『アエネイスミッション』[Aeneas Mission ]

建国の使命を抱くアエネイスのフアストミッションは自軍団自民族引き連れて炎上壊滅するトロイからの脱出である。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  27

2013-05-31 06:19:10 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 スダヌスとハニタスの両浜頭は、イリオネスと話し合っている。首を縦に振ったかと思うと、横に振っている。何かを肯定もするが、否定する様子もうかがえる。
 テカリオンと話を終えたダルトン浜頭、そして、オロンテスと打ち合わせを終えたアヱネアスも加わり話が展開した。
 テカリオンは、パリヌルスとオキテスのいる場所に歩み寄ってきた。
 『おうっ!ご両人どの、元気このうえないというご様子、何よりとお喜び申し上げます。ハッハッハ』
 『おうっ!テカリオン。。俺たちと話すのに改まった口の利き方は必要ない。気楽に話をしようではないか。しかしだ、最後のハッハッハは何だ』
 『ほっほう、何がしかしだ』
 『しかし、気楽にとは言うが、お前と話をするときは、何となく身構えるのだな』
 『そんなあ~、身構えないで下さいよ。あなた方と私は、同業、良きトナリ組ではありませか』
 『そのトナリ組が曲者なのだ。パリヌルス、気を付けようぜ。くわばら、くわばらだ』
 『何をおしゃいます、私は隣人愛のかたまりですよ。もっともっと、心のトビラを大きく広げて私を受け入れてくださいよ、お願いいたします。これこの通り』
 テカリオンは、甘えた身振りで両人に媚びた。
 『ハツハッハ、テカリオンにはやられるな。オキテス、気を付けるにこしたことはない』
 三人は、うちとけて言葉を交わした。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  26

2013-05-30 08:31:32 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『各々方、只今のやりとりで耳にされた通りである。明後日には、この浜を撤収して、キドニアの西の浜へ移ります。この件について世話になった浜頭の皆さん、ありがとうございました。ここに深く礼を申し述べます』
 イリオネスは、統領のほうへ身体を向けて一言をと促した。アヱネアスは立ちあがった。
 『浜頭の皆さん、この件について大変、骨を折っていただいたことに心から礼を申し上げる。皆さん、ありがとう』
 『本日の打ち合わせ会議はこれで終わる。このあと、夕食をご一同とともにしたいと統領が言っています。少し時をいただいて場を整えます。宜しくお願いします。おくつろぎください』
 場がいっときにざわっとした。皆が顔を合わせて雑談が始まった。
 『いやいや、テカリオンどの、ここで貴方に合う、私は驚いています。いかがして皆さんと関わり合いがあるのかな?』
 『はっはあ~、不思議に思われますかな、ダルトン浜頭。はっは、そうでしょう。私もあなたとここで出会うとは、不思議に思っています。お互い様ですな。私はここのパリヌルスとは、若いころからの馴染みなのですな。また、三か月前になりますかな、こちらと少々大きな取引をしました。そういう間柄ですわ。また、何かと宜しく願います。これからは、キドニアへ来る用件が増えてくることと思います』
 『これからのち、キドニアがクレタ島の西地区の街都として、発展するやもしれませんな』
 『そうですか、大いに期待するところです』
 ダルトン浜頭は、テカリオンの話にうなずいていた。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  25

2013-05-29 07:28:48 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『そうか、それは仕方がないな。自分で身元を明かしたようなもんだ。まあ~、そんなところだろう、判った』
 船を降りた一同は、再び会議の場についた。イリオネスは、ちらっと、陽の位置を確かめて、一同を見まわした。
 『ご一同、大変ご苦労でした。会議を続けます。統領のほうから話があります。統領、お願いします』と促した。
 『ご一同ご苦労でした。提案されていた候補地の一つを充分に検分しました。スダヌス浜頭にも、現地において話し合いました。私なりにいろいろと考えました。ここに結論を申し述べます。決定です。あの候補地に決めます。ハニタス浜頭、宜しく手配してください』
 ハニタス浜頭は、同行しているダルトン浜頭と目を合わせて了解しあった。
 『判りました。結構です。ところで、統領、何時、あの浜の集落に移られますか?』
 『そうだな、明後日の午後、日没までには移りたい。そのように考えています』
 『判りました、いいでしょう。この件については、地かたの豪族の頭の耳には入れてあります。明日にでも会っていただければよろしいかと考えます。そのほうが後々のトラブルはないと思います。その件については私が案内申し上げます』
 『判った。その件了解した。のちほど軍団長も同席のうえ話し合おう』
 『判りました』
 ハニタス浜頭は、了承の返事を返した。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  24

2013-05-28 07:33:38 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『いずれ打ち合わせはやる。その時に決めることになるが』
 『同時実行、時差的先攻だ。それが俺の考えだ』
 『それはいい。2日ぐらいの日時が必要と思う』
 『よしっ!判った。オキテスも考えておいてくれ。その線で俺も作戦計画を考えておく』二人の話は終わった。
 アヱネアスもイリオネスも聞くべきことを抜け落とすことなく、浜頭らから聞き取った。ふうっと、イリオネスの頭中を通り抜けた懸念があった、アレテスの事である。
 『イリオネス、どうだ、もういいだろう。引き上げるとしよう』
 『スダヌス浜頭、ハニタス浜頭、いろいろとありがとう。何かつけ足すことでもあるかな』
 『いえ、全てをお伝えしたのではないかと思っていますが』
 『イリオネス、よしっ、帰ろう』
 一同は、浜へと道を歩んだ。
 『ギアス、帰る。風は西から吹いているな、帰りは追い風か』 
 『ハニタス浜頭、この季節、このあたりに吹く風は西風が多いのかな?』
 『そうですな、何とも言えませんが、そのようでもあります。長い年月、この島で暮らしてはいますが、あまり気にかけたことがありません。言われてみれば頷けますな』
 一同は帰途についた。帰りは、帆に風をはらみ、舟艇は快調に波を割って進んだ。
 浜には、出迎えの者たちが立っている。アレテスの顔もその中にあった。
 『軍団長、ご苦労様です』
 『おっ!ご苦労。アレテス、何だその顔は?』
 『軍団長、昼過ぎて、ちょっと目を離したすきに、奴に逃げられました』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  23

2013-05-27 07:27:18 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『ところで、この集落に人が住んでいない。そのわけを聞かせていただければいいのだが』
 『いいでしょう。それは海賊です』
 ハニタスは言いながら、ほど近いところに位置している小島を指さして口を開いた。
 『今もですが、あの小島に舫っている、あの船は海賊の船です。奴らは陸を襲う海賊です。このところ政情の関係で奴らの襲撃が増えてきています。ここ二年半くらい前になりますが、奴らがこの集落を襲ったのです。半年くらいの間に数回繰り返し、ここを襲いましたね。奴らは、殺戮をするは、娘たちを奪うは、収穫した物を奪うは、それはひどい奴らでしたね』
 『そうか、それは大変なことであったな』
 この話を聞いていたパリヌルスとオキテスは声をひそめて話し合った。
 『オキテス、どう思う。大掃除だな』
 『やるか!やらいでどうする。世のため、人のため、我がためだ』
 『そうだな、あの小島、我々も使いたい。どうも統領の目論みどおりだな』
 『そのようだ。万事めでたしの方向へことを進めようではないか』
 『それにしても、この場所の条件は願ってもないくらいの好条件だ。モノにしない手はない』
 他人が耳にしても何を言っているのか判じがたい言葉のやり取りである。
 二人の意見は一致した。
 『オキテス、問題はタイミングだ。いつやるかだ』
 『あとか、さきか、同時か』
 『タイミングを選び損ねたら、収拾をつけにくいぞ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  22

2013-05-24 06:35:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 スダヌス浜頭とパリヌルスとの会話を耳にしていたテカリオンの腹中の虫は笑っていた。
 『パリヌルスの奴め、なんてことを、自分の作った船を他人ごとみたいに話すなんて、、、』
 彼ら全員がハニタス浜頭に導かれて廃村となっている集落へと歩を運んだ。
 アヱネアスがハニタス浜頭に声をかけた。
 『ハニタスどの、この集落は?建物も見たところ痛みが少ないように見受けられるが、、、』
 『この集落に人がいなくなって二年余りです。付帯している建物も入れれば30棟余りですが、痛みは少ないですな。ところで土地の事ですが、向こうに見える雑木林から、こちらは、向こうの小さな森まで、南に向かっては、あなた方の取り放題、無限とは言えませんが。お好きなだけ畑地とされてもかまいません』
 『ほっほう、そのような好条件で、この土地を使ってもいいとは。イリオネス、パリヌルス、オロンテス、聞いたか。夢みたいな話ではないか』
 アヱネアスは、頷きながらスダヌス浜頭のほうへ身体を向けた。
 『スダヌス浜頭、どう思われる?アクロテイリの候補地に比べて、、、』
 アヱネアスの問いかけにスダヌスは答えた。
 『これはいい!アクロテイリの候補地なんて問題にならない。各段にいい。明日からでも、即、使える。統領、このように条件のいい土地はどこにもないといえますな。そのうえ、キドニアの街にも近い。軍団長から提示された条件に合致して、それ以上です』
 『スダヌスどの、あなたのおかげですな。このように好条件の土地を提示していただけるとはありがたい。このうえなしです。決まりです』
 イリオネスがハニタス浜頭に声をかけた。
 『ハニタス浜頭、ひとつ聞きたいが、よろしいかな』
 『結構ですとも、どうぞ』

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  21

2013-05-23 09:13:23 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 西へ進む舟艇には、そよっとした向かい風であった。スダヌスら浜頭連が舟艇に乗り込んで感じたことは、船足の早いことであった。
 スダヌス浜頭が大声を発した。 
 『パリヌルス殿、これは何と!』驚きの声であった。
 『この船足の速さは。速いっ!また、あの船尾の三角帆は?あれは何ですか、向かい風であるのにかかわらず、邪魔になってはいない』
 『今のところ、あの三角帆の効果効用はつかめていません。まあ~、かっこづけといったところでないですかね』
 ハニタスがパリヌルスに声をかけてきた。
 『パリヌルス殿、向こうに小島が見えますな。あの島の対岸に船をつけてください』
 『判りました』と答えて、ギアスに指示を出した。
 『ギアス、あの小島の対岸に艇をつけてくれ。あの小島はどうだ。舫っている船は五隻ぐらいか、気にすることはない』
 パリヌルスは、『今日の小島』と言いかけて、はっとした。舟艇は浜を離れて、目指した浜に到着するのにさほど時間を要しなかった。まさに、あっという間の船旅といったところであった。
 『パリヌルス殿、速かったですな。これだけの距離を、この時間で、それも向かい風だというのに、俺は感心したぜ。こんな船がギリシアにあるのかね』
 『いやいや、この船は、ギリシアにはない。ここだけだ。しかしだな、ないことはない、あっても四、五隻だな』
 パリヌルスは言いよどんだ。
 『そのうえ、浜へもこの上がり方だ。いったい何なのだ』
 『それはギアスから聞いてもらいたい、あいつの操船の腕だとも思える』
 『パリヌルス殿、そうかな?それは少々違う、と俺は思うが。如何かな』
 『浜頭には、すっかり読まれましたな。船の構造がそのように作られていることは間違いありません。この話は、また、のちほどゆっくりとしましょうや』
 『判った。先ず候補地の問題を片づけよう』
 船上の者たちは浜に降り立った。ハニタス浜頭が、じいっと、小島の様子に目を凝らしている姿を、パリヌルスは見逃してはいなかった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  20

2013-05-22 08:05:52 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 イリオネスはオキテスにささやいた。
 『判りました。そのように指示いたします』
 オキテスは、座を離れてギアスのところに向かった。
 『おっ!ギアス、即、舟艇で出れるように準備してくれ』
 『判りました』
 『準備、出来次第、俺に連絡してくれ。判ったな、俺は会議の場にいる』
 指示を終えたオキテスは、会議の場に戻った。イリオネスには、目でもって、指示を終えたことを伝えた。
 しばらくの間があった。ギアスがオキテスに連絡を入れる。イリオネスは、その光景を見て状況を理解した。
 この間、アヱネアスとハニタスは、質問と応答をやり取りしていた。
 『統領、準備が整っています』
 『では、行こう』
 イリオネスは、場を見渡してスダヌス浜頭に話しかけた。
 『スダヌス浜頭、急な申し出だが、ハニタス浜頭が説明した候補地を見に行こうと思うが如何かな』
 『それはいい。私も話に聞いてはいたのだが、どんなところかこの目で見てみたい。行きましょう、イリオネス軍団長』
 『ご一同、今、ハニタス浜頭から説明いただいた候補地を見に行きます。歩きではなく、船で現地に向かいます。船を準備しています、こちらです』
 イリオネスが先頭にたって、一同を引率した。彼らは舟艇に乗り込んだ。
 浜頭の四人は『ちょっと変わった船だな』と首を傾げながら船上の人となった。


 *昨日の投稿に欠字のミスをやりました。深くお詫びいたします。
  15行目です。
  例の場所ような  を  例の場所のような  に訂正いたします。

                      山田 秀雄
  

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  19

2013-05-21 07:03:05 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 場に臨んでいる者たちは、イリオネスの言辞で瞬時に引き締まった。スダヌス浜頭は一同を見まわし、咳払いをひとつ、そして、口を開いた。
 『いま、イリオネス軍団長の言われた件について、一昨日より、我らが浜に地元浜頭二人、キドニアからの浜頭二人を招いて話し合った。それにより本題の件の候補地は、この二件に絞り込んだようなわけです。アクロテイリ半島に一件、キドニアの街の西地区に一件です。本来は事前に打ち合わせを行い、会議にはかるべきところであるが、この私に一切が任されていたことでもあり、事前打ち合わせ抜きでこの会議となったわけである。候補地は二件、これより、その概略を説明する。アクロテイリ半島の候補地は、海に面しているとはいえ、雑木の繁茂する原野である。キドニアの街の西地区の候補地は、ここに二年余り前までは人が住んでいた集落である、今は無人の集落となっている。そこには集落であった頃の建物が残っている。この件については、ハニタス浜頭より説明してもらう。ハニタス浜頭、説明かたよろしく頼む』
 話はハニタス浜頭に振られた。ハニタスは、その集落が無人となった経緯について説明した。
 アヱネアスとイリオネスは、小声で何かを話し頷きを交わしていた。
 『イリオネス、俺たちが探索調査した例の無人集落の事ではないのか』
 『どうもそのようですな。例の場所ような気がします』
 ハニタス浜頭の説明が終わった。

『トロイからの落人』  FUGITIVES FROM TROY   第7章  築砦  18

2013-05-20 07:27:16 | 使命は建国。見える未来、消える恐怖。
 『スダヌス浜頭、そして、浜頭の皆さん、今日は大変にありがとう。皆さんからの頂き物を歓んで頂戴しました。心から礼を言います。就いては、この地、クレタに私どもトロイの民が住まう砦を築きたいと発心しました。この件をスダヌス浜頭に相談を持ち掛けた次第です。今日は、この件についての打合せを会議と銘うって皆さんと話し合いたい。何卒宜しくお願いする』
 場にいる者たち一同は、アヱネアスの言葉に同意を示すことを歓声で答えた。イリオネスが声を上げる。
 『ご一同、今日、この打ち合わせ会議の座長を務めるイリオネスです。宜しく』
 簡潔に自己紹介した。続いて、パリヌルス、オキテス、オロンテスらもイリオネスにならって自己紹介を終えた。続いて、浜頭連も自己紹介に及んだ。SOUDAの浜からは、スダヌス、タクメン浜頭、キドニアの浜からは、ハニタス、ダルトン浜頭。最後にテカリオンが自己紹介して終わった。
 『ご一同、ありがとう。各自の紹介が終わった。これより会議の本題に入る、宜しく願います。我々がこの地に上陸しての目論みは、我々が住まう砦の建設と幾ばくかの農地を取得したい。これが私どもの希望である。この希望を強く望んで今日の仕儀となったわけです。理解いただければ幸いです。このことについてどのように事を運ぶかを思案しました。そのようなわけで、ここに座しているクリテスの縁つなぎでスダヌス浜頭に相談をした次第です。そのようなわけで、スダヌス浜頭から『今日、その件について話し合おう』と連絡をもらい、この会議に至ったわけです。話の内容次第で今日、明日の間に、この件について決定したいと私どもは考えています。では、スダヌス浜頭、説明を願います』