『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  43 

2019-06-12 13:26:59 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 話し合いを終えたスダヌスの船が浜をあとにして沖へと向かう。
 アエネアスとイリオネス、そして、話し合いに列席した者らがスダヌスの船を見送る。
 キドニアへと向かうスダヌスの船と入れ違いにテカリオンの船が沖に姿を見せる、帆柱の先端にテカリオンの旗印が風になびいている、浜風は東南から西北に向けて吹き抜けていく、沖に吹いている風は、旗のなびき具合から見て東風であるらしい。
 浜の張り番の伝令により会所に一報が届く、軍団長が受け取る。
 『交易船が浜に近づきつつあります』
 『おう、ご苦労!』
 言葉のやり取りを耳にするアエネアス。
 『おう、軍団長、テカリオンの船だろう。もう、着岸するころではないのか?浜へ行こうか』
 『え~え、行ってみますか』
 二人が波打ち際に立つ、交易船が着いている、積み荷の関係で浜から少々離れた地点に船が停泊している。
 張り番の者が、軍団長に報告する。
 『只今、パリヌルス隊長がハシケで船のほうに行っていますが』
 『おう、そうか』
 アエネアスとイリオネスがハシケの到着を待つ、ハシケが波打ち際に着く、テカリオンが下りてくる、同乗してきた側近がハシケに積んできた荷を下ろす、チエックするテカリオン、パリヌルスとうなずき交わす、渚に立つアエネアスと目が合うテカリオン、急ぎ歩み寄る、礼を交わす、言葉をかける。
 『統領殿、無沙汰で過ごしています。失礼を許してください。変わることなく過ごしていられますか?』
 『おう、この通り元気でいる。テカリオン殿も元気かな?』
 『はい、この通り達者で日夜仕事に携わっています。こうしてこの地に来れる、とても喜んでいます。ありがとうございます』
 テカリオンが身体をイリオネスのほうに向ける。
 『軍団長殿、久しぶりに当地にまいりました。日ごろ大変世話になっています。変わりなく健やかそうで何よりです。持参いたしました心づくしの粗品です。受納ください』
 ハシケからおろして浜に積んだ品々を手で指し示す、深く低頭する。
 『おう、テカリオン殿、久しぶりだ、元気な姿を見せてくれた。テカリオン殿、あなたの来訪を待っていました。当方こそいろいろ世話になっている、こちらこそあなたに感謝の気持ちでいっぱいですな!持参の品々ありがたく頂戴する。ありがとう。厚く礼を言う』
 テカリオンがイリオネスの傍らに立つパリヌルスに世話をかけた礼を言う。
 『なんのなんの、私への礼はいらない。側近を船に送った』
 『パリヌルス、世話をかけたな、ありがとう!またゆっくり話をしよう。三日くらい当地に滞在する予定でいる。ことによったら長くなるかもだ』
 『おう、解った』
 アエネアスとイリオネスがテカリオンとともに会所に向かう、三人が会所に着く、オロンテスがテカリオン到着の報を受けて会所に待っていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  42

2019-06-12 04:33:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 次を頭の中に想い浮かべたアエネアスは、ハタッと考える。
 『なんと、俺のやっていることは、決心以来、考えてばかりいる。考えることが仕事か。あとは、考えたことを伝える。彼らがそれをカタチにする、してくれる。彼らを『活かす』ことに注力して考える。これが俺のすることである。軽んずべからずだな!』と自覚する、我に返る。
 イリオネスが話しかけてくる。
 『統領、先ほど言われた件については、これまでやってきた通りの営業対応でいいのではと考えます。当方の体制が整ってさえいれば、自信を持っての対応です』
 『そうか、お前の言う通りだな。お前の言わんとするところを理解した』
 『ドックスが取り締まる建造体制、ダックスに引き継ぐ営業の展開に自信を持っての対応で充分であると心得ます。ただし、ダックスがどうしても処理が難しいと思われる場合には、スダヌスに相談でと言う段取りにしておけばいいと考えます』
 『おう了解。お前の考えでこの件は決着!対応するのが互いに大人だ、心配に及ばないな。それで話を進める』
 二人が対応するスダヌスとの話し合いの大筋が決まる。
 スダヌスの到着を待つ、予定した時間に彼が到着する、話し合いに列する者らも出席する、昼食を共に過ごす、話し合いに入る。
 人事の紹介をする、アレテス担当の漁業関係の話がまとまる、ポリスの件については、スダヌスの息子のクリテスが参画しているだけにスダヌスは快諾に及んだ。
 アエネアスらの出航後の状態を把握する、それらを総括する、そのうえで、船舶関係の件を協議する。
 スダヌスがイリオネスに説明を求める。
 『これは広範囲の対外問題を含んでいる。どのような体制になるのか。どのような運営になるのか?を説明していただきたい』
 『船舶関係の建造と営業については、これまでと何ら変わらない。ただ、建造に関する人員が少なくなるゆえに、月々の建造艇数が、5艇であったものが、4艇、もしくは、3艇となる。それについてはーーー』 
 『ほう、それについて、何ですかな?』
 『需要と供給に問題が発生した場合には、対応できる体制を整えてあります。もちろん、スダヌス浜頭殿に相談しての処理体制となっています』
 『解りました。ポリスが形成されるだけに組織で諸事に対応責任があります。充分に配慮ください』
 『その配慮に手落ちはない。浜頭。安心していただきたい』
 アエネアスが答える。
 『承知いたしました。依頼の件、引き受けます。安心してください』
 スダヌスが自信ある口調で承諾を告げる。
 アエネアスとスダヌスの目が合う、双方が手をさしのべる、握手を交わす。
 イリオネスとも握手をする、スダヌスは、場に会同している一同と握手を交わす、話し合いが終わる。
 考えていた時間より時間がかかることなく話し合いが終結する。
 アエネアスらが組みあげた人事が効を奏したカタチで結着を見る。
 アエネアスは、スダヌスの快諾に感謝する。
 スダヌスは、自分を信頼して事の大事を託してくれるアエネアスの期待を引き受ける。
 互いに阿吽であった。