『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  92

2013-08-30 07:46:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜の真ん中にささやかだが勝利の労をねぎらう宴の場が整った。場の中央あたりに3本の酒樽が間隔をとり、三角状に配置され、酒樽を中心に三つの円座の場を形作って一同が集まった。
 心づくしの肴とパンが配られている。リナウスたちが酒杯をもって戻ってくる。集まっている者たちが、いまかいまかと、開宴を待ちわびている。
 パリヌルスは、アレテスら四人を呼び寄せて指示をする。アレテスらは各場につく、酒樽のふたが割られる、ギアスは指示されたように女たちを配分した。
 場の者たちが一斉に歓声を上げる。隊長連は一同に簡単に注意を与えた。
 『おうっ、これより、勝利の労をねぎらう。ささやかだが酒を酌み交わして祝おう。そこでだが、女たちも酒宴の場に侍る。人が目をそむけるような淫らな行為は慎むのだ。いいな、判ったな』
 『ワオッ!』と場が沸いた。
 パリヌルスが場の真ん中に立った。
 『おうっ!諸君!君たちが生死をかけて闘ってくれた。我々が勝利した。その労をねぎらう。酒を酌み交わそう。いいなっ!乾杯といくぞ』
 場を見渡す、酒杯が不足している。二人か、三人にひとつである。彼はそのようなことに気をかけずに声を上げた。
 『乾杯!』
 場がどお~っと沸いた。彼らは、代わる代わる杯を手にして酒を飲んだ。女たちは、飲み干されてカラになった酒杯を手に、酒を酌みに走る。彼女らの心配りである。そのような風情が場を和ませた。彼らは肴をつまみ、パンを口に運び、昼食を楽しんだ。
 パリヌルスは、その光景を目にしながら、思考を次のステップへと進ませていた。
 彼の懸念の一つは、築砦予定地の検分を充分にしていないことであり、気がかりなのは『水』の事であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  91

2013-08-29 08:21:40 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼の目に一艘の艀が飛び込んできた。
 『今度は、何事だ?』
 近づいてくる、乗っている者が判別できる。艀が浜に乗りあげる。浜にいる者たちが寄ってくる。パリヌルスは、人垣をかき分けて、すかさず艀の上の者たちに声をかけた。
 『おう、セレストス。お前、何用だ』
 『あっ、パリヌルス隊長。統領、軍団長、オロンテスの皆さんがこれを、ここへ届けろと、、、』
 『ほっほう、酒と馳走ではないか。これはありがたい届け物ではないか。ありがたい』
 彼は周りの者たちに声をかけた。
 『おい!荷降ろしに手を貸せ』
 艀を囲んでいる者たちが即座に手伝った。
 『昼めしだぜ!酒樽もある』
 喉を鳴らしながらせっせと手伝った。
 『粋なはからいじゃないか。しかし、酒杯がない、俺たちに手で酌んで飲めというのか。はっはっは!まあ~、何でもよい、酒さえあれば重畳重畳!』
 セレストスがパリヌルス隊長に声をかけた。
 『これらをお昼にどうぞと統領の言葉です。このたびの勝利、統領以下私たち一同、心から喜び、祝っています。荷降ろしが終わりました。私どもは帰ります』
 『おう、セレストス、ありがとう。統領、軍団長に一同大感激で喜んでいた。と、よろしく伝えてくれ。また、オロンテスには、ありがとうと伝えてくれ』
 セレストスは、浜を去った。浜に居並ぶ者たちは、感謝の念を込めて、彼らを見送った。パリヌルスは、心を使ってくれている皆に、心の中で礼を言った。
 『おう、リナウス、お前、ちょうどいいとこにいる。10人ほど連れて、掘立小屋へ行って、酒杯を探して持ってくるのだ。いいか、すぐ行け』
 次いで辺りを見回す、
 『お~い、カイクス、届き物を浜の真ん中に運んで昼めしの場を作れ。充分とはいえないが、酒を酌み交わして勝利を祝おう。統領、軍団長の心使いだ。ありがたく頂戴して、飲んで昼めしとしよう』
 『判りました。結構です。一同が喜びます』
 カイクスが指示して、ささやか酒宴の場つくりにあたった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  90

2013-08-28 07:27:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 打ち合わせを終えたパリヌルスは、オキテスと向き合った。
 『おっ!オキテス、ありがとう。いいタイミングでパンを届けてくれた。本当にありがとう。まさに時を計ったように来てくれた。感謝感謝だ』
 パリヌルスは、握手するべく右手を差し伸べた。彼の気持ちを受けるオキテスは、手をしっかりと握り返した。
 『パリヌルス、ご苦労だったな。勝利したか。戦死者が四名か、相手も剛の者どもだ、まあ~、仕方のないところだろう。新しい土地に移っての弔いか、それがいい。スケジュールに組み入れておく。これで今日の見通しが立った。統領、軍団長にも事情を伝える。では、これで俺は引きあげる。お前は休め』
 オキテスは、艀に乗り島を去った。パリヌルスにも休息の時が訪れた。彼は、船に戻り、身を横たえた。仮寝の小休止といったところであった。

 どれだけの時を身を休めたであろうか。パリヌルスは、横たえた身で青空を見上げた。高く澄んでいた。彼はある程度、正確に時を知ろうと思った。
 陽を中天に認めた。充分に睡眠がとれている。意識にあいまいさがなかった。
 『どれ、行こうか』
 彼は身を起こした。おのずと目線は、島に向く。島を見ることで今日のこれからが考えられた。彼の行動にそつがない、一挙手一投足に無駄がなかった。
 『よし!、これからみんなで昼めしを食おう。酒の一樽も積んで来るのだったな』
 呟やいて、頭と首筋を平手でたたいた。
 『ジャンプするときには、身をかがめる。それが自然の動きというものだろう。くつろいで次へだ』
 独り言ちて、海を眺め、岬の方角を見た。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  89

2013-08-27 09:39:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アレテスは、パリヌルスに代わって今日の実行予定の概略を簡単に説明した。
 『、、、。説明を終わる。なお、戦死者の葬儀は、築砦予定地において執り行う。以上だ。判ったな。では、各自思い思いに休んでくれ』
 彼らは、アレテスの言ったことに喊声で答えた。
 パリヌルスは、アレテスを手招きしている。
 『おう、アレテス。時間はとらない。隊長連を集めてくれ、打ち合わせをやる。オキテスもいる、都合がいい』
 一同がそろう。パリヌルスが声を発した。
 『おう、皆、ご苦労。君らの奮闘の甲斐があって、勝利を得ることができた、心から礼を言う。ありがとう!戦死者を四人出したのは、心が痛む。負傷者には、充分に手当てをしてやってほしい。打ち合わせは今日の予定だ』
 打ち合わせの場にパンが届く、彼らも食べ始めた。一口ほうばる毎に精気を取り戻していく。『旨い、旨い!』を連発して、彼らは咀嚼していく。パリヌルスもオキテスも、その風情を目を細めて眺めた。
 『今日の予定はだな、昼過ぎまで休む。そのあと、1番船と舟艇の隊は、築砦予定地に向かう。2番船の隊は島に残る。1番船の隊は築砦予定地の整備と警備に当たる。舟艇の隊は浜に部署して、浜から移動してくる各船の者たちを築砦予定地に案内誘導する。2番船の隊は、島に残り、荼毘の後始末。大掃除をやってくれ。荼毘の後始末は、潮流の流れを見て、海へ流せ。島は、これから我々の漁業の基地となり、我々にとって、重要な役割を担う場所でもある。判ったな。以上だ。さあ~、充分とはいえないが、昼まで休んでくれ。なお、四名の遺体は、1番船で築砦予定地に運び、そこで弔う。打ち合わせを終わる』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  88

2013-08-26 08:12:56 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは口を開いた。
 『諸君っ!大変にご苦労であった。君らは、激しい闘いに勝利した。ここに勝利を宣言する!』
 喊声がわきあがった。朝のしじまを破って轟いた。
 遠い岬の上に今日の陽が姿を見せようとしている。パリヌルスはタイミングのとりかたに気を配っている。彼は背後に人の気配を感じていた。彼は言葉を継いでいく。
 『この闘いで無念の死を遂げた四名の冥福を祈り、三十数名の負傷者の諸君を心から慰める。出来うる限り早い回復を祈ってやまない。本当に君たちは、生死を問わず、よく闘ってくれた。そして、勝利を得た。その労に対して心から礼を言う。ありがとう!ありがとう!』
 集まっている者たちに朝の曙光が射しかけてくる。浜が陽の光に照らし出されていく。彼が言葉を切ったところで再び喊声が轟いた。背後に手を打つ音がする。彼は、振り向く、オキテスがいた。
 『おっ、オキテス。勝利したぞ。安心しろ!』
 『勝ったか、よかった。ご苦労であった。腹が減っただろう。朝めしのパンを届けに来たのだ』
 『おうっ!それはありがたい。何よりの勝ち祝いだ。感謝感謝』
 『皆が、お前の次の言葉を待っている。続けろ』
 パリヌルスは、向き直った。全員を見回す。
 『おいっ、皆っ、!お前ら腹の具合はどうだ?腹が減っただろう。朝めしのパンが、ここに届いた。これより、皆に配る、食べてくれ』
 一同から、やんやの喊声があがった。パンが配られていく。彼らの喜ぶ光景で沸いた。
 『これから、今日の予定を伝える。パンを食べながら聞いてくれ。朝めしが終わったら、身体を休ませてくれ。昼めしを終えれば、我々はクレタ本島の築砦予定地へと向かう。判ったか。以上だ。あとは、アレテス隊長が説明する』
 勝利宣言が終わった。一同が散る、思い思いの場所で群れて集まり、話に花を咲かせて、パンに食らいつく風景がそこにあった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  87

2013-08-23 08:21:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 迫りつつある夜明けの浜辺は、朝行事が始まろうとしている。ざわついている、パリヌルスはこの光景を目にしてチョッピリ照れた。『もう過ぎたことだ』と思いながら、彼らの方に向けて歩を進めていった。アレテスが、こちらに向かってくる。
 『隊長、おはようございます』
 『おッ、おはよう。こら!ニヤッとするな。お前も同罪じゃないか』
 『そうでしたな。彼ら、隊長の計らいに大感激です。感激の行事は終わりました。今、朝行事をさせています』
 『そうか、まあ~、よかったとしよう。ギアスに言って、女どもにも朝行事をさせろ。者どもに攻められた身体も少しはしゃきっとするだろう。朝行事が終わったら全員集合だ』
 『判りました』
 浜が明るくなってくる。陽の出が間近い、海は凪いでいた。
 『おう、ギアス。女どもにも朝行事をさせてくれ』
 総員が朝の海に身を浸して、闘いでの汚れを落とす、今日の朝行事は、丹念にやっている姿がそこにあった。
 アレテスは、彼らに大声で叫んでいる。
 『お~い、お前ら、よ~く聞け!朝行事を終えたら全員集合だ。いいな』
 耳にした者たちから歓声が返ってくる、アレテスの呼びかけは都合、三回にも及んだ。

 静かな海を浜に向かってくる1艘の艀(はしけ)が目についた。浜に立っている者、朝行事真っ最中の者、彼らの目線が艀に向けられた。
 浜に全員集合の声が飛んぶ、一同が集まってくる。彼らは、海を背に列を整えた。カイクスがパリヌルスのもとに駆け寄る。
 『隊長。全員集合完了しました。お願いします』
 『判った。ご苦労』と返して、列を整えている全員を見渡せる位置に立った。
 彼は、ゆったりと一同を見渡した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  86

2013-08-22 08:00:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 夕陽の沈みが、つるべ落としの季節である。薄明がおとづれると陽の出までの時間が短い。パリヌルスは船上に立ちあがり東の空を見ながら時を計った。
 彼は女に短く感謝の言葉をかけた。返ってきた言葉は、
 『私はよかった。貴方となら、また、身体を合わせたい』
 『そうか、いずれだ。浜へ行く、陽の出はもうすぐだ。お前らのことは、よきように考える』
 彼は、言い終えて、女のほうに向き、抱き寄せ、唇を思いっきり吸った。女は、ちょっぴりあえいだ。女の手がパリヌルスの股間をまさぐってきた。二人は、またまた、船底に横たわり、互いの身体をむさぼり合った。
 女から身を離したパリヌルスは、東の空に目を運んだ。岬の上の空が、やや明るくなりつつあるように思われる。
 『女、浜へは、海中を歩いていく。このあたりは深くはない。安心しろ。俺が飛び込む、続いて、お前も飛び込め』
 女は無言でうなずく。パリヌルスが飛び込む、女が続いた。火照った身体に海の冷たさが心地よかった。水深は彼の胸当たりである。彼は女を背負ってやった。浜までは40メートルそこそこである。残すところ10数メートルくらいのところで女を背から降ろし、声をかけた。
 『女、俺たちは、朝行事と言っている、朝めし前に海に身を浸して、身体を洗う、そして、今日一日を祈る。お前も身体を洗ってさっぱりしろ。朝めしはそのあとだ』
 二人はそれぞれ、思い思いに海に身を浸して身体を洗い、浜にあがった。あとはそれぞれの方向に歩んでいった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  85

2013-08-21 07:41:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、船上で二人きりとなった。
 『おい、女。お前ら運がいいとも悪かったとも言える。まあ~、このようになったこと、あきらめることだな』
 言葉をかけながら身を女に近づけた。彼の下半身は猛ってきていた。この半年に及び女日照りが続いていたせいでもある。身を近づける、女は身を引く。女には一抹の不安があるあるようである。
 彼は、女の腰に右手をあてがう。力を込めて引き寄せた。すかさず、女の背よりの首筋に吸い付いた。身をよじる。抵抗はそこまでであった。唇を話す、向き直りやおら女の口を吸った。女はくぐもった声を上げた。女を船底に倒した。
 彼の猛った一物は、女との間に布一枚があるだけである。布をまくれば抜き身である。女の手が伸びてきて、彼のたくましい一物を握った、女はしごいた。一物は、女の手の中でビキッと脈打って猛った。女が秘所にいざなった。
 一物は、草むらを分けて、ぬめった洞に入り込んだ。パリヌルスは、静かに腰を引いたかと思いきや力を込めて突き込む、再び、静かに腰を引く、力を込めて突き込む、女が声をあげる、のけぞる。彼はピストン運動を繰り返し、5往復ではてた。しかし、屹立状態は続く、一物を女の洞の中にいれたまま、チョンの間、動きを止めた。
 再び、ピストン運動を開始した。女は足を絡めてくる、よがりの声をあげる。腰の動きを緩慢にする、女の腰がうねってくる。パリヌルスにとって久しぶりの陶酔の時であった。
 彼は、腰を使いたくなった。女を船底に押さえつけたまま激しく突いた。女は狂わんばかりにしがみついてきた。突いた。男と女の修羅であった。交合は続く、一物は果てることなく女を突いた。
 女は突き入れられたときに快感を感じるらしい、突くたびに快感を高めていった。パリヌルスは、引いてくるときに強く快感を感じた。
 女に絶頂感が訪れた、ひときわ高い声が尾を引いた。一物に快い締まりを感じた。快感の一致の時が来たらしい、快感が背筋を走り、頭頂を突き抜けた。
 船底に格闘後の静けさが訪れた。陶酔の時が終わろうとしている、気持ちを込めた口づけで唇を吸ってやった。
 女は、じっとりと汗ばんだ身体を船底に横たえていた。パリヌルスは、久しぶりに女の味を堪能した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  84

2013-08-20 06:59:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『諸君!ご苦労』
 パリヌルスは、言葉をかけながら、激しく干戈を交わした闘争の場を見まわった。広くは感じられない広さである。燃えあがる5棟の掘立小屋を眺めた。もうすでに彼の心の中には、荼毘に付した海賊の者どもに対する感慨はかけらも残っていなかった。船上から祈った冥福でそれらの一切を消し去っていた。
 彼は、アレテス以下四人の隊長連を集めて打ち合わせに及んだ。
 『諸君ご苦労。浜がかたずいたな、グッドだ。ところで戦死者の数は?深手の一人が息を引き取りました』
 『合わせて四人です』
 彼は息を詰まらせた。ここまで言葉を交わして、彼は小声で話し始めた。
 『お前たち、どのように考えているかは、俺には察しがつかない。今からいうことを朝行事の前に終えろ。女たちの事だ。兵士たちの心が揺れている。今回だけは許す。女を人数を割り振って兵たちに与えろ。戦利として得たものと思え、ただし。野ざらしの交合はいかん、残っている掘立小屋を使ってやれ。お前たちも楽しめ。それを終えたら朝行事だ。女たちのも朝行事をさせて、さっぱりしろ。全員さっぱりした気分で陽の出を迎えよう。以上だ。俺は船に戻る』
 アレテスがパリヌルスに擦り寄り、声を細めてささやいた。
 『隊長は、どうされます?』
 『何をだ。俺はどっちでもいい』
 アレテスは、小指を立てながらパリヌルスにささやいた。
 『海賊の頭のこれらしい女を同道させます』
 アレテスは、ギアスを手で招き用件を伝えた。パリヌルスは、女を連れて船に戻った。
 隊長連は、女たちを各小屋に割り振って中に入れ、兵士たちを配分した。アレテスは、事に取り掛かる前に兵士たちにひとこと言って聞かせた。
 『これから、女を楽しむ。一人の女が多数と交わる。やさしく扱って、次に引き継いでいけ。いいな』
 アレテスは、そのように言って、取り締まる兵を各小屋に配置して、彼自身、一つの小屋の中に身を入れていった。
 女一人を兵士10人が楽しむ事になる。勝者の傲りでもあった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  83

2013-08-19 08:19:22 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 闘争を展開した浜をくまなく見て回った。作業をしている者たちをねぎらったり、注意をしたり、細かく指示もしたりした。
 天空を焦がした荼毘の炎は、まだ、おとろえてはいない。その辺りだけが真昼のように明るい。浜一帯は暗闇のままである。
 カイクスの両目が涙で潤んでいる。深手を負った兵士が息を引き取ったのである。兵士の右手がカイクスの右腕を力を込めてつかんでいた。息を引き取る間際につかんでいた手にグッと力がこもったと感じた瞬間、彼の手から力が抜けた。彼に深い闇が訪れた、再び輝く太陽を見ることがないのだ。カイクスの潤んでいた両目から涙が吹きあげた。カイクスは思いっきり彼を抱いた。はかなかった。感情がこみ上げる、涙が止まらなかった。暗闇の闘いの場における友との別れであった。あとの二人は、深手といえども致命の傷ではなかった。養生に時日はかかるだろうが生きる希望が見えていた。安堵した。
 アレテスは、見回りを終えて、再度、隊長連を集めた。各自から事情を聞き取った。
 『おう、カイクス、深手の彼はどうであった』
 『彼は、息を引き取りました』
 『そうか、それは無念だな。戦死者が四名となったか。あとの二人はどうだ?』
 『あとの二人は、深手でありながら、致命傷はまぬかれました。養生に時日はかかると思いますが、大丈夫です』
 『よし!判った。隊長の最終点検を受ける。ギアス、舟艇で迎えを頼む』
 『判った』
 パリヌルスは、船上から激しく干戈を交えた浜を眺めていた。ギアスの舟艇が近づいてくる。彼は船上から舟艇のギアスに声をかけた。
 『おう、ギアス、どうした』
 『浜が片付きました。迎えに来ました』
 『おっ、そうか、判った。行こう。全員を休ませねばな、、、』
 パリヌルスが舟艇に乗る、短く感想を口にした。
 『ギアス、歩いていける距離なのに、お前が迎えに来てくれるとは。ありがとう』
 『おう、皆、ありがとう』
 漕いでくれた者たちに礼を言って、二人は浜にあがった。