『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第3章  踏み出す  91

2011-05-31 07:00:04 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『パリヌルス様、この縄張りなんです?』
 『これか、トリタス聞いて驚くでないぞ。この縄張りはな、船を作る作業場の縄張りだ。語ればちょっと長い、お前も知っている、波打ち際に乗り上げれる、あの船足の速い舟艇を3艇造らねばならんのだ。昼めしを食べながら話してやる』
 『おうっ!トリタス、元気であったか』
 『統領もお元気そうですね、朝晩が涼しくなりました、秋の訪れです。今日の水揚げでめずらしく大ダコの大漁、そして、でっかい地中海ロブスターが獲れましたので、皆で昼めしでもと思い、たずさえてきたわけです。これを見てください』
 『ややっ!これはすごい。イリオネス見ろ』
 『あ~、イリオネス様、お変わりありませんか。お元気そのものですね』
 『そうだ、この元気がとりえのイリオネスだ』
 『昼をご一緒しましょう。パリヌルス様に申し上げてオキテス様とお連れの方に準備してもらっています』
 『そうかそうか、準備が出来次第、そちらへ行くとしよう』
 『いま、パリヌルス様にお聞きしていたところです。あの船足の速い舟艇を3艇も造られるそうですね』
 『う~ん、少々訳があって造るのだ。それも3艇もだ。ま~、昼めしを食べながら話をしよう。いろいろとな』

第3章  踏み出す  90

2011-05-30 06:34:44 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『やっやっ!ご両人、お元気そうで。ご機嫌はいかがですかな』
 『おおっ!トリタスじゃないか。俺ら二人は、見ての通りだ、元気元気。頭(かしら)も元気そのものですな、何より何より。ところで今日は何か用事でもあったのか』
 『7日に一度は砦を訪ねないと。ところで、統領、イリオネス様の皆さんもお元気ですかな』
 言いながら浜で一緒に皆が砦の方に目を向けた。砦の回廊に二つの人影が見える、向こうでもこちらのことが目についたらしく手の振っているのが見えた。
 『あれは、統領とイリオネスさまではないですか。パリヌルス様、昼めしはこれからでしょう。浜焼きで一緒に食べませんか。お~い、ちょっと』 と浜衆を手で招き寄せた。
 『どうです、これっ!見てください。みごとでしょう。この大ダコ、こちらは地中海ロブスター、そして、これがサルバ(タイ科スズキ目の魚)です。昼にタラフクいきましょうや』
 『これはすごい、タコもみごとだが、このでっかい大エビには驚くぜ。よっしゃよっしゃ、統領もイリオネスも呼んで、一杯いこう』
 『おい、カイクス、浜焼きの準備をしろ。俺は酒を取りにいってくる。統領とイリオネスは俺が呼んで一緒に来る。食器類、調味料は俺が持ってくる』
 『おいっ!オキテス、塩漬け肉も持って来いよ。トリタスの持ち帰り分もだ』
 『わかった』

第3章  踏み出す  89

2011-05-27 07:01:15 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 パリヌルスら三人は、熟考、相談の上、作業の流れをよくよく考えて、一連の作業場と組み立て場の立地とそのあり方を考えた。とにかく、舟艇3艇の同期進行組み立てである。脳をねじり絞って考えた。
 パリヌルスもオキテスも案ずるよりも生むは易いと、その縄張りを決めていった。
 パリヌルスは、エドレミトにおいて造船を手掛けていたし、オキテスはトロイのチャナツカレに船の修理場を持っていた。彼らのその経験が生かされて、このたびの業務が遂行されていくのである。
 三人は、テキパキと事を進めていった。
 『パリヌルス、どうだ。こんなもんでいいだろう』
 『おう、それでいい、それでいい』
 『そこはもうちょっと左がいい』
 『そうか、判った』 と会話を交わしながら、彼ら二人は、砂浜に縄を張り、ところどころに杭を打ちながら、頭の中の考えを形にしていった。
 『これでいいな。あとはオロンテスと打ち合わせて、彼の作業がやりやすいように作業台の配置や仕組みを整えよう』
 『それがいい。そのようにしよう』
 彼らが作業をやっている光景を砦の回廊からアエネアスとイリオネスが見ていた。
 『統領、彼らやっていますね』
 『うん、奴ら懸命にやっている。何事も最初のかかりにある。初めよければ終わりよしだ。イリオネス、彼らの頼みごとは何でも整えてやってくれ。頼むぞ』
 『判りました』
 このとき、浜に一艘の小舟が着いた。三人が乗っている、トリタスたちである。彼らに会うのは幾日ぶりであろう。

第3章  踏み出す  88

2011-05-26 14:00:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 森に着いたオロンテスは、全員を前にして用材の伐りだしに関する注意事項を事細かに説明した。
 まず、鋸を使って樹木を切り倒す要領に始まり切り倒す方向、また、枝の切り落とし等について説明した。最期に伐りだす樹木の選定についてはオロンテス自身が選んで目印をつけた樹木のみを切り倒すよう指示した。日程としては、今日、明日の二日間は切り倒しに専念し用材の運搬は明後日からとした。また、この切り倒しに当たっては、けが人を出さないようにとりはかることが肝要であり、樹木の伐採の区域をチームごとに区割りを決めて展開するようにはかって伐りだす樹木の選定を行った。
 オロンテスは、用材の運搬方法について考えた。いずれにしてもこの件については、イリオネス、パリヌルスにはかって、用材運搬別働隊を組織して事に当たることにした。
 まさに、砦の者たち総てを動員して、この業務を遂行しなければならない必然がそこにあった。

第3章  踏み出す  87

2011-05-25 07:12:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 砦の一日が始まる、そこには望みを達成させようと急きたてる事情とその事情を促進させる生気が満ち溢れていた。
 西門前の広場に業務にたづさわる者たちが集まり始めた。この造船業務にたづさわる者たちの総数は、ざあ~と数えて80人余りのはずである。
 一同が広場に集結を終えた。この風景をアエネアスとイリオネスは眺めていた。
 大声をあげて指示を発し、動き回る幹部たち。彼らの動きが落ち着いてきた。オロンテスが姿を見せた。
 パリヌルスが一同を前にして声を上げた。彼はこの陣容で今日から取り掛かる造船作業の作業工程を説明し、作業開始を宣言した。
 『諸君に伝える。本日、只今より、舟艇三隻を建造する業務を開始する。一同、奮起して業務を遂行せよ』
 『おうっ!』
 返事が力強くこだました。
 パリヌルスはオキテス、オロンテスと二言三言、言葉を交わした。うなづく彼ら、広場の一同が動き始めた。
 オロンテスは全員を引き連れて、用材伐りだしの森へと向かった。
 パリヌルス、オキテス、カイクスの三人は、一連の作業場と舟艇組み立て場の設置のために砦の浜へおもむいた。

第3章  踏み出す  86

2011-05-24 07:21:31 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『おっ、よし。それが終わり次第、全員、森へ向かう、いいな。明日から用材の伐りだしを行う。いいか、伐採に関しては、オロンテスの指示に従ってやってもらう、判ったな。では、打ち合わせを終わる。質問はあるか』
 『判りました。質問はありません』
 『では、散会する』
 一同は、幹部連を残して広間から引き揚げていった。広間には、造船の業務に関する幹部役を務める7人が居残り、雑議を交わしていた。この席でオキテスはカイクスを紹介して、その役務を説明した。
 『これで打ち合わせを終わろう。明日は全員、早朝招集だ。オロンテス、お前は少々遅れてもかまわん。畑作業の打ち合わせを終えて出きるだけ早く来てくれればいい』
 パリヌルスは、必要事項と明朝の集合場所を伝えて、打ち合わせを終えた。
 過ぎた夏の日に比べて、落陽の速度が早くなっている、初秋のさわやかな風の渡るエノスの浜の夕景がそこにあった。

第3章  踏み出す  85

2011-05-23 06:55:13 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 四人になった彼らは、いろいろ話しながら砦に帰り着いた。彼らは、夕刻の打ち合わせに遅れた。広間には、アレテス、ギアス、アカテス以下14~15人の舟艇の組立作業にたずさわる者たちが集まり待っていた。
 パリヌルスは開口一番みんなに話しかけた。
 『お~っ!皆、集まっているな。ごくろう、ごくろう。俺たちが少々遅れた、待たせたかな、悪かった』
 彼は言葉を区切った。
 『早速、打ち合わせをやろう。今日の情報での明日だ。先ず、用材の件だ。俺とオロンテスだが砦建設のときに用材を伐りだした森へ行って、つぶさに見て来た。その森は、造船の仕事にたづさわる我々を充分に満足させる用材が伐りだせる。そのことを確認した。オキテスは用事を終えて帰って来て、俺たちを迎えに来てくれた。彼らと合流して帰砦したというわけだ。では、話をまとめて、明日の予定について話す。アレテス、お前の方はどうだった。オキテスと俺との部下を別にして、チームのメンバーを決めたのか』
 『はい、決まりました。その中で中心となって動く者たちが、今、ここにつめている、この者たちです。これらの者たちに、両隊長の部隊からの者が加わって、メンバー編成が、明朝、アサイチで終わります』

第3章  踏み出す  84

2011-05-20 07:54:25 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 砦の方角から、こちらに向かってくる二つの人影が見えた。まさに思惑(おもわく)の接近遭遇であった。
 『おうつ!オキテスではないか。帰りが少々遅くなったようだな、何かあったのか』
 『いやいや、申し訳ない。釣り糸を海に入れたら、面白いくらいに釣れるじゃないか、つい夢中になってな。ところで森を見てきたのか。いい用材が伐りだせそうか。造船のこと、統領から正式なゴーサインが出たそうじゃないか、よかった』
 『おう、それについては、砦に帰って詳しく話す。それから今後のこともな。期間は40日、目一杯だ。お~お、カイクス、お前、一緒か忙しくなるぞ。オロンテスは、小麦の事もある、造船の仕事にしばりつけとくわけにもいかん。仕事が順調に動き出したらお前と俺とが主役になる、よろしく頼む』
 『判った、パリヌルス。いい仕事をしようぜ。おい、お前カイクス、俺たち二人の助手を努めろ。判ったか』
 『判りました。しっかりやります』
 『そうだ、しっかり努めてもらう。いいな』

第3章  踏み出す  83

2011-05-19 06:49:13 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オロンテス、オキテスの帰りが遅いな、海は穏やかなのに。快晴微風だが向かい風か、道中魚釣りでもしているのか。まあ~いいか。オロンテス、出かけよう』
 『パリヌルス、砦建設の用材を伐りだした、あの森に行こうと思っているのだが』
 『おうっ、いいだろう。ところで、どれくらい伐りだすか、見当をつけたのか』
 『おおよそですが、見当をつけています』
 二人は砦を出て森に向かった。
 彼らは丹念に森を見回った。造船に適した用材と伐りだす木材の本数を照合しながら見回った。
 『オロンテス、舟艇の部材の製材に動員する人員の手配りを頼むぞ。これは、舟艇組み立てのチームとは別働組だ。そして、部材等の設計にかかれよ。その間に用材の伐りだしと運搬を終える。舟艇の組み立て場と作業をやる所は、俺とオキテスがやる。部材は気が遠くなるくらいに多種多様だ。お前は設計に専念しろ。俺とオキテスが手助けする安心しろ。俺は、これでも30隻余り、船を造っている、大丈夫だ、安心して任せろ』
 二人は入念に森を見回り帰途についた。



 *昨日の投稿で字を間違えました。本当に申し訳ありません。
 *最終行
  切り出す   を   伐りだす   に訂正いたします。
  深くお詫びいたします。

第3章  踏み出す  82

2011-05-18 06:39:09 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そうですな、魚も肉もそれぞれの味がありますが、夏の魚は脂っけがありません。その分、味が落ちます。牛や羊の肉は季節を通じて味が安定していますから』
 アレテス、ギアス、アカテスはチームの編成に知恵をしぼった。彼らは、パリヌルス、オキテスの部下に造船について詳しい者がいることを念頭に編成を考えていった。
 彼らは、取れたての魚と塩漬け肉に舌鼓をうって昼めしを終えた。アエネアスはと言うと久しぶりに口にした塩漬けの肉を味わった。彼は『うまい、うまいっ!』 を連発していた。
 彼ら一同は、一斉にワークに踏み出した。パリヌルスは一同に伝えた。
 『このあと、夕食前に一同は広間に集まって、仕事の進み具合、明日の仕事についての打ち合わせを行う一同よろしく頼む』
 『パリヌルス隊長、いいですか。要請です。貴方の部下とオキテス隊長の部下から造船に詳しい者を都合、15人くらい頼みたいのですが』
 アカテスからの要請であった。
 『いいだろう、判った。それは引き受けた。夕刻の打ち合わせまでにオキテスと話し合って決めておく。それでいいか』
 『結構です』
 各自は場から去っていく、そのうしろ姿は意気軒昂にして頼もしいところがあった。
 『オロンテス、どうだ俺たちも出かけるか』
 『いきましょう。どこの森から用材を切り出すか。それを吟味しなければなりません』