『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 15

2019-11-29 05:41:11 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 サギントス島に停留して4日目、クレタ島を出航して8日目の朝を迎える。
 空には、一点の雲も見ない澄んだ青空の朝である。
 船団は出航態勢を整えて、陽の出待機をしている。
 浜には浜頭の一行が顔をそろえている。
 昇る朝陽の第一射が帆柱にとどく。
 イリオネスが令を発する。
 『出航っ!』
 パリヌルスが声をあげる。
 『漕ぎかたはじめっ!』
 一番船が泡立てる、海面を割り始める。
 イリオネスが浜の者ら一同に向けて、手をさしあげる、振りかざす、浜の者らが喊声をあげる。
 二番船も海を割り始める、船上のアエネアスとオキテスが手を振る、これに応えて浜の者らが手を振る。
 三番船、四番船が続く、四番船上のオロンテスが深く低頭して浜頭に感謝の意を伝える、姿勢をたてて手を振りかざす、船団は湾を南西に向けて、凪ぎ状態の海を割って進む。ほどなく北への方向転換点に到達する。
 一番船が北方向へ転進する、続く船団の全船が北へと進行方向の転換を終える。
 陽の出時の大日輪が通常の太陽として見える頃合いとなる、南からの風を感じる、風が力を増してくる、舵座の者から『帆張り』のサインがパリヌルスに届く。
 パリヌルスが風の具合を計る、進行方向真ウシロの方角から風が来ている、海上状況を確かめる。
 波はうねっている、ところどころに白ウサギの飛び跳ね状態の波頭が風に飛んでいる、帆張りの決断をする。
 澄んだ大声を鋭く飛ばす。
 『全帆!帆張り!』
 後続の全船も瞬時に帆張りする、波を割るしぶきが飛ぶ、船上の者らの顔を濡らす。
 『漕ぎかたやめっ!櫂をあげ!』
 全帆に風をはらむ、100人余りを乗せている、かなりの重さの船が洋上を走る、進行方向右手に見ていたサギントス島が後方に遠ざかる。
 船団が進む海洋は、イオニア諸島とギリシア国との間の海域とは違い、行き交う船が少ない、連なる島々にとって外洋と呼べる海洋である。
 船団はサギントス島を出航してケフアリニア島に停留し、次日には、レフカス等に停留し、島がなく遥かにギリシアの陸地を望みながら長い航路を航海して、三日後にはケルキラ島手前のバクシ島に着く。
 オロンテスの要請にこたえて、翌1日をバクシ島にて過ごす、食糧補給のパン焼き作業を行う。
 彼らの三日間の航海は、曇りの日もあったがいい日和に恵まれたといってよい順調な航海であった。
 サギントス島を出てバクシ島に到る、各停留地間の航海には、1日の航走を必要とした航海である。
 その航海を三が日続行してバクシ島の停留する浜に着いたのである。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 15

2019-11-28 06:39:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 姿を見せたオロンテスにイリオネスが声をかける。
 『おう、オロンテス、どうした?何か用件があるのか?』
 『航海計画と事情は、パリヌルスから聞きました。全く現地の事情が不明なるところを行くわけです。その地が我々に好意的であるか、否かが解らないわけです。そういった事情を考えて、現在、準備している焼いたパンの量を点検しました』
 『どんな具合だ?どうしたいかを言ってくれ!』
 『都合、二日分のパンを焼いておきたいと考えています。風がおさまり次第、作業にとりかかりたいと考えています』
 『解った。やってくれ!浜頭の了解についてはこちらでやる。風のおさまりをみて作業を進めてくれ』
 『それで燃料の件ですが、手持ちが少々ありますが、不足が考えられます。その件を含めて対処かたを頼みたいのですが』
 『心得た!万事に手を尽くす』
 イリオネスがパリヌルスを呼ぶ、オロンテスの用件と事情を話す。
 『パリヌルス、そういうことだ。レガント浜頭に事情を話し対処してくれ』
 『解りました』
 パリヌルスは浜頭の許へ歩を運ぶ。
 浜頭は快く了承してくれる、用件の対処を終える。
 アエネアスとイリオネスの話し合いが、パンのことに及ぶ。
 『軍団長、二日分のパンを焼くとオロンテスが言ったな。二日分と言うとどれくらいのパンの量だ?ちょっと計算してみてくれ』
 『統領、口では簡単に二日分と言いますが、かなりの量です』
 イリオネスが計算する。
 船団の者らが食べる主食のパンの量は、一日当たり約1150個余り二日で2300個余りである。そのパンを10個余りのかまどで焼く。
 その作業量は極めて大きい、オロンテスは、焼き上げ時間の短縮を工夫して作業をこなしている。
 浜頭に対する謝礼用にスペッシャルパンも焼きあげる。
 それを持参してアエネアスとイリオネスがパリヌルスを同伴して謝礼におもむく。
 『レガント浜頭殿、あなたの島に停留して大変に世話になりました。風のおさまり待って滞在が3日にも及びました、その間、いただいた厚意に礼を言います。ありがとうございました』
 『いえいえ、どういたしまして出来ることしたまでです』
 『明ける明日は、いい旅立ちの日になりそうです。陽の出の刻に出航します。いついつまでも壮健でいられるように祈ります』
 『これはこれは、アエネアス殿、丁寧に。あなた方の航海の無事を祈ります』
 イリオネスがアエネアスに代わって口を開く。
 『浜頭からいただいた紹介状、航海図でもってケルキラ島まで、無事なる航海をします。いろいろ世話になりました。ありがとうございました。これは浜頭の厚意に届きませんが、私どもからの礼品です。受け取ってください』
 『そうですか。ありがたく頂戴します。あの旨いパンですな、ありがとう!』
 浜頭がアエネアスに向けて手を差し出す、差し出された手をガシッと握るアエネアス、続いて、イリオネス、パリヌルスが浜頭と握手を交わす。
 アエネアスらは、三日間の滞在の礼を述べて浜頭のもとを去る。
 彼らが三日間停留した浜が、明日の好日を約束するように茜に染まっていた。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 13

2019-11-27 06:16:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 風が己の力を誇示して吹きまくる、アエネアスとイリオネスが船陰に風を避けて話し合っている。
 『なあ~軍団長、この荒れは、すざまじい!海の上ではこのような嵐には、会いたくない!』
 『同感です!統領。私もそのように思います。統領、我々がクレタを出てから今日が7日目です。ここらで暦を確かめておきたいと考えています。クレタを出航して、ただただひたすらに航海に明け暮れています。記録しておきたいと考えています』
 『そうだな、軍団長。書き留めてくれるか』
 『解りました。私が書き留めます』
 イリオネスがやや大きめの木板と木炭を準備する、記録を書き留める準備をする、アエネアスと話し合いながら木板に日々の経過を書き記していく。

    3月21日 クレタ島を出航 キューテラ島沿岸洋上に停泊
    3月22日 キューテラ島沿岸洋上を出航 ペロポネソス半島西南端のピユロスに着港
    3月23日 ピユロスにて1日を過ごす スダヌス紹介のトーバル浜頭と接遇
    3月24日 ピユロスを出航 ペロポネソス半島スピンツア沿岸洋上に停泊
    3月25日 スピンツア沿岸洋上を出航 サギントス島南岸の湾に着港 レガント浜頭に接遇
    3月26日 サギントス島にて1日を過ごす 夜半より風雨強まる
    3月27日 サギントス島にて風雨の収まりを待つ

 『書き終わりました。統領、目を通してください』
 『おう、今日がクレタを出航して7日目か。海旅の序の口だな。嵐がおさまれば海路の日和となるかな?』
 『保証はできませんな!私らの淡い期待です』
 『それにしてもだな、自然の力は偉大だな。人はちっぽけな存在でしかない。この風、この嵐に手も足も出せない、ちじこまっているだけだ!』
 『全くです』
 『ところで風だが、おさまりそうにないな。若し、航海の途上でこのような風に遭遇しらばだ、背筋が凍る。海の藻屑になって、魚のエサになって終わりだな』
 『統領、そのような悲観的な話はいけません!今の我々は、希望を抱いて未来に生きようと旅の途中なのです。希望のあふれる話題を話してください』
 『おう、そうだな、悪い悪い、許せ!』
 時は午前半ばである、風は一向に衰えない、パリヌルスが顔を見せる、話し方に明るさを含ませて話しかけてくる。
 『軍団長、風が一向に衰えませんな。しかし、希望です。西方の空を見てください、明るくなってきています。もう少しで風はおさまります』
 イリオネスが西の方角の空を見る、口を開く。
 『お前の言う通りだ。西の空が明るくなってきている。いい傾向だ!』
 『明日の海路の日和が期待できます。明日、早朝の出航の準備を整えます』
 『おう、そのように準備を整えてくれ』
 アエネアスとイリオネスが西の空を眺める、目を合わせる、目を輝かせる。
 オロンテスが用件を携えて姿を見せた。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 12

2019-11-26 06:02:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一同が風雨にうたれながら顔を合わせている、顔をうつ雨滴がいたい。
 アエネアスが一同に告げる。
 『おう、おはよう。いい朝ではない!見てみろ!海は荒れて荒れまくっている、出航は、空模様、風具合、海上状況の収まりを待つ!今日は出航しない!以上だ』
 一同が統領の意向を了承する、自船のところに戻って行く。
 パリヌルスは波打ち際に起つ、海を眺める、湾の彼方の海を見る。
 クレタの海との違い感じている、海の深さだろうか?海洋のスケールの大きさだろうか?と考える。
 レガント浜頭が姿を見せる、イリオネスとパリヌルスが浜頭を迎える。
 『おう、おはよう』
 『おはようございます』
 『ため込んでいたパワーを使っての荒れだな。今日の出航は無理ですな』
 『言われる通りです。そのように意を決めています。おさまりを待ちます。浜頭、おさまりを待つ停留方よろしく願います』
 『了承するする。おさまりを待たれるがいい』
 浜頭が海の状態を確かめる、イリオネスと言葉を交わして戻って行く。
 イリオネスがパリヌルスに声をかける。
 『おう、パリヌルス、浜頭の了承も得た。模様眺めだ、まあ~、おちつけ!考えて解決できる問題ではない』
 『そうですね。この荒れ状態のおさまるのを待ちます』
 『荒れたあとは、海路の日和に恵まれるかなだな?』
 『心静かに、荒れのおさまりを待ちます』
 二人の会話が終わる、イリオネスが去っていく。
 独り波打ち際に残ったパリヌルスに吹きすさぶ風が話しかける、風の言い分に耳を傾けた。

 『おいっ!お前ら何をおびえている?ああ~ん!俺がビュ~ビュ~!波はザンブリコだ!俺が戯れる!海が踊る!思い知ったか!』
 『それがどうした?』パリヌルスが開きなおる。
 『おいっ!パリヌルス!何をビビッテいる?お前の造った船がこの荒ぶる海に耐えれると思っているのか?のぼせあがるんじゃないぜ!お前の造った船なんぞ、木っ端みじんに砕いてやるぜ!』
 風がピユ~と吹き鳴らして過ぎていく。
 『俺の遊び場はチッチャクはない!ここにとどまってはいられない!俺は多忙なのだ。もう少し楽しんだら、ここを去る!待つのだな!俺はだな、邪魔をする奴のいない海が大好きなのだ!』

 パリヌルスは、荒れまくる風の独り言を耳にした感にうたれる。
 波が足を洗っている、感じて我に返る。
 『俺は何かを忘れている?』
 吹きまくる風がパリヌルスを戒める、戒めを受けとめる。
 思い起こす、それは『謙虚』の二文字であった。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 11

2019-11-25 06:35:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船団の一同が寝について、いくばくかの時が流れる。
 パリヌルスが気にかけた風が強まってきている、かなりの強風である。
 彼は漆黒の闇の中、ざわめく波が打ち寄せる波打ち際に起つ。
 海の荒れを見透かす、闇で荒れ模様の様子が鮮明に見てとることができない。
 寝ていた者らが起きだしてくる、浜に居並ぶ、海を見つめる、彼らの表情が見えない、思い起こしているだろう不安を察する。
 顔面を雨滴が打つ、雨を伴って風が吹きつける、雨嵐が襲い来る。
 打ち寄せる波の荒れかたが暗闇ゆえに見てとれない、身の丈をこしているであろう海沖の波濤の高さを想像する。
 人の見分けもつかない、軍団長の所在が解らない、浜にいるであろう統領の所在もわからない、オキテスの所在もつかめない、パリヌルスは迷う、大声をあげようか迷う、迷っていては懸念が解決しない。
 パリヌルスは決断する、大声をあげる。
 『軍団長!』『軍団長!』と叫ぶ、声が風に飛ぶ、雨が声を消す、声が届いたらしい。
 『おうっ!ここだ!』『おうっ!ここだ!』と連呼が返る、ほど遠くないところからの声の返りである。
 パリヌルスは、声の発している箇所に近づいていく、手で触れて互いを確かめあう。
 『軍団長!強烈な嵐です!明朝の出航が危ぶまれます!』
 『こう暗くては状況が見えん!夜明けを待とう。決断は夜明けにだ!』
 『解りました』
 起きだして浜に居並ぶ者らに声をかける、闇に向かって声をあげる。
 『おう、雨風をしのいで休め!出航は夜が明けて、状況判断して決定する。以上だ!』
 パリヌルスは連呼する、行きつ戻りつして伝える、所在の見えないオキテスが了承の返事を返す、アレテスも返答してくる。
 四番船には雨風を避けて松明の灯りがある、パリヌルスが安堵して、オロンテスに趣旨を伝える。
 『お前のところはいいな!風はともかくとして雨をしのぐ屋根がある。そういうことだ。よろしくな』
 パリヌルスは用件を伝えて、真っ暗闇の浜をたどたどしく歩を運ぶ、なんとか一番船に戻る、眠ることなく夜明けを待つ。

 ようやくにして朝が明ける、暗い朝である。
 雨は止んでいる、風は、夜半の状態のままである、風は吠えている。
 イリオネスとパリヌルスは、アエネアスとオキテスのいる二番船に来る、オロンテスもアレテスも申し合わせたように姿を見せる、一同が顔を合わせる。
 アエネアスが一同に声をかける。
 『強烈極まる風だ!沖の波濤を見ろ!身の丈ぐらいの波立ちだ。おさまりを待つ。今日は出航しない!以上だ』
 イリオネスが変わって声をかける。
 『船を揚陸しておいて安堵した。洋上停泊していたらと考えると身がすくむ。この幸運を喜ぼう。以上だ』
 一同は、風のおさまりを待って、作業の段取りを申し合わせることにして散会した。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 10

2019-11-22 05:21:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスら三人に航海計画のあらましを伝える。
 水夫頭のアギオテが航海図を描いた木板5枚と浜頭が各島の浜頭あてに紹介の文言を書き記した4枚の木板を携えて姿を見せる。
 アエネアスら五人が彼を迎える、アエネアスが声をかける。
 『おう、アギオテ水夫頭殿、先ほどは航海に就いて詳しく説明してくれて、ありがとう!』
 『いえいえ、浜頭も私らもあなた方の無事なる航海を願っての上のことです。未知なる海を渡るには、その時その時の事態を正しく判断する余裕が大事です。それのあるなしが、目的地に安全に到達できるか否かに影響します。無理は絶対にいけません。航海には細心の注意をしてこそ、安全航海が達成されます。あなた方の無事なる航海を祈ります』と言って持参した航海図と紹介状のしたためられた木板を手渡す。
 受け取るアエネアス、アギオテ水夫頭に声をかける。
 『アギオテ水夫頭殿、この親切を私らは、生涯忘れることはありません。アギオテ殿が言われるように細心の注意を怠ることなく航海をしていきます。心から礼を言います。戻られたらレガント浜頭殿に私らの感謝の意を伝えてください。ありがとうございました』
 アエネアスは受け取った航海図と紹介状の木板を目の高さに持ちあげてうやうやしくいただく、それに続けてイリオネスら四人が深く低頭する。
 用件を終えて去る水夫頭のアギオテを丁寧に見送った。

 長途の航海を目指すアエネアスが次なる航海の航海図と各日ごとの到着地の浜頭あての紹介状を手にしたことで、不安をしりぞけて安心を手に入れたことで安堵した胸をなでおろす。
 イリオネスに声をかける。
 『おう。イリオネス、我々が強く強く念願した次なる航海の安心を手に入れた。これでよろしく頼む』
 『了解しました。天候、風具合、海上状況に十二分に注意して航海をしていきます』
 夕刻が迫りくるサギントス島の浜を茜に染めるであろう陽が今日はない、雲が低く空を覆っている、風具合にも不安を感じる、明朝の出航が危ぶまれる。
 パリヌルスが四人に話しかける。
 『何となく空模様があやしいですね。明朝の出航が気にかかります。それから、この航海計画の件をオロンテスに伝えておきます。彼の役務の遂行に大いに関係します』
 『おう、そうだな、オロンテスに航海の詳細を伝えてくれ』
 『それについてですが、4っ日間の航程を描いた航海図を貸してください』
 『おう!』とイリオネスが答えて、アエネアスから航海図の1枚を受け取ってパリヌルスに手渡した。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 9

2019-11-21 06:11:51 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 水夫頭のアギオテが口を開く。
 『アエネアス殿、このイオニア諸島のいちばん北のケルキラ島から西方向に航海されるとよろしいかと思われますな。このケルキラ島では目にすることはできませんが、はるか西にでっかい陸地があることは確かです。私が説明できるのは、この北のケルキラ島までの海路ですよろしいですかな。航海には、島づたいで急げば三日、急がずに行けば四日を要する海路です』と言って島づたいの航海に就いて丁寧に説明を始める。
 南から北にかけての長途に及ぶ航海を諸島の東のギリシアの領海海域を航海せずに諸島の西岸に沿って北上航海する海路を木板に描いて説明を終える。
 『私らは、主に島の東側の海を航海してギリシアに行くわけです』
 アギオテ水夫頭が言い添える。
 イリオネスが口を開く。
 『これは丁寧に説明していただいて、ありがとうございます。よく理解できました。これなら安心の航海ができると思われます』
 浜頭が話しかけてくる。
 『航海進行方向の右手の海洋はでっかいイオニア海です。空模様、風具合、海上状況を確かめて、このサギントス島を出航してください。航海の安全と無事を祈ります。のちほど、航海図と航海予定に関する各島の土地の浜頭あてに紹介状を差しあげます』
 『それはそれは、浜頭の親切、いたみいります、心から礼を言います』と言ってアエネアスとイリオネスが低頭して礼を述べる。
 イリオネスが口を開いて言う。
 『レガント浜頭殿、航海の航程は四日間でケルキラ島に到る航程での航海計画で行きます』
 『私も、その航程でいかれることを推奨します。アギオテ、お前の考えはどうだ?』
 『私も、その航程が最上の航海計画であると考えます』
 『四日航程での航海図と紹介状を準備して渡します』
 『私どもの意向を組んでいただき誠にありがとうございました。よろしく願います』とアエネアスが言って、レガント浜頭との航海計画の話し合いを終える。
 二人は話し合いを終えて停泊の浜に戻る、パリヌルスとオキテス、そして、アレテスを呼ぶ。
 イリオネスが三人に、浜頭らと話し合った航海計画の概略を話す。
 『おう、三人とも解ったな!北に向けて連なるイオニアの島々の西海岸に沿って北上航海をする。進行方向右手は水平線以外に何も見えないでっかい海洋だ。細心の注意を怠ることなく航海に努めてくれ!』
 『解りました』
 三人が唱和する。
 『なお、航海図と紹介状をもらっての航海だ。我々は迷うことなく西への航路変換点のケルキラ島に向けて航海する。いいな!』
 レガント浜頭との話し合いを終えて交わした航海要領の詳細を三人に話した。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 8

2019-11-20 06:12:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスら二人が足を運んだ浜頭の屋敷は、二人が想像した構えをはるかに超えた広壮な屋敷である。
 二人は丁重に迎えられる、客間とおぼしき部屋におちつく。
 『よう見えられた。アエネアス殿にイリオネス殿、先ほどは昼食の席に招かれ、美味なるパンを馳走になり、ありがとうございました。礼を言います。昼食の席で聞きました、イオニア海を陸地に沿って、西に向かいたいといわれましたな。水夫頭を務めているこの者が詳しく説明できます。何なりとたづねてください。しかし、へスペリアなる地に向かう海路については知らないといっています。この7ツ島といわれるイオニア諸島のいちばん北の島、ケルキラ島までについての海路ですが、それでよろしいですね』
 アエネアスが浜頭の言葉を受けて応える。
 『はい、それで結構です。よろしく願います。つきましては、話はじめにたづねておきたいことがありますがよろしいですかな』
 『何をたづねておきたいといわれるのかな?』
 『こちらの島は、ギリシアとは、いかなる関係にあるのかを教えていただければ幸いなのですが』
 『はあ~、ギリシアとの関係ですか。私らの島から北にある6つの島のウチ、オデッセウスのイタケ島以外は、ギリシアは、商い相手の島であって、ギリシアの領国ではありません』
 『そうですか。それを聞いて安堵しました。私らが4隻で船団を組んで海旅をしています。私らについて簡単に説明します』
 アエネアスは、浜頭と目を合わせる、口を開く。、
 『浜頭が知って知っていられると思いますが、私らは、ギリシアにヒョンなことから戦争を仕掛けられて消滅したトロイを脱出した民族です。私らは民族の出自の国、へスペリアの地に帰ろうと航海をしている者です』
 『そうですか、了解しました。そのように言われるとギリシアは、皆さんにとって敵性の国ですな。その敵性の国の領海を航海する危険を出来るだけ避けて航海をされたいということですな。解りました!』
 浜頭がアエネアスの顔を見つめる。
 『ギリシアは、私らの島の対岸の国です。出来るだけ危険を避けた海路をいかれるように案内します』
 『そのような配慮をいただける。それは幸いです』
 浜頭が水夫頭に声をかける。
 『おう、アギオテ、アエネアス殿の話は聞いての通りだ。それをふまえて航路のことを説明してあげてくれ』
 『はい、解りました』
 水夫頭のアギオテは、アエネアスとイリオネスと顔を合わせた。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 7

2019-11-19 06:04:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜頭を招待しての昼食会は、地味ながらも浜頭らを喜ばせる。
 彼らが口にしたオロンテススペッシャルパンを浜頭がほめそやす。
 イリオネスがパンを焼くための燃料を都合してくれた浜頭の厚意に感謝の意を述べる。
 昼食会が終わる、オロンテスの気配りで感謝用に準備したスペッシャルパンを浜頭夫人に渡す、浜頭の側近にはパンを焼くために薪を運んでくれた者らにとスぺッシャルパンを渡す。
 イリオネスが浜頭に声をかける。
 『レガント浜頭殿、実はですね、私らはへスペリアという地を目指しての航海をしているのですが、へスペリアと言う地名を聞かれたことがありますかな?』
 『耳にしたことはあります。しかし、どこにあるのかということについては定かではありませんな』
 『島をつたって、陸地に沿ってする沿岸航法によって西に向けての航海を続けて行けばその地に行けると聞いてクレタ島を出て航海をしているわけです。こちらに向かう航海途上では西の方角には海洋ばかりが開けていて、沿って進む陸地が見当たりません。どうして西へ向かえばいいかと途方にくれています。よろしければ、午後にでも話し合って教えていただければと考えています。如何でしょうか?』
 『へスペリアね、解りました。私のほうの水夫頭も同席させて、午後にあなた方の話を聞きます』
 『そうですか、教えていただける、ありがたいことです。よろしく願います』
 『昼は、皆さんの厚意に甘えて馳走になりました。ありがとうございました。イリオネス殿、たずねられた件については、私らが知っている限りのことを伝えますが、広い海洋のことです。航海についてはおおよそですが、このイオニア諸島について話します。話し合いは、私の屋敷のほうでやります。迎えの者をよこします。アエネアス殿も一緒に来てください』
 『これはこれは、親切にしていただき、いたみ入ります。よろしく願います』
 『大変、馳走になりました。これにて』とレガント浜頭が告げて、夫人と側近を従えて場を去る、アエネアスらが彼らを見送る。
 二人が顔を合わせる。
 『おう、イリオネス、うまく事を運んでくれた。ありがとう。迎えの者が来たら浜頭の屋敷へ行く』
 『解りました』
 二人は、浜頭と話し合うあらすじを話し合う。
 浜頭方の迎えの者が姿を見せる。
 『迎えに来ました。私が浜頭の屋敷へ案内します』
 『おう、ありがとう』
 アエネアスとイリオネスは、迎えの者に同道して浜頭の屋敷へ歩を運んだ。

[Aeneis's story] episode Ⅳ『建国の地へ』 To the funding of a nation 第1章 イピロスへ 6

2019-11-18 06:18:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 建国の地の探索の途に就いて5日目である。アエネアスとイリオネスが話し合う。 
 イリオネスは、アエネアスの建国に関しての強烈にして強固な意志とその望みが達成される統領としての確信を聞きとめた。
 結果に到る道程については不確かなれども、アエネアスが望みの建国の地に起つという結果が明確に見えているというアエネアスの未来を読みとった。
 イリオネスは、その自信に心が打たれる、結果が信じるに足ると感じとる、この人と生を共にする、己の命がアエネアスのためにあり、この人と事を為していくと心する、そのようにイリオネスは確信する。
 アエネアスとの話を終える、自分が乗っている船に戻る、明日を考える。
 船団の一同は浜に焚火のシマをつくる、食材を火であぶり夕食を終える、昨夜とは変わり揺れのない地上で寝をとって休んだ。

 彼らは、自分らのいるところがどこであるかについては定かではない、異国の地であろうことだけが解っている。クレタを遠く離れたサギントス島である。 
 彼らは、異国の地で朝を迎える、朝行事でサッパリする、朝食を済ませる。
 オキテスが一同に今日の作業予定を伝える。
 パリヌルスが浜頭の許へパン焼きに浜で火を使うことの折衝におもむく。
 『パリヌルスと言われましたな』
 『はい、そうです』
 『パリヌルス殿、パンを焼かれるについて、燃料はどうされるのかな?』
 『浜の灌木の枯れ枝を集めて、燃料にしたいと考えています』
 『それは大変ですな。燃料は私のほうで都合してあげます。かまどをつくられる箇所にうちの者らに運ばせます』
 『それはかたじけないです、あまえていいのですかな』
 『いいですとも、それくらいのこと、遠慮されることはないですよ』
 『では遠慮せず、言葉にあまえます』
 パリヌルスが戻ってくる、オロンテスに折衝の結果を伝える、喜ぶオロンテス、パンを焼く準備を整える、薪が運ばれrてくる、浜の一隅がパン工房となる。
 練りあがるパン生地、順次パンが焼きあがる、船団の一同の昼食には焼き立ての熱々のパンが供される、彼らにとって焼きあがったばかりのパンが何よりの馳走である。
 オロンテスは、燃料の謝礼用にスペッシャルパンを焼く、パリヌルスは、パン焼き作業の経緯をイリオネスに報告している、イリオネスは、アエネアスと話し合って浜頭らを招待して昼食会の催行を提案して決めている。
 イリオネスには、深慮遠謀がある。
 昼食会には、浜頭と浜頭の家族、身近の者らを招待する。
 午後には、浜頭に話合いを申し入れ、これから北上航海する海域についての詳細情報を入手することを考えていた。