オキテスとオロンテス、ガリダ頭領とハニタスらの一行は、集散所の一室に落ち着いた。
ガリダが口を開く。
『オキテス殿、いい試乗会でしたな。ハニタス殿、貴方はどう見ておられるかな?』
『試乗会は、いい催しでしたな。あのようなことは誰でもやれるということではありませんな。私らがやろうとしていることの不明点を知ることができる。そういった点でもいい催しでした。そのように思っています。オキテス殿、いい催しでした』
『私らが納めた用材で、あのようないい船が造られる。私として誇りに感じる』
『船舶の試乗会とは前代未聞の催しです。オキテス殿、このあともやられるのですかな?』
『そうです、このあと、三、四回は催行しようと考えています』
『それはそれは、私らもめぼしい客を試乗会に招きたい、そのように致します』
『オキテス殿、あと2回ぐらいは、乗ってみたい。あの壮快な走りが応えられない。洋上を駆ける、そんな思いの楽しさであった』
『ガリダ殿、判りました。催行が決まり次第、その都度連絡いたします』
『おう、頼む!』
ガリダがハニタスに声をかけた。
『ハニタス殿、本題の話に入ろうや』
『ガリダ殿、私らが申し入れたこと考えてくれましたか?』
『おう、考えた。脳漿を搾って考えた。今朝、オキテス殿に俺の考えを話した。このあとの話は、敬称を略して話を進めようや、かたぐるしい』
『おう、それでいい』
オキテスもハニタスも承諾した。
ガリダが話し始めた。
『ハニタス、集散所がやっている商いだが、君らが紳士的で公正であることは承知している。オキテスともよく話をした。俺としてはだな、乗り気かと問われると、そうではない気持ちがある。だがだ、ハニタス、この際、集散所に仲介の労をとってもらうことに決めた。当事者だけでもいいのだが、俺とオキテス側、そして、集散所の三者でやることにした。オキテス、ハニタス、これが俺の結論だ。そういうことだ。いいか、ハニタス、君の申し入れを承諾する。以上だ』
『ここは敬称をつける。ガリダ頭領殿、ありがとう。集散所として、この仲介の労をとらせてもらう。オキテス殿、承知されたい。いいですかな』
『了解しました。宜しく頼みます』
ハニタスは、テミトスに目で合図を送った。
酒と酒杯が会同している一同に配られる。一同が立ちあがる、各自の杯に酒が満たされる、ハニタスが口を開く。
『話し合いがまとまりました。杯の酒を飲み干されたい』
ガリダが凛とした声をあげる。
『乾杯!』
一同が杯の酒を飲み干す、拍手が起きた。
ガリダ、オキテス、ハニタスの三人は、互いの手を固く握り合った。三者の話は決着した。
事は、明日の価格決め第一回会合に向けて動き出した。