『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

第2章  トラキアへ  370

2010-12-28 07:58:08 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 彼らは到着した。イリオネスは、門前に立つ統領に気づき、北門の門前に一隊を整列させた。荷を地上に降ろした彼らは額の汗をぬぐった。
 アエネアスは、イリオネスに歩み寄った。
 『おっ!イリオネス、ご苦労であった』 
 短いひと言であったが深く情がこもっていた。ついで、アエネアスは、居並ぶ一行の前を歩みながら、一人ひとりに『ご苦労』 と声をかけ、ねぎらった。
 イリオネスは、準備してきたよりぬきのアーモンドを差し出した。
 『統領、アーモンドです。どうぞ』
 『う~ん、素晴らしい、みごとなアーモンドだ。いただくぞ』 と言うなり、2粒を掴み口に放り込み、歯音高く噛み砕いた。
 『う~ん、旨いっ!』 感嘆の声を上げた。
 アレテスは、イリオネスに声をかけた。
 『軍団長、ご苦労様でした。倉庫の準備整っています』
 『そうか、ありがとう』
 イリオネスは、統領に歩み寄り報告した。
 『統領、アーモンドの収穫作業が終わり、運び込みの一隊を引き連れて到着しました。アレテスに聞けば倉庫の準備ができているそうです。ありがとうございます。収納についてはアレテスに引き継ぎます』
 『おう!ご苦労であった。皆を連れて浜へ行き、さっぱりして来い。話はそれからでいい』
 『判りました。ありがとうございます』
 イリオネスは、入庫の作業をアレテスに引き継ぎ、一行50名余りを引き連れて浜へ向かった。


 今年もあと4日となりました。
 私の書いているブログの小説をお読みいただき誠にありがとうございます。これからも書いていきます。何卒、宜しくお願いいたします。
 迎える2011年、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げます。
 いよいよ、アエネアスはトラキアの地を出立いたします。
 2011年のスタートは1月6日です。今年も何卒宜しくお願い申し上げます。

              やまだ ひでお

第2章  トラキアへ  369

2010-12-27 08:00:33 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『オキテス隊長、大きな荷を背にした一行の姿を見とめました。アーモンドの一隊ではないでしょうか。まだ、かなりの距離があります』
 『おっ!そうか。いま、櫓へ行く』
 『お~い、アレテスに急ぎ、北東の櫓に来るように伝えてくれ。北門の倉庫にいるはずだ。急げ』
 『判りました』 伝令の兵は走った。
 オキテスは、櫓に登って北の方角に目をやった。アレテスもやってきた。
 『おいっ!アレテス、アレを見ろ。アーモンド様の到着だ』
 『オキテス、迎えてやる手配をする。お前、統領を連れて北門に来てくれっ!』
 『判った!直ぐ行く』
 アレテスは、北門の前に兵を整列させて一隊の到着を待った。荷を背にした一隊は、門前100メートルくらいのところを確かな足取りでこちらに向かっていた。
 アエネアスもオキテスとともに現れた。
 隊を率いて先頭にいるのはイリオネスであった。
 一隊は、一列縦隊でこちらに向かっていた。

第2章  トラキアへ  368

2010-12-24 08:03:50 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 あれてすは、部下5人の担当を決めて砦の者たちを手伝わせて、アーモンドの倉庫の整備に取り掛かった。
 アエネアスとオキテスは何事かを語り合っていた。総動員で取り組んだアーモンドの収穫が、あと2日で終わる。語り合っている二人の胸には歓びがこみ上げてきていた。
 『アーモンドについてのあとのことは、皆で話し合った上で決めて処理しよう』
 『それがいいですね』 とオキテスが答えた。
 そう話しているところに、ダナンとアバスが姿を見せた。
 『統領、ダナンが帰るそうです』 アバスが伝えた。
 『統領、いろいろとありがとうございました。私は帰ります。何か用件のあるときは声をかけてください。あ~あ、それから、オキテス隊長、ロムフアイアのことについてアバスから聞きました。私の使っていたものですが、アバスに渡してあります。どうぞ、受け取ってください。無敵の武器です。お二方、ありがとうございました。では、これにて』
 『ダナン、それを俺にくれるのか喜んで受け取る、ありがとう』
 ダナンのロムフアイアがアバスからオキテスに手渡された。それは、鉄でできた使いがってのよさそうな鋭利なトラキアの刀槍具の一つであった。
 ダナンは、アエネアス、オキテスと握手を交わして、迎えの浜衆とともに砦を去った。
 今日の砦は、昨日とはうってかわったあわだたしさに沸いていた。動き回る者たちの表情は活気に満ちていた。
 空の青さが目にまぶしい、陽は真上を過ぎようとしていた。北東櫓の見張りの兵がオキテスのもとに走りよって来た。

第2章  トラキアへ  367

2010-12-23 07:57:34 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アレテスは、統領とオキテスの了解を得て、砦の者たちを西門前の広場に集めた。集まった者たちには、今日から、収穫したアーモンドを砦の倉庫に運び入れることを伝えた。
 『諸君っ!おはよう。君たちはいい朝を迎えたか。みんなに伝えたいことがあって集まってもらった。とっても喜ばしいことだ。いいか。アーモンドの収穫が終わった。皆が腰を抜かすくらいの大収穫であった。喜んでくれ。皆も砦にいて、与えられた役務に務め、よく働いてくれた。厚く礼を言う。ありがとう。ありがとう。ありがとう』
 彼は、みんなに心が伝わるように、左前、正面、右前と三方向に向かい丁寧にありがとうを繰り返して気持ちを伝えた。集まった砦の者たちは大歓声をあげた。
 『諸君、聞いてくれ!収穫したアーモンドを今日から、この砦の倉庫に運び込む。運び込みの第一陣が今日の午後に到着する。宜しく頼む。今日を含めて三日間で運び込みを終了する。アーモンドを運び込む倉庫は、北門の倉庫である。以上だ。よろしく頼む』
 『ワオ~ッ!』『ワオ~ッ!』『ワオ~ッ!』 大歓声であった。
 アレテスのそのポジテイブなフエィスは紅潮していた。アエネアス、オキテス、彼らに連なる面々も目は嬉々として、喜びに溢れていた。

第2章  トラキアへ  366

2010-12-22 07:47:53 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アレテスは、久方ぶりに砦で朝を迎えた。
 『お~い、オキテス、朝シャンだ、一緒に行こう』
 オキテスに声をかけ、連れ添って浜へ向かった。
 『おい、アレテス、倉庫を決めたぞ。北門から北東櫓に向けての空き倉庫を使ってくれ。あの場所は陽もあたりにくい、アーモンド倉庫にはうってつけだ。いいな』
 『そうか、判った。ありがとう。ところで聞いていいか。夕べの連中だが、何かあったのか』
 『あった。この浜の海岸線の東のはずれ、サロス湾の奥のエブリジエにオデッセウスの軍団が上陸して掠奪と狼藉をやったのだ。名目は『トロイの落人狩り』と唱えてやったことなのだ。その探索に派遣した連中だ。奴らは、食糧の掠奪と婦女子の暴行をやって4日ぐらいで引き揚げたらしい。帰国途中にやった海賊稼業だ。全く許せん。けしからん奴らだ』
 オキテスの憤懣やるかたない言葉であった。 
 『それは大変だったな。事は決着したのか』
 『おう、決着した。先日、三人のトロイからの落ち延びてきた者どもから耳にした情報だったのだ』
 『オキテス、考えてみると、ひとつのの国のカタチを整え、維持していくということは大変なことだな。そのうえ国を創るということは、さらに大変なことだ。俺は、統領を盟主にしていることに、とても満足している』
 オキテスもアレテスの言った言葉に大きくうなづいていた。

第2章  トラキアへ  365

2010-12-21 08:16:14 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 アバスは、宵闇のエブリジエの浜に上陸したくだりから話はじめ、エブリジエの集落の様子、住民たちの様子など、オデッセウスの軍団の者たちのやった残虐な所業、掠奪の様相について話をした。そして、住民たちと交わした会話から察した感情等については簡単に述べた。道中、通過した小集落の模様、そこで起きようとしたトラブルについても話した。また、旅の途中のとっておきの思い出話をも話した。
 オデッセウス軍団の所業は『トロイからの落人狩り』 それは名目であって、奴らの目的は、不足している食糧の掠奪であり、性の欲望処理の海賊行為であったと結論を下した。
 『おう、よ~く判った。両名、はなはだご苦労であった。くつろいで身体を休めてくれ』
 アエネアスの抱いた危機の懸念は払拭された。
 『オキテス、枕を特別に低くすることもなさそうだ。明日からのアーモンド収穫の仕上げ作業に集中できる。お前も大変、ご苦労であった。まあ~、ゆっくり休め』
 『あ~あ、統領。アーモンドの収納倉庫の件ですが、北門から北東櫓に向けての倉庫に空きがありますので、そこを使います』
 『あそこか、いいね』

第2章  トラキアへ  364

2010-12-20 08:05:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 二人は、探索から帰った一同のいる広間に向かった。アエネアスは、席に着くや一同を見渡した。一同はすばやく起立してアエネアスの方に向いた。アバスが口を開いた。
 『エブレジエ方面に探索に出ていました、総員10名、今夕無事帰着しました。以上報告します』
 『おう、一同ご苦労であった。よし、そのまま食事の方を続けろ。アバス、ダナン、両名ご苦労であった、食事しながら話しをしよう』
 『判りました。食事は直ぐに終わります。統領に報告するのに食事しながらというのはいけません。とにかく食事を終えます』
 『判った、そんなに硬くなるな』
 彼ら二人は、礼 が大切であることを知っていた。オキテスは場を整えた。アバスとダナンは緊張した姿勢で席に着いた。
 まず、口を開いたのはアバスであった。
 『統領、オキテス隊長、エブリジエ方面の探索についての報告をいたします』
 『よし、報告を受ける。アバス、始めてくれ』

第2章  トラキアへ  363

2010-12-17 08:30:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そうですね。ウブレジエの浜は、私たちの浜に比べて漁師、浜衆が多いですね、うちらの浜の3~4倍はいるんじゃないですか。なんと言ってもメジデイエの集落を控えているので、なかなかの活気です。獲れる魚種は、うちらの浜と変わらないのですがね』
 オキテスから声がかかった。
 『おい、皆、浜頭からよくしてもらったか?』
 『このうえなく、よくしてもらいました』
 『浜頭から、オキテス隊長に伝言があります。是非一度、遊びにおいでくださいとのことです』
 アバスが言伝てを伝えた。
 『お~お、アバス、それはそれは、ありがとう。お前ら、とりあえず飲むものを飲んで、食べるものを食べろ。俺は統領を呼びに行って来る』
 オキテスは統領の館に向かった。統領とは途中で出合った。
 『統領、どうされました』
 『ざわざわしているではないか』
 『探索の連中、全員、無事の帰着です。統領を迎えに来たところです』
 『おう、そうか。オキテス、行こう』

第2章  トラキアへ  362

2010-12-16 12:54:57 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 オキテスは浜へ急いだ。部下5人に松明を持たせて走った、心の急くままに走った。砦の浜は、砂がしまっている、足がとられるようなことはなかった。彼らの乗っている舟艇は、浜まで100メートルぐらいまでに迫っていた。船上の漕ぎ手の息づかいが聞こえてくる。舟艇の船底が地をすった、浜に乗り上げた。一行が跳び下りた。
 アバス、ダナン、トビテス、続いて、漕ぎ手の者たちも波の洗う浜に降り立った。
 『アバス、ダナン、トビテス、漕ぎ手の者たち、一同、ご苦労であった』
 言い終わったオキテスは、一人づつ、彼らのしぶきで濡れている肩を抱いて迎えてやった。
 『舟艇を浜へ上げたら砦へ引き揚げるぞ』
 無事帰着した一同を広間へ誘った。そこには手廻しよく食事仕度が整えられておりオキテスが一言述べたあと食事を始めた。
 ダナンがトビテスに声をかけた。
 『お前ら、ウブレジエで過ごした2日間どうだった。魚のよく獲れる浜だったか、どうだった』

第2章  トラキアへ  361

2010-12-15 08:59:41 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『それからだな、オキテス。アーモンドを入れる倉庫の件だが、アレテスの話を聞いて決めてくれ。俺はこれであがる』
 『どうぞ、倉庫の件、探索に出た連中のこと心得ました。』
 『アレテス、細部について話してくれ。今日、ここで二人で話を煮つめて、明日朝一番の決定だ。いいな』
 『オキテス、それでいい、その段取りで行こう。決まれば部下と打ち合わせをして、仕事をうまく運ぶ』
 オキテスとアレテスは、ヒザ突き合わせて話し合った。収穫は大成功が予想されている、二人は事細かに打ち合わせを行った。
 『よしっ!それでいい』
 『いいな、よかろう』
 二人は、しっかりと手を握り合った。
 そのときである、南の櫓を担当している兵から連絡がオキテスに届いた。
 『隊長。イブリジエの連中が帰ってきたようです。浜の方へお急ぎください』
 『アレテス、明朝、第一番だ。俺は、浜に出て連中を迎えてやりたい』