『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  923

2016-11-30 09:02:03 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、パリヌルスの要請に快諾した。
 『よしっ!解った。了解!明朝、第一便でキドニアに出かける。ガリダとの交渉は任せておけ。ガリダのやっている製材作業の場に出向いて用材の物色もしてみてくる。うまくいけば、明日、帰りの便で用材もだが本人を連れて帰って来る。ドックス、戦闘艇建造用材の在庫量をしっかり調べておいてくれ』
 『オキテス、建造用材のことはお前が担当するわけだが、俺の要請は石材のことだ。衝角構造の設計はまだ出来てはいないが、石材加工をやってくれる者のことだ。この件も同時にやってくれればいいだが』
 『その件も了解した。ガリダと話を進める。それでいいな。パリヌルス、安心していい、全て当方のあつらえたようにことは運ぶ』
 『明日、俺は、ドックスと戦闘艇の構造について詳しく話をする予定でいる。衝角構造とその柱体構造の設計、その柱体を艇の根幹構造材としての戦闘艇の構造について、詳しい話をする。それでいいな』
 『おう、それでいい。戦闘艇は、艇体が新艇に比べて少しばかり狭くなって、長くなる、艇のねじれに関する対応構造についても考えなければいけない。充分に検討を尽くしてくれ』
 『おう、心得た、それについては充分に考え尽くしている。お前の想いでは、あとは何を考えればいいと思っている?』
 『艇体の深さだ。海上交戦ではいかなる事態が発生するか、それを考えたうえで、実験試作艇を造ろうではないか』
 『それについての俺の考えによる艇体の深さは、新艇の1,5倍くらいを考えている。適不適は試作艇をもって考えよう。ここはドックスの意見を聞こう、ドックス、お前どのように考える?』
 『はい、それについては、パリヌルス隊長の考えでは新艇の1.5倍くらいの深さと聞きましたが、とりあえず、衝角構造用の柱体を見たうえで1.5倍を目安に実験試作艇を造ります。この件については、私に任せていただけないでしょうか。漕ぎ座の高さ、櫂の保持部の高さのこともあります。そして、吃水のこともあります。それらを綜合して考え、艇構造の深さを決めればと考えます』
 『おう、よし!ドックス、お前の考えが解った。パリヌルス、この件はドックスに一任ということでどうだ』
 オキテスが二人の顔を見て言う。
 『おう、解った。了解!艇体側面の構造のこともある。実験試作艇の完成を待つ!』
 『パリヌルス隊長、明日、構造設計の詳細を説明して下さるわけですね。構造に関する意見交換も事細かに宜しくお願いします』
 『おう、了解!オキテス、今日の話し合い、こんなところでいいのではないかな』
 『おう、そうだな。いい頃合いになった。これにて終了しよう』
 三人は戦闘艇に関する打ち合わせを終えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  922

2016-11-29 04:40:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ドックスの言葉を聴いてオキテスが問いかける。
 『衝角構造の用材があれば、試作艇を10日以内に造りあげることは可能か?』
 『試作艇を造りあげるについての肝要なところは、衝角構造にあります。これさえ決まれば、オキテス隊長の言われる10日以内に試作艇を造りあげることが可能です。今の我々は、その技術を持っています。安心して仕事を任せてください』
 『おう、ドックス、言ってくれるじゃないか、心強い、ありがとう。パリヌルス、ドックスが心強いことを言ってくれている。衝角構造についての説明をしてくれ』
 『おう、この衝角構造の効果は、軍船のように大船ではないが、海上交戦で対手に仕掛けたときに、それなりの衝撃効果を相手方に与えなければ、当方が望んだ結果を得ることができない。戦闘艇の舳先から艇尾まで一本の柱体構造として造りあげ、その効果を大ならしめる。衝角の構造は、本来ならば金属をもって作るべきなのだが、金属にかわって石材をもって加工し、これを装備する。柱体は、縦、横1キュビトの柱体構造とする。この柱体構造をもって建造する戦闘艇は、他に類を見ない頑丈な艇体となり、艇の建造工期の短縮にも効果ありと考えている』
 パリヌルスは、ここで話を切って二人の目をじい~っと見つめた。
 『俺がここで懸念していることは、この用材が調達可能であるか否かである。明日にでもガリダ頭領と話し合いたいと考えている』
 これを聞いて、オキテスが応える。
 『おう、パリヌルス、よ~く解った。お前の構想が解り、充分に理解できた。お前の考える柱体を戦闘艇の船底に装備する、戦闘艇の安定走行にも利するし、櫂舵を艇の左右両舷に取り付ける、そのわけも理解した。用材の調達ありきだな。ガリダのところへ、こちらから出向くか、ガリダをこちらへ呼ぶかだな』
 『その策が講じられるか?オキテス考えてみてくれ。ドックス、訊ねるが、試作艇一艇を建造する用材の手持ちがあるかどうかだが、どうだ。帆柱用の用材はなくてもいい、試作艇に帆柱を立てなくてもいいと考えている。また、衝角の石材も試作艇の柱体には装備しないで造る』
 『それでしたら、衝角構造の柱体の用材が準備できれば、四日くらいで造れます』
 『おう、そうか、それでいい!それでいこう、頼んだぞ』
 『オキテス、聞いての通りだ。明日ガリダ方へ出向いてくれないか』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  921

2016-11-28 09:36:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスがおもむろに口を開き、慎重な言葉使いで考えを述べた。
 『パリヌルス、ドックスも聞いてくれ。戦闘艇二艇の建造は、工期を短縮してでもやり遂げる。できるだけ早急に実験試作艇を造り、状況を把握し、結論を出して、設計の上、戦闘艇の建造にかかる。そのようにしようと思うが』
 『やっぱりな、実験試作艇がないと戦闘艇としての肝心かなめの仕様を決定できないということだな。解った。海上において交戦したは、こちらがひっくりかえったでは様にならん。長いとは言えない工期だが、試作艇を造り、試乗し、検証して、戦闘艇の建造にかかろう。それがこの際における最適の手順と考える。オキテスにドックス、考えてくれ』
 『パリヌルス隊長、オキテス隊長とも検討しますが、50日もあります。この工期で戦闘艇二艇の建造は出来ます』
 パリヌルスは、オキテスに話しかけた。
 『オキテス、この戦闘艇の構想のかなめの構想は衝角構造であり、その衝角構造は、艇体全体のかなめの構造でもある。今日これから、検討の上決定する段取りは、艇体の全幅を決め、実験試作艇の建造に結論を出し、即、建造用材の手配について、段取りを話し合おう』
 『おう、解った。その順序で答えを出していこう。建造するということは、すでに決定した事項だ。いかにして遂行するか、万難を排して、何としてもやらなければならない。それがこの件を担当する我らの『使命』だ。お前の言った順序は納得した。それで、即、検討に入ろう』
 三人の目は、オキテスの述べた『使命』を認識して、心を燃やし、目は輝きを放った。
 オキテスが口を開く、
 『懸題の一番目である戦闘艇の全幅の件について、パリヌルス、説明を頼む』
 『構想の根本にあったのは、走行速度の速さである。新艇より 2キュビト強、幅を狭くした。仕様書きに書き記した 7キュビトでは帆柱構造を考えたら、狭すぎると考えられる。といって、新艇に採用した9キュビト強の艇幅では広すぎると考えられる』
 オキテスが発言する。
 『実験試作艇は全幅を8キュビトで仕あげ、結果を見る。ドックス、お前の考えは?』
 『試作艇は全幅を8キュビトで造り、その結果を見る。賛成です。それでいきましょう』
 試作艇の全幅が決まった。
 『ドックス、試作艇の建造に10日以上かかるということはないな?』
 『試作艇を造るのに製作日数が短くなっても長くなることはありません。問題は衝角構造にあります。パリヌルス隊長の構想にある衝角の構造が、今、我らが保有している用材で事足りない気がしています』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  920

2016-11-25 09:02:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おっ!そうだ。ドックス、お前、このあと作業の方はどのようになっている?手がすいているかどうかということだ。今日これから、三人で俺の構想した戦闘艇の仕様諸元を図面に基づいて検討して、改めて構造設計をしたうえで関係者一同が承認して建造に取り掛かる。また、戦闘艇の納入までには日数が40日くらいと長くはない。そのようなわけで戦闘艇の建造にはしっかりした工程表に基づいて、作業を進めてこれを造りあげる。その打ち合わせをやる』
 『パリヌルス隊長。言われることがよく解りました。現在作業している新艇は、ほぼ完成しています。現場における監督はせずともいい状態です』
 『よしっ!解った。これから、今、言った戦闘艇の仕様諸元の確定と構造設計をやる。また、工程表の作成、競技大会の日までの段取りを決める。いいな』
 『解りました。私は、現場に指示をして、すぐ戻ります』
 ドックスは、新艇建造の現場向かう、彼は新艇の最終仕あげの指示を終えて、オキテスのところへ戻ってきた。
 『おう、ドックス来たか。パリヌルス始めよう。ドックス、大きめの木板を10枚くらい準備してくれ』
 『おう、これでよい。始めてくれ』
 パリヌルスは、仕様諸元を書いた木板と艇体を描いた木板をオキテスとドックスの前におく、見入るオキテスとドックス、オキテスが口を開いた。
 『ドックス、戦闘艇の仕様諸元を艇体の図面と対照して丹念に検討する、頭の中に描く戦闘艇の大きさは、新艇の大きさと比べて想像してくれ。特に検討を要する箇所は、パリヌルス、どこだ。懸念している箇所を言ってくれ』
 『おう、その箇所か。戦闘艇の全幅、艇構造の深さだ。それから、俺が気にしているのは、艇の重さだ。衝角構造で戦闘艇の重量がかなり重くなることが考えられる。また、衝角の構造にもよるのだが艇を海に浮かべたときのバランスを気にしている。それらは艇の吃水にかかわってくる。今のところ懸念しているのは、今、言った諸点だ』
 『ドックス、いま、パリヌルスの言った、彼の懸念している箇所だが、艇構造の全幅以外については全く見当もつかないくらいに難しい問題である。お前の船造りの経験から考えて見当をつけることができるか?』
 『そうですね。これは難しい問題です。ご両人、これは実験用の試作艇を必要とします。それでないと、乗り組んだ者たちの命の保証が出来ません。また、戦闘艇として使用できるか否にも関係することです』
 ドックスのこの言葉を聴いてオキテスは、パリヌルスに声をかけた。
 『パリヌルス、これは思案のしどころだぜ。そうは思わないか。俺の想い、考えたところを言わせてもらう』
 オキテスはパリヌルスと目を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  919

2016-11-24 09:49:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、戻ってきたパリヌルスと顔を合わせた。
 『おう、パリヌルス、早かったな』
 『おう、選任については責任担当に任せてきた。俺があれこれ言う必要はない。お前、昼めしは?』
 『一緒にどうだ』
 『おう、いいね。ドックスも呼んで、三人で昼をしよう』
 『おう、それがいい。戦闘艇の件はあいつの耳には入っていないはずだ。これを聞いたらドックスはたまげるぜ』 三人は建造の場の一隅で昼を共にする、戦闘艇のことを話題にする、建造については触れることなく話題として話し合った。
 『ところで、ドックス、お前に戦闘艇を造れと言ったら、どんな戦闘艇を造る?思いついたところを話してみろ』
 『オキテス隊長、そのような小型の戦闘艇を必要としているのですかね。世の中にはいろいろな需要があるのですな』
 『そうだな、クレタは周りの海が広い、キクラデス辺りになると島の存在が込み合っているといっていい。そういったところでは、船の場合は、クレタとは異なった需要が発生する。そんな需要にこたえるには、お前だったらどんな戦闘艇を造るかだ。思いついたところを話してみろ』
 ドックスは、『そうですなーーー』と言って、思案表情を浮かべ首を傾げた。
 『ドックス、人間という生き物はだな。食べ物に噛みついて口を動かす、咀嚼する。その調子がいろいろのことを思い起こさせる。その中に『お~お、これは、いい思いつきだ』と言える発想もあれば『まあ~、そんなものか』と思う発想もある。口を動かす、物を噛む、腹に収める。この律調がとんでもない、いい発想を生むこともあるということだ。こうやって三人でめしを食べていて、いい発想が出てこないか』
 『隊長、突然、発想しろと言われても、おいそれと出てくるわけがないですよ。日頃、何かを課題として考える、いい発想が浮かぶ、頭の中の引き出しに入れて大事にしまっておく、その引き出しからそのものを出したり入れたりしていないと『はい、それは』と言って取り出せないですよ』
 『ほう、そうか。パリヌルス、あの件をドックスに話してやってくれないか』
 『ドックス、俺の話を聞くか。驚くなよ!いま、オキテスが話題にした戦闘艇を建造する!二艇だ!』
 『ええ~っ!そうなんですか』
 ドックスが驚きの声をあげた。その声は大きかった、建造の場にいる者たちがドックスの方に振り向いた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  918

2016-11-23 09:20:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『はい、私の考えですか。次のように考えています』と言って改まった。
 『委員長と副長は、この場で決めて任命します。そのうえで各部から2名づつ委員を選任する。各船単位でよろしいかと考えます。この委員が部を代表して各種目に出場する選手を統括する。委員長と副長は各委員を統括して大会を運営する。このようにしてはどうでしょうか』
 『おう、それでいい!オロンテスの言うようにやる!一同の考えはどうかな、異論がないようであればこの委員会を組織して大会を運営することに決定する。大会を催行する日が五日後である、五日なんて、すぐに経ってしまう。委員長と副長を決める。統領、腹案があるようでしたら聞かせてください』
 『俺の腹案か、委員長には武闘訓練の場の管理をしているリナウスが適任であると考える。それでどうだ』
 『適任です。リナウスで決まりです。副長についてはリナウスに決めさせましょう。この件については、この会議を終えたら私が出向いて決めてきます。ことを進めるあれこれについても、その要領、段取り等詳しく打ち合わせてきます。今日の夕刻には、彼らの打ち合わせ会議ができるように段取りする。委員の選任については君ら三人の担当だ。委員を選任して今日の業務終了後、建造の場の広場に集合するようにしてくれ。打ち合わせ会議をやる。これについては、俺が相談役として、大会の運営に責任を持つ。以上だ』
 『軍団長、委員選任については?』
 『おう、その件か。小島の方と第二船はパリヌルス、第三船、第四船はオキテス、第五船とパン工房はオロンテス、君らが担当して委員を選任するのだ』
 『解りました』
 『統領、会議にかける案件がありますか?』
 『俺の方にはない』
 『では、会議をこれで終える。統領と俺は、建造の場にいる。連絡事項等のある時は建造の場に来てくれ。いい頃合いだ。昼めし時までに少々間がある、これにて会議を終える』
 彼らは、会議の場を解き、それぞれに会議の場で決めた競技大会運営の委員選任の件について各部の責任担当との話し合いに向かった。
 パリヌルスは、小島のアレテスのところへと出向く、競技大会の件を打ち合わせる。
 『おう、アレテス、そういうことだ。今日の業務を終えたら選任した委員を建造の場の広場に来させてくれ』
 『了解いたしました。競技大会か、久しぶりですね。優勝は我々がいただきます』
 『おう、いいだろう!頑張れ!』
 オキテスもオロンテスも要領よく用件を終えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  917

2016-11-22 05:16:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスがパリヌルスの構想の何故を聞いて口を開いた。
 『パリヌルス、お前、なかなか説明がうまい。感じ入った。よく解った、理解した。よくそこまで構想した。戦闘艇の構想として充分と言えるところまで考えたな。統領、どう思われます?』
 イリオネスはアヱネアスに問いかける。
 『おう、軍団長、お前の言うとおりだ。よくそこまで考えてくれた。通常の思考を超えたところまで考えている。軍団長、あとのことを言い渡しておいてくれ』
 『はい、了解しました』
 イリオネスは、パリヌルスとオキテスの二人と目を合わせる。
 『パリヌルスにオキテス、二人に申し渡しておきたい。戦闘艇の建造にかかれるように仕様諸元を決めて、直ちに構造設計を終えること、その打ち合わせを済ませて、建造の用材の手配に取り掛かってくれ。そして、建造の準備を整えてくれ。同時進行だ』
 イリオネスは、目線鋭く指示を発した。
 『解りました』
 二人はしっかりした声音で答えを返す。
 『よしっ!これで戦闘艇の件は落着だ。次の件は、体技競技大会である。一同、考えてくれたか?これについては統領と話し合ったことを一同に伝える。この大会の催行は、五日後だ。戦闘艇の建造開始前に催行してはどうかということになっている。くどいようだが、それまでに戦闘艇建造の準備を終えて、競技大会を句読点として、建造を開始する。解ったな。建造に携わる二人に言っておく、大まかでいいから今度は、戦闘艇建造工程表をつくって作業を進めていくように計ってくれ。我々も何かと手伝いたい、そのように考えている』
 『解りました』
 『競技大会の件に戻る。体技競技大会の種目、そして、その運営についてどのように運ぶかを決めておきたい。どのようにするかを言ってくれ』
 この言葉を聴いて、パリヌルスら三人は、目を合わせて考えた。オロンテスが口を開く。
 『軍団長、競技大会、これは結構大きな事です。ここにいる五人で仕切ってやるということはできないことです。これには、委員会をつくって、計画、運営、そして、表彰、食事会までの一切を仕切らせてはどうかと考えますが』
 『おう、それはいい考えだ。それでやろう』
 オキテスが賛同する。イリオネスが賛意を示す。
 『おう、その委員会をつくって、競技大会の一切を任せて催行する。いいやりかただ。一同に異論はないか。異論がないようであればその方法でやる。決定する』
 イリオネスは、一同を見渡す、話し続ける。
 『オロンテス、委員会を組みあげる。どのようにやるか、お前に考えがあるようなら言ってみてくれ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  916

2016-11-21 07:13:50 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『戦闘艇の仕様諸元は、新艇に比べて説明すると理解しやすいと考えられるのでそのようにして説明してまいります。艇体の長さですが、漕ぎ座を20座から24座と予備に2座を儲けています。漕力を増やして早い航足を目指しています。艇体の構造も衝角構造を設けることにより、2割くらいから3割弱くらい重くなると考えています。そのようなわけで艇体も深い構造となり、吃水も少々深くなると予想しています』
 オキテスが口を開く。
 『パリヌルス、仕様諸元の説明が丁寧で解りやすい。戦闘艇は新艇に比べて使用目的が海上における戦闘ということで明らかになっている。想像される戦闘がこうであるからこのような船にしたと簡単でいいから説明してくれればありがたい。それを聞けば、このような手段、このような方法もあると提案することができる。と俺は考えるがどうであろう』
 『オキテス、お前の言いたいことは解る。それについては、このあとに説明する。まあ~、これは俺が考えた構想であって、決定した構造仕様ではない。聞くだけ聞いてくれればいい。付加施工の詳細については、まだ考えてはいない状況である。オキテス、そして、一同の皆さんも提案を遠慮なく言っていただきたい』
 『おう、解った。構想は遠謀をして深慮でやってくれている。お前の心情が充分に理解できる』
 『おう、オキテス、言ってくれるな、ありがとう』
 二人は、互いに微笑みを交わした。建造チームのトップに立つ二人のほほえましい雰囲気である。
 『では、深慮遠謀ではなく、遠謀深慮の構想について話します』
 パリヌルスは、息を整え姿勢を正した。
 『戦闘艇は、海上交戦時において、戦術戦略に敵方の船を破壊し、航行不能にする交戦目的の遂行に軍船の持っている構造の衝角構造を有していることです。この衝角構造の衝撃力を増大化し効果あらしめるために艇体を重くした構造としている。いや、建造した結果に重くなったともいえるところがあります。戦闘艇の運航航速を速めるために漕ぎ座の増加を24~26座に増やしています。また、航速が出やすいように艇体を少し狭めている、艇の幅を7キュビトとしていますが、走行の安定性上その幅が最適であるか否かについては全く不明です。艇の構造上、安定走行状態を得るために艇の重心を下方に下げる構造を施してはいますが不安材料の一つです。また使用する櫂の長さも運動半径を大きくするために1キュビトは長くしようと考えています。衝角の先端構造については金属で造るか、石構造とするか、後期関係上、思案中です。なお、図面には描いてはいませんが、防御楯構造の付加についても思考中です。理解いただけましたでしょうか』と言って、パリヌルスは一同と目を合わせた。
 『一件、言い忘れていました、櫂舵の件ですが、櫂舵は左右の両舷に設けます。大体のところですが、以上です』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  915

2016-11-18 04:50:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『よし、順次訊ねていく。テカリオンが今度こちらへ来るのが、小麦の納入の件があるゆえに50日後ということになっている。オキテス、50日の工期で戦闘艇二艇の建造が可能か?お前、どのように考える?』
 『戦闘艇二艇の建造について、パリヌルスからは、その構造詳細は聞いていませんが、試験艇の製作同時進行を考えて不可であるとは考えてはいません。可能です。心配無用です。戦闘艇の建造をやりましょう』
 オキテスは言い切った。
 『この工期で建造は出来るということだな。解った。次は、パリヌルスに聞く。統領からお前が描いた船体図を預かっている。予備はあるのか?』
 『はい、いま、軍団長の手元にある船体図と私の持っている船体図の2枚です。今日、会議を終えたらさっそく船体図を作成します。仕様書きは、一同の分をと思い書きあげて持参しています。これです』
 パリヌルスは、仕様諸元を書き記した木板を一同に手渡した。
 『お~お、これか。詳しく書いてあるな。それでは、パリヌルス、戦闘艇の構想と仕様書きについて説明してれ』
 『解りました』と答えて、パリヌルスは姿勢を正した。
 『では、戦闘艇について、どう構想したかについて説明します。戦闘艇と銘打って船を造るからには、船の使用目的がはっきりしているわけです。この船を造るからには、その目的に基づいて構想しました。海上における戦闘を想像して考えをまとめたわけです。戦術として負けることのない船、そして、その戦略を実現できる構造の船とすることを考えたわけです。海上における戦闘をイメージして、負けない船が必ず勝てる船ではないことにスタンスして、船が持つ能力を数値化して構想した船が皆さんに渡した仕様諸元の船です。戦闘において勝てるを『5』負けるを『5』ではなく、負けないを『6』勝てるを『7』として船に能力の付加を考えて戦闘艇の構造を考えたわけです。構想した船の付加構造実現の可否を別として、建造の工程を考え、付加構造については、建造途上において構造を施していって、船を仕上げてはと考えています。ここまでの説明に何か質問があるようでしたら聞いてください』
 パリヌルスは一同と目を合わせた。

 パリヌルスが構想した戦闘艇の仕様諸元は次のようなものであった。(1キュビトは45センチメートル)
   *戦闘艇の仕様諸元*
  戦闘艇  全長 47キュビト   全幅  7キュビト   艇の深さ   未定
       吃水  未定      乗員数  35人
       帆柱数 2本      帆柱高さ 未定     帆枚数    4枚
       漕ぎ座数 左舷 12座 右舷 12座      櫂舵 左舷 1  右舷 1
       櫂長さ 9キュビト又は10キュビト 

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  914

2016-11-17 05:01:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 浜は朝行事でざわついている、交わす言葉に元気がある、今日を生きるという気概があった。
 アヱネアスがユールスを連れてきている、イリオネス、パリヌルス、オキテスといった面々の顔がある、ドックスが建造の場の者たちと海に身を浸している、海の水が彼らの覇気で泡立つ風景がそこにあった。
 イリオネスが海から上がって浜に立っている、オキテスが来る、ヘルメスを送り出したオロンテスがやって来る、パリヌルスが頭をかしげながらイリオネスの傍らに立った。
 『おはようございます』
 『おう、おはよう。お前ら、背に荷物といった感じだな、シャキリしろ!体にへばりついているベストを脱がせてやりたいがそうはいかん。一艘奮励努力せよだ。いいな、今日の会議だが朝めしを終えたらすぐやる、場所は俺の宿舎だ。午前中に終える。確かな一歩を踏み出すには覇気がいる。ただ踏み出すだけではだめなのだ。いいな』
 『判りました』
 彼らは唱和して場を解いた。
 朝めしを終えた彼らがイリオネスの宿舎に集まってくる。
 一同が席に就く、アヱネアスが立つ、口を開く。
 『おう、諸君、おはよう。この三日間ご苦労であった。予定していた仕事を終えた。昨日も言ったようにやるべき仕事の道半ばだ。答えがどう出るかではない、目標を達成してこそ成果と言える。解るな。完遂せよ!完遂、この一語あるのみだ。軍団長、会議を開始してくれ』
 『では、諸君、会議を始める。懸案の議題は、申し渡してあるように二件である。戦闘艇建造の件、してもう一件は体技競技大会の件である。まず、戦闘艇の件だが君らの意向を問う。やるかやらないかである。やって然るべきと考えている者は手を挙げてくれ』
 イリオネスは、鋭い目線で一同と目を合わせた。一同は間をおかずに手を挙げる、アヱネアスも加えて全員挙手である。一同の意思が確認される。イリオネスが言葉を吐く。
 『この件について、その戦闘艇なるものの構想、長いとは言えない工期に建造完了の見通しについて訊ねる。この件を遂行するにあたって、建造の一切をオキテス隊長に担当してもらいたい。統領の指示があり命令と心得てもらいたい。オキテス了解してくれるな』
 『はい、解りました。了解いたします』
 『次、戦闘艇の構想及び構造設計に関してはパリヌルスが担当する。パリヌルス了解しているな』
 『はい、了解しています』