ニケは、帆をあげず、櫂で泡立て、マリアの海域に太い航跡を引いて北西へと波を割った。北からの微風である、船足を軽いとはいえなかった。
ニケの舳先ではイリオネス、エドモン、スダヌスら三人のほほえましい談笑風景があった。エドモンが宮殿と集散所の事について語り始めた。
『クレタ島波乱の歴史でも語って聞かせよう。クノッソスの宮殿は別格だ。これは大したもんだ、別の機会に話をするとしてだ』
彼は訥々と話し始めた。
『このマリア、東の突端のザクロス、エジプトを対岸にしている南のフエストス、この三つの宮殿は、大地震で崩壊した宮殿、集散所の上に立っているのだ、街区に比べてやや小高いのは、それによるといっていい。先の宮殿、集散所はだな、今をさかのぼること600年余り昔のことになるのだが、キクラデスの島の一つ、テラ島といったかな、この島の大半がなくなるという大爆発があった。この大爆発でクレタに大地震が起きた。建物という建物が崩壊した。まあ~、クノッソスの宮殿が半壊でおさまったのは。太い木材を使って造られていたからといわれているのだわ。600年も昔なら石積みの建物であったからかもしれない、そのあたりの事情は解らん。この三つの宮殿、集散所は跡形もなく崩れてしまったのだ。このクレタの北海岸には大津波が押し寄せるは、大爆発で天からは泥砂の灰がわんさと降って来たといわれている。島の様相が一変してしまったということだ。だがだ、そのころのクレタは、クレタ人が築いた文明、交易でとてつもない力があったらしい。クレタ人は、めちゃくちゃに崩れた宮殿、集散所の上にこれまでの規模を上回るでっかい宮殿と集散所を造ったのだそれが今の宮殿であり、集散所というわけだ。どれだけの年月をかけて建てたかわからんが、とにかく再建した。それから300年後にまたまた地震だ、それから100年後、これは人災だ。宮殿には地母神が祭ってある、地震、降灰で農作物の不作が続くといった地母神へのウラミによる宮殿の炎上事件もあるが、修復に修復を重ねて今日に至っているというわけだ』
彼は、ここまで語ってひと息ついた。そして、離れ行くマリアの海岸を眺めた。
ニケの舳先ではイリオネス、エドモン、スダヌスら三人のほほえましい談笑風景があった。エドモンが宮殿と集散所の事について語り始めた。
『クレタ島波乱の歴史でも語って聞かせよう。クノッソスの宮殿は別格だ。これは大したもんだ、別の機会に話をするとしてだ』
彼は訥々と話し始めた。
『このマリア、東の突端のザクロス、エジプトを対岸にしている南のフエストス、この三つの宮殿は、大地震で崩壊した宮殿、集散所の上に立っているのだ、街区に比べてやや小高いのは、それによるといっていい。先の宮殿、集散所はだな、今をさかのぼること600年余り昔のことになるのだが、キクラデスの島の一つ、テラ島といったかな、この島の大半がなくなるという大爆発があった。この大爆発でクレタに大地震が起きた。建物という建物が崩壊した。まあ~、クノッソスの宮殿が半壊でおさまったのは。太い木材を使って造られていたからといわれているのだわ。600年も昔なら石積みの建物であったからかもしれない、そのあたりの事情は解らん。この三つの宮殿、集散所は跡形もなく崩れてしまったのだ。このクレタの北海岸には大津波が押し寄せるは、大爆発で天からは泥砂の灰がわんさと降って来たといわれている。島の様相が一変してしまったということだ。だがだ、そのころのクレタは、クレタ人が築いた文明、交易でとてつもない力があったらしい。クレタ人は、めちゃくちゃに崩れた宮殿、集散所の上にこれまでの規模を上回るでっかい宮殿と集散所を造ったのだそれが今の宮殿であり、集散所というわけだ。どれだけの年月をかけて建てたかわからんが、とにかく再建した。それから300年後にまたまた地震だ、それから100年後、これは人災だ。宮殿には地母神が祭ってある、地震、降灰で農作物の不作が続くといった地母神へのウラミによる宮殿の炎上事件もあるが、修復に修復を重ねて今日に至っているというわけだ』
彼は、ここまで語ってひと息ついた。そして、離れ行くマリアの海岸を眺めた。