『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第6章  激突  11

2007-10-31 07:47:27 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 パリスは、ヘレンの腰に手をまわして、引き寄せるや、ヘレンの口を自分の口で覆った。
 『ううっ~う。』
 ヘレンは、くぐもった声をあげながら、パリスの力で、ベッドに押し倒されていた。パリスの手は、ヘレンの姫どころを愛撫していた。
 
 戦場のメネラオスは、パリスの行方を捜したが、見つけ出すことが出来なかった。パリスの戦場逃亡である。それも果し合いの決闘の場からの逃亡であった。
 メネラオスの心中は、パリスを倒して、この10年の思いを、一気に晴らせなかった無念が滔々と波打った。もう、トロイを許すことは出来ない、卑劣の極みの、このトロイを、何としても、この戦いで征服し、草木一本残さずに炎上消滅させる意志をかためた。

第6章  激突  10

2007-10-30 07:15:29 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 ヘレンは、城の望楼から、義父のプリアモス、老臣たち、そして、へカベ、アンドロマケ等と一緒に決闘の様子を見ていたのだが、濃い霧で見えない。ヘレンは、結果を気にかけながら、部屋に引き返してきた。
 ヘレンは、びっくりした。パリスが部屋にいるではないか。決闘の場にいるはずのパリスが部屋にいる、何ということだ。
 『どうして、貴方がここに?決闘で勝ったの?私の思いと違うわ。』
 『、、、、、、。』
 『返事がないわね、どうしてここにいるのよ。』
 一息を入れた。
 『逃げてきたのね。そのような男を、私は、愛していないわ。』
 パリスは、いちもつをもっこりさせながら起ちあがった。

第6章  激突  9

2007-10-29 07:14:05 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 メネラオスの手には、パリスの兜だけがあった。パリスがいない。
 『ややっ!奇怪な!』
 メネラオスは、見廻した。周りは、霧が濃くもやっている。兜を自陣の方へ放り投げ、パリスを捜した。槍を手にしてパリスを捜すが見つからない。トロイ軍の中にまで入って捜すが見つからなかった。
 パリスは、何もかも振り切って、濃い霧の中を一目散に逃げた。逃げて、逃げまくって、トロイの城中まで、ほうほうの体で逃げてきた。もう、恥も外聞もなかった。自分の部屋にとび込み、部屋の隅に身をかがめて、難を避けようとした。胸は、激しく動悸を打っていた。。

第6章  激突  8

2007-10-27 07:37:03 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 メネラオスは、間髪いれず、パリスに跳びついた。手に石を掴みパリスの剣を持っている手の甲を強打した。剣を手放すパリス。二人は、組み合ってもつれた。メネラオスは、パリスのとさかの無くなった兜を引っつかみ、引き倒したうえ、引っ張り引きずった。決闘の場を狭しと言わんばかりに引きずりまわった。
 息をつめて、この決闘を見ていた、両軍の将兵たちはどよめいた。連合軍の将兵たちから、メネラオスコールが沸きあがり、メネラオスを励ました。
 霧の濃さが増してくる。
 メネラオスは、憤怒を満面にみなぎらせて、パリスを引きずりまわした。彼は、とどめを刺したいと思うが武器が無い。
 引きずられるパリスは、兜の結び紐が首を絞めてくる。苦しい。苦しさが増してくる。霧が濃くなって数メートル先が見えない。
 一瞬であった。メネラオスの、兜を引く手が軽くなって、反動でしりもちをついた。

第6章  激突  7

2007-10-26 08:23:15 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 パリスの受けた傷は、極めて浅手である。脇腹に血の筋が出来ているだけであった。
 両者は、剣を握って、わたりあった。
 霧が濃くなってくる、二人がまきあげる砂塵。パリスは、剣を力任せに横に薙いだ。メネラオスは、パリスの体のくずれを見逃さなかった、斬撃を打ち込む、剣で受け止めるパリス。火花が飛び散った。両者、打ち込みが決まらない、剣撃が続く。メネラオスにチャンスが来た!思い切って、剣を横に薙いだ。腰をかがめたパリスの兜にあたった。剣は、三つに折れて飛んだ。パリスの兜のとさかがぶっ飛んでいた。

第6章  激突  6

2007-10-24 08:13:38 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 『ややっ!』
 霧を裂く気合。パリスの手を離れた長槍は、メネラオスをめがけて飛び来た。
 メネラオスは、堅剛の楯をかざして、これを弾き飛ばし地上に落としめた。
 次いで、メネラオスは、使い慣れた長槍を手にして、投げの姿勢をとった。
 『妻と財宝を掠め取り、信義を踏みにじった奴め!』
 メネラオスは、意識を集中して、長槍を渾身の力をこめて投げた。槍は、イメージした通りの影を引いて飛び、パリスのかざす楯を貫き鎧の脇胴を切り裂いた。身をよじったパリス、辛うじて難を避けた。
 間合いをつめた二人は、帯剣を引き抜いて構えた。

第6章  激突  5

2007-10-24 07:17:00 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 ヘクトルは、決闘の意義を考えて、部下をトロイの城市へやり、白と黒の羊、各一匹づつを準備した。決闘の取り決めを約して、儀式を執り行った。
 メネラオスとパリスの二人は、誰が先に、槍を使うか、くじでもって決めた。パリスと決まった。
 測り定めた決闘の場、二人は、定められた位置に起った。朝の冷気で、うすく霧がたちこめている。
 研ぎ澄まされた意識、鋭く輝く双眸、憤怒の表情、果たしあうべく二人は、対峙した。

第6章  激突  4

2007-10-23 08:07:53 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 ヘクトルは、槍の真ん中を持ち、横にして、自軍の進撃を抑えた。連合軍も前進の歩みを止めた。双方の将兵は、にらみ合ったまま、なりを静めた。
 ヘクトルは、双方の軍の将兵たちに、大声をあげて告げた。
 『トロイと連合軍の将兵の諸君!我が軍の将、パリスの言ったことを聞いてくれ!』
 これを耳にした将兵たちは、もっていた槍や武具を地面に横たえて、事の成り行きを見守った。
 『これより、我が軍の将、パリスと貴軍の勇武の将メネラオスの二人が、ヘレンと財宝を賭けて、果し合いを行い、勝負を決する。この勝負に勝った者が、ヘレンと財宝を自分のものとする。これで以って、友好の盟約を整えようではないか。』
 と、大音声で叫び告げた。

第6章  激突  3

2007-10-22 08:51:12 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 パリスであった。このトロイ戦役の引き金の一つであったパリスである。これをメネラオスが見つけ、急ぎ戦車を走らせた。
 パリスの眼前に姿を見せたメネラオスは、パリスを持ち前の鋭い目でにらみつけた。パリスの肝っ玉がちぢみ上がった。パリスが予定していた相手ではなかった。
 目が合った。瞬間、パリスは、身を退いた。こともあろうに自軍の軍中に身を退いたのである。
 ヘクトルがこれを見た。けしからん!何ということだ。俺の身内の大将とあろう者が。トロイ軍の総司令として、そして、兄として、ヘクトルは見逃すわけにはいかない。ヘクトルは、パリスを怒鳴りつけた。
 『パリスっ!恥を知れ!何をやっとる!堂々と戦えっ!』
 『兄者!俺はメネラオスと果たしあう!ヘレンと俺の財宝の全てをかけてだ。』
 『よし、判った。その手筈を整える。しばし、待て。』

第6章  激突  2

2007-10-20 08:29:43 | トロイ城市は炎上消滅の運命であった。
 一塊りの隊形になった兵たちは、楯を頭上にかざした。飛び来る矢に倒れる兵はいない。ギリシア歩兵の新戦闘技術である。小集団編成で密集隊形で戦う。楯を頭上にかざして飛び来る矢から身を守り、対手に接近して倒すべき相手を少人数にしぼり、倍する兵数で襲い掛かる。そして、確実に対手を倒し、自隊の損害を最小限にとどめる。
 連合軍は、密集隊形を解かずに前進した。双方の軍は、指呼の距離までに接近した。
 トロイ軍の先陣にあって、大声で叫ぶ将が一人いた。