『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第8章  クレタ離脱  40

2019-06-07 04:54:06 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスが無意識につぶやく。
 『この時節がたまらない!好きだ!』
 黎明の訪れが日に日に早まる、陽射しが強くなっていく、アーモンドの花が咲きほころぶ頃が来る、心が身体が活性する。
 衝動が体を貫く、じっとしておれない、目覚める、寝をむさぼっているユールスを起こす。
 広場を横切る、ユールスの歩調に合わせる、坂道を駆けおりる、朝行事の浜に着く、ムムッ!一番のりではない。
 早起きの者らが海に身を浸している、空を仰ぐ、星がまたたく二つ、三つ。
 ユールスの手をひいて海に身を浸す、身体、知覚、五感が覚醒する、ユールスと顔を合わせる、目が合う、笑みを交わす、情が通う、一時を過ごす。
 早起きの彼らと共に、大日輪が水平線を破って昇る時を待つ。
 『大日輪の昇る姿を見たい!』
 晴れの日である限り、この望み、期待は必ず達成される、成就する。
 『全てがそうであってほしい』
 誰もがそう望む。
 アエネアスは、希望の達成、成就に関する条件を自然の成り行きから学びとる、結論する。
 『条件を整えれば、必ず成就する!整わざれば成就なし!』
 アエネアスとユールス、そして、海に身を浸す彼ら一同、大日輪が水平線を破って顔を見せる、その一瞬に想いを馳せる、願望の成るを自然体で祈願する、その一瞬に誓約する。
 成就させたいことをイメージする、思考する、準備を整える、起ちあがる。
 脚下を照顧する!一歩前へ踏み出す、成就への一歩である。
 事の始まりには、何故がある、どうしてがある、どうすればいいがある、進む方向に分かれ道がある、行く手を阻む壁がある。
 立ち止まる、前へ行こうか?退こうか?乗り越えようか?飛び越そうか?つらぬくか?決断に迷う。
 迷う、間違える、しくじる、つまずく、突き当たる、難事に遭遇する。
 自然体で考える、自分の身の丈で考える、身の丈が及ばない。
 悔いる、改める、謙虚を忘れず、自分の力量を計る、自分の立ち位置を考える。
 すべての力の結集を考える、出力を考える、不可能を可能化する、不可能を排除する。
 事の成就を自分に約束する、約束を結果とする、事の成就が成る。
 アエネアスは、統領として、一族の統率者として、あるべき自分を構築する。
 『こうあれば、未来に立ち向かえる!自分の考えの実現に至誠を尽くしてくれる者ら、自分と行を共にしてくれる者ら、これら一族を大切にすることこそ、施政の第一義である!』
 彼は、心の肝に念じた。