『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  161

2012-11-08 07:13:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、改めて一同を見回した。
 歓声と拍手が渦を巻いて沸き上がる。興奮が浜を支配した。
 『私が、ここに、君たち一族を統べる者として、君たちに深く礼を述べる。諸君っ!ありがとう。ありがとう』
 言葉に感謝の力があふれていた。一同はアエネアスの言葉にうたれた。
 続いて、イリオネスが一同に声をかけるべく位置についた。
 『今、統領の言葉にあったように、この地に長い航海を無事に終えて、トラブルもなく上陸ができた。全て諸君たちの苦労の賜物と心得ている。ありがとう。本当にご苦労であった。今宵は充分に身体を休めてくれ。また、互いに共にした辛苦を感謝しあってほしい。ありがとう。以上だ』
 彼ら一同は、儀式とは言えないまでもカタチだけの上陸成功のセレモニーを行った。
 彼らは、これからの一年を、このクレタ島で過ごすことになるのである。


 本稿をお読みいただいている皆様へ
 長い物語をお読みいただき誠にありがとうございます。
 つきましては、PC環境の整備と研修のため12月中旬まで投稿を休みます。
 何卒よろしくお願いいたします。
 アエネアスを統領として、トロイ民族が建国の地の礎定に向かっての苦難の日々を新しく投稿してまいります。
 ロマンスあり、決闘あり、闘争あり、波乱の展開を投稿してまいります。
 何卒よろしくお願い申し上げます。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  160

2012-11-07 15:41:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船が停まる。海に飛び込む音が各所にあがる。舳先に結ばれている引き縄に取り付く、手繰る、掛け声よろしく引き始めた。船は浜に向けてゆっくりと引かれていった。上陸作業が続く、2隻の改造交易船は、海上に引き停められて、碇石で係留された。
 統領と軍団長の下船はオキテスの指示に従うことになっていた。浜ではパリヌルスの指示で隊列がしかれた。
 『統領、舟艇を呼ぼうと思っているのですが』
 オキテスが声をかけた。波打ち際まで30歩くらいと思われる。統領が答えた。
 『いや、いい。この距離だ、俺も海中を歩いて浜にあがる、イリオネス、行こう』
 統領、イリオネス、オキテスと続いて海に飛び込んだ。海中を歩くこと30数歩、波打ち際に一歩を印した。
 突如、沸き上がる歓声と拍手、パリヌルスが進み出てきた。
 『統領!ようこそ、クレタ島の浜です』
 『おっ!そうか、、、、』
 アエネアスは、言葉が続かなかった。
 拍手がなりやまない、アエネアスは隊列の前を進む。彼らと目が合う、拍手が盛り上がる。感動場面が展開する、感動のるつぼと化した。
 閲兵を終えたアエネアスが隊列の中央に立った。上陸しての第一声をあげた。
 『諸君っ!エノスを出てから、この地まで大変にご苦労であった。ここまで無事にこれた。この地が、我々の目指している建国の地であるか、どうかは、今のところ定かではない。我々が国を興す地点に一歩近づいたことは間違いない。はるばるの海路、大変にご苦労であった。ここに諸君たちの苦労に心から感謝する。ありがとう』
 統領の言葉に一同は大歓声をあげた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  159

2012-11-06 08:12:02 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは、自船が左へ回頭するのを確かめた。そして、後続の各船に目をやり、回頭作業の完了を確認した。
 程遠からぬ位置を進んでいるギアスの舟艇を手招きで呼び寄せた。
 『オ~い、ギアス!聞こえるか』
 『聞こえます』
 『パリヌルスに連絡を頼む。上陸したら全員を整列させてほしい、統領の上陸歓迎だ。浜に横隊、向かって右から左へ閲兵だ。以上だ』
 『判りました』
 舟艇は、勢いをつけてその場を離れていった。
 船団は六条の航跡を海面に残して、浜を目指して進んでいる。目指す先の半島の上の空がほのかに明るい、月が昇り始めていた。こがね色をした月である。淡いながらも黄いろみを帯びた見るからにでっかい月であった。
 オキテスは、停船、下船、上陸の一連の作業指示を、何時、発するかを考えて心の琴線を張りつめていた。
 間をおかず、そのときが訪れた。月の高さがほどいい高さにのぼっている。彼は、アミクスに水深を測らせた、胸辺りの深さだ。すかさず、クリテスに状態を質した。
 『浜まで残すところ、この距離です。もう大丈夫です、心配ありません。停船のうえ、上陸指示を発していただいて結構です』
 『おいっ!アミクス、信号だ!『停船、上陸せよ』だ』
 『判りました』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  158 

2012-11-05 08:18:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 打ち合わせを終えたオキテスがクリテスのいる舳先に戻ってきた。
 『おっ、クリテス、船の進み具合、状況はどうだ』
 『はい、隊長。順調です。間もなく、一斉回頭して浜を目指す地点に到達します。回頭したら浜までの距離は5スタジオンぐらいです。段取りと指示をお願いします』
 『よしっ!判った。水深、海底の状態はどうだ』
 『座礁の心配はありません。浜まで半すタジオンくらい手前の水深で胸から肩あたりです。このあたりは思ったより遠浅です』
 『判った』 彼はアミクスを大声で呼んだ。
 『おっ、アミクス。松明信号の準備にかかっておくのだ、いいな。俺がサインを送ったら、左方向、浜へ向かって『一斉回頭』の指示を出すのだ。回頭を終えて浜にあと半スタジオンとなったら『下船、上陸せよ』だ判ったな。タイミングを間違えるな、以上だ』
 『判りました。緊張しますね』
 『当たり前だ。異常に気づいたら、直ぐ、俺に連絡だ、いいな。部署についてサインを待て』
 段取りと指示を伝え終えた。彼は張りつめた気持ちでクリテスからのサインを待った。クリテスも船団の水先案内ということで
緊張していた。
 彼は闇を通して目にする目印を見落とさないようにと真剣に浜の状態を見つめた。
 『隊長っ!一斉回頭の地点です』
 オキテスは、『判った』と短く答えて、アミクスのいる船尾に体を向けて大声をあげた。
 『アミクス、一斉回頭だ。信号を送れ!』
 『はいっ!』
 張りのある返事が返ってきた。*

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  157

2012-11-02 08:26:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船団は、湾内を航行していた。上陸予定地点にはまだかなりあると思われる地点である。左手にある半島は島の海岸線から14キロ余りも団子状に突き出ている半島であり、船団はその根元に向かっているのである。浜に住んでいる者たちの家の灯りがちらりちらりと目につく、多くはなかった。
 『クリテス、浜の住民は多いのか。明るいとは言えない灯りの数だな』
 『いえ、それほどではありません。目指すのは、灯りのある方角でありません。上陸を目指している浜は、人が住んではいませんが、漁師の小屋が二、三棟あるだけです』
 『それはいいな、夜更けて上陸するのだ。そのうえ、これだけの人数だ。無用な騒ぎを起こしたくない』
 『それについては、隊長が思っているほどの気遣いはいらないと思います』
 クリテスと話し合いながら、オキテスはアミクスを呼んだ
 『おっ、アミクス。後続の各船の状況はどのようだ』
 『はい、異常はありません。隊長、月の出が近いようです。接岸の頃には、月明かりが期待できそうです』
 『おっ、そうか。それはありがたい。クリテス、聞いたか』
 『それは、いいですね。いいタイミングで月が出てくれるとは、、、』
 『よしっ、クリテス、水先案内を頼むぞ。俺は統領と打ち合わせてくる』
 オキテスは、統領と軍団長に船団の進行状況を伝えた。
 『統領、軍団長、聞いてください。船団は順調に進んでいます。目指す上陸予定地の湾内に入っています。ところが、この湾がとてつもなくでっかい湾らしいのです。程なく上陸の浜に到達する予定です。下船の準備をしていてください。クリテスの水先案内で上陸に不安はありません。以上です』
 『おっ、そうか。安心だな』
 『上陸する頃には、月も出ていると思います』
 『おっ、それはいい、願ったりかなったりだ』
 上陸について抱いていた危惧のひとつが消えたことにオキテスは安堵していた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  157

2012-11-02 08:26:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 船団は、湾内を航行していた。上陸予定地点にはまだかなりあると思われる地点である。左手にある半島は島の海岸線から14キロ余りも団子状に突き出ている半島であり、船団はその根元に向かっているのである。浜に住んでいる者たちの家の灯りがちらりちらりと目につく、多くはなかった。
 『クリテス、浜の住民は多いのか。明るいとは言えない灯りの数だな』
 『いえ、それほどではありません。目指すのは、灯りのある方角でありません。上陸を目指している浜は、人が住んではいませんが、漁師の小屋が二、三棟あるだけです』
 『それはいいな、夜更けて上陸するのだ。そのうえ、これだけの人数だ。無用な騒ぎを起こしたくない』
 『それについては、隊長が思っているほどの気遣いはいらないと思います』
 クリテスと話し合いながら、オキテスはアミクスを呼んだ
 『おっ、アミクス。後続の各船の状況はどのようだ』
 『はい、異常はありません。隊長、月の出が近いようです。接岸の頃には、月明かりが期待できそうです』
 『おっ、そうか。それはありがたい。クリテス、聞いたか』
 『それは、いいですね。いいタイミングで月が出てくれるとは、、、』
 『よしっ、クリテス、水先案内を頼むぞ。俺は統領と打ち合わせてくる』
 オキテスは、統領と軍団長に船団の進行状況を伝えた。
 『統領、軍団長、聞いてください。船団は順調に進んでいます。目指す上陸予定地の湾内に入っています。ところが、この湾がとてつもなくでっかい湾らしいのです。程なく上陸の浜に到達する予定です。下船の準備をしていてください。クリテスの水先案内で上陸に不安はありません。以上です』
 『おっ、そうか。安心だな』
 『上陸する頃には、月も出ていると思います』
 『おっ、それはいい、願ったりかなったりだ』
 上陸について抱いていた危惧のひとつが消えたことにオキテスは安堵していた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY             第5章  クレタ島  156

2012-11-01 08:08:46 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『お~い、オキテス、俺の声が聞こえるか』
 オキテスは、パリヌルスの一番船が接近してくるのに気づいていた。
 『お~っ、聞こえる聞こえる。どうした、何用だ?』
 『先導役の交替だ。頼む。クリテスに聞いて先導してくれ。この真っ暗闇だ、見当がつかん』
 『判った。了解した』
 オキテスは、アミクスに誘導の松明信号を掲げさせて船団の先頭に出た。
 『おい、クリテス、今、我々がいる地点が判るか』
 『え~え、判ります。暗闇と言えども大丈夫です。私の指示するように船を進めてください』
 『この地点、進行はこれでいいのか』
 『いいです。このまま真っ直ぐに進んでください。進行方向に座礁の危険はありません。水深も充分です』
 『よしっ!判った』
 パリヌルスの一番船は最後尾についた。
 『オキテス隊長、いいですか。今日は、とりあえずキドニアの北部地区の浜につけます。明日、このクレタ島のことについて説明いたします。そのうえで、どの地点に上陸するかを決めてください。この湾はとてつもなく広い湾なのです。西の地にある北に突き出している半島まで150スタジオン(30キロ余り)もある広い湾です』
 『そうか、この暗さでは見えないが、そんなにでっかい湾なのか。入り江なんていうちゃちなものではなさそうだな、判った』
 彼らは暗い海を上陸地点へと向かって漕走した。