『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          ご挨拶        山田 秀雄

2011-12-30 13:33:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 年暮れのご挨拶を申し上げます。今年も私のブログにアクセスいただき誠に有難うございました。
 あと二夜で 2012年のファストモーニングとなります。

 2011年の地球は、大荒れでした。
 大自然の営みは、穏やかであってほしいものです。

 明ける2012年の地球は、穏やかな年でありますよう祈って止みません。
 皆様にとって、最善のよき年であることを心からお祈り申し上げます。

       2011年12月30日
                     山田秀雄

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  39

2011-12-30 09:48:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 会議前夜の打ち合わせを終えた彼らは、広間を引き揚げた。

 昨日の雨もあがり、素晴らしい快晴の朝が訪れた。太陽が東の空に昇り始めた。早朝会議の西門前の広場は、まだ、砦の影の中にあった。各船の船長及び副長連が姿を見せ始めた。
 『おう、おはよう』 気軽に朝の挨拶が交わされている。
 『おう、皆、集まったな。パリヌルス、全員集まったようだな。会議を始めるか』
 『おい、皆、座れ』
 彼らは、円く座をとり座った。円の中心にはイリオネスが立ち、一同を見下ろしていた。
 『諸君っ!おはよう。只今より打ち合わせ会議を始める。我々は、船出の準備を何があろうとも、今日、明日、明後日、この三日で船出の準備を完了させねばならない。そして、風待ちをする。では、航海日程を伝える。我々がこの地を船出して、三日ののちには、停泊を予定しているミコノス島に着く。このミコノス島では、統領の所用のため、6日間停泊する。ミコノス島を出航して、順調に航海を続けたとしたら、早ければ5日後には、クレタ島の西部の地に着く、以上が航海日程の概略である』
 これだけ言って、イリオネスは一同を見回した。
 『今日は、この会議を終えて、態勢を整え、即時に作業を開始する。いいな。これから、作業と人員の割り振りを伝える。先ず、各船舶の点検と整備に当たってもらう。第一船、第二船、第三船に乗る者たち全員がこの作業に当たる。作業の総責任者ははパリヌルスとオキテスである。次は、積荷を整えることとその荷役である。また、航海中の食事のことである。この作業の総責任者はオロンテスである。これには第四船、第五船、第六船に乗る者全員が当たる。船長、副長は、総責任者の指示を受け、全員を統率して、手落ちなく事に当たってくれ。以上である。船出までの時間がない、会議はこれが最後だ。各員奮励せよ』
 イリオネスの檄であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  38

2011-12-28 08:50:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、何だ言ってみろ。何かむつかしい事か』
 『いえ、難しいことではありません。荷積みする船は、かなり沖に停泊させて荷を運搬しなければなりません。それについてですが、いま、私どもが運用する用船の数では、少々心もとないのです。それでですが、トリタス様から荷運びの用船を借りるように軍団として正式に要請していただけないでしょうか』
 『う~ん、そういうことか。何艘くらいいる?』
 『出来れば、10艘くらい、そして、1艘につき2,3人の水夫をつけていただけるようでしたら、なお、いいのですが。軍団長から、頼んでいただけませんか』
 『トリタス、今の話、聞いていたか』
 『え~え、聞こえました。判りました。イリオネス様、その件承知しました。お貸しいたします。オロンテスさん、いかがですか。それから、食事のことにふれますが、副菜類は足りていますか』
 『その件ですが。新鮮な野菜が不足しています。それに、魚の干物がもう少しあれば安心なのですが』
 『判りました、よろしいでしょう。その件、この私が引き受けましょう』
 トリタスは、イリオネスに向かって、オロンテスの要請を引き受ける旨の返事をした。
 『有難う、トリタス。厚く礼を言う』
 アエネアスは、礼を述べた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  37

2011-12-27 09:22:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 打ち合わせを終えたイリオネスらは、航海のことについて思いつくまま話し合っていた。
 『お待たせしました』
 『お~お、オロンテス。ご苦労、座ってくれ』
 彼を交えての打ち合わせは、イリオネスの問いかけから始まった。
 『オロンテス、食糧、食材などの手持ちの情況はどうであった。食糧の分配、食糧品の荷造り、積み込み等荷役作業のこともある。また、食事の供給に関する計画のこともある。人員を手配しなければならない。いま、ここで決めておかなければならん。明朝、会議を終えたら直ちに作業に向かわせる、そのためにもな』
 『人員を向かわせていただける、それは有り難いことです。手持ちの食糧、食材などの品目と量はここに書き込んだとおりです。また、航海中の食事の供給に関しては、この通りです。見てください。この業務の担当は、セレストス、リュウクスが当たります。食料品の分配、また、荷造り、荷役などの作業の指示は、私とアンテウスがやります。軍団長が言われた、私たちが担当している仕事に手を貸してくれる者たちはどれほどでしょうか』
 『俺の胸算用では、200人くらいを予定している。それでどうだ』
 『それは有り難いですね。それにですが、軍団長にお願いがありますが』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  36

2011-12-26 09:25:19 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスはパリヌルスに念を押した。
 『あ~あ、申し遅れました。船団の巡航隊列がミコノスで変わります』
 『全て、了解した。明日の午前中の会議で皆に伝えてくれ』
 打ち合わせは終わった。
 広間の一角で打ち合わせをしている、オロンテスは真剣な眼差しで、方針、段取り、作業内容について三人に詳しく説明した。
 航海日程についての打ち合わせを終えたアエネアスは、声を上げてオロンテスを呼んだ。
 『お~い、オロンテス。こちらの席があくぞ。こちらへ来て打ち合わせをやれ』
 『はい、有難うございます。私たちの打ち合わせも、もう終わります。このあと、軍団長、パリヌルス、オキテスと二、三打ち合わせれば終わりです』
 『おっ、そうか。俺とトリタスも、もう少しの間、ここにいる』
 『明日の会議に備えて、抜かりがないようにしておかないといけません。アンテウスらから、あがってきた案件を話しておかなければならないですから』
 『そうか、よっしゃっ!』
 オロンテスは、アンテウスらとの打ち合わせを終えた。彼は、気骨の折れる仕事に根気よく取り組んでいた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  35

2011-12-24 09:04:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスは、一息ついた。皆と目を合わせ、彼らの心のうちを推し量った彼は、話を続けた。
 『イオス島からクレタ島に向かうわけですが、クレタのクノッソス、そこから沿岸航法でクレタの西のスパタ岬に向かうとすれば、300キロ。(現在の距離単位で書いております) イオス島を出航してクレタのスパタ岬に直行した場合、その距離は7割くらいの200キロ余りとなります。そのようなわけでイオス島からクレタのスパタ岬へは直行することにしました。クレタへの航海日程は以上です』
 『クノッソスには立ち寄らない。そうか。そのほうがよいのか』
 『私が交易商人のテカリオンから聞いているところによれば、深いわけは知りませんが、トロイ戦以後、領主が代わっており、クノッソスには近づかないほうがいいように言っていました』
 『判った。クレタ島のスパタ岬に近い湾か、又は、入り江に着くのは、夜か昼か?』
 『予定では、日中の午後には到着する予定でおります。そのように到着時間を決めてイオス島を出航しようと思っていますが。航海については以上です』
 『判った。パリヌルス。航海の日程は、よく出来ている。トリタス、今の説明を聞いて、お前、どう思う』
 『航海の日程は非常によく出来ています。しかし、統領、そのように聞かれても、私、このような長い航海はした事がありません。パリヌルス、オキテス様御両人であれば何の心配もありません。大船に乗った気持ちでお二人にお任せでいいのではありませんか』
 『そうか、大船か。よしっ、イリオネスもいいな』
 『よろしいです。パリヌルス、説明不足はないな』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  34

2011-12-23 08:31:47 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『統領、航海日程のおおよそのことは、見ていただいたらお判りいただけると思います。天候に恵まれ、なんらの支障もなく、航海を続けることが出来れば、デユロス島での統領の行動日を含めて、エノスの浜を船出して、13日目の午後には、クレタ島の西の岬辺りに着く予定となります』
 『ほう~っ、パリヌルス、これは判りやすい』
 『一番目に寄港するレムノス島での風待ちがなく、出航が予定通りにいけば、ミコノス島には2昼1夜で着港します。ここで7日間逗留します。統領の用向きのデユロス島へは、別船を仕立てて行っていただけるようにはからいます。なお、ここまでは、この海域に詳しいオキテスがエノスからミコノスまでの水先案内をやります。統領、いかがですか。ここまでのところ、質問はありませんか。軍団長はいかがですか』
 『おうっ、質問か。デユロスへの別仕立ての用船は、どうするのだ。現地で借りるのか』
 『いえ、借りません。私たちが曳航していく舟艇を使用する予定でおります。尚、この舟艇は航海中、各船に食事を届ける任に当たります』
 アエネアスは、自信に満ちているパリヌルスの説明に納得した。
 次いで、イリオネスから質問である。
 『レムノスからミコノス島の2昼1夜と言うのはどういうことなのか』
 『この海域は、夜といえども航走を続けます』
 『判った』
 イリオネスは了解した。
 『ミコノスからクレタ島までは、この私が水先案内を務めます。ミコノスからイオス島までは、エノスからレムノス島までの距離と同じくらいです。イオス島には夕刻に着いて、明早朝にクレタ島に向けて出航します』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  33

2011-12-22 14:09:46 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 日没には、まだ、少々間があるが、砦の者たちは夕めしを終えていた。
 広間には、イリオネスが顔を見せた。パリヌルスもオキテスも来た。アエネアスは、トリタスと肩を並べて現れた。トリタスは戸口に立って戸惑っているようであったが、アエネアスに促されて焚き火のまえに腰を下ろした。
 『あの~、イリオネス様、私ですが、座をはずしましょうか』
 『なんだ、それを気にしていたのか』
 イリオネスはアエネアスの目を見て了解を取った。
 『トリタス、座をはずす必要はないぞ。ここにいて、話を聞いて何か意見があったら話してくれていい』
 『それは、それは、では、ここにいさせていただきます』
 『お~お、それでいい』
 『イリオネス、顔は揃った始めていいぞ。ところでオロンテスは?』
 『はい。オロンテスは、向こうの打ち合わせが終わり次第こちらに来ます。では、パリヌルスから説明させます。パリヌルス始めてくれ』
 パリヌルスは、航海日程を書き込んだ木板をアエネアスに見せた。
 『ほお~っ、これは判りやすい』
 アエネアスはじいっと木板に見入った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  32

2011-12-20 08:35:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスは、パリヌルスのジョークを聞きながら肩に乗っている責任の重さを感じていた。
 『ところでオロンテスの顔が見えないのだが』
 『彼ですか、彼は食糧倉庫のほうです』
 『彼は航海日程について知っているのか』
 『え~え、彼は知っています。彼は、明日から三日間の作業の段取りを、アンテウスらと打ち合わせているはずです』
 『おっ、そうか。俺たちも航海日程を打ち合わせなければいかんな。夕飯を終えたら、やっておこうではないか。統領、船長、副長、全員を集めての打ち合わせ会議は、明日午前中にやる。それでいいか』
 『いいでしょう。軍団長、船出の準備を完了させるまでに、二日と半日しかありません。もう会議をやる時間がありません。事の先が目に見えています。全ての段取りを打ち合わせてしまいましょう』
 『おう、そうだな。判った。パリヌルス、オキテス、その段取りで会議を進めるように計っておいてくれ』
 『判りました。何事も始計第一です。抜けがないように会議を終えます』
 『頼むぞっ』
 イリオネスと打ち合わせを終えたパリヌルスは、航海日程を書き込んだ木板を冴えた鋭い目で念査に及んだ。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY          第4章  船出  31

2011-12-19 15:17:36 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、トリタスの逗留が決まり、広間の焚き火を囲み話し込んだ。
 
 アンテウスがリストと現品を照合しているところに、オロンテスが声をかけてきた。
 『アンテウス、どうだ。作業の方は終わったか』
 『あっ!オロンテス棟梁。いま、リストと現品を照合していますが、もう終わります』
 『おうっ、どれどれ。お前、大変だったな。これだけの量だ、仕分けが大変だったろう。明日から三日間忙しいぞ』
 『判りました。作業の段取りは、もう出来ているのですか』
 『いや、それはまだだ。セレストスとリュウクスを呼んでくれ』
 オロンテスは、木板に書き込まれた品目と量に目を通した。
 『棟梁、二人が来ました』
 『おう、お前ら、今日はご苦労であったな。今夜夕めしを終えたら、明日からの作業の段取りを打ち合わせる。いいな。三人は広間のほうへ来てくれ』
 『判りました』 三人は声をそろえて返事をした。
 オロンテスは、書き込まれている品目と量を入念に読み取った。
 『う~ん、なかなか大変な量だな』
 彼は、目論んでいる作業の段取りを思案した。

 イリオネスは、パリヌルスとオキテスに声をかけた。
 『おう、お前ら二人、何でそんなに力んでいるのだ。航海日程は出来上がったか』
 『出来ました。海も川のように、北から南に向けて流れていてくれたら、楽なのになあ~と、つくづく思いますよ』