『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1065

2017-06-30 15:45:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ギアス、お前の貴重な戦歴になったな。軍船のような大船をうまく操船したな、お前の操船技術を高く評価する。これをやったことのない者には、その対処技術がわかるわけはない。お前は貴重な体験をやってのけたのだ。自分の有している知力、能力、思考力、判断力、決断力、そのうえに、運力の全てをつぎ込んで生死をかけて敵と海上で戦った。思いもかけない、何かわからない不思議が作用する結果も含めて、お前の交戦力が高く評価される。この経験を大切にするのだ。ギアス解ったな』
 『そうですね。やったから出来たということもありますが、隊長の言われる不思議がいい結果に結びついたと理解しています』
 『お前のその謙虚さが、お前に勝利を、いい結果をもたらしたといえるかもな。それを心にとめておくことだな』
 『解りました。ありがとうございました』
 ギアスはパリヌルスのもとを辞した。
 ギアスとの語り合いを終えたパリヌルスはイリオネスのところに足を運ぶ。
 アエネアスとイリオネスがイリオネスの宿舎前の草地に座している。イリオネスが声をかけてくる。
 『おう、パリヌルス、どうした?何か用でもあるのか?』
 『はい、明日にでも会議の招集をと考えているのですが。オキテスもキドニアから帰ってきて、報告したい件もあるし、共有したい情報も話し合いたいと言っています』
 『ほう、そうか。会議の開催か、統領も俺も議題、案件を考えている最中だ。お前もそこに座れ。議題を打ち合わせる。お前、時間はいいのか?』
 『はい。その用件で来ています』
 アエネアスが声をかけてくる。
 『おう、パリッ!お前もそこに腰を下ろせ』
 『はい、会議開催の件ですが』
 『おっ!そうか。ジャストタイミングだな。今、軍団長と話していたところだ』
 『パリヌルスもいます。統領、議題、案件をまとめましょう』
 『おう、いいだろう。パリヌルスの持ってきている議題、案件を聞く』
 『お前が会議において検討しようとしている議題、案件を聞く。話してみてくれ』
 パリヌルスは、持参した木板に書き記した議題、案件について述べる。
 『議題、案件は多くはありませんが、オキテスからの報告案件、航海途上においての外敵をせん滅したギアスらの表彰の件、戦闘艇の建造の中間報告、次に何をやるかの検討の四件です』
 『なるほど、その四件か。軍団長、お前と俺の考えている議題と案件よりもパリヌルスらが考えてきている議題、案件のほうがよく考えられている』
 『統領、いいですね。パリヌルス、その四件の議題と案件で明日、朝より統領の宿舎の前庭において会議を開催する。オロンテスには、代わりの者にキドニアへ行かせて会議に参加するように手配してくれ。以上だ』
 『解りました。オキテスにも私から伝えます』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1064

2017-06-29 08:04:55 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、肩で息をしてドックスに問いかけた。
 『ドックス、変わりはなかったか?』
 『はい、四日間も隊長の顔を見ないと、それはそれはさみしい気分でした。建造の場は、変わりなく、ヒマなく、毎日動いていました。安心してください』
 『安心安堵ということか。俺が、いてもいなくてもいいということではないか』
 『そういうものではありません。気にかける者が、いるいないが大事なのです。絆です』
 『ほう、そのように言われるとうれしいね!ドックス!お前が頼りだ』
 『隊長、パリヌルス隊長を呼んできましょうか』
 『おう、そうしてくれるか』
 ドックスがパリヌルスを呼びに立ちあがる、足を運ぶ、間をおかず、パリヌルスが姿を見せる。
 『おう、オキテス、帰ってきたのか、集散所はどうであった?』
 『おう、集散所に二件の新艇の納入を終えたことを報告した。それを終えて、販売業務が一段落したなと思ったとたんにドドッと疲れを覚えたような始末だ。それが偽らない今の俺だ』
 『そうか疲れを覚えたか、ごくろうであった』
 『パリヌルス、これで集散所との業務は決済業務を残すのみとなった。喜んでくれ。今日、納入業務を終えたことを話して、ハニタスと決済業務について話あった。即刻、統領と軍団長に報告してこの情報を共有しておかねばならん。明日にでも会議を招集してほしい。オロンテスも言っている、我々のネクストをかんがえねばならん』
 『そうだな、了解した。軍団長と話して会議の開催について話をまとめる。お前は身体を休めろ!』
 『お前とも打ち合わせた。ドックスとも話し合った。集散所への報告も終えた。少し休む』
 『おう、解った。このあと、ギアスが航海の報告をしたいといっている』
 『ギアスはよくやってくれた。海上交戦に勝利できたのもギアスがいたからこそだ。俺が感謝していたと伝えてくれ。ギアスとテナクス、そして、班長らをねぎらってやらねばならん。海上交戦の勝利はあいつらの栄誉だ!』
 『解った。それについては軍団長に伝える。ではな』
 話を終えてパリヌルスは建造の場をあとにした。
 パリヌルスのもとへギアスが来る。
 ギアスは、四日間の航海の事、クレタ島の西岸、そして、テムパキオまでの南岸の地勢、風光などを話し、ガブドス島の海域にて展開した外敵との海上交戦の模様を詳しくパリヌルスに話した。
 パリヌルスは、話を聞き取り、展開した海上交戦を解析する。
 海上においての軍船なる大船を機敏に操船して外敵をせん滅したギアスを高く評価して、彼を誉めた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1063

2017-06-28 08:26:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 売り場に戻ったオキテスは、オロンテスに話しかける。
 『おう、オロンテス、新艇販売の件、一段落したな。明日にでも、今日のことなどを報告する。どうだ会議を開くことにするか』
 『おう、それがいいい。報告の件もだが、我々のネクストも話し合わねばな』
 『そうだな。オロンテス、お前の言う通りだ。俺、アレテスの第二便で先に帰る』
 『解った』
 オキテスは、スダヌスの売り場へ歩を向ける。
 『おお~、オキテス殿、どうされた?』
 スダヌスが声をかけてくる。
 『浜頭、俺のところのアレテスの第二便がもう来る頃だと思ってな。今日はここでの用事も終えた。アレテスの第二便で先に帰ることにした』
 『そうだな、もう来る頃合いだ』
 『浜頭、このたびは、我々が遂行したレテムノンとテムパキオへの航海に際して、いろいろと大変な世話になった。それを言いたくてな。謹んでというところだ。ありがたかったな。納入航海が成功したのは、お前がいてくれたからだと思っている。深く深く感謝している、ありがとう!アレテスが来たら、俺が船だまりにいると伝えてほしい』
 『解った。オキテス、俺のほうこそだ。このたびの航海にこの俺を使ってくれて、ありがとう。俺のほうこそ感謝の気持ちでいっぱいだ』
 『では、これにて』と言って、オキテスはスダヌスの売り場をあとにする。
 オキテスは、船だまりに向かう道すがら、このたび遂行した新艇の納入航海を振り返って考える。
 『あれでよかったのか?俺として最善を尽くした。注文主も喜んでくれていた。もう仕事は終わっている、これで良しとしよう。この業務も、あとは集散所側の決済が終われば終了となる。オロンテスの言うようにネクストを考えるか』
 自分自身が遂行した業務を評価した。
 彼は、船だまりに向かう道中でアレテスと会う。
 『おう、アレテス、今、着いたのか。頼みだ、帰りの便に俺を乗せてくれ』
 『解りました。用向きを終えるのにそんなに時間はかかりません。船だまりで待っていてください』
 『おう!』
 オキテスが船だまりに着く、ヘルメス艇がもやっている、ヘルメスの乗り組みの者らと話しながらアレテスらの帰ってくるのを待った。
 アレテスの第二便で浜へ帰ったオキテスは、この頃合いになって五体に疲労を感じる。
 建造の場に足を向ける、ドックスが声をかけてくる。
 『あ~っ!隊長、おかえりなさい。休まずに集散所に行かれる、疲れられたでしょう』
 『この期に及んでだ、ドドッと疲れを感じる。しかしだ、ドックス、一時も早くお前の顔を見たかった。そういうことだ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1062

2017-06-27 09:07:49 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス殿、航海のほうはどうでした?』
 『はい、四日間、いい天候に恵まれました。これはラッキーでしたな。それに加えてスダヌス浜頭のガイドよろしくうまくいきました、喜んでいます。航海の二日目ですが、停泊したペレカノスの地を出て一刻ぐらいの地点にさしかかったときです。ガブドス島の海域において外敵と遭遇しました。予想はしていたことなのですが、これはと思いましたな』
 『ほう、それは、大変でしたな』
 スダヌスが口をはさむ。
 『私は仰天ですわ、これはなんとする?慌てました。オキテスのほうを見ると、これは落ち着いていましたな。彼も私も新艇のほうに乗っています。オキテスはこの海域から逃れるように操船の指示をしており、新艇に少しの傷もつけてはならないというわけです』
 『それで、どのような展開にーーー』
 オキテスが話を継いでいく。
 『これでいいのだ。船長のギアスとテナクス隊長に任せておけばいいと私は一時も早くその海域を離れる作戦をとりました。二人はやってくれましたね。期待通りの作戦展開で敵の3船のうち2船を軍船の体当たりで破砕、残った1船はその海域から逃げ去る。これで海上交戦を終えて、テムパキオへの航海を続けた次第です』
 『オキテス殿は、簡単に話されますが、大変だったでしょう。察します』
 『これについては、我々の方は、もしそのような事態になったときにはと対処を考えての航海でしたから、万事、作戦通りの対処で海上交戦を展開したわけです。軍船を仕立てての航海でしたからこの事態に驚くことなく、敵を圧倒してこの海域を通過した次第です』
 『ほう、そうですか、それにしても大変でしたな。オキテス殿のほうの損害は?』
 『私らのほうの損害は、負傷者が2名でした。きわめて少なかったことと喜んでいます』
 『そうですか、その方たち大事にしてあげてください。心からお見舞いいたします。大損害に到らずに終わって何よりでしたな。安堵いたしました』
 『はい、ありがとうございます』
 『それにしても、軍船を仕立てて、テムパキオへ行かれたとは、大変にご苦労でした』
 話があらゆる面に及ぶ、進水式のことなども話し、四人は昼めし時をなごやかに過ごした。
 オキテスは、海上において展開した交戦の模様を簡単に話したが、スダヌスは、展開された海上交戦の模様を沸々と思い出していた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1061

2017-06-26 08:35:36 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、スダヌス浜頭、もういいのか?行くか』
 『おうっ!』
 『オロンテス、行こうか』
 『おう、いいぞ!あれだな、吉報を届けるというのはいいものだ。心がワクワクする、行こう』
 三人は売り場を出て、ハニタスのいる詰め所と向かう。三人が入り口に立つ、スダヌスが声をかける。
 『おう、ハニタス殿、テムパキオへ行ってきたぞ!久しぶりのテムパキオであった』
 『ええっ!浜頭もテムパキオへ行ってきた?!』
 『おうよ!オキテス隊長とな。驚くことないだろう』
 『それはそれはご苦労でした。テムパキオはどうでした?』
 『そうだな、昔も今も大して変わってはいない、そんな風情であったな』
 『あ~、オキテス殿、長途の航海、はなはだご苦労でした。疲れたでしょう』
 『いえ、それほどではありません。ハニタス殿、新艇二艇の納入、引き渡し、無事終えました』
 『そうですか。納入、引き渡し完了しましたか、それはご苦労でした。このたびの納入手数、長途の航海、集散所として厚く礼を言います。この間から、納入航海についてはオロンテス殿から逐一、知らせていただいていました』
 『テムパキオへの納入を終えて、昨日の夕刻に帰着しました。これをもって、レテムノンおよびテムパキオへの新艇の納入引き渡しが終わりました。新艇の納入業務の完了を報告いたします』
 『しかと、承りました。いろいろと世話をかけました。ありがとうございました』
 『納入の立会人は、スダヌス浜頭殿です』
 言葉を受けて、ハニタスがスダヌスに礼を述べる。
 『スダヌス浜頭殿、立ち合いの件、ご苦労でした』
 『これで新艇納入引き渡しに関する業務は完了ということになります。あとは当集散所からあなた方への決済業務となります。当方の準備が整い次第、連絡申し上げます。よろしく統領にお伝えください』
 『解りました』
 集散所への納入完了報告と打ち合わせが終わった。
 『ところでハニタス殿、今日の昼食一緒しませんか。昼時に広場で待っています』
 『お~お、それは楽しいですな!喜んで一緒します。その時間になったら広場の方へまいります』
 『お待ちしています』
 三人は詰め所から引き上げた。
 『ではご両人、昼時広場で』
 『おうっ!』
 昼時となる、四人が広場で顔を合わせる、テーブルを囲む、一同いい笑顔である。
 『おう、スダヌス殿、これは、うまい!』
 『そりゃそうだ。魚はとれたてを調理する。それにこの腕だ!まずいわけがないだろうが』
 三人がスダヌスの調理をほめる、手にする杯の酒をのどに通す、焼けた肉に噛みつく、パンをちぎってほうばる、四人が会話でうちとける。
 ハニタスがオキテスに声をかける。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章 築砦  1060

2017-06-23 06:58:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 軍船の点検と揚陸作業を終えたギアスら一同は、軍船を前にして隊列を整える、外敵との交戦に圧勝、そして、大過なくの帰着した感謝の意を礼として低頭する。
 『諸君らと四日間の航海を共にした。君ら全員が力を尽くして乗り切った航海であった。ご苦労であった。充分に身体を休めてくれ。なお、このあと浜において夕食会が催行される。全員出席のこと、これを伝えて解散する』
 『おうっ!』
 一同から返事が返る。
 ギアスは一同と握手を交わす、握り合う手のひらが感情を伝え合う、目頭が熱くなる、見つめ合う目が互いの気持ちを伝え合う、うなずき合う。
 握り合う手が熱い、櫂を握り、懸命に漕いだ手にはマメができている、ごつく硬い、沸々煮えたぎる感動が往き来する。彼らの感情が極まっていた。
 ギアスは、オキテス隊長に作業の終了を報告して役務を終えた。
 彼は、海上交戦において傷を負った二人を見舞う、二人の傷を見る、快方に向かっている、確かめて安堵する。
 浜では夕食会の準備が整いつつある、いつもながらの浜焼きスタイルの夕食会である。
 新艇の完売、納入完了、長途の航海、大過ない帰着の慰労、一族総参加の夕食会が催される。
 うまい肴に舌鼓を打ち、美酒を味わい、航海の話に花を咲かせて語り合う、彼ら一同が歓喜する夕べを過ごした。
  
 彼らの浜の朝が明ける、日常業が始まる。
 スダヌスは朝の第一便でキドニアに帰る。オキテスは、疲れもいとわずオロンテスと集散所へと向かう。
 『なあ~、オロンテス、お前、どう思っている?俺の想いだが新艇の完売、その終点が遠いと考えていたのだが、こうして終わってみると近かったと感じている』
 『そうだな、俺もお前の言うように、もっと時間と手間ヒマがかかると考えていた。案ずるより産むはたやすいのかなーーー』
 二人は艇上でうなずき合う。
 『もう、キドニアの船だまりか。今、思うとテムパキオは遠かったな。オロンテス、話すときが来ると思うが、パキオテ頭領のところの進水式だが、この身にとり肌がたつような進水式だった』
 『ほう、そうか。それは、聞きたい』
 キドニアの船だまりに着いて、オキテスはスダヌスを送っていく、オロンテスはパン売り場に向かう。
 『おう、スダヌス浜頭、このたびの航海でいろいろと世話になった、ありがとう、感謝感謝だ。朝の業務が落ち着いたらオロンテスとハニタスのところへ行く。浜頭も一緒に来るか?』
 『おう、そうする!呼びに来てくれ。昼めしは、ハニタスもよんでやるとしないか?』
 『おう、それはいい!パンは俺が持ってくる。つまむ肴はお前に任せる』
 『おう、承知!』
 オキテスは、パン売り場でオロンテスと話し込んでいる、スダヌスが疲れなどどこ吹く風といった元気な姿を見せる。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1059

2017-06-22 08:23:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『統領、ただいま、新艇納入の任務を終えて帰着しました。新艇納入は無事終了。航海についた93名中負傷者2名無事とは言えませんが帰着しました。クレタ島南岸、ガブドス島海域において外敵と遭遇、海上にて交戦、敵三船のうち二船を海上にて破砕、敵、45名中交戦死者40名の損害を与えて交戦を終了、当方負傷者2名です。負傷者の現状は浅傷につき快方に向かっています。以上報告いたします』
 『そうか、海上で外敵と遭遇したとは、それは大変であったな。オキテス隊長、その負傷した二人の者だが医療を担当している者に言って治療をさせてくれ』
 アエネアスは言葉を切って一同に目を移す。
 『一同、命を失うことなく全員が帰ってきてくれた。これ以上の喜びはない!一同、大変ご苦労であった。身体を休ませてくれ』
 続いて軍団長が声をかける。
 『一同、大変ご苦労であった。いま、報告で聞いた、外敵との海上での交戦、大変であったであろうと考える。当方の圧勝と理解していいな、オキテス隊長!』
 『はい!』
 『海上交戦の詳細は改めて聞くが、ギアス船長、テナクス隊長、ゴッカス、そして、班長一同、海上交戦の勝利、重畳であった。また、案内役を引き受けていただいたスダヌス浜頭、世話をかけ、大変ご苦労でした。心から礼を言います』
 統領がオキテスの手を握る、そして、ギアス、テナクスと続けて手を握っていく、隊列の航海に参加した全員の手を握る。続いて、軍団長が各人の手を握る、航海に携わった一同の手をしっかり握って一同の労を心からねぎらった。
 握手を終えた軍団長が一同に意を伝える。
 『新艇納入の終了、そして、海上交戦の圧勝、一同が力を尽くした成果である。ご苦労であった』
 浜にいる一同から大喊声があがる。
 オキテス、ギアスらが一同のほうに身体を向ける、オキテスが口を開く。
 『一同!四日間に及ぶ航海に力を尽くしてくれた、ありがとう!ご苦労であった。身体を休ませてくれ』と言って、航海を共にした一同と握手を交わす。ギアス、テナクス、ゴッカスらがこれに続く。
 風景の中にいる浜の全員から、『おうっ!』『おうっ!』『おうっ!』と大歓声と拍手でこれをたたえる。彼らは手を振ってこれにこたえる。一同が交わす交歓風景である。
 オキテスがギアスに体を向ける、二言三言言葉を交わす。
 『解りました』
 ギアスがゴッカス、漕ぎかたらに声をかける。
 彼らは、四日間の航海で慣れ親しんだ軍船を点検整備する、浜に揚陸して作業を終える。
 今日の陽が彼らの作業の終わるのを待っている、水平線上にとどまっている、浜を茜に染めて、その身を海に沈めるのをためらっていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1058

2017-06-21 07:49:58 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船はいい風に押されている、ギアスは走りに満足している。
 ギアスにスダヌスが話しかけてくる。
 『おう、ギアス!お前らようやったな!この大船の船長、この大役を成し遂げた。航海、そして、海上における交戦、お前の操船があったればこその成果だ。お前らの為した大成果だ。もう一人の隊長役を果たしたテナクスもようやったな。あの海上での交戦で敵を散々こらしめたあの光景、俺は忘れはしない。ギアス船長、君らはよくやった!その一語だ』
 言い終えて、スダヌスは、ギアスの手をあらん限りの力で握りしめた。
 ギアスは船の向かっている先を見つめている。小島の北岸が目に入ってくる。
 小島の連中が浜に集まって手を振っている。その先に見える、船をつける浜にも大勢が集まって手を振っている。
 ギアスが船上の者らに声をかける。
 『おう、浜の者らが手を振っている。手を振ってこたえてやれ!』
 『おうっ!』
 彼らが一斉に立ち上がる、手を大きく振る、風に飛ぶ彼らの声が耳に届く、長途の航海からの無事帰着の喜びを手を振って伝え合う。
 『ゴッカス!浜が近づいている。操船を頼むぞ!』
 『了解です!』
 返事の語調に喜びがあふれている。
 ギアスが船上の一同に伝える。
 『一同、聞いてくれ。船が浜に着く、船から降りる、降りたら波打ち際に二列横隊で整列する。統領に対してのオキテス隊長の報告がある。それが終わって、軍船を浜に揚陸して作業終了の段取りだ。解ったな!以上だ』
 『はい!了解しました』
 返事を唱和してくる。
 船が浜に着く、埠頭がないから着岸というわけではない。喫水の条件もあり、浅瀬で停船する。一同が船を下りていく、下半身を海に浸して波打ち際へと歩を進めていく、オキテス、スダヌスが船を下りて浜に向かう、テナクスが続く、ギアスとゴッカスが船に対して、低頭して感謝の意を伝えて船から降りる。
 下船した一同が波打ち際に横隊で整列している、その隊列の前にはオキテス隊長以下の者らが横に並んで立つ。
 その前面に統領、軍団長以下が並び立つ、統領が数歩進み出る、オキテスに言葉をかける。
 『オキテス隊長、四日間に及ぶ新艇の納入航海、ご苦労であった』
 統領の言葉がけにオキテスが報告する。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1057

2017-06-20 08:07:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス隊長、出航します』
 『おうっ!』
 ギアスが大きく息を吸い込む。
 『出航!漕ぎかたはじめ!』
 漕ぎかたが櫂で海面をかく、凪ぎっている海面が泡立つ、船は凪いでいる海を割り始める、ギアスは船尾に移って船の引く航跡に見入った。
 ペレカノスの浜を出て半刻、船は北へと転進する、西岸に沿って北上する。
 船上において昼めし時を過ごす、東への方向転換地点を前にして、ギアスは、海上の波の状態を観察する、風の具合を思考力を駆使して読む。
 ギアスは深刻に考えている。『漕ぎかたらの疲労の度合いが濃い、漕ぎが昨日は朝から一日中、今日は朝から昼過ぎまでに至っている、西からくる風に、この船を押す力があるだろうか?』である。
 船は西岸に沿って北上している、後半のころに至っては、クレタ島の地勢状態の影響もあり、西からいい海風が来ている、『果たして東へ進むころにもこの風であるか?』である。
 彼は悩みまくった。
 東進への方向転換地点に到達する。ギアスは方向転換を指示する。
 船は右手に岬の突端を見ながら東へと進む、ギアスは風読みをする、帆張りを決断した。
 『帆を張れ!』
 『おうっ!』
 帆が張られる、軍船の大きな帆である。帆が風をはらみ始める。
 風はらみが考えていたより良好である、ギアスが状態を観察する、風が船を押してくれている、漕ぎかたらの漕力に力を貸す、船足の増速が感じられる、ギアスは嬉しかった。
 東進しはじめて一刻、二つ目の大きい半島岬の突端を通過する。風が強まってきている、太陽を仰ぎ見て頃合いを計る、漕ぎかたらに声をかけた。
 『漕ぎかた、やめっ!帆走する!』
 指示が飛び、船は風頼みの航走をする。
 『一同、帆走で行く!あと一刻余りで我らの浜に着く!』
 『おうっ!』
 漕ぎかたらが声をあげる。
 ギアスがオキテス隊長に状況を伝える。
 『隊長、ただいま、二つ目のでっかい半島岬の突端を通過しました。船は、いい風を帆にはらんで帆走しています。この頃合いの通過ですから、あと一刻余りで浜に着きます』
 『おう、そうか、解った!走りは順調だな』
 『はい!』
 オキテスがスダヌスに声をかける。
 『浜頭、いま、ギアスから状況の説明があった。あと一刻余りで浜に到着する』
 『そうですか、帰ってきましたか。四日間、長い航海でしたね。一同、頑張ってくれました。彼らの懸命の漕ぎがなかったら為すことができなかった業務の遂行です。オキテス隊長、新艇納入業務遂行の快挙、おめでとうございます』
 『おう、スダヌス浜頭、よくぞ力を貸してくれた。心から礼を言う。ありがとう!』
 二人は、互いの手を力を込めて握り合った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1056

2017-06-19 06:43:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ペレカノスの朝が明ける、一同、一斉の朝行事で海がざわついている、オキテスが一同を招集した。
 『おう、一同、おはよう!』
 『おはようござくぃます!』
 『諸君!よく眠ったか?昨日は、よくぞ力を尽くしてくれた。ご苦労であった。テムパキオからこのペレカノスまで休むことなく、船を漕いできた。無事この浜に着いて宿営することができた。それは、君ら全員の尽力があったればこそだ。隊長として君らに礼を言う。ありがとう』
 オキテスが一同を見渡す、話を継ぐ。
 『今日がこの航海の最終日である。出航の陽の出が間近い!いい空模様、海も落ち着いている、しかしだ、船を押す風、これが期待できない、今日も漕走で進まざるを得ない。一同の奮励と尽力によって乗り切る。今日の航走の後半、東進した折にいい風が西からくると期待はしているが、この期待が裏切られた場合には一同に一層の尽力を願うことになる。最終日の航海も安全第一の航走に努め、我らが浜に無事帰着する!いいな!』
 オキテスのアサイチの言葉である。
 ギアスが一同に伝える。
 『今日の航海について伝える。これから朝めしにする、腹ごしらえを終えて出航する。このペレカノスの浜を出航して半刻くらいで船は北へ進路を変えて北上する。北へ転進して二刻半、船は東への転進地点に到達する。その頃合いは昼過ぎであろうと予想している。東へ転進したら、船は我らが浜に向かう。早ければ二刻後、おそくとも二刻半後、日没になる前に我らが浜に着く!以上だ』
 ギアスは一同を見渡す。
 『安全第一の航海に努める。目指すは無事の帰着だ!いいな。一同の尽力を期待する。頼むぞ!』
 一同から力強い返事が返る。
 『おうっ!』
 次いでテナクスが一同に告げる。
 『一同、ギアス船長の言葉を聞いてくれたな!漕ぎかたの交替は昨日の要領でいく、いいな!それから、一同に伝えておく、海上交戦で傷を負った二人だが、二人とも快方にむかっている安心してくれ。では、朝めしにする、腹ごしらえをしてくれ』
 ゴッカスが班長らを手伝わせて、朝食のパン、水、酒などを配る。日持ちさせたパンは硬めに焼いてある。
 彼らは言葉を交わしながら、胃袋に朝めしをおさめる。
 ゴッカスが操舵担当と数人連れて船の点検に座を立っていく。
 陽が昇りはじめる、出航の時となる、ギアスが浜を見回す、一同に声をかける。
 『全員!船に乗れ!漕ぎかた座につけ!』
 一同が、一斉に腰をあげる、船に向かって走る。
 船上では、テナクスと班長が漕ぎかたに着座の指示をする、ギアスが全員の乗船を確かめる。
 『ギアス船長、船の出航点検終えました。一同、乗船を終えました!』
 ゴッカスの報告を受ける、二人は船に乗る、ギアスは改めて最終の確認をした。