『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1276

2018-04-30 07:45:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 テスト航走の評価と意見聴取の会合を終えたパリヌルスとオキテスは肩の荷をおろす。
 『なあ~、オキテス、俺が気にしているのは、戦闘艇のテスト航走を終えて、評価と意見聴取の場でマイナス面の評価がなかったことだ。この点について、よく考えてみてくれないか』
 『おう、解った。そのようなことは無いことが重畳と言えるのではないのか』
 『発展的ポジテブな思考が、ここをこのようにしたらもっとよくなると考える改良改善思考としてだな。これはいかん!だめだ!といった否定的な評価、意見が皆無であった』
 『お前、モノ造りに関して事細かい思考姿勢だな』
 『船速を少しでも速くという考えに的を絞って思考の限りをつくして、マイナス効果となるもの、ムダと考えられるものを削り落として船を造った。ゴールに到っているかと言われたら、ゴールに到っていないが答えだ』
 『お前、スゴイことを言うな。あの戦闘艇に何が足らないと考えているのだ』
 『あの戦闘艇を建造するに際してだな、ドックスの建造思考が有効効果を生み出しているところもある。また、出来あがってテストしたら、考えてもいなかった予期せぬ構造効果が船の走行に関係しているところもある』
 『お前のそのような謙虚さがいいモノつくりにプラス効果として、いい結果になっているのかもな。かもなであって、いるではない』
 『そうかもな!ハッハハ!』
 『ハッハハ!』二人は大声で笑い合った。
 二人は船造りをシビアな思考と目線で現状を見極めていい船造りをしている。
 『なあ~、オキテス、考えてみろや、俺ら集団として、いいモノ造りの技術水準を向上させてきている。この先も気を緩めることなく、いい船を造っていこう』
 『おう、了解、了解!』
 『今日は朝から張り詰めた気持ちで仕事をした。そろそろ終業の頃合いである。ではな。夕めしを終えたら、この場でテスト航走評価の総括のミーテングをやる』
 『解った』
 二人は、互いの持ち場に戻っていく。
 パリヌルスは、胸のうちでテカリオンの来訪をを待ちかねている。
 『テカリオンがここに来る時期は、9月の中頃までには来るであろう。待つことも仕事のうちか』と独りごちて我に返る。
 『あ~あ、そうであった。ギアスに明日のヘルメス艇の運用の件を伝えなければ』
 多忙であった今日の作業が終わる。
 テスト航走の評価、意見等の総括のミーテングの頃合いとなる。
 メンバーが場に集まる。
 陽は没している、浜はまだ明るい、場に集まったメンバーの顔が残照の茜に映えている。
 パリヌルスがギアスに声をかける。
 『ギアス、頼む!宵がすぐ来る、一つでいい、かがり火を燃やしてくれ。場の真ん中に力いっぱい明るくな』
 場の中央にかがり火がたかれる。
 パリヌルスが集まった一同に声をかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1275 

2018-04-27 08:38:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ドックスの周りに集まった作業者の員数は30人余りである。
 『多いな』とドックスがつぶやいて思案する。
 『いやな、戦闘艇のテスト航走に必要とする人員が15名なのだ。よし!ジャンケンで決める!ジャンケンをして勝った者を戦闘艇に乗せる』
 集まった一同から声があがる。
 『お前ら、ガヤガヤ言わずに、向かい合って並べ!俺が合図したらジャンケンをするのだ。いいな!』
 ドックスが一同を見廻す。
 『ジャンケンのルールはこうだ。ジャンケンを3回する、2度以上、勝った者を勝ちとして戦闘艇に載せる』
 ドックスが手を打って合図をする、向かい合った者らが、声をあげてジャンケンをする、勝った者がこぶしをあげて勝利を示す。ドックスが勝った者の数をよむ、16人いる。
 『これは困ったな。まあ~いい、乗り手一人を増やして乗せる』
 ギアスは、漕ぎかた一同を集めて、これから行うテスト航走の詳細を説明をしている。
 パリヌルスは、イリオネスにテスト航走の事情の説明を終える。
 乗艇する者ら全員がテスト戦闘艇に乗る。ギアスが乗艇者全員の座乗位置をチエックする、事細かに艇上の状態を整える。
 出走前の戦闘艇の諸状態のチエックをする、彼は、喫水状態を念入りにチエックした。
 ギアスが出走の指示をする。
 『漕ぎかた!出航用意!漕ぎかたはじめ!』
 櫂が海を泡立てる、艇が海面を割り始める、間をおくことなく、艇が漕走のマックス状態となる。
 テスト戦闘艇は、先の艇と同じコースどりで進む、海上状況には大差なく、順調、快走でテスト航走を終える。
 初めて戦闘艇に乗った作業者らは、自分らが懸命に手掛けて造りあげた戦闘艇に乗って海上を駆ける、その感動と興奮を覚える。
 『俺らが建造した船が、海上をあのようにして進むのか。詳しいことはわからないが、大感動だ!』
 ジャンケンに負けて戦闘艇に乗れなかった者らに戦闘艇で海上を駆けた状況を誇らしげに詳しく話して聞かせる。
 テスト航走を終えて艇を下りたパリヌルスは、テスト航走の評価をする会合を開く。
 アエネアス、イリオネス、オロンテス、オキテス、ドックス、ギアスと漕ぎかた五人を招集して、建造の浜の一隅に場をもうけて、各自目線の評価意見感想を聴取する。
 パリヌルスは、出席者一同から順序を追って、多岐にわたるチエック項目の事情を具体的に念入りに聴きとり木板に書き留めていく。
 また、ギアスの操船留意、操船指示、漕ぎかたらの対応、艇の初動具合、航走中の櫂の操作具合、艇の制御具合等について、先の戦闘艇のテスト航走と荷を積載しての戦闘艇のテスト航走では、どのように違っていたかを詳しく聴きとる。操舵を担当していたカイクスからは操舵について、どのように差異を感じて操舵対処したかを詳しく聴きとった。
 航走状態の差異については、ギアスに多くを語らせる。
 戦闘艇の建造目標である船速についての評価、意見、感想を述べてもらう。終りにギアスと漕ぎかたらに制動操船の差異を語らせた。
 パリヌルスは、オキテス、オロンテス、ドックス、ギアスの四人に夕食後に、テスト航走の評価の総括をすることを伝える。
 戦闘艇のテスト航走の評価と意見聴取の会合を終えた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1274

2018-04-26 06:34:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスに同行しての営業航海、試作戦闘艇での航海であった。クレタ島東地区のマリアまでの長途の航海である。オキテスは、その時のことを瞼の裏に思い起こしている。
 彼はイリオネスの表情をうかがう。
 オキテスは、完成戦闘艇の洋上における航走状態を体全体をセンサーにして感じとろうとしている。
 体感する船速、衝角構造体の波割り、流線形状艇尾船底が引く航跡等思いつく多くの変化を観察、体感に努める。
 知っている言葉を駆使して頭中にまとめ上げる。
 走行状態を計る計測機器が何一つないこの時代、自前で建造した船を物差しにして航走状態を評価している。
 オキテスの知る限り、この時代における最速の船であろうと考えての評価である。
 艇は中型船ならではの有利性の船速で洋上を走行している。
 その航走状態が艇上の者らを感動させている。半刻余り洋上を航走してテスト航走を終える。
 完成戦闘艇が浜に戻ってくる。浜においてクレタ海洋上を波を割って駆ける戦闘艇の姿を遠目で見ていた者らが航走を終えて浜に帰ってきた戦闘艇を盛大な拍手と歓声で迎える。
 艇上の者ら全員が、この時代の如何なる船舶も実現しえない最速の船速を体感し終えて浜に戻ってきたのである。
 試乗したアエネアスら、パリヌルスら、ギアスと漕ぎかたの一同は、感動と興奮の面持ちで艇から下りて浜に立つ、彼らを取り巻く浜にいる者ら、またまた起こす拍手と歓声、興奮のるつぼである。
 パリヌルスとオキテス、ドックスの三人は航走結果の満足と感激で手を握り合う、その傍らにアエネアスとイリオネス、オロンテスが立つ、アエネアスが三人に声をかける。
 『おう、お前らやったな!あの船速の速さに驚いた。いい特徴を備えた船に仕上っている』
 アエネアスがジイ~ッと三人と目を合わせる。言葉を継ぐ。
 『速さを持ってすべてを制していく!その気概をもって船舶を建造していく!この仕事に携わっている者らを誉めてやってくれ』
 アエネアスは感動している、檄した口調で告げる、三人の手を強く握りしめる、浜は感動で沸いた。
 パリヌルスは、もう1艇のテスト航走を実行するについてオキテスとドックス、ギアスの三人に話かける。
 『次のテスト航走は、想定最大積載量状態でテスト航走をする』
 『それをよしとして、どのように状態を設定しようと考えている?』
 『作業の携わった者ら15人を乗せての航走だ。オキテス、お前の考えは?』
 『パリヌルス、了解した。ドックス、手配を頼む』
 『解りました』
 ドックスが建造に携わった作業者らを呼び寄せた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1273

2018-04-25 08:14:37 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『はい!西からいい風が来ています。沖に出てみないと海上状況がわかりませんが』
 『解った。コースどりは、いつものように小島の西岸を北上して沖に出るコースでやってくれ!』
 『解りました』
 『おう、ギアス!帆が少々大きくなっている、帆張り作業、喫水と艇の深さ構造の適否をチエックしてくれ。それから、カイクスに操舵具合、船速に対応しての艇尾の振りに注意するように言っておいてくれ』
 『解りました』
 ギアスと漕ぎかた一同がテスト航走する完成した戦闘艇に乗りこむ。
 アエネアスら一同が艇上の人となる。
 ギアスが漕ぎかた一同にコースどりを説明する、出航の指示を発する、櫂が海面を泡立てる、艇が波を割り始める。
 艇は西風に抗って、ほどなく小島の南端に到る、西風の状態を読みとる、海上状況に対応した離岸距離を勘案する、北へと進行方向を転換する。右から受ける西風が艇を岸に吹き寄せようとする、カイクスが操舵で抗う。
 パリヌルスがギアスに指示をする。
 『ギアス!漕ぎかたに指示をするのだ!全力漕走で北へだ!船速をみる』
 『了解!』
 漕ぎかたへのギアスの指示、力を尽くしての櫂操作、櫂漕ぎのしぶきが飛ぶ、艇上の一同に降りかかる。
 。パリヌルスの声が飛ぶ
 『オキテス!船速の感じはどうだ?』
 うなずくオキテス、ドックスと目を合わせる、うなずくドックス。オロンテスも速度を増した船速を感じ取っている、パリヌルスに目線を送ってくる、ギアスが感動の面持ちでパリヌルスと目を合わせる。
 アエネアスとイリオネスも顔を見合わせてうなずき合っている。
 ギアスがパリヌルスに声をかける。
 『パリヌルス隊長!いい速さです!漕ぎかたらも速さのノリに驚いています。西風の強さですが、風力は通常です。もう少し北上して進行方向を東へと転じます』
 『おう、了解!』
 方向転換点に到る、ギアスからカイクスに指示が飛ぶ。
 『カイクス!進行方向、東へ』
 『全帆帆張り!櫂をあげ!』
 指示一発!瞬時、帆張り完了、帆が風をはらむ、帆走する艇、加速する、白うさぎが跳ぶ海上を波を蹴散らして戦闘艇が快走する、しぶきが風に舞う。
 完成した戦闘艇の帆の大きさは、試作戦闘艇、新艇の帆に比べて少々大きめにできている。
 パリヌルスとオキテスは、帆がはらむ風量の大きさを確かめる、同時に走行の安定性についてもチエックをする。
 『おう、パリヌルス、帆ばらみ、帆が受けとる風量の違いを実感するな!』
 『オキテス、帆張り、受け取る風量、帆走状態等、満帆効果を試作戦闘艇と比べて評価を頼む』
 『おう、了解!』
 オキテスは、完成戦闘艇の帆走状態を営業航海での試作戦闘艇の帆走状態を思い起こして比較チエックしていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1272

2018-04-24 07:19:01 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう、オキテス、8月も残すところ、あと8日だ。じきに9月になる。10月の売り出しに関する計画を立てて、段取り、各関係諸方との折衝を考えることだ』
 『解りました。諸事を決めて、関係筋と話し合う算段をします』
 イリオネスが力強く一拍に手を打つ、口を開く。
 『一同ごくろうであった。造船事業における、向こう4か月に及ぶ船舶の建造計画ができた。これに基づいて諸事を実行していく。各自、その責任を全うしてくれ』と言って一同を見廻す。
 イリオネスの言葉が続く。
 『脚下照顧!確かな一歩を前へだ!俺からは以上だ』
 一同と目線を合わせる。
 オキテスが会議の終了を告げる。
 『一同に今日のこれからを告げる。手掛けていた戦闘艇2艇の建造が終了した。今日、午後2艇のテスト航走をする。昼を終えたら建造の場に集まってもらいたい。以上である。今日の会議を終わる』
 ドックスがオキテスに声をかけてくる。
 『オキテス隊長、私は、戦闘艇2艇のチエックを見て、建造用材の置き場に行きます。隊長、同行を願います。ガリダ頭領に手配する建造用材の算段をします』
 ドックスはここで言葉をきって、オキテスと再度目を合わせる。
 『また、9月からの建造に取り掛かるための建造の場の整備を考えねばなりません』
 『おう、そうだな。建造計画艇数が4艇となる。10月の建造艇数に関する建造用材の置き場についても一考を要するな。ドックス、それについても考えてくれ』
 『解りました。考えてみると建造用材の置き場を2か所とする必要があるように考えられますね。建造用材の準備が建造作業に先行するわけです』
 『用地が各所にある、作業展開に好適地を選んで決めてくれ』
 『解りました。隊長、手がすきましたら来てください。私は建造の場にいます』
 『パリヌルスと二、三、打ち合わせたらすぐ行く』
 『待っています』と告げてドックスは場を去っていく。
 『パリヌルス、その2件だよろしく頼む』
 オキテスが打ち合わせを終える、そそくさと場を立ち去る、ドックスの待つ建造の場へと急いだ。
 浜が午後の時となる。
 建造の浜に人が集まってくる。アエネアス、イリオネス、オロンテスが姿を見せる。ギアスと漕ぎかた一同が来る。
 パリヌルスがギアスにテスト航走の要領を伝える。
 『おう、ギアス!』
 パリヌルスが少しばかり緊張気味の声で問いかける。
 『風の具合はどんな具合だ?』
 ギアスが改まった表情で答える。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1271

2018-04-23 08:18:40 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスが一同の顔に目を運ぶ、おもむろに話し始める。
 昨日、キドニアの集散所において談合した諸事を会議の席で一同に報告をする。
 また、奇しくもガリダと邂逅したことについても話し、明日、ガリダと会って建造の用材の手配をすることを一同に伝える。
 それらの件をパリヌルスと話し合って建造計画の案を作成に及んだことを一同に報告する。
 アエネアスは、オキテスの話を聞いて建造計画案が作成過程を理解する。
 イリオネスが問いかける。
 『この建造計画案によると月次の建造計画艇数が4艇である。また、9月10月の建造計画艇数については理解できるが、11月12月の建造計画艇数の何故だが、この2件の説明をしてくれ』
 イリオネスの問いかけについてパリヌルスが説明する。
 『軍団長の質問について説明します。月次建造計画艇数を4隻にしているのは、新艇を5艇を建造しました。いま思い浮かべると背筋が凍るような完成度でした。その経験に基づいて立案した建造計画艇数です。また』
 パリヌルスは、ここで言葉をきり、一同と目を合わせる。
 『11月12月の建造計画艇数は、記念売り出しの成果を考え予想した艇数ですが、10月の売り出しの成果によって、建造計画艇数を修正しようと考えています。また、この件ついてはテカリオンからの受注期待も含んでいることを伝えておきます』
 『おう、了解した』
 進行役を務めているオキテスは、会議の場の雰囲気を推しはかり場を見まわす。
 アエネアスとイリオネスが、二言三言言葉を交わしている。
 イリオネスが口を開く。
 『おう、オキテス、建造計画案について、統領も私も理解し納得した。申し分がない、検討の必要はない。承認する!出席者全員の意向を確かめてくれ』
 『解りました』
 オキテスが一同に語りかける。
 『パリヌルスと俺は、この建造計画案の立案者である。オロンテス、ドックス、両人の意向を聞く』
 オロンテスが口を開く。
 『計画内容を理解した。異論はない、申し分のない建造計画案である。承認いたします』
 『オロンテス、そのように言ってくれるのか、ありがとう。おう、ドックスはどうだ?』
 『はい、私の考えもこの建造計画案に異論がありません。このような計画があって、建造の仕事が展開していく、安心して日々の作業に取り組めます』
 アエネアスがドックスの言葉にこたえる。
 『おう、ドックス、お前、いいことを言ってくれる。安心立命の境地というところだな。安心して日々の業務を進めていけるように、我ら一同、力を尽くしていく!いいもの造りに励んでくれ』
 『解りました』
 イリオネスがオキテスに声をかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1270

2018-04-20 08:32:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おはよう!オキテス君』と聞こえたように感じて目を覚ますオキテス。
 浜が多忙な朝の時間である。
 オロンテスがキドニアに向かうセレストスと打ち合わせている。
 オキテスは、朝行事を終えて建造の場へと足を運ぶ。
 『おはよう、ドックス。今日の予定だが心得ているな。戦闘艇のテスト航走の点検をしておいてほしい。ところで、明日だが、ガリダが来る、そこでだが、9月と10月の建造用材の手配をするその算段をしておいてくれ、今、渡した建造計画案に基づいて考えてくれ。明日、アサイチに打ち合わせをやる』
 『解りました』
 『オ―トットト!ドックス、今日の会議にお前も出席することになっている』
 『承知しました』
 パリヌルスは、浜に立っている、真剣な表情でアエネアス、イリオネスと話し合っている、話が終わる、表情をくずすことなく場から去っていく。
 会議開催の刻限が迫る、アエネアスの宿舎前の会議の場に一同が揃う。
 『おう、一同!そろったな、会議を始める。一同、腰を下ろせ!』とイリオネスが声をかける。
 一同が緊張している。
 『おう、オキテス、今日、一番の議題はなんだ?』
 『はい、建造計画案の決議です』
 『そうであったな。今日は、お前が進行役を務めろ』
 『了解しました』
 オロンテスが一同に声をかける。
 『実はですね』と言って一同と顔を合わせる、柔らかく親しみを込めた目線である。
 『先日来、試しに焼き上げたパンです。集散所のパン売り場で試供したら、これは旨いと好評を得たパンです。試食に持参しました。一同の評価次第で売り出そうと考えています』
 オロンテスが場の真ん中にパンをおく、一同の手が伸びてくる、口に運ぶ、アエネアスが一同を見回して声をかける。
 『おう、オロンテス、フルーツの風味、香味だな。なかなか優雅なパンに焼けているではないか、味の新境地といったところだな』
 『おう、いい味、香り、旨いパンにできている。商品として売り出す予定にしているのか?』
 『はい、品そろえを増やしていこうと考えています。売り上げを減らさない、少しづつでいいから増やしていきたい。そのように考えています』
 『お前の業務に関する心情がわかる。いい結果をものにしてくれ』とイリオネスが言ってオキテスと目を合わせる。
 『オロンテスの焼いたパンを口にして力みがほぐれたな。オキテス、会議を始めてくれ』
 『はい!パリヌルス!統領と軍団長に建造計画案を記した木板、渡してあるな』
 『おう、渡してある』
 オキテスが一同と目を合わせる、気鋭のこもった目線である、場の気がひき締まる、目線がオキテスに集まる。
 『一同』と声をかけて、場を見渡す。
 『手元にある建造計画案を見ていただきたい。この建造計画案は、昨日、集散所において打ち合わせた内容を組み込んでパリヌルスと検討して作成した建造計画案である』と述べて少々の間をとる。
 会議を進めるコツ、呼吸を気にかけた所作であった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1269

2018-04-19 07:22:35 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『状況は、集散所関係の引き渡しの艇種と艇数がほぼではあるが決まっている。不明なのはテカリオンの動向だ、彼のところから注文が入るか否かがわからない』
 『そういった状況か。お前、テカリオンからの受注を期待しているのか?』
 『それはある。それがあっても、この建造計画艇数で対応していけると考えている』
 『おう、パリヌルス、よくわかった。お前の読みが理解できた。ここに書かれている建造計画艇数を承知した。俺として、補足訂正は何もない』
 『ここに書き記した建造計画艇数の9月、10月分は、この建造艇数として事にあたる』
 『了解!明日の会議での議決あるのみだな。パリヌルスごくろうであったな』
 『おう、オキテス、ごくろう!』
 二人が担当した計画作業が終了する。
 『おう、オキテス、新艇の価格の件だが、うまくいったか?』
 『おう、サービス添付条件は戦闘艇に準じるカタチでうまく決まった』
 『サービス添付条件は、ほかの船にはない船の艤装である、櫂にしても他に見ることのできない特徴がある。売りの好条件として提示できる』
 『おう、納得!納得!』
 二人の建造計画案に関する意見交換が終わる。
 キドニアから帰ったオロンテスが建造の場に姿を見せる。
 『おう、オロンテス、ごくろう』
 『おう、両人、ごくろう』
 『向こう4か月、9月から12月までの艇の建造計画案ができあがった。オキテスが持ち返った情報を組み入れての計画案だ』
 パリヌルスが出来あがったばかりの建造計画を書き記した木板をオロンテスに手渡す、見入るオロンテス、話しかけるパリヌルス。
 『おう、オロンテス、9月、10月の建造計画艇数はそれでいく。10月の記念売り出しの状況を見て、11月、12月の建造計画艇数の修正をして建造を遂行することにしている』
 『そうか、それはいい。建造計画案として申し分がない。明日の会議は、建造計画の討議ではなく、建造計画承認会議だな』
 オロンテスの言い分を受けてオキテスが答える。
 『そういうことになる。午後には完成した戦闘艇2艇のテスト航走をやる』
 『了解!明後日だが、ガリダが来るのではないのか』
 『そういうことになっている。明後日のガリダと打ち合わせる建造用材の算段をしなければならない』
 『おうおう、多忙はいいことだ』
 オロンテスが笑いながら言う、この言葉で三人の話し合いが終わる、『軍団長は?』と問いかける。
 『おう、宿舎のほうだ』
 『そうか、そちらへ行く』
 オロンテスが建造の場をあとにする。
 『おう、オキテス、お前と俺との打ち合わせもこれにて終了ということだ。俺は持ち場に行く』
 『おう、パリヌルス、では、明日な』
 パリヌルスは建造の場から去っていく、浜に終業の時がおとずれていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1268

2018-04-18 08:00:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスが考えた末に立案した建造計画案である。
       
            戦闘艇および新艇 月次建造計画
            
            9月   10月    11月   12月
  
      戦闘艇  3 艇   3 艇    3 艇   4 艇

       新艇  1 艇   1 艇    1 艇    --

 作成した建造計画案を書き記した木板2枚をオキテスに渡す。
 『おう、オキテス、1枚はドックスの分だ。計画から派生する計画の立案に必要だろう。この計画案について互いの構想、意見を話し合う、いいな』
 『おう、了解!』
 計画案を書き記した木板をジイ~と見つめるオキテス。
 『この計画について、オキテス、お前の考えは?建造する艇数がこれでいいか、お前の構想と意見を聴きたい。また、この計画案について俺の意向を伝えておきたい』
 『解った。まず、お前の意向を聞かせてくれ』
 『この事業を進めていくうえで、この造船の仕事に携わる人員のことを考えた。我々が手掛けた新艇の建造艇数は5艇であった。あの時は物事を綿密に検討することなく作業を推し進めた』
 『そういえばそうであったな。統領の意向でやれるならやってみろで、いけいけどんどんで作業を進めた』
 『その結果、出来あがった新艇は、鳥肌が立つようないい加減な部分もあった。今、考えると背筋が凍る』
 『だが、どこに出しても誇れるいい船に出来あがった。我らが船造りに自身が持てるようになったといえる』
 『その時の状況を思い出して月産艇数の上限を決めた。これについてオキテス、お前の考えを聴きたい』
 『月産艇数のの4艇、これについては異論はない!建造計画艇数として最適の艇数であると考える』
 『解った。次は月次の建造艇数だが、各月ごとの建造艇数はどうかだ。引き合いが決定するであろうという状況も考えて、9月、10月の建造計画艇数を考えてくれ』
 『解った。9月、10月の建造計画艇数はこれでいい。この艇数にあれこれはない』
 『11月、12月の建造計画艇数は10月の売りの動向次第で10月の月末に協議したうえで11月の建造計画艇数を修正して建造していこうと考えている』
 『12月の建造計画艇数も状況に応じて、建造艇数を決めるとすればいいではないか。ここに書いてある艇数はあくまでも案としていけばいいと考える』
 『おう、それでいい!そこに書いてある艇数は予定艇数であって変更ありの艇数である』
 『解った。理解した』
 オキテスが計画を納得したとうなずく、パリヌルスがうなづき返した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1267

2018-04-17 08:22:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『何っ!売り出しの実行にクレタの10月の天気具合か?解った。彼らにそれとなく聞いておく』
 『今、お前からの2件の情報で立案した建造計画案を書き記した木板が半刻後に出来あがる。それを見て、改めて再度検討する。それで決定とする』
 『了解!出来あがりを待つ、その間に軍団長に報告してくる』
 オキテスが場をあとにして、イリオネスのところに向かう、パリヌルスは建造計画案を記入した木板の作成作業に集中する。
 イリオネスに報告を終えたオキテスが建造の場に戻ってくる、カッキリ半刻後であった。
 『おう、オキテス、出来あがっている。目を通して最終検討だ。それを終えて明日の会議用に建造計画案を書き記した木板を員数分整える』
 『解った。手数をかけるな、パリヌルス』
 二人は建造計画案を見て意見を交わす、4か月の期間にわたる戦闘艇および新艇の月間建造艇数について検討する。
 パリヌルスは、その建造予定艇数の根拠について説明する。オキテスがその根拠を理解する、売り出しを行う10月の受注状況に基づいて計画の修正、建造の場の状況修正について二人は話し合う。
 『オキテス、そういうことだ』
 『充分に理解した。申し分のない計画案だ。明日の会議が建造計画の立案検討ではなく、計画実行承認会議だな。この計画に基づいて、ガリダに建造用材の手配をする。販売実行目標も明確にできる。パリヌルスありがとう』
 『オキテス聞いてくれ。計画を目標として実行していく、計画結果を取得する。好循環で展開してくれることを願うというのが俺の正直な気持ちだ』
 『売り出しを実行して、目標とする結果を得る。販売を担当する俺らの才覚と努力の結果ということになる。パリヌルス、力を尽くすことを約束する』
 『よろしく頼む』
 パリヌルスは、余念を持つことなく、明日の会議に提示する計画案を木板に書き記す作業に徹する。
 オキテスは、計画案に目を通し、ガリダに提示する建造用材の調達計画の想を練る。
 船の建造に携わる人員計画を考える、後日、パリヌルス、ドックスと三人で考える素案を思考する。
 オキテスは計画段階における手配の段取りをする。
 『おう、パリヌルス、この計画書だが、我々五人とドックスの六人が持ち、計画を共有して事業を進展させる。そのようなカタチがいいと考えるのだが』
 『お前の言うように、そうであるべきだと考えて作っている。任せておけ!』
 『おうっ!』
 パリヌルスは、建造計画案を書き記した木板を六枚造りあげた。