『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  113

2012-08-30 10:42:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 夕めしの場はにぎわった。オキテスの心配りでしつらえられた夕めしは、酒あり、肴あり、久しぶりに口にするぶどうありであった。
 『おいっ!どうだ。それにしてもこのパン堅すぎるぜ』
 『ガキッ!』 といった、彼らの夕めし風景である。酒はうまい、肴もうまい、ぶどうもうまかった。パンは堅い、噛み砕きに難儀している者もいた。
 オキテスがイリオネスのそばに来て伝えた。
 『軍団長、夕めしが終わったら、打ち合わせをやろうと思っています』
 『おう、いいだろう。統領の出席は必要あるのか』
 『いえ、それはありません。軍団長から伝えていただくだけで結構です』
 『よしっ、判った。始めるときは呼びに来てくれ。クリテスはそのときに皆に引き合わせる。それで打ち合わせ事項だが、パリヌルスにオロンテス、彼らとは打ち合わせ済みのことだな』
 『そうです。オロンテスは、今日、昼過ぎには、すでにミコノスの浜を次の停泊予定地に向けて出航してしまっています。今頃は、停泊予定地まで、あと少々と言う地点に行っているはずです』
 『判った』
 白と薄茶色の岩石のデロスの地が茜色に染まっていく。和気あいあい、がやがやと夕めしの場はにぎわっていた。
 オキテスは、打ち合わせの場をつくった。軍団長を中心にクリテスを加えての5名である。
 『軍団長、今日はご苦労様でした。今、この場でパリヌルスら三人で打ち合わせた事項を簡単に伝えます。オロンテスの船団は、この時間だと我々が次に向かう停泊予定地に着いているはずです。彼には『パン作り』というたいへんな仕事があります。そのための先立ちです。ところで軍団長、統領のデロスでの用件は全て終わっていますね。軍団長』
 オキテスは念を押した。
 『すべて、終わっている』
 イリオネスは言い切った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章   クレタ島  112

2012-08-30 09:41:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。

 『オキテス隊長、只今、無事の帰着です。総員7名、一名増えております。以上』 

 『おっ、そうか。ご苦労であった』

 『詳細は軍団長からお聞きください』

 オキテスはギアスの簡潔な報告を受けた。彼は統領に歩み寄った。

 『統領、お帰りなさい。いかがでしたか。角の取れていない岩や石の道、難儀されたでしょう』 

 『おっ、オキテス。帰ったぞ。変事はないな』

 アエネアスはひと声かけて、目で答えるオキテスの手を握り締めた。

 『軍団長、お帰りなさいご苦労でした。少々時間は早いと思いますが、夕めしの仕度をさせています』

 『おっ、オキテス。無事の帰着だ。一同、腹を空かせている。ちょうど、いいじゃないか』

 イリオネスは、クリテスをオキテスに引き合わせた。

 『これについては簡単に伝えておく、詳しいことは会議のときにだ。~~と言うわけだ。よろしく頼む』

 『判りました。クレタは我々にとって初めての土地です。その地に詳しい者がいる、安心できるではありませんか。さあ~、まいりましょう』

 二人は前後に並び歩調を合わせて歩んだ。

 夕めしの場は、岩のテーブル、石の椅子である。

 『オキテス、これはどうした?ずいぶんと豪勢じゃないか』

 『え~え、皆さんの留守の間に、ちょこっと、ミコノスのオロンテスのところへパリ

 ヌルスと出かけてきました。三人での打ち合わせもありましたし、皆に新鮮な果物でもと、、、』

 イリオネスは、今、ここにはいない二人の顔を思い浮かべて、にんまりとした。

 


『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  112

2012-08-30 06:38:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス隊長、只今、無事の帰着です。人員一名増えております。以上』
 『おっ、そうか。ご苦労であった』
 『詳細は軍団長からお聞きください』
 オキテスはギアスの簡潔な報告を受けた。彼は続いて統領に近づき声をかけた。
 『いかがでしたか、統領。角の取れていない岩や石の道に難儀されたでしょう』
 『おっ、オキテス。帰ったぞ。変事はないな』
 ひと声かけて目で答えるオキテス手を握り締めた。
 『軍団長、お帰りなさい。ご苦労でした。少々早いと思いますが夕めしの仕度をさせています』
 『おっ、無事の帰着だ。一行は腹を空かせている、いいじゃないか』
 イリオネスは、連れてきたクリテスをオキテスに引き合わせた。
 『これについては簡単に伝えておく、詳しいことはまたあとだ。~~と言うわけだ、よろしく頼む』
 『判りました。クレタは我々にとって始めての地です。全く判っていない土地です。その地について詳しい者がいる。安心できるではありませんか。さあ~、まいりましょう』
 二人は前後に並び歩調を合わせて歩んだ。
 夕めしの場は、岩石の卓に石の椅子である。
 『オキテス、これはどうした?豪勢じゃないか』
 『え~え、皆さんの留守の間に、ちょこっと、ミコノスのオロンテスのところにパリヌルスと出かけてきたようなわけです。三人での打ち合わせもありましたし、皆に新鮮な果物でもと、、、』
 イリオネスは、今、ここにいない二人の顔を思い浮かべてにんまりとした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  112

2012-08-30 06:38:17 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス隊長、只今、無事の帰着です。人員一名増えております。以上』
 『おっ、そうか。ご苦労であった』
 『詳細は軍団長からお聞きください』
 オキテスはギアスの簡潔な報告を受けた。彼は続いて統領に近づき声をかけた。
 『いかがでしたか、統領。角の取れていない岩や石の道に難儀されたでしょう』
 『おっ、オキテス。帰ったぞ。変事はないな』
 ひと声かけて目で答えるオキテス手を握り締めた。
 『軍団長、お帰りなさい。ご苦労でした。少々早いと思いますが夕めしの仕度をさせています』
 『おっ、無事の帰着だ。一行は腹を空かせている、いいじゃないか』
 イリオネスは、連れてきたクリテスをオキテスに引き合わせた。
 『これについては簡単に伝えておく、詳しいことはまたあとだ。~~と言うわけだ、よろしく頼む』
 『判りました。クレタは我々にとって始めての地です。全く判っていない土地です。その地について詳しい者がいる。安心できるではありませんか。さあ~、まいりましょう』
 二人は前後に並び歩調を合わせて歩んだ。
 夕めしの場は、岩石の卓に石の椅子である。
 『オキテス、これはどうした?豪勢じゃないか』
 『え~え、皆さんの留守の間に、ちょこっと、ミコノスのオロンテスのところにパリヌルスと出かけてきたようなわけです。三人での打ち合わせもありましたし、皆に新鮮な果物でもと、、、』
 イリオネスは、今、ここにいない二人の顔を思い浮かべてにんまりとした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  111

2012-08-29 06:09:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一行は各神殿を巡り、帰途についた。
 イリオネスは新しく加わったクリテスのことを考えた。『軍団の中のどのポジションにおこうか』と思案しながら歩を運んだ。彼らはアポロンの神殿に来るときにたどった道筋を歩んだ。岩のゴロゴロしたデロスの小高い山を右手に、そして、左手に海を見ながら荒れた小道を踏みしめて歩いた。
 
 停泊地のオキテスは配置しておいた張り番の連絡を受け取った。
 『一行の姿が見えたと、人一人増えている?判った』
 彼は太陽の位置を見て刻を計った。傍らのアミクスは隊長の素振りを感じ取って声をかけた。
 『隊長っ、何か用件でも?』
 『そうだ。しかし、早すぎるかな。まあ~、いいだろう』
 思案の間をおいて話し続けた。
 『アミクス、急げっ!夕めしの仕度だ。皆に指示して急いで取り掛かってくれ。酒の準備もだ。持ち帰ってきた肴、それから、『ぶどう』もだ。この頃合なら、堅パンに噛みついても様になる。急いでくれ。俺は一行を迎えに行ってくる』
 オキテスは立ちあがった。停泊している海岸では人が動いた。アミクスらの指示で活気を振りまいて動いた。
 まだ遠くにいる一行の姿を目にしたオキテスは、彼らの無事を確かめ大きく手を振った。その姿を見たギアスは大きく手を振り返した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  110

2012-08-28 06:24:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアス心中の想いは、大事を為す、それにはいい結果に導く者を掌中に持つこれである。一見してクリテスをそれと認めた。
 『神官殿、ご配慮をありがたく頂戴いたします』
 『お喜びいただき、私もことのほかうれしく感にたえません。よろしくお願いいたします』
 話を終えた三人は酒器の酒を飲み干した。
 神官は、トロイ戦役後のクレタの情勢について断片的に話題にした。
 『神官殿、今日は神託について、お世話をいただき誠に有難うございました。私ども一行は、これにてこの場を辞します。いろいろと配慮を賜り有難うございました』
 神官は、礼に重きをおいてのアエネアスの挙措動作に感服していた。今、去り行こうとしている彼らを丁重に見送った。一同には、クリテスが加わって神殿を後にした。
 神殿を出て空を見上げる一行には、中天に輝く太陽がまぶしかった。
 アンキセスは、程遠くない右手に見える神殿を指差しながら口を開いた。
 『皆、聞いてくれ。思い出したぞ!後先になったが順番は気にせずだ。ポセイドン神の神殿だ、その隣がアルテミスの神殿のはずじゃが、よっていこう。ポセイドン神に航海の安全を、アルテミス女神に農作の豊穣を祈っていこう』
 クリテスが先頭にたって一同を案内した。

 クレタでは、トロイ戦役で敵対し、刃を交えたさきの領主イドメニウスは、今の領主レオコスに国外に追いやられていた。うかうかとクレタに船を着けるそれでいいのか。アエネアスの頭中に懸念が浮かんできていた。レオコスの勢力も限られているだろう、クノッソスを遠く離れたキドニアあたりまでは力が及んではいないであろうと考えられた。そのように神官との話のやり取りで感じ取っていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY           第5章  クレタ島  109

2012-08-27 05:43:40 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 神官は姿勢を正してアエネアスと目を合わせた。彼は改まっている。身体を一歩引いた状態でアエネアスに相対した。口にする言葉も改まった言葉使いに代わっていた。
 『アエネアス統領殿、あなた様が祈り奏上された願い事はとてつもなく大きな願い事であります。アポロン神では計りがたき願い事にございます。アポロン神の父君であります『ゼウス大神』の御意志で計られる願い事であります。なにとぞ、クレタ島イデイ山のゼウス大神の神殿にて、祈り奏上の上、大神の託宜をお受け取りいただきたい由にございます』
 『諾っ、判った』
 アエネアスは短く承諾の返事を返した。
 アエネアスはこちらをうかがう人影に気づいていた。神官の手配によるものと思われた。その者は神託を受け取る二人に注意を注いでいるようであった。神官は手招きで彼を呼び寄せた。
 『アエネアス統領殿。この男クリテスと言います。クレタ出身の者にございます。あなた様の従卒の一人に加えて、クレタにお連れ頂ければ統領殿にとって、はなはだ都合よろしきかと思います。いかがなものでしょうか』
 話を聞き終わったアエネアスは、神殿の入口に立っているイリオネスに顔を向けた。目と目が合う、イリオネスの目は『承知』の返答を伝えていた。
 『神官殿、それはかたじけない。承知いたしました。私たちは神官殿のご厚意を謹んで拝領いたします』
 『このクリテスは、クレタの地理にも詳しく何かとお役立つと私は心得ています。クレタ島は東西に長い島です。島西のキドニアに向かわれれば、イデイの山にも近く、万事都合よきかと存じます。また、キドニアの浜頭センタスも私どものごく親しき知己でございますゆえに』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY            第5章  クレタ島  108

2012-08-24 06:20:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『さあ~、ご両人、アポロン神から神託をいただく前に、一献!神からのいただきものを酌み交わそうではありませんか』
 神官は二人の前に置いた酒杯に酒をなみなみと注ぎ満たした。三人は杯をささげ一気に仰ぎ、緊張で渇いた喉を通し、胃の腑におさめた。心の張りが解けていく。神官は向きをかえ、神託を丁重に受け取る姿勢を執った。アエネアスは神官の背中の敬虔さを目にした。神官は神官なりに真剣に神と対峙して言葉の引継ぎをする。神の言葉を神託と銘打って告げなければならないのである。神官の意思であってはならないのである。神官が為すや否かが神官の神官たる所以である。
 アエネアスが気がついたときには二人のまん前に神官が起っていた。神官の声が神殿の空気を震わせて、頭上より降りかかってきた。
 『お聞きなされ!ご両人!神託をいただきました、申し伝えます。聞き漏らしなきように、、、』
 一拍の間をおいて、朗々の声が空気の琴線を震わせている。
 『神はあなた方がクレタ島に向かうことを存じていられる。神託を伝える『クレタに赴き、ゼウス大神の託宜を聞け!』との仰せである』
 下る神託の断を二人は受け取った。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  107

2012-08-23 06:51:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お二人に申し上げる。静かな神殿がえらく騒々しいようでしたな。お二人とも頭をおあげください。神のおん前、謙虚でいらっしゃました。もういいでしょう。心の張りをお解きください』
 二人は座を正して神官と向き合った。神官は言葉を続けた。
 『こちらはお父上ですな。こちらにお見えになったのは二度目ですね。あのときのお子が、このようになられて、、、』
 話の継ぎ穂をアエネアスに向けた。
 『貴方様にはお子がおいでですな。聡明なお子ですね』
 『有難うございます。ユールスと呼んでいます』
 『そのお子は、いずれ国家の祖の祖となる人物です。大切にお育てください。あなたの父上があなたを育てたように、、、』
 話は続いた。
 『お二人に神託をお告げする前に伝えておくべきことがあります。神の存在を信じ、神を敬い、神の言葉を信ずることは心の源に発します。お勧めすることでありますが、それが高ずることはいけません。信じすぎることは神に甘えることのほかではありません。過ぎて信じなさいませぬよう心してください。神は甘える者を斥けます。見えざる手をその者に向けて差し伸べることはありません。申し上げておきます。己を信じて一事を為す。これに尽きます。心なされよ!』
 話の結びをきつく締めた。
 神官は立ち上がり、酒杯3つと酒器をもって二人の前に座した。