『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第1章  二つの引き金  29

2007-04-29 08:58:34 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 航海が順調に行くか、行かないか。これが風にかかっていたのである。エーゲ海に吹く風は、季節風といわれるほどではなく、その季節に吹くことの多い風というふうに考えていただいたほうが適当かと思われる。五月中旬すぎから、九月中旬過ぎ頃までは、北西、または、北よりの風が多く、二月の中旬過ぎ頃から、春にかけて、南からの風が多く吹くようであるらしい。冬は、海が荒れる嵐のような日が多く、<風待ち>をして、航海を続けるのである。また、雨の日は、航海を中止することが多かったらしい。
 1日の航走時間は、風向きさえ思うところであれば、10時間から13時間くらいであり、時速は、平均的なところで、7KMから10KMくらいであったらしい。1日の航走距離は、快調にいったときで、90KMから100KMくらいあり、平均的な1日の航走距離は、60KMくらいであったと思われているのである。

第1章  二つの引き金  28

2007-04-28 07:44:28 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 エーゲ海の潮流については、特に注意は払われなかったようである。潮の干満については、案外、慎重であったらしい。
 この時代の船の推進手段は、帆であり、櫂であった。船の中央付近にマストがあり、大きな長方形の帆を設けていた。帆は、風の向きにあわせて、回転することができた。だが、風上に向かって進むことは出来なかった。また、船の舵取りは、船尾の両側に、2本の舵櫂を装備してあり、一人で2本同時に操ることが出来るようにできていたのである。
 船は、大別して、2種類である。丸い型の船は、貨物船であり、交易に使用された。もう一つは、長い船である。これが軍船である。一本マストに、大き目の横帆を装備して、18人~50人に及ぶ漕ぎ手を乗せて、櫂(オール)で漕いで航走したのである。なお、この軍船には、海戦において、敵の軍船を破壊するために、船首を衝角構造としていたのである。

第1章  二つの引き金  27

2007-04-27 07:51:33 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 このような航法で航海するのだから、間違えたら最後、船は、どこへ向かうかわからない。そのようなわけで、昼間の沿岸航海に重きをおいて、陸地の見えない夜間航海や、陸岸を遠くはなれての沖航海は、特別の場合を除いて、原則として行わなかった。といって、全く夜間の航海をしなかったわけではなく、外洋及び夜間の航海では、太陽の位置、北斗七星(おおくま座)にたよって航海をしたようである。
 また、南エーゲ海のように、島や岩礁の多い、危険度の大きい海域では、水先案内人がつき、陸地の見える距離を保ち、危険に気を配り航走し、夜は上陸して過ごし、難破の危険と、海賊に襲われる危険をもあわせて避けたようである。
 この時代の、この海域の航海は、海賊と難破の道ずれであり、内なる敵の存在にも配慮して航海を続けたのである。

第1章  二つの引き金  26

2007-04-26 15:12:55 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 メネラオスの頭の中を考えが、せわしく巡りめぐっている。一日でも早く帰国しなければならない、気は急く。第一案のミチリ二からエーゲ海の島づたいで(約500KM)帰国するとすれば、天候、風向き、そして、櫂を漕いでの航走で25日から30日は、要すると思わなければならない。第二案のミレトス経由で島づたいで帰国するとすれば、少々遠まわり(約650KM)になるが、早ければ16日くらいで、帰国できると思われるのである。これでミチリニアモス側との話し合いのテーブルにつくと決心したのである。
 
 この時代の航海は、沿岸に沿って、陸の風景を見ながら、航海したのである。いわゆる沿岸航法といわれる航海術であった。風向き、風待ち、観天望気により、風の向きによって、目標とする方向へ船を進めて航海したのである。方向についても<---と思われる>方向へ突き進むのである。

第1章  二つの引き金  25

2007-04-25 09:55:26 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 二人は、話し合った。二人の心中といえば、トロイに対しての怒りが、ふつふつと沸いている。この怒りをおさめるべく行動に駆り立てられる。その思いが、一日でも早い帰国の思いを促した。
 オデッセウスは、メネラオスの言葉に耳を傾けた。
 『俺の考えは、こうだ。一つは、このミチリ二から、直接、我々の国に行く。入港する港については、条件をつけない。二つ目は、ミレトスまで行くことだ。天候しだいもあるが、この二つのうち、どちらかだ。』
 『判った。それでいいだろう。このあたりの海については、相手方の知るところだ。ミチリニアモス側の話を聞いて、出来るだけ早い決断と、一時も早く、ここから出ることだ。』
 『判った。先ず話を聞く、それでいいだろう。もう一つ、俺が気にしていることがある。』
 『なんだ。』
 『航海中の我々の身の安全だ。船内での安全と、外部からの攻撃のことだ。』
 『それは、この際、出たとこ勝負だ。何があっても生きて帰る。何かあれば、報復は、必ずやる。それだけだ!』
 オデッセウスは、帰国への強い意志を確認した。

第1章  二つの引き金  24

2007-04-24 10:52:29 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 オデッセウスとメネラオスは、二階にある小部屋に通された。小部屋の三方が窓であり、海が見える。入口から、左手の窓からは、今朝、レスボス島に上陸した浜辺と海が、そのかなたに大陸があった。右手の窓からは、なだらかな草原がくだり、その向こうにレスボス島の大きな入り江が望まれた。もう一方は、南面の窓である。その窓からは、夏の終末の太陽の熱気がさしこんでいた。この時代の建造物の壁は70センチメートルくらいの厚さももあり、外部の熱気を遮断して、建物の内部は、思ったより涼しく感じられるのである。
 二人は、自分たちの考えをまとめて置かねば、相手との話し合いを有利に進めることができない。ミチリニアモスのほうでは、どのように考えているか、見当もつかないのである。このあたりの海の事情について精通しているとすれば、それは彼等のほうである。

第1章  二つの引き金  23

2007-04-17 08:29:53 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 長老、側近、王の一族と自己紹介もあり、食事会は進んだ。空腹の極みにあった二人の胃は、うまい酒と馳走に満足した。食事会の話題は、レスボス島のこと、そして、イタケ、スパルタの風光と産品の話に花が咲いた。なごやかなふんいきで食事会は終わった。
 メネラオスは、長老に打ち合わせをしたい旨を伝えた。長老は、そのことについては、すでに、時間どりをしている旨の返事がかえってきた。
 オデッセウスとメネラオスの二人は、部屋に案内された。二人は、エーゲ海に吹く季節の風のことに気を配りながら、帰国のことを考えた。アガメムノンは、二人の無事帰国と返事を待っているはずである。

第1章  二つの引き金  22

2007-04-16 09:27:46 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 レスボス島は、火山の影響で温泉が湧出しているのである。二人が着替えのところにもどると、新しい衣服が整えてあるではないか。二人は、気をゆるめないまでも、王のミチリニアモスに深く感謝した。浴殿を出た。そこには、王の息子が待っていた。
 『では、食堂のほうへ。父の王が待っています。』
 二人は、食堂へと案内された。王と三人の長老、王の側近、そして、王の一族が席についていた。長老の一人が、二人を席にみちびき、改めて、一堂の皆に紹介の労をとってくれた。
 『こちらが、ギリシア、スパルタの領主、メネラオス殿。こちらが、同じくイタケの領主、オデッセウス殿。そして、ご両人、我らがレスボスの王、ミチリニアモスです。』
 王、ミチリニアモスに対する表敬、そして、オデッセウスとメネラオスに対する表敬の乾杯から食事会は始まった。

第1章  二つの引き金  21

2007-04-13 07:42:05 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 『お二方、ようこそ、おいで下さった。私が、このレスボスを統べている、ミチリニアモスです。一服されたら、浴殿を使ってください。この者は、私の息子です。この者が案内いたします。』
 二人は、ぶどう酒でのどを潤した。久しぶりに口にするぶどう酒は、うまかった。空腹にしみわたった。
 浴殿に、案内された。二人は、まだ、気持ちをゆるめてはいない。風呂場に入る時も剣を手放さなかった。二人は、剣の塩気を洗い流した。鞘は、皮製であるので、これも湯で洗った。剣は、いざというときの為に、取り易いところに、抜き身のままでおいた。
 湯は、こんこんと湧き出している。身を浸した。トロイ以来の旅のよごれを、疲れとともに洗い流した。湯から出ようとした時に気がついた、この風呂は、温泉であった。

第1章  二つの引き金  20

2007-04-12 09:36:11 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 館の玄関まで、王が出てきていた。しかし、二人を遠来の客として迎えるという雰囲気が感じられないのである。二人は、おのずと周囲に細心の注意を払いながら、門口の敷石の上に立った。その時、待っていたとばかりに、王が前方に進み出てきて、
 『ようこそ!よくぞ訪ねて下さった。さあさ!こちらへ。』
 門口の敷石の上にたって、はじめて、二人をギリシアのポリスの領主と認めての歓待の意を示したのである。オデッセウスはイタケの領主であり、メネラオスは、スパルタの領主である。二人が危機を冒し、海を越えて到達した、この島は、レスボス島である。
 王が案内して招じ入れた部屋には、ウエルカムドリンクとして、レスボス島地産のぶどう酒が準備されていた。
 二人は、ようやく、危機を脱出したという安堵感を持った。