『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦   4

2013-04-30 08:59:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『いやあ~、キドニアの街は、地元産物の集散地らしく、なかなか、にぎにぎしい街でした。その産物の集散をするらしい建物ですが、一見、宮殿風に造られ広い敷地でした』
 『ほっほう、なるほどな。俺はその町を海上から眺めたというわけか』
 イリオネスはうなずいた。五人の朝食は、アレテスの談義で終わった。
 『よしっ、アレテス、お前の報告を聞く』
 アレテスは、二人連れでたどり歩いた地域の事について報告に及んだ。木板の図面にもしるしを書き入れ報告した。イリオネスは、森林の事、そして、最後に通過した無人の、ソリタンとの遭遇等について、アレテスから念入りに聞き取った。アレテスは、キドニアの街の様子についても感じたままを詳しく話した。
 『そうか、よく判った。四人ともご苦労であった。今日は日常の業務をこなしてくれ。ところで、アレテス、リナウス、山賊の類についてはどうであった?』
 『私の歩いた地域では、その類の賊はいないような感じでした』
 『アレテス、お前のほうはどうであった?』
 『私のほうは、無人のの事ですが、山賊ではなく海賊ではないかと思われるふしがあります。あのが無人となった原因は
そうではないかと。ソリタンの素性は今のところ不明ですが、そのあたりを念入りに質す必要があります』
 『そうだな、アレテス』
 イリオネスはうなずいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦   3

2013-04-29 07:17:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、アレテス。いま、リナウスの報告を聞き終わったところだ。まあ~、めしにしようや。腹が減っている。お前らもよ~く考えてみろ、朝起きてだな、夜更けて寝るまでに3回、腹にものを入れる。起きている時間と寝ている時間は同じくらいの長さだ。まさに断食状態で朝を迎えるわけだ。寝ていても腹が減る。空腹を感じて当り前だ、そういうわけだ。理屈を言ったな。食おう食おう。ところで奴のめしは、どうした?』
 『心配いりません。監視している者と一緒に食べているはずです』
 『そうか、よしっ』
 五人は笑みを交わしながら焼けたばかりのパンをほおばった。
 『おう、お前ら、食べながら語れる昨日のことなどを話してくれ』
 アレテスがとつとつと話し始めた。
 『私が通過した集落は7つぐらいですが、みんな、小さなでした。戸数が20戸ぐらいの小さな集落が点在する地域でした。最後に調査した海岸に近い集落は人が住んでいない有様です。ホコリなどのたまり具合から見て、人がいなくなって一年以上たっていますね。その集落は、海岸にほど近かくの小高いところにあり、指呼の視野の中に小島の見えるところでした。見渡す湾の海岸線が結構長い、まあ~、あの小島はその湾の『ヘソ』に見えましたね。その集落のひとつの小屋の中で奴を見つけたようなわけです。そんなこんなで調査を終えて、ほどなく着いたところがキドニアの街でした。そこをうろうろしていたのが日没の頃、俺らが浜に帰着したのが夜更けの頃というわけです』
 アレテスは、行旅のもようを話した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦   2

2013-04-26 06:57:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 今日も天候に荒れはない。浜辺の一角に朝食を食べながら報告を受ける場を設けた。彼は従卒の一人にアレテスら四人、いや五人を呼びにむかわせた。ほどなく場に集まった。彼はアレテスにささやいた。
 『俺が奴の人相風体を一見してからだが、だれか監視人をつけて奴をこの場から外すのだ。名は何という、聞いたのか』
 『判りました。奴の名はソリタンと言うそうです』
 『判った』
 アレテスは、ソリタンをイリオネスに引き合わせた。
 『お前、名は何と?』
 『はい、ソリタンといいます』
 イリオネスは、その男をじいっと見つめて人品骨柄を確かめた。そして、アレテスに指示通りにするようにと言いつけた。
 『リナウス、昨日は大変ご苦労であった。状況はどうであった』
 イリオネスは、クリテスに略図を書かせた木板をリナウスに示し、歩いた順路を書き込ませた。
 『歩いた順路は大体、このようです。集落はこことこのあたりの3か所、足を踏み入れた森は、こことここそれとここです。こことここの森は若木が多く、木の切り株が目立つ有様です。この森はあまり手がついていないようです。3つの集落は、どの集落も家屋と小屋を合わせて30棟から40棟です』
 リナウスはイリオネスの手にしている木板の図にたどたどしいながらも丸印を書き込みながら説明した。
 用件を済ませたアレテスが戻ってきた。
 『おっ、リナウス、報告、終わったのか』
 『おう、今、終わったところだ』
 『そうか、では、俺の番だな』
 アレテスは心持ち姿勢を正した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章   築砦   1

2013-04-25 08:26:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、砂地を歩んで、そして、海へと向かっている。全員は、目覚めたばかりである、朝行事に出向く者の姿を見受けない。
 彼は、小走りに駆けた。波打ち際を思い切りの力で蹴った。勢いをつけて海に飛び込んだ。飛沫があがった。彼がアサイチに感じた快感の一瞬であった。季節は冬の始まりである、海は冬を感じさせない水の温かさであった。しかし、ここの浜では海から昇る朝陽を見ることができない。彼は心の中では、あの感動がほしいと願っていたことである。
 彼は海に身を浸して、腕をひとこすりする、顔を洗う、ながらの思考は、今日やることの予定と段取り、思考の焦点を丹念に考えた。打ち合わせに居並ぶ連中の顔を浮かべながら話の推移を組み立てた。
 『これでいい!』段取りの考えが整って、朝の海の感触に心身ともに浸し、身体全体を洗って朝行事を終えた。
 『よしっ!これでいい、一瀉千里だ。踏み破れ千山満岳だ。腹が減った、断食を破る!』
 彼は、海から上がった。アヱネアスがユールスの手を引いて向かってくる、数歩遅れてアンキセスとアカテスが歩んでくる。
 『統領、おはようございます。ユールスおはよう』
 『おっ、おはよう』『おはようございます』
 親子がハモッて、返事を返してきた。
 『イリオネス、調査に出ていた四人、無事、帰ってきたか?』
 『え~え、無事帰着しました。報告は朝一に聞くことになっています』
 『そうか、西の向かって出かけたアレテスの報告を念入りに聞き取ってくれ。場合によっては、今日、再度、出向かさせろ』
 『判りました。そのように計らいます』
 アヱネアスは、朝行事に向かう、イリオネスは、アレテスら四人とともにする朝食の場へと足を向けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第6章   クレタ  82

2013-04-24 07:48:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らが上陸したクレタの地の天候はエノスに比べて、やや落ち着いた傾向であった。

 古代の者たち、彼らは、自分たちの生きているこの自然をどのように理解していてだろうか。私はペンを走らせながら、ふと思い考える。第一の疑問はなんであったろうかと。単純に思い浮かぶのはこれではないだろうかと考える。『朝はどこから来るのだろう?』そこから発して、彼らなりの世界観を組立て、大変に長く多くの積年を重ね、今日の世界観に到達している。我々が今日まで生きてきた時空を考えると、命を大切さをしみじみと思い考える。

 アヱネアスは目覚めた。イリオネスも目覚めた。皆も目覚めた。
 
 彼らも人間の持っている最も自然な生体のリズムで生きている。その自然体に抗するのは、人間が持っている意思、思考、欲求等の動機の為せるところではなかろうかと考える。そういったところでふと考える。夜、寝ないで物事を考えたり、したりするようになったのは、いつの時代からであろうかと考える。人が聞いたらなんとバカなことを考えているのだろうかと思われるだろうと思う。読まれて笑わないでくださいね、私は考えはこうである。人間が『はかりごと(謀事)』を考える、するようになってからではないだろうか

 クレタの上陸地点に屯ろするトロイの民が一斉に目覚めた。今日が明けた。
 彼らは朝行事に浜辺に向かって歩を運ぶ、彼らの今日の幕開けである。その頃には、オロンテスを長とする一群の者たちは、もう仕事を始めている。この時代でも『朝一番早いのはパン屋のおじさん』であったのではなかろうか。
 
 ペンを進めていく中で『多忙』と表現するが、それは第三者の観察眼の見るところであって、彼らに多忙という生活感があったかどうか、それは、はなはだ疑わしいことだと思っている。
 この『トロイからの落人』を書いていての筆者の感想です。読みぐるしかっただろうと思っています。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第6章  クレタ  81

2013-04-23 08:29:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お~、アレテス!』『、、、、、、!』二人は言葉に詰まった。
 イリオネスは、アレテスをひっしと抱きしめた。二人はトロイ時代からの盟友である。
 『アレテスご苦労、まあ~、一口飲んで落ち着け』
 かたわらには、オロンテスが杯を差し出していた。
 パリヌルスは、自分の部下であるテクテイを抱きしめてやっていた。
 『お~、もう一人いる。そいつは何なんだ』
 『はあ~、奴ですか。仔細についてはまだ聞いてはいませんが、私どもについてきて離れない、そのようなわけでついてくるのを許したんですが。明日、私が仔細を確かめて報告いたします』
 『そうか、判った。仔細を聞いて確かめろ。まあ~、今日はこれで二人とも休め。何か、急ぎの報告があるか』
 『特別にありませんが、一緒について来た者は、小島の見える無人の小集落で見つけたのですが、用心します。今晩は私の傍らで休ませます。いいですか』
 『あ~あ、いいだろう。報告は、明朝、朝一に受ける。アレテス、今日はこれで休め』
 『判りました』
 オロンテスが五人の食事を準備して焚き火のところへ戻ってきた。
 『まあ~、食事をして落ち着け』
 『ありがとうございます』
 イリオネス、そして、パリヌルスら三人は、調査探索に出かけた四人が無事に帰還したことを歓んだ。
 『軍団長、安堵されましたね。全員、無事帰還、何よりです』
 『お前たちをつき合わせた、いろいろと世話をしてくれてありがとう。夜も更けた、休んでくれ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第6章  クレタ  80

2013-04-22 08:15:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お~お、来た来た、どっちの組かな?』
 『あの歩き方は、アレテスではないな。この方角から帰ってくるのは、リナウスの組だ。二人とも無事らしい、まずひとつ、安堵だ』
 近づいてくる二人に焚き火の炎のほのかな光がとどき始めた。二人の歩足が速くなる、イリオネスの前に立った。イリオネスがリナウスの肩に手を伸ばしその肩をしっかと抱いた。
 『お~っ!リナウス、ご苦労であった。まあ~休め』
 次いでもう一人、リナウスに同行したランタの肩を抱いて無事を確かめた。
 オロンテスは気が利いていた。彼は酒杯と酒を準備していたのである。二人に向けて杯を差し出した。
 『お~お、お二人さん、杯を持て!』
 彼は酒壺を持ち上げ、二人の杯に酒をこぼれんばかりに注いだ。すかさず杯を口に運ぶ二人、一気に飲み干した。酒は胃の腑にしみた、二人は『帰った』を実感した。リナウスが口を開いた。
 『軍団長、ただいま帰りました。このように出迎えていただいてありがとうございます。報告はどのようにしましょうか』
 『急ぎの報告はあるか。無いようであれば、明朝朝一に聞く。今日は休め』
 会話を交わしているとき、オキテスが言葉を投げてきた。
 『おい、皆!見てみろ、三人が来る』
 今度は西の方角に、波打ち際を歩を進めて来る三つの人影を目にした。アレテスとテクタン、もうひとりは?彼らは三つの人影が到着するのを心をせかせて待った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第6章  クレタ  79

2013-04-19 08:20:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『では、最後の問題だ。築砦の件だ。スダヌスの持ってくる案件だ。立地条件、その環境等、充分に検討して決めねばならない案件だ。十二分に討議して決めたい。チエックすべき項目を考えておいてくれ。これで終わりだ。君ら何か意見があるか。あれば言ってくれ』
 『軍団長、今、話されたことで充分です。我々のやらねばならないことが、いい方向に向かっていく、そのように思います』
 『今日、夕食を終えて、ここに来るときに言われた統領の言葉を伝えておく。『何事にもひるむ事はない。自信を持って事に当たれ。今の我々には、その力がある』というわけだ。我々はその力をもって事に当たっていく、いいな』
 『判りました。それを肝に銘じて、事に当たります。軍団長っ』
 三人は声をそろえた。
 『では、話し合いは終わりだ。俺は、もう少々休まずに、調査に出た四人の帰りを待つ。浜で焚き火をして、あいつらの帰りを待つ』
 『判りました。私どもも一緒に。軍団長、場を変えましょう』
 四人は、浜でもいちばん目につきやすい場所に移動して焚き火を盛大に燃やし、まだ帰って来ていないアレテスら四人を待った。
 星空の下、北の方角に、こちらに向かって歩いてくる二つの人影が目に入った。
 二人が背にする空の一角に、荷車の七ツ星(大熊座)が輝いていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第6章  クレタ  78

2013-04-18 08:29:24 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らの意思を確かめたイリオネスは話をつづけた。
 『では、話を続ける。毎日の生活に入用な食糧品の問題については、今日、オロンテスがキドニアの街に出向き、調査を終えている。浜頭とテカリオンとの話し合いで、いい方向にまとまると思う。次はテカリオンとの話し合いの焦点は、交易の問題である。俺の思いでは、主食の小麦を大部分とは言わないまでも、不足する部分を奴から買わねばならない事態が起こるかもしれないということだ。それを心しておいてほしい。クレタの地元産品の収穫状態によるのだが、オロンテス、今日の調査で、そのあたりの情況はどのような感じだ』
 『はい、それはですね。どうも、ここ数年に及ぶ気候の状態が思わしくないらしく地元産品の収穫量があまり芳しくないらしいと言うようなことを耳にしました。そう言ったことを地元の浜頭に質してみる必要があります。詳細の把握が必要です』
 『それは、オロンテス、お前の責任担当の領域でもあるから、よろしく頼んでおきたい』
 『では次だ。テカリオンとの話し合いは、交易の話になると思う。交易の対応は、買いではなく売りのほうだ。クレタにおける我々の生活の維持は、交易を避けてやっていけそうではないのではないかと思っている。そのあたりに目を開いて、テカリオンと話し合いを進めようと思っている。パリヌルス、オキテス、君らの考えはどうだ』
 『判りました。それについては、よく考えます。これまで、エノスにいたときに造った品々の事を質してみたりして奴と話し合います。そういったところで如何でしょうか』
 『それでいい。判った』
 イリオネスが頷いてる風情が闇を伝わってくる。暗がりで見えはしないが、彼は、かなり厳しい姿勢で、この話し合いに臨んでいることがうかがえた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第6章  クレタ  77

2013-04-17 08:00:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『今日の出来事だ。キドニアの街の中でテカリオンに出会ったのだ。地元産品の集積場でのことだ』
 『なにっ!テカリオンに会っただと、奴は何用でクレタに来たのだ。それで』
 『明日ここへ来るそうだ。その場では、詳しい話は避けた』
 『奴が、ここへ来るのか。クレタに来たら、何はさておいてでも一番に来るのが当り前だろうが』
 『昨夕着いたばかりだそうだ』
 『そうか、それならそれでしょうがないか、まあ~、奴の来るのを待つとするか』
 『よしっ、そのようなわけだ。それを頭お片隅において話をすすめる。いいな』
 闇の中である、彼ら互いの顔が見えない。三人の顔は声のする方向に向いている。イリオネスは、心中の羅針を働かせて三人の目と目を合わせた気持ちで話し続けた。
 『話はこうだ、よく聞け。明日、昼過ぎには、浜頭のスダヌスが来る。俺の思いでは彼は一人ではないと思う。知り合いの浜頭を引き連れてくる。おそらく話の進み具合では、夕刻には、築砦の事に目途がつくだろう。まとまるのは、その翌日と思って間違いない。もちろん、その場には、ここにいる四人は同席している。また、このクレタ自体、交易に重きをおいて成り立ってきた島らしい。午前中に話し合う、テカリオンとの話し合いでは、これからの俺たちの生活に関しての諸問題にかかわってくると思っていい。我々が交易についてどう考えているか、毎日の生活に入用な食糧問題、その他の必需品の問題等について探ってくるだろうと思う。地元浜頭連中とのことも考えて話し合い、それらをまとめて一挙に解決にもっていく、いきたい、お前らの協力が頼みだ。頼むぞ。俺自身、そのように考えて話を進めていく』
 『いいでしょう、軍団長。それでいいです』
 三人は、イリオネスの考えに同調の意思を示した。