二人の交わす会話は、短いものであったが、親子の情が充分に通い合う会話であった。
砦の日常は落ち着いてきていた。この様に落ち着いた雰囲気の生活風景は、砦の者たちにとって、戦いに明け暮れた10年の長き間、味わったことのない心象であり、生活風景であった。彼らが味わう平穏な生活も、しかし、平和と呼べるものではないものであった。
アエネアスの心の中に漣が立っている。この漣が大波に変じて、風を呼び、大きな風浪となって、心と身体が入れ替わり、心の中にあった波の中に身をおき風浪に翻弄される我が身の姿がまぶたの裏に見え隠れした。
イリオネス、パリヌルス、アレテス、オキテスらアエネアスの取り巻きの連中の心の中にも、個人差はあるものの、小さな波が立ち、風にもてあそばれていた。彼らのそれは、アエネアスの心象風景には至っていなかった。
アエネアスは心に決めた。疑わしきは正し、知るべきを知って起とう。この地より建国への航海に出ようと決心した。
彼は、今日まで生きてきた年月、星霜を振り返った。失敗を怖れず建国の道を踏み誤らない自信と目標をたがえることなく目指して進む自分をイメージして決意した。
それは、ゆるぎない決意であることを何度も心の中で繰り返して、閾下に潜む意識の中に刷り込んだ。
砦の日常は落ち着いてきていた。この様に落ち着いた雰囲気の生活風景は、砦の者たちにとって、戦いに明け暮れた10年の長き間、味わったことのない心象であり、生活風景であった。彼らが味わう平穏な生活も、しかし、平和と呼べるものではないものであった。
アエネアスの心の中に漣が立っている。この漣が大波に変じて、風を呼び、大きな風浪となって、心と身体が入れ替わり、心の中にあった波の中に身をおき風浪に翻弄される我が身の姿がまぶたの裏に見え隠れした。
イリオネス、パリヌルス、アレテス、オキテスらアエネアスの取り巻きの連中の心の中にも、個人差はあるものの、小さな波が立ち、風にもてあそばれていた。彼らのそれは、アエネアスの心象風景には至っていなかった。
アエネアスは心に決めた。疑わしきは正し、知るべきを知って起とう。この地より建国への航海に出ようと決心した。
彼は、今日まで生きてきた年月、星霜を振り返った。失敗を怖れず建国の道を踏み誤らない自信と目標をたがえることなく目指して進む自分をイメージして決意した。
それは、ゆるぎない決意であることを何度も心の中で繰り返して、閾下に潜む意識の中に刷り込んだ。