『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1424

2018-11-29 03:43:29 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ダックスが漕ぎかたらを叱咤して出航準備をしている。
 オキテスがダックスに食糧調達のことの成否の報告を聞く。
 『そうか、うまくいったか、重畳!支払いのほうは、あれで足りたか?』
 『はい、足りました。一応、全額使ってきましたよろしですね』
 『まあ~、いいだろう。マリアにおいての用件は終わった。帰途に就く、いいな。両浜頭を案内してくる出航体制を整えてくれ』
 『了解しました』
 オキテスが両浜頭を艇上に案内する。
 沈めていた碇石を引きあげる、艇は係留岸壁を離れる、イラクリオンに向けて波を割った。
 空の中段の位置に昇ろうとしている太陽が容赦することなく艇上の者らを照りつける。
 風と言えば西からの微風である、漕ぎかたらは懸命に漕ぎに努めている、彼らは玉の汗を流す、海を掻き艇を進める。
 艇は、マリアを出て一刻半余りの時を経て、イラクリオンの港に着く、エドモン浜頭が下船する、テムノス浜頭に声をかける。
 『おう、テムノス浜頭、今日、昼からクノッソスの集散所に出かけて話をつけておく。事の詳細を伝える、レテムノンの件も話しておく。任せておいてくれ』
 『おう、よろしく頼む。俺も出向けばいいのだが、今日はこの船で帰る。近々に出直す。そういうことだ!』
 『おう、解った!』
 エドモン浜頭が話をオキテスに振る。
 『おう、オキテス隊長、ごくろうであった。話はうまくついた。杞憂することはない。売り出し、展示試乗会の件、当方が準備を整えて、オキテス隊長の来るのを待っている。全てがうまくいくようにとりはかる。帰ったら統領、軍団帳によろしく伝えてくれ。帰りの航海、充分に気をつけてな。無事を祈る!では』
 『エドモン浜頭、いろいろと配慮をいただきありがとうございました。これからの件よろしく願います』
 『おう、大船に乗ったつもりでいてくれ!』
 『ありがとうございまいた。浜頭の邸宅まで持参するのが筋なのですが、ここで渡します、よろしいでしょうか、私らが焼いた堅パンです。皆さんで賞味してください』
 そのように言って、堅パンの入ったケースを3ケース手渡す。
 『おう、ありがとう!遠慮することなくいただく。帰りの道中気をつけてな、オキテス隊長!』
 二人は握手を交わす、別れる。
 オキテスは、今日の航海の予定もあり先を急いだ。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1423

2018-11-28 03:52:28 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 ダントス所長が口を開く。
 『オキテス隊長、イラクリオン、レテムノンの船舶の売り出し、展示試乗会の開催の日程等はどのようにしていますかな?』
 『イラクリオン、レテムノンにおける船舶の売り出し、展示試乗会は、エドモン浜頭、テムノス浜頭からの話をうかがったうえで、マリアの集散所の展示試乗会を終えたあとにと考えています』
 『解りました、いいでしょう。エドモン浜頭、テムノス浜頭、どうぞ、売り出し、展示試乗会の開催を催行してください。事の次第を承知しました』と言ってダントス所長はオキテスに体を向ける、目を合わせる。
 『オキテス隊長、事の次第、これからの商取引の形態がどうあるべきかを解っていられますね。船舶の注文主との販売契約は、全て集散所が行います。また、注文主に対する販売条件等もクノッソス、マリア、キドニアの集散所の定めるところは同条件です』
 『解りました。今言われた約束事はしっかり守ります。ありがとうございます』
 エドモン浜頭がダントス所長に話しかける。
 『ダントス所長、ありがとう!これでクノッソスの集散所に俺の顔が立つ、テムノス浜頭の顔も立つ。販売に関する約束事はしっかり守ることを約束する』
 『エドモン浜頭、テムノス浜頭、当集散所のこと、今後ともよろしく願います』
 『充分に承知しています。ともに手を取り合って前に進んでいかねばなりません』
 両浜頭とダントス所長が手を握り合う。オキテスも握手を交わす。
 『ダントス所長、朝、早く来て話し合いができた。ありがとう。これでクノッソスの集散所にいい報告ができる』
 話し合いを終える、両浜頭とオキテスの三人は、マリアの集散所をあとにする。
 係留の浜に戻る道中、エドモン浜頭がオキテスに話しかける。
 『おう、オキテス隊長、話が荒立つことなく、ダントス所長と話がついた重畳と言わねばならん。あとは、クノッソスの集散所の営業担当と話し合って、話をまとめる』
 二人は顔を合わせる。
 『オキテス隊長、話し合いの中で俺の言った、クノッソスの集散所から話があったといったのは嘘である。折衝は、詐術を使って話をすんなりとまとめる、それに必要とする技術だ』
 『話の筋が通っていました』
 『それはそうだ、話には真実味が大事なんだ。あ~あ、それからだが、あの販促ツールだが俺のところへは何枚くらいくれる?』
 『はい、40枚くらい渡したいと考えています』
 『おう、それでいいだろう』
 テムノス浜頭が話しかけてくる。
 『俺の方には何枚くらい予定している』
 『はい、30枚、予定しています』
 『ほう、そうか。それくらいでいい!』
 『おう、オキテス隊長、マリアでの用事は終わった。帰る!』
 係留の浜に着く、オキテスが声をかける。
 『ご苦労でした。艇を見てきます』
 『おう!』
 オキテスは、係留している艇の状態を確かめに歩を向けた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1422

2018-11-27 03:12:39 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 エドモン浜頭一行が集散所の詰め所の入り口に立つ、ダントス所長が二人の浜頭とオキテスの姿を見とめる、彼ら三人を出迎える。
 『おはようございます。両浜頭早いですね』
 『おう、おはよう!急ぎの用件が生じた、そういうわけだ!一時も早くダントス所長と話し合っておきたい!そのように考えてな』
 『そうですか、うかがいます。どうぞ、こちらへ』と一行三人を応接の間へと招じ入れる。
 『まあ~、腰を下ろしてください。あっ!オキテス隊長も一緒ですな、昨日は留守にしていました、失礼しました。発注した戦闘艇の建造の近況、売り出しの件等の報告を担当から聞きました。了解しました。そのうえ結構な手土産を頂戴しました。ありがとう。厚く礼を言います』
 ダントス所長がオキテスとの話を終える、両浜頭に身体を向ける。
 『待たせました。エドモン浜頭、テムノス浜頭、時候の挨拶は抜きにして急ぎの用件をうかがいます。言ってください』
 『一昨日のことなのだ。クノッソスの集散所に呼び出された。船舶の話である。いきなり、問いただしてくるではないか、船の売り出しはどうなっているのだ?と問いただされた』
 『ほう、それはそれは!』
 『その件について、俺ら二人は、マリア集散所の売り出しに少々手を貸したことを話した。クノッソス集散所の営業管理の担当は、キドニア、マリアの集散所の船舶の売り上げについてよく知っていた』
 『それはそうでしょう。特徴のある船舶であり、あれだけの大型商品ですから、それは気づくはずです』
 『10月の月初からの船舶の売り出しの件についても知っていましたな。クノッソスの集散所として黙ってみているわけにはいかんというわけだ』
 『それはそういうことになって、当然ということになりますな』
 『そのようなわけで、直ちにこの仕事にとり掛かれという、きつい達しに到った。そこに昨日、キドニアにおいて船の建造をしているところの者が来たというわけだ。テムノス浜頭もそのキドニアの集散所から船を買っている。クノッソス集散所として指をくわえてみているわけにはいかんということで、俺ら二人に船の売り出しをやれということになった』
 『そうですか!手を取り合って船を売ろうという話、あれはなかったことにしなければならないということですか』
 『おう、ダントス所長、察しがよくて話が早い!そこで、訪ねてきたキドニアにおいて船の建造をしている者、このオキテス営業担当に話を詳しく聴いたわけだ』
 エドモン浜頭が話しに間を持ってダントス所長と顔を合わせる、話を続ける。
 『俺らとして彼の話を理解した。急遽、イラクリオン、レテムノンにおいて船舶の売り出し、展示試乗会をやるということに決めた。よろしく願いたい』
 『エドモン浜頭、浜頭の言われること解りました。しかたのない仕儀です。集散所の元締めのクノッソスの集散所の言うことです。我々として了解しざるを得ません』
 ダントス所長は、そのように言ってオキテスと顔を合わせた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1421

2018-11-26 04:21:12 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 クレタ島マリアの朝が明けてくる。
 オキテスが目を覚ます、空を仰ぐ、まだ眠りにつかない星が光を振りまいている。
 オキテスの隣で寝をとっているダックスが目を覚ます、気づくオキテス。
 ダックスにささやく。
 『おう、ダックス、起きたのか?』
 『はい、起きています』
 『朝行事に行くか』
 『え~え、行きましょう。蚊が少なくなりましたね。よく眠りました』
 『そうか、それはよかったな、行くぞ!』
 二人は起きあがる、気配を感じる、起きあがったのは二人だけではない、三、四人が起きあがって、朝明けの海へと歩を運んでいく、海に身を浸す。
 東の水平線に目を走らせる、黎明の時が過ぎ、明るくなってきている。
 オキテスとダックスの二人が波打ち際に立つ、朝行事を終えた者らが朝の挨拶言葉をかけてくる。
 『おはようございます。いい朝です』
 『おう、いい朝だ!おはよう!』と二人が返す、海に身を運ぶ、身を浸す、陽の出を待つ。
 太陽が水平線の幕を破る、顔を出す、第一射が届く、彼らの今日が始まる。
 ダックスの声が飛ぶ。
 『全員一同!艇の点検整備にかかれ!』
 『おう!』『おう!』『おう!』と返事を返して作業に就く。
 ダックスが数人に指示して朝めしの支度にとりかかる、持参したパンの最終である。
 一同が朝めしを始める、パンは乾いてパサパサである、ぶどう酒で胃に流し込む。オキテスとダックスが話しこむ。
 『隊長!今日の昼以後の食糧、パンを調達しなければなりません。指示を願います』
 『おう、了解!俺のアサイチの業務は、浜頭らと集散所に出向き、用件を終える事なのだ。そのとき、ダックス、四、五人連れて同道してくれ。食糧、パン等の調達をやってくれ』
 オキテスは、そのように言って、持参しているドラクマ銀貨を入れた小袋をダックスに手渡す。それを終えてオキテスは、このあとのスケジュールを勘案する、マリアの集散所との打ち合わせ事項を思い起こして思案する。
 そのオキテスの視野の中に二人の浜頭の姿を見とめる、起ちあがる、彼らに向けて歩き始める、歩速を速める。
 『エドモン浜頭、テムノス浜頭、おはようございます。いい朝です!よく晴れています、この上ない、いい天候です』
 『おう、おはよう!よく晴れた、いい朝だ。オキテス隊長、やる気満々だな。そうだ、その意気!その溌溂だ!行こうか』
 『はい!行きましょう。用件これありで集散所で用事をする者、五人が同道します』
 『おう、解った』
 一行は集散所に向けて歩き始める、オキテスがダックスに声をかける。
 『おう、ダックス!そういうことだ。調達かた、よろしく頼む』
 『解りました。用件を済ませましたら先に浜に戻ります』
 『おう!』
 オキテスは、両浜頭に連れだって、集散所の詰め所へ歩を進めた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1420

2018-11-23 14:28:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 係留岸壁の浜に戻ってきたオキテスにエドモン浜頭が声をかける。
 『おう、オキテス隊長、ごくろう!どうだった?』
 『はい!行って来ました。ダントス所長は留守でした。担当との打ち合わせをつつがなく終えました』
 オキテスの報告を聞いて、テムノス浜頭が二人に話しかける。
 『おう、いいだろう。エドモン浜頭、オキテス隊長との打ち合わせもある。浜頭のマリア営業所のほうへ行きましょうや』
 『そうだな、頃合いも頃合いだ。オキテス隊長、行こう』
 『はい!』と答えるオキテス、ダックスと二言三言打ち合わせをする、両浜頭に同道して係留岸壁の浜をあとにした。
 一行はエドモン浜頭のマリア営業所へと歩を向ける、係留岸壁の浜から西に向けて歩んで行く、程なく目指したエドモン浜頭のマリア営業所に着く。
 エドモン浜頭が戸口に立って声をかける、建物内から返事が返る、浜頭の息子と思しき者が三人を迎える。
 『おう、変わったことはないか?』
 『これといってない!』
 『そうか、それは重畳!今夜、テムノス浜頭が泊まられる、よろしく頼む。それから小部屋を借りるぞ!』
 『解りました。部屋は使ってください』
 三人が小部屋に落ち着く、テーブルを囲んで腰をおろす、エドモン浜頭が二人と顔を合わせる、話す段取りは営業所へと歩みながら決めてきている、おもむろに話し始める。
 『オキテス隊長、まず、聞きたい!船舶の売り出しに関する詳細、展示試乗会の開催日程等について説明してほしい』
 『解りました』
 オキテスが売り出しに関する詳細を説明する。
 『ほう、なかなかの売り出し計画だな。キドニアの集散所もよく考えている。解った。次は、展示試乗会の開催日程だ』
 『はい、この日程が催行予定です。日付は集散所暦で決めています』と言って、日程を書き記した木板をエドモン浜頭に手渡す。
 浜頭が部屋の隅においてある木板と木炭を手に取り、木板に書きつける。
 『おう、いいだろう。完成新船の引き渡しが優先されるわな。万事、了解した。この日程を承認する。テムノス浜頭、レテムノンはこの日だ、了解したな』とエドモン浜頭が念を押す。
 『了解しました』
 『オキテス隊長、イラクリオンとレテムノンの展示試乗会はテムノス浜頭と俺の権限で開催の運びとなる。クノッソスの集散所の営業管理下において、これに関する一切を俺ら二人に一任ということになる。俺ら二人の権限の及ぶ範囲について解っているかな』
 『はい、解っているようで、解っていないような気がしています』
 『クノッソスの集散所の件だが、販売契約、売り上げの回収、そして、各集散所と協議の上、担当集散所が決済に及ぶわけだが、クノッソス分については、俺ら二人が責任を持って対処する。安心して任せられたい』
 『解りました』
 『あとは、マリア集散所との話し合いは、この私が話をつける。売り出し、展示試乗会を力を尽くして遂行してくれ。我々も懸命に販売に力を注ぐ!展示試乗会に使用する埠頭岸壁は俺らが手配して整える』
 『ありがとうございます』
 『これはやってほしいといった要望はあるかな?例えばここはこんなふうにとかだ』
 『それはありません。展示試乗会催行は当方でも段取りしていますから。集客、販売の契約等よろしく願います』
 『よし!いいだろう。この案件了解した。オキテス隊長のほうもいいな。明朝は早く君らの宿営の浜に行く!』
 『案件の対処理解しました。明朝、待っています』
 話し合いが終わる、オキテスは、エドモン浜頭の営業所を辞して宿営の浜へ戻った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1419

2018-11-22 05:13:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 顔を見せた船舶担当が声をあげる。
 『オキテス隊長じゃありませんか!』
 『久しぶりです。ダントス所長も皆さんも変わりなく過ごしていられますか?10月初めからの船舶の売り出しを控えて、挨拶に来ました』
 『遠いところへご苦労です。所長は、只今留守にしていますが、さあ~さ、こちらへどうぞ!』
 『ありがとうございます。心づくしですが、皆さんでどうぞ!』と言って、持参した堅パンのケースを手渡す。
 『ホッホウ、例の堅やきのパンですね!遠慮せずいただきます』
 船舶担当がオキテスを応接の部屋に招じいれる、話を切り出す、まずは、報告の件から話し始める。
 『先の展示試乗会で引き合いをいただき、受注いたしました戦闘艇、2艇ですが、只今、建造の真っ最中です。このたび、キドニアの集散所の発案で開催が決まりました船舶の売り出しの催行に合わせて、注文主に引き渡したいと鋭意出精、建造いたしております。報告いたします』
 『そうですか、解りました。近々に注文主が当集散所に顔を見せると思います。そのように伝えます』
 『完成する新しい戦闘艇は、新しい装備構造を造作、付加しています。注文主に喜んでいただける新構造です。これを見ていただければ一目瞭然です』
 オキテスは携えてきた販促ツールを手渡す、船舶担当が手に取って見入る。
 『これですね!ホッホウ、防御楯構造ですね。これは注文主が大喜びします。海を行く者にとって海賊に出くわすことは大変な脅威です。それから守ってくれる構造はありがたいですな』
 二人は、目を合わせてうなずき交わす、間を持つ、オキテスが話し始める。
 『言いますのは、船舶の売り出しの件ですが、当方の予定では、こちらでの開催が集散所暦で10月7日から9日までの3日間にわたって展示試乗会の催行をしたいと予定しております』
 『了解いたしました。新船の引き渡しは、いつに予定されていますかな?』
 『新鮮の注文主様への引き渡しは、売り出し初日の午前中に行いたいと考えています。何卒よろしく願います』
 『解りました。注文主が喜びます』
 『これは売り出しに関して、私らが作成した販促ツールです。役立てていただければ幸いです』と言って持参した販促ツールの木板を30枚を手渡す。
 『これはいいですね!販売促進に使います。出来るだけ多くの引き合いを獲得するように努めます』
 『明朝、改めてうかがい挨拶申しあげます。ダントス所長によろしく伝えてください』
 『解りました。明朝の来駕を待っています』
 オキテスは用件を終える、マリアの集散所をあとにする。
 二人の浜頭の待っている係留岸壁の浜へ戻った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1418

2018-11-21 03:21:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 エドモン浜頭が慎重な口ぶりで話し始める。
 『オキテス隊長、いいですかな、事の詳しい事情については、語らないが、テムノス浜頭のレテムノン、俺のイラクリオン、互いに集散所と取り交わした商取引に関する権限を持っている。解りますな』
 『はい、解ります』
 エドモン浜頭がオキテスと合わせる目が鋭い。
 『レテムノンにおいてはテムノス、イラクリオンにおいては俺だが、クノッソスの集散所に話を通して、船舶の展示試乗会を催行する!オキテス隊長、いいですかな!そのように決めました』
 『ありがとうございます!了解しました。よろしく願います』
 『そのように、我々のほうで取り計らいます。集散所方の船舶の売り出し、展示試乗会の開催をやります。今夜、マリアにおいて開催の日程、催行の計画等の詳細を打ち合わせます』
 『解りました。よろしく願います。ありがとうございます』
 三人が手を握り合う、オキテスが感謝の意を込めてテムノス浜頭の手を握りしめる、オキテスの気持ちがテムノス浜頭に通じていく。
 三人の心をカタチにしてくれるエドモン浜頭、握り合った三人の手のひらの血脈を通して、船舶の売り出し展示試乗会の開催が決まる。
 いい風に押されて一行が乗った艇がマリアに着く。
 『お~お、オキテス隊長、なかなかいい走りじゃないか、早く着いたな』とエドモン浜頭が艇の走りを誉める。
 エドモン浜頭が集散所との交渉要領をオキテスに説明する。
 『解りました。その要領でマリアの集散所と話し合います』
 『おう、それでいい!我らのほうは、明朝、集散所と話をして折り合いをつける』
 『解りました』
 『明日、話し合いを終えて、イラクリオンへ帰る。以上だ』
 『全て、了解しました』
 オキテスの返事を聞いて、テムノス浜頭が告げる。
 『今夜の打ち合わせは、エドモン浜頭のマリアの営業所で話し合う。オキテス隊長、俺らはこの係留岸壁の浜で待っている』
 『解りました。では、行ってきます』
 オキテスは、漕ぎかた一同を浜に残し、持参した手みやげを持って、マリアの集散所へ歩を運ぶ。
 オキテスがマリアの宮殿の前に立つ、建物を見あげる、キドニアの宮殿と同じデザインである。その左横にある集散所の建物に目を移す、これもキドニアの集散所と同じカタチで建っている。
 オキテスは大きく息を吸い込む、吐く、意が固まる、一歩を踏み出す。
 身体から力みが抜けている、歩運びがすんなりと出る、集散所の玄関の戸口に立つ、集散所の者が声をかける。
 『こちらにおいでになったのですか?どちらの方ですかな?』
 『はい!キドニアから来ました。船舶を建造している者です。船舶担当の方に、そのように伝えていただければよろしいのですが』で言葉を切り自分の名を告げる。
 『私は、オキテスと言います』
 『解りました。少々待ってください』
 船舶の担当が顔を見せた

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1417

2018-11-20 03:13:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 エドモン浜頭が二人に話しかける。
 『テムノス浜頭、マリアへ行こう!』
 『え~え、行きましょう』
 『オキテス隊長、マリアへ行きます。乗せていってもらいますよ。いいですね!』
 『喜んでまいります!エドモン浜頭、テムノス浜頭、どうぞ、艇上へ!どうぞ!』
 オキテスが二人の浜頭を艇上へ案内する。
 艇はイラクリオンの係留岸壁をあとにしてマリアへと向かう。
 イラクリオンからマリアへは、33キロから35キロ余り、天候、海上状況からいって3時間弱の行程である。
 海上には、マリアに向けていい西風が吹いている、途についた就いた艇は、帆張りで快調に航走する。
 艇上において、エドモン浜頭がオキテスに話しかける。
 『おう、オキテス隊長、この船、いい走りをしている!この分だとマリアに早く着くな、重畳、重畳!』
 エドモン浜頭が話しをテムノス浜頭に振る。
 『テムノス浜頭!』
 『はい!』
 『感じたところを話すのだが、この大きさの船に乗ったら、小さな船で海に出るのが、億劫になるな!』
 『そうですな!船に乗っている安心感に差異を感じますな』
 『これからは、この大きさの船が重宝する時代が来るかもなだな』
 『そのように考えられますな。うなずけます。イラクリオンからマリアへ、これくらいを行き来するのに小さな船では、チョッピリ不安がつきまといます』
 『言えてる、言えてる、同感!同感!』
 二人の会話が弾む。
 『オキテス隊長、この大きさの船が重宝する時代がきますよ!』
 エドモン浜頭がオキテスと目を合わせる。
 『このクレタでも、キクラデスの多島の海でもだが、小さな船で島の岸を離れずにチョロチョロしてはおれない時代になる。それが、私の未来をみつめての感覚だ!』
 『エドモン浜頭、言われることが、もっともだと納得できます』
 『そうか、納得してくれるか!ありがとう』
 エドモン浜頭が話し続けるに少々の間をつくって話し続ける。
 『オキテス隊長、先ほどだが、テムノス浜頭と短い時間だが充分に話し合った。テムノス浜頭、そして、俺だがーーー』と言ってオキテスと目を合わせる。
 エドモン浜頭の目には、いうにいわれぬ鋭さがこもっている。
 鋭い口調でオキテスに話しかけようと身を改めている、緊張が漂う。
 エドモン浜頭が口を開いた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1416

2018-11-19 04:05:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 頃合いを測ったテムノス浜頭がオキテスに声をかける。
 『オキテス隊長、いい風に恵まれての航海で考えていたより早くイラクリオンに着港した。ごくろうだった!この頃合いならエドモン浜頭は在宅だろうと思う。浜頭と要件について話し合う。二人だけで話し合う』
 『解りました』
 『それを終えて、今日のこれからを決める、いいかな。少々の間だ、ここで待っていてほしい。それでだが、先ほどの販促に使う木板を1枚もらう。それをエドモン浜頭に渡して話し合う』
 『解りました』
 オキテスは販促ツールを1枚、テムノス浜頭に手渡す、受け取ったテムノス浜頭がエドモン浜頭の館のあるイラクリオンの街区に向けて歩みだす、その背中をオキテスらが見送る。
 半刻が過ぎる、話し声が近づいてくる、テムノス浜頭にエドモン浜頭の二人連れが話し合いながら歩いてくる。
 二人をオキテスが迎える、エドモン浜頭がオキテスに声をかける。
 『おう、これはこれは、オキテス隊長、ようこそ!遠路をはるばる見えられた、ごくろうでした!』
 『エドモン浜頭、無沙汰で過ごしています。元気でいられる浜頭の姿に接し、心から何よりと感じ入っています』
 『おう、ありがとう。アエネアス統領もイリオネス軍団長も元気に過ごしていられるかな?』
 『はい!ありがとうございます。二人とも極めて意気軒高にして元気に日々を送っています。エドモン浜頭と顔を合わせたら、くれぐれもよろしく伝えるよう言づかってきております』
 『おう、そうかそうか元気でいられる、それは重畳!何よりです。ところでオキテス隊長、マリアの集散所が発注した船の件だが、建造のほうは進んでいるかな?』
 『はい、只今、建造の真っただ中です。このたび計画しました船舶の売り出し催行の初日に注文主に引き渡し出来るように作業を進めています』
 『それは、重畳!』
 『引き渡す戦闘艇には、最新の装備構造を造作して納入いたします』
 『ホッホウ、それはいいことです。先ほど、テムノス浜頭からもらった販促ツールに書き記してある装備構造を造作してですな』
 『はい、そうです』
 『それは注文主が喜びます。納入の配慮が行き届いていますな。喜ばしいことです』
 エドモン浜頭が手をさしのべる、オキテスがさしのべられた手を握る、顔を合わせる、目が合う、二人がうなずき合う。
 『オキテス隊長、今日のこれからだが、テムノス浜頭から今回の船舶の売り出しの件について、一部始終を聞きました。その件について、我が方の処し方の目途をつけています』
 『そうですか、ありがとうございます』
 『ありがとうは早かもしれませんぞ!マリアの集散所へ行きましょう!詳しいことについては、船上において話します』
 『解りました』
 『オキテス隊長、今夜はマリアにて過ごしてください。そのように準備します』
 『配慮ありがとうございます』
 エドモン浜頭がオキテスとの話を終えて、テムノス浜頭に声をかけた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  1415

2018-11-16 04:19:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスがテムノス浜頭に声をかける。
 『テムノス浜頭、これまでの船の船体に新しい付加構造を装備しました』と言って、新しく作成した販促ツールの一枚を手渡す。
 差し出された販促ツールの一枚を手に取って、じい~っと見入るテムノス浜頭、木板の左下方に描かれた小ぶりの挿絵を見ている。
 『お~お、この装備はいいな!これはいい!船を買いたいと思っている者に、『よし!買おう!』と決断させる。いい装備構造といえる』
 テムノス浜頭が絶句している。
 『この船を紹介している木板もよくできている。船を買いたいと考えている者の気持ちをキックしているな』
 『そのように考えていただけるとは幸いです』
 『このような船なら、展示試乗会の開催を考えるに値する』
 『そうですか』
 『エドモン浜頭と話がしやすい』
 『ありがとうございます』
 『オキテス隊長、君らがやっている仕事だが、えらく前向きだな、これを見てそれを感じる。新装備を構造として建造する船、そして、展示試乗会を開催する、新しい船の売り方。知恵を絞りだしてやっている。感心している』
 『そのように言われると痛み入ります』
 『また、購入して使っている船に、新しい構造を取り付けたりしてくれたサービスのあり方にも感心した』
 『そのように言っていただくとは、ありがとうございます』
 オキテスは、感謝の意を込めて丁寧に低頭する。
 『なあ~、オキテス隊長、イラクリオンからマリアへは目と鼻な先のように感じられる。レテムノンからイラクリオンもマリアも近くはない、同じ島内なのにな』
 『そうですね!』
 少しばかり沖に出ることによって西からのいい風により順調に航走する、イラクリオンの街邑が視野の中に見えてきていた。
 『おう、オキテス隊長、考えていたより早くイラクリオンに着いた。重畳!』
 『そうですね!沖に出て、いい風に押されたことが幸いしました』
 艇は、イラクリオンの船だまりの岸壁に接岸させた。

 この時代の船の船速を今様の物差しで測ると平均的にみて時速10キロメートルをオーバーして航走することは、海上状況がよほどの好条件に恵まれたときの結果であったらしい。レテムノンからイラクリオンまでの船舶の航走距離は、沿岸航法で約70キロメートルくらいである。この時代の船舶は、この海路を海上状況が好条件での順風帆張り航走で7~8時間、逆風漕走であれば、9~10時間で航走していたと考えられる。
 
 今日のオキテスらの艇の航海は、凪いでいる海の漕走と後半の順風航走で6時間余りで駆け抜けた。
 朝、陽の出の刻、今様時間で午前5時半過ぎにレテムノンを出航して、イラクリオンには、昼頃の12時過ぎに着港したことになる。
 テムノス浜頭が岸壁上に立って、空を見上げる、陽を仰ぐ、頃合いを測った。