ』と応えるアンドロマケの表情に寂しさが浮かぶ。
 『あの子がいないのに私がこのように生きている。ユールスがいるのにクレウサがいない。世の中ってーーー』
 アンドロマケの両の目に涙が浮かぶ。
 『世の中って、ままならないものね』
 『そうだな』
 アンドロマケが過ぎし日の述懐をとぎれとぎれに話す、アンドロマケが姿勢を正す、改まって口を開く。
 『アエネアス、頼む願いがあるの聞いてくれる?』
 話し言葉の語尾のトーンがあがる。
 『トロイの再興は大事なことかもしれないが、夫ぺリオスをそれに誘わないでほしいの。他のことなら、話を聞いて、出来ることなら何でもするわ。ぺリオスはこのプトロトウムの領主です。ですが武士であることを捨てています。今は、イピロス王の許でアポロンの神託を受け伝える役務を担当しており、土木工事、建設等の宰領を務める身です。私の夫をとりあげないでほしいの!私を一人にしないでーーー』
 アンドロマケは訴える、涙を流す、すすり泣く、こみあげる慟哭に耐えられないでいる。
 ヘクトルにネオプトレモス、二人の夫を失った身である、アエネアスは訴えるアンドロマケの心情を受けとめる。
 アエネアスは、アンドロマケが真剣に訴える事情に何となくハテナを感じる。
 その感情を抑えてアエネアスが口を開く。
 『しかしだ、アンドロマケ、ヘレノスは、プリアモス王の血をひいている王子だ』
 『しかしではありません!ぺリオスは一軍を率いて戦う、そのようなことを考えてはいません』と強い口調で言い切る。
 『それは確かか?』
 『確かです!私が言うのです。私ももうトロイを忘れています。アステアナクスの死でもって忘却の彼方です。なきヘクトルも遠い人となっています。ここにぺリオスとの愛がいます』と言って、アンドロマケは自分の腹を手でさする。
 それを耳にして、アンドロマケのしぐさを目にしたぺリオスが驚きの声をあげた。
 

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of nation  『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて 12

2020-01-21 06:09:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ぺリオスが答える、語気は極めて静かである。
 現在ぺリオスは、このプトロトウムの地を治めている領主であることを強く自覚してアンキセスに答えを返す。
 『アンキセス殿、その件については、この地の統治を任されている私です。また、この地の王から委嘱されている業務の遂行第一であります。王から信任もされている。その事については考えていないのが実情です』
 『そうか、それは無念だ!』
 『そのことについては、私は心から強く願っています』
 『願っていながら、それをやらない!それでいいと考えているのか』
 『アンキセス殿、私には私の考えがあります、国家の再興は私の思いでやり遂げます。とやかく言わないでほしいですな』
 『そうかーーー』と言って、アンキセスは不快の念をにじませる、ぺリオスの言葉に力がこもっている、二人はこの話題にピリオドを打つ。
 ぺリオスが返した言葉にアンキセスは、母国再興の強烈な意志の存在を感じとっていない。
 ぺリオスは、アエネアスと顔を合わせる、二人はうなずき合う。
 沈黙が場の空気を支配する、場が冷える、久々の邂逅で和んだ食の場が冷え込む。
 ぺリオスが口を開く。
 『アンキセス殿は疲れていられる。アンドロマケ、宿館のほうへいざなってくれ』
 アンドロマケがアンキセスに言葉をかける。
 『アンキセス殿、食事をすまされたようですね。ユールスも食べましたね。宿館のほうへ案内します』
 アンドロマケが召使の二人を呼ぶ、アンキセスとユールス、アカテスの三人を召使に手伝わせて宿館に案内する。
 『アンキセス殿、寝屋を整えてあります。ゆっくり休んで旅の疲れを癒してください。召使の二人は隣室にいます。用事があれば申し付けてください』
 アンキセスは『おう!』と応える、『ありがとう』の礼言葉を返さないでいる。
 アンドロマケがアンキセスらを宿館への案内を終える、応接の間に戻る、ぺリオス、アエネアスとの三人になって顔を合わせる。
 『ぺリオス、済まなかった。父アンキセスの言ったこと、老人のわがままとして許せ。しかしだ、俺の心の底には父の言ったことがわだかまっている。まあ~、そんなところだ。悪く解してくれるな』
 『それはわかっている。俺には俺の生き方があり俺のやり方がある。お前らのやり方に同調の意志があるかと問われたら、その願いがあるが俺は俺のやり方で願いを達成していく。俺はそのようにしていくと決めている』
 二人の話し合いを聞いて、アンドロマケがアエネアスに話しかけた。

[Remembrance of Aeneis] Ⅳ To founding land of a nation 『建国の地へ』 第2章  プトロトウムにて  11

2020-01-20 06:17:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、宵が迫りくる道をぺリオスの館に向けて歩む、アカテスが足の力の衰えたアンキセスを背におぶって歩を運ぶ。
 アエネアスが父アンキセスにヘレノスがぺリオスと名のっている詳しいわけを話しながら歩む、納得したか、しないかを気にせずにアンキセスに話す。
 アンキセスは、老いのわがままを心ににじませてアエネアスの話を聞いている。
 『父上、解りましたな!ヘレノスに話す時は、今は、プトロトウムを治めるぺリオス領主です。それをわきまえ相手の立場を充分に考えて話してほしい』
 『解った』との返事があったもののアエネアスにとって、本当に父が立場をわきまえて話してくれるかどうかを疑問に感じている。
 一行はぺリオスの館に着く、訪問の意を伝える、アンドロマケが迎えてくれる。
 『お~お、懐かしゅうございます。アンキセス殿、達者でいられましたか?待っていました、さ~さ、こちらへ』と手を取って応接の間へ招じいれる。
 ユールスがアカテスに手をひかれて応接の間に通る、アンキセスを席に就かせてユールスに歩み寄るアンドロマケがユールスに声をかける。
 『まあ~っ!、ユールス!大きくなったわね!元気で何よりだわ!』と言って、アエネアスの顔を見る、目を合わせるアエネアス、二人は微笑みを交わす。
 彼ら一行を迎えるかってのヘレノスが微笑みをたたえてアンキセスに接する。
 『お~お、アンキセス殿、ようこそ見えられた。達者のようす何よりです。ユールスも大きくなりましたな、何よりです。おう、アカテス、元気だったか?』
 ぺリオスの問いかけにアカテスが答える。
 『ぺリオス領主殿、言葉かけありがとうございます。アエネアス殿から気配りをいただき元気でおります』
 『それは何よりだ。一同くつろいでください』
 ぺリオスは、会した一同に心を尽くしてもてなす、過ぎたいまわしい思い出を互いに語り合う、ぺリオスはアンキセスとの語り合いをきわどいところで巧みにかわす、避けるべき話をさけて話をする。
 やがて話す事柄が尽きてくる。
 アンキセスの老いの一徹がぺリオスの心の芯を突く。
 『ぺリオス殿、国家再興の気持ちを伺いたいのだが、いかが考えていられるかな?』
 ぺリオスは、その問いかけが来るであろうとは予期している。
 問いかけられて、ぺリオスがアンドロマケと目を合わせる。
 アンドロマケが顔を横に振りおえて、うなずきの顔を一度縦に振る、アンドロマケの意思表示である。
 ぺリオスがうなずき返す、口を開いた。