『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第11章  権謀術数  13

2008-03-31 08:02:17 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 アキレスは、いつもの朝の儀式を終えた。自軍の将兵たちに充分な休養をとらせることにした。両軍の申し合わせにより今日、明日は、昨日の激戦での戦死者を収容し、荼毘にふすことにしていた。
 アマゾン軍は、女性軍であっただけに戦死者の数は多かった。彼女たちは、悲涙に咽びながら作業を進めた。族長ペンテシレアの遺体は、昨日のうちに収容し、荼毘にふされていた。朝一番に彼女の骨を拾いトロイの王たちの墓に葬られた。
 アマゾン軍の副将格である カンテミシアは、自軍の損害の大きさに愕然とした。戦死者が1000人にも達したうえ、戦傷を負った者の数も戦死者と同数の1000人にも及び、双方の数が全兵数の2割強に達していた。カンテミシアは、隊を再編成し、ペンテシレアの復讐を心に誓って、明後日からの戦闘に備えて自軍を休ませた。カンテミシアは、戦死者たちを送る荼毘の炎を見つめて心の傷がぎしぎしと痛んだ。
 アエネアスは、戦闘に及んでの軍団の配置について考えた。中央は変えないまで
も、右翼にメムノン軍を配し、アマゾン軍を左翼に配置することにした。アエネアスも、アマゾン軍の損害の大きさに驚愕していたのである。

第11章  権謀術数  12

2008-03-29 07:28:10 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 床に就いたアキレスは、プリセイスを抱いて寝ている。アキレスは夢を見た。
 ペンテシレアが剣を振りかざして迫ってくる。アキレスは、左手に楯のみを持って防御姿勢でいた。武器は持っていない。彼女が彼の頭をめがけて、剣を振り下ろした。楯をかざして受け止めるアキレス。彼は、すかさず、右手を彼女の腰にまわして引き寄せ、地上に倒し、組み敷いた。彼女は、彼女なりに抵抗するが、アキレスは猛った。下半身の槍も猛った。槍はペンテシレアの姫どころを刺し貫いた。彼女は、その身をのけぞらせた。槍は、ぬめる姫どころを突いている。幾度となく突きまくった。エクスタシーが昇ってくる。背筋を突き抜けた。思わず歓喜の声をあげた。彼の体の下にはペンテシレアが、その美しい顔を見せて息絶えていた。
 アキレスは目を開けた。腕の中には、プリセイスが悦びをあらわにして、喘ぎうちふるえながら、アキレスにしがみついていた。

第11章  権謀術数  11

2008-03-28 07:56:22 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 ペンテシレアは、その場に空を仰いでくずおれていった。彼女の命脈は終わりを遂げ、麗しい双眸に静かに闇が訪れた。
 アキレスは、彼女が女族の軍団を率いているだけに女らしからぬ女性を想像していた。彼は戦慄した。全身がふるえ鳥肌がたった。彼女の兜をはずした。『お~っ!なんと美しい!』 目を見張るばかりの、その美しさに戦慄した。アキレスの母も美しいが、その美しさにも劣らぬペンテシレアの美貌に茫然とした。
 彼は、将アキレスとして、ペンテシレアの屍体を戦場の緑の草の上に、丁寧に横たえた。そのうえ、遺体が引き取られるまで、用心のために二人の兵をつけて、その場を去った。
 戦いは、両軍が押しも押されもされず、ただただ、敵味方、お互いが命のやりとりの果し合いの闘いを、陽射しの強くなった戦野の各所に展開していた。
 陽は、西に傾く頃、今日の闘いを終えて軍団は引き揚げていった。

第11章  権謀術数  10

2008-03-27 07:41:30 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 マカオンは、一瞬、その美麗の容貌に目を奪われた。その瞬間、勝負はついていた。族長ペンテシレアの槍に倒れた。槍は、マカオンの下腹部を深々と裂いていた。アキレスが駆け寄ったが、両目を大きく見開いて息絶えていた。アマゾンの軍団は、屍体を奪うということはしないが、戦利としての鎧、兜、武具の剥ぎ取りは行っていた。
 アキレスが目をあげた。目線の先にペンテシレアがいる、目が合った。
 『お前がアキレスか。』 と言葉を吐くや、ペンテシレアは槍を手にして身構えた。起ちあがるアキレス、その猛々しい姿を彼女の視線にさらした。二人の対峙には、鬼気迫るものがあった。間合いが狭まってくる、二人の目には、必ず相手を倒すという荒々しい気配がみなぎっていた。槍突き数合、ペンテシレアの喉もとに隙を見たアキレスは、迷わずこの箇所を槍先で裂き切った。噴き出す鮮血は、霧となり、血風はアキレスを朱に染めた。彼女の槍は、アキレスを傷つけることは無かった。

第11章  権謀術数  9

2008-03-26 07:34:50 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 アキレスの軍団の隣に、軍団医師のマカオンが指揮するネストルの軍がいた。両軍ともアマゾン族の女性軍と対峙、衝突した。両軍の将兵たちは、一種異様な心理状態で闘いに挑んだ。相手が相手だけに、突き出す槍、斬劇の剣に、闘志のにぶりが出た。だが、やらなければやられる。干戈を交えている間に、そのような相手との闘いに、慣れていくといおうか、不感となり、刀槍を交えての闘いを展開した。
 果し合いのあと、息が絶えようとしている身体をあらわにしている女性兵に覆いかぶさり闘いとは違う欲望を遂げる。そのような将兵を狙って女性兵が、その者の命を絶つ、組み敷いた女性兵の腹上で、のけぞり、天を仰いで目の光を失い、魂を去らせてこと切れていった。そのような兵が、かなりの数にのぼった。
 先陣を駆けていたマカオンは、槍を奮って、相手を倒し、返り血で染まっているアマゾン軍の族長ペンテシレアと対峙した。

第11章  権謀術数  8

2008-03-25 08:00:51 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 四月に入って三日目である。計画された戦闘の朝である。サフアイア色の空に陽が昇った。干戈を交える戦いの一日が始まった。
 戦鼓が響き、歩を進める足音が地を震わせる、将兵たちは武具をすり合わせて進む、槍の穂先が陽に煌めいて光芒が走る。鬨の声が沸きあがる、こだまする雄叫びが、怒号が耳を打つ、槍が空を裂いて飛ぶ、矢が降ってくる、石がうなりをあげてとびくる。悲鳴があがる、勝者が叫ぶ、血の霧が舞う。阿鼻叫喚の闘争の地獄絵図が、戦場の各所で展開された。
 トロイ軍側は、右翼がアマゾン軍、中央が主力のトロイ軍、そして、左翼がメムノンの軍である。これに対して連合軍側は、左翼がアキレスの軍、中央がメネラオス、ネストル、アイアースの軍、そして、右翼がオデッセウス、デオメデスの率いる軍といった配置で激しく戦闘が展開された。

第11章  権謀術数  7

2008-03-24 07:20:35 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 メムノンの率いる軍団は、戦鼓を響かせて、威風堂々の行進で、トロイ城市に入門して来た。トロイ方でも、これに呼応して、それなりの陣容を整えて城市入口に迎えた。メムノンの領国の近隣諸国の将と兵を集めて、総数15000人にも及ぶ大軍団であった。メムノンの軍団の将や兵たちは、戦争という大事を狩猟感覚で、とらえていたのではなかろうかと思われるふしがあった。
 トロイでは、20000人を超える援軍を迎えたことで安堵する反面、食糧、そして、欲求について、その接遇に苦慮した。
 アエネアスは、作戦及び陣営敷設の打ち合わせ会議を開いた。作戦実行に関して、敵情の説明、予定戦場の地勢、状況等、それに伴う作戦実行の諸点について打ち合わせをした。しかし、諸軍団の攻撃と戦闘展開の自由度を大きく認めた作戦計画であった。
 野営の陣営敷設は、城市外の東から北にかけてメムノン軍の陣を、北にアマゾン軍の陣を配置することを。予定戦場は、城市の東南から西南にかけての原野で展開されることを説明して、出席した将たちを励ました。

第11章  権謀術数  6

2008-03-22 08:56:56 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 今日の戦いは、まさに戦端を開いて間もない頃のような、両軍が互いにすくみの状態に構えての様相を呈していた。そして、三日が過ぎた。
 連合軍の兵が、風にのってくるトロイ城市からのざわめきを耳にした。トロイ市民は、今、到着した援軍を喊声をあげて歓迎していた。プリアモスをはじめアエネアスは、胸をなでおろして安堵した。明後日には、メムノンが率いる軍団もトロイに到着することになっている。今日、到着したのは、アマゾン族の一軍であった。この軍団を統率しているのは、族長であり、女王でもあるペンテシレアであった。
彼女は、7000人余りの女性兵で構成された軍団を率いてきたのである。女性兵たちには、右の乳房がない、武器を執って闘うために取り除いているのである。まさに戦う女賊軍団なのであった。
 女王ペンテシレアと軍団は、歓迎の一夜を過ごした。
 アエネアスは、戦野での交戦を急がなかった。メムノンの軍団が到着して、作戦を打ち合わせたうえ、万全を期して、連合軍との交戦に挑むことにした。

第11章  権謀術数  5

2008-03-21 07:46:08 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 トロイの戦野に戦闘再開の朝が明けていく。三月も末の頃ともなれば、原野の春は盛りである。森の木々も草花たちも、川の流れまでもが、今朝はものうげである。いつもうるさい鳥たちまでもが、ものうげにしている。
 トロイ城市から、軍団の鬨の声も、今朝は、聞こえてこない。連合軍の陣立ては終わってはいるが、進撃開始には至っていない。両軍とも相手の出方をうかがっている。軍団がすくみの状態であった。
 戦闘は、連合軍が不得意としている攻城戦となるようである。陣立ての終えた軍団が進撃を開始した。連合軍は、トロイ城壁との距離が、指呼の距離までに進んで陣を敷いた。
 両軍の野次り合いである。言葉と石と矢だけが飛び交っている。時間はのろのろと進んだ。連合軍の右翼の端で小競り合いがあるくらいである。
 陽は、西に傾いていった。

第11章  権謀術数  4

2008-03-20 08:21:36 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 トロイでは、プリアモスの呼びかけで、重臣とアエネアス、諸将が一堂に会して会議が開かれた。プリアモスから、ヘクトルの葬儀についての礼が述べられたあと、明日からの戦闘再開についての打ち合わせが行われた。アエネアスの手許には、王メムノンの率いる軍団とアマゾン族の女族軍団の援軍が近いうちに到着するとの連絡が届いていた。トロイの現状を考えて、援軍の到着を待ち、諸将と打ち合わせ、軍団の編成と戦略を決定した上で戦闘を展開する。それまでは、城市を出て戦わず、戦野における小競り合いを戦っていくと決めた。
 連合軍でも会議が開かれていた。アキレスの活躍による戦果、そして、ホメロスの吟詠会の興奮もさめやらず、好戦的な雰囲気の中で会議が進んだ。このときはまだ、オデッセウスの戦略案は完成はしていなかった。トロイの戦力が衰えてきていることは諸将の目に見えていた。と言って、連合軍の戦力が増したわけではなかった。そのような状況のとき、アキレスの戦線復帰は、非常に連合軍にとって有り難かった。アキレスとアキレスの軍団の復帰で連合軍には、戦力と戦闘意欲に余裕が出来ていた。トロイの攻略には如何ようにも対応できると、アガメムノンの腹中は楽観的であった。