『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  308

2010-09-30 08:29:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 砦から数キロ先の原生地帯から群生地までの距離を現在の数単位で現すと、その距離は、35キロを超えている。群生地までのルート整備に100人編成の7隊でたづさわった。
 ルート整備作業には、打ち合わせをした翌日から着手した。
 道幅は、約2メートル、雑木を切り払い、繁茂する草を刈り取って進んだ。彼らは、この作業を7日間で群生地に到達するように計画していた。
 トリタスとオロンテスは、第一日目と二日目とは砦から現地に向けて食事を運んだ。3日目に至っては、丘陵のふもとに大飯場を作って対応した。いずれにしても700人を超える大勢への食事の供給はすこぶる大変な作業であった。砦に残っている者たち、浜衆、集落の者たちがそう出でこの作業を応援した。丘陵のふもとまでの食材の輸送に心を砕いて当たった。。
 3日目の夕食から、収穫作業の終える日まで、この大飯場で収穫作業にたづさわっている800人余りが食事をとり、この地で野宿のかたちで宿営をした。
 作業は、天候に恵まれ、事故者を出すこともなく順調に進んだ。

第2章  トラキアへ  307

2010-09-29 06:53:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスとパリヌルスは、この820人を総括する役務を担当した。トリタスとオロンテスは、食料の調達、収穫に関する用具等の調達と輜重の役務を責任担当した。
 収穫隊は一隊100人構成で7隊が編成された。隊長には、ギアスをはじめ探索に参加した荷役の二人を加えて7人である。彼らの業務の第一は、道作りとルート整備、第二は、群生地の整備と収穫の下準備であり、第三に、収穫である。
 アーモンドの収穫方法は、樹をゆすり、熟したアーモンドの実を振り落とす、その実を拾い集めるといった。極めて原始的な方法である。この拾い集めが収穫であった。
 彼らは、考えて、考えて段取りを整えていった。
 探索隊の一行がたどった道を、キノンから聞き取り計画を整えていった。収穫完了までの15日間にわたるプロジェクトを丹念に段取りしたのである。

第2章  トラキアへ  306

2010-09-28 07:09:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 一同から拍手が沸きあがった。この光景を見て、アエネアスは『これでいける』と確信した。
 打ち合わせは進み、諸事が決められていった。アエネアスはトリタスを手で招いた。イリオネス、パリヌルス、アレテスにオキテス、主だった者たちがかたわらに立っている、彼は気軽にトリタスに声をかけた。
 『トリタス、もう昼も近い、昼めしを一緒に食べよう、馳走はないがどうだ』
 『え~え、結構です。ありがとうございます』
 トリタスは、砦の者たちとの一体感をこんなに強く感じたことはなかった。それとともにアエネアスとその取り巻きたちに絶大な信頼感を抱いた。
 役務と担当を任命された者たちは、直ちに段取りに取り掛かった。
 大群生地までのルートの整備には、キノンが参画した。彼の意見を充分に聞きいれ、ルート整備計画が念入りに練られた。
 全てがアーモンドの収穫に向かって始動した。
 この仕事にたづさわる者は、砦から620人、砦の人員の8割に及んだ。浜衆及び集落からは約200人、総勢820人という大人数が参加することになったのである。

第2章  トラキアへ  305

2010-09-27 13:26:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おう!アカテス、よく聞いてくれた。お前の言うとおり、この件についての腹案は出来あがっている。それは、これからパリヌルスが話す。その上で実行方法を決定して、事に当たる。そういうわけだ』
 ギアスは頷いた。一同もそれに連れて頷いた。
 『その前に一同にはかりたいことについて、統領から話がある。統領お願いします。』
 アエネアスは、立ち上がって話し始めた。
 『このたびの探索において、トリタスが快挙を成し遂げた。それは皆が知っての通りだ。そのことを考えて、この仕事に浜衆たちと集落の者たちにも加わってもらって、収穫の仕事をすすめていこうと考えている。一同の考えはどうだ』
 ギアスは立ち上がり一同を見廻した。
 『統領、私には異論がありません。一同の皆さんはいかがですか』
 彼は、アーモンドの群生地を思い浮かべていた。
 一同は、この呼びかけに直ちに答えた。
 『異論なし!』 との言葉が皆から出た。
 それを聞いて、イリオネスは、トリタスの方に向き、
 『トリタスさんの思いは、、、、』 と声をかけた。一同はトリタスを注視した。
 『ここに集まっていられる皆さんに感謝します。喜んで、この仕事に参加させてていただきます。宜しくお願いします。』
 両の目に涙をにじませての感謝の言葉であった。

第2章  トラキアへ *9月15日から投稿番号を間違えました。

2010-09-27 07:15:30 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 9月15日から投稿番号を間違えました。今朝、気づきました。謹んでお詫び申し上げます。本日の投稿から訂正の上投稿してまいります。
 日付と投稿番号は、次記のようになります。
 9月15日ー297 16日ー298 17日ー299 
   18日ー300 21日ー301 22日ー302
   23日ー303 24日ー304 
 前記のように訂正いたします。
                   やまだ ひでお

第2章  トラキアへ  276

2010-09-24 07:26:07 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アエネアスは、一同と目線を合わせ、この仕事にかける強い思いを訴えた。
 『イリオネス、打ち合わせ通り話し合いを進めてくれ』
 彼は、一同に強い目線を送りながら口を開いた。
 『いま、統領が言われたとおり、この仕事の重要さを認識して話を進めよう』
 彼は、ここで息をついだ。
 『まず、群生地に到達するには、原生の森林地帯、そして、草原を横切って現地に行くわけだが、歩きにくさに加えて、小動物、獣の類による危険がある。これにどのように対応していくか。2つ目は、収穫のことだ。その時期は、そして、収穫に従事する人数は、彼らをどのように指揮統卒していくかである。3つ目は、収穫したアーモンドの輸送に関しても対処を決めておきたい。以上について話し合う。皆、判ったな』
 彼は、検討事項をあからさまに告げて、一同の思考をアーモンドのことに集中させた。イリオネスが話を続ける。
 『今日ここで決めたことは、即、明日から取り掛かる。収穫に向けて、一刻も無駄にしたくはない』
 『軍団長にうかがうが、この件について腹案はお持ちか。もし、それがあるのであれば、それを聞きたい。』
 アカテスが発言した。

第2章  トラキアへ  275

2010-09-23 07:23:20 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アレテスが櫓にいるアエネアスを呼びに来た。
 『統領、一同、広間に集合しました。打ち合わせの準備が整いました。トリタス浜頭は、まだ到着していません』
 『おっ!そうか、トリタスたちはそこまで来ている、気にすることはない。アレテス、一緒に行くぞ』
 彼らは広間に向かった。アエネアスが歩を入れる、一同が立ち上がった。
 『おはようございます』
 『おっ!おはよう。皆揃っているか』
 『オロンテスは、畑をみまわっています。少々遅れます』
 広間に漂う一同の和気にふれてアエネアスは座についた。広間の入り口にはトリタスがたっている。アレテスが彼らを席に案内した。イリオネスが打ち合わせの始まりを告げた。
 『統領、お願いします』
 『おうっ!皆、今日の打ち合わせの件、一同、心得ているな。前おきなく本題に入る。アーモンドの収穫時期が目前に迫っている。事は急を要する。あの群生地は誰にも荒らされたくはない。この件は、我々にとっておろそかにすることの出来ない大事である。判るな』

第2章  トラキアへ  274

2010-09-22 06:33:43 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『さあ~、皆、よく見てみろ。この棒の影が、この線に重なったときが昼めし時なのだ。陽が昇り始めてから、これだけの時が経っている。昼めしまで、これだけの時があるとわかるのだ。皆、判ったか』
 覗きこんでいた浜衆たちは納得したらしい。
 『浜頭、こりゃ、重宝な道具ですね。頃合を知るのにうってつけの道具だがね』
 『皆、聞いてくれ。今日、これから、アエネダナエの砦にアーモンドの大群生をどうするかの打ち合わせに行く。浜のこと宜しく頼むぞ。おい、キノン、それから、お前とお前、用意はいいか。よかったら、行くぞ』
 彼は座を立った。『あのアーモンドの実を収穫するまで、あと半月ぐらいだ』 とつぶやいていた。彼の胸のうちには、集落の者たちも、あのアーモンドの収穫に参加させてやりたいという思いがあった。
 トリタスは、ひとりでつぶやきながら、堅くしまった砂浜を砦に向かって歩いた。
 アエネアスは、砦の西南の櫓に立っていた。その櫓を見上げるトリタスと近づいてくる彼らを見下ろすアエネアスと目線があったようである。双方とも呼応するかのように手をふった。

第2章  トラキアへ  273

2010-09-21 07:02:00 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 トリタスの説明はわかりやすかった。
 『浜頭、その鉄の棒、何度廻しても、停まれば同じ方向を指していますね。フシギといえばフシギだ。はっはあ~、これ一本で方向を決めておけば、方向が決まるということですね。例えば、これは夜でもこのようですかね?また、陸の上も、海の上でも変わらないのですかね?』
 『お~お、お前よく聞いた。それは、夜昼また海の上でも陸の上でも、そんなこと一切、関係がね~んだよ。夜はだな、必ず一方は、星座の『荷車』の方へ向いている。そして、もうひとつ、この板のこの線に、このように鉄の棒をあわせる、板の真ん中に立っている、この棒の影を見るのだ、判るか、見てみろ』
 浜衆たちは、覗き込んだ。
 『おいっ!陽の光をさえぎるな。ここでは陽の光が大事なんだ』
 彼らは、陽の光がさしかけてくる方をあけて、じいっと鉄の棒と板を見つめた。真ん中の棒の影は、板の上にひかれた十文字の線の西方の線から、少々、北方に寄ったところに棒の影の先端があった。

第2章  トラキアへ  272

2010-09-18 06:47:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 エノスの浜のざわつきがおさまり、トリタスが朝の差配を終えて浜小屋へ引き揚げてきた。浜衆たちも4日ぶりの浜頭の顔を見ようと集まってきた。
 『浜頭、旅の収穫はどうでした?』
 『おう、皆元気そうだな。旅の収穫か、でっかい収穫があった。話せば、お前らが腰を抜かすような、でっかい収穫だ。』
 トリタスは、アーモンドの大群生地のことを聞かせた。浜衆たちは、トリタスが手にしている見たことがない道具に目をとめていた。
 『浜頭、手にしている道具、それは何ですか』
 彼らはトリタスに聞いてきた。彼は、彼らを陽の照っている浜に誘い、持っていた真ん中に棒のたっている板を砂上に置いた。彼は、やおら口を開き彼らの問いに答えた。
 『お~お、これか、これはまったくフシギこの上ない道具なのだ。このようにヒモをつかんでぶら下げる、いいな。すると、この鉄の棒がフラフラと動くが、まるで意志があるように動きが鈍ってきて停まる。それが何度やっても、この鉄の棒が同じ方向を指して停まるのだお前らフシギに思わないか。俺はフシギでしょうがない』