自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

マンサクと昆虫(22)

2014-03-13 | マンサク

接写をとおして昆虫や植物の生態を見つめていると,小さないのちのスゴサをよく感じます。スゴサといってしまえばそれまでなのですが, それほどのふしぎをついつい思ってしまうのです。

わたしたちの身近な世界でありながら,ちっとも想像が及んでいない驚異の世界が無限に拡がっているのは,ほんとうにふしぎでしかありません。

階層,あるいは階層構造ということばがあります。複数の層が重なって全体が構成されていることを指すことばです。極微小界と超巨大界の間には,この層があります。わたしたちが日常的に直接認識するのは,せいぜいセンチからキロメートルの層です。ミリの単位となると,専門的なしごとに携わっていない限り,まず認識の対象外です。それ以下のミクロ世界はまったく対象外になります。光年という単位も,それに近いといえます。

このミリの世界を写し撮るのが接写という手段です。その層には,肉眼ではしかと確認できない現実が拡がっているわけです。当たり前といえばそのとおりなのですが,その“当たり前”が,想像を超えたドラマを織り成しています。日頃気にかけていない好奇の事実が連続していると言い換えてもいいでしょう。

そのことに関心を抱くかどうかは,人それぞれで,世界観・自然観・人生観などでまったく異なってきます。たまたま,わたしは自然を友とする生き方をしていて,接写のおもしろさをとおして生きものを見つめ続けているにすぎません。


今シーズンほど,マンサクを訪れる昆虫を撮り続けたことはありません。お蔭で,冬に活動する昆虫なんて数は知れているだろうと決め込んでいた浅はかさを知ることになりました。

気温が氷点下辺りから10℃ぐらいなら,結構,動き回っているんだなあと驚き入りました。0℃は,わたしたちからみれば,水が凍る,ぶるぶるっと震える温度です。そうした温度にきっちり適応したからだを発達させているのが変温動物のなかま,昆虫です。その適応のさせ方は種によってさまざまです。

そのさまざまの一コマが,厳冬期の活動になって現れ出ているわけです。自然のきびしさを乗り切る知恵は,悠久の生命史の流れのなかで獲得してきたもの。

マンサクの花弁で休息するこのハエは,体長が2mmです。名は不明です。腹部先がぽこっと丸まっています。ハモグバエかフンバエの一種かもしれません。たぶん匂いや色に惹かれて訪れたものでしょう。からだの器官,しくみは,昆虫の特徴をすべて備えています。しぐさもそうです。「小さくてもよくもマア,こんなにも昆虫的なからだつきよ」と舌を巻いてしまうほどです。

 
このハエが花の中にでも入っていく風景が,この目で確認できたら,これはもうスゴイとしかいいようがありません。あるいは,からだに花粉が付いているとか。

捕食されそうになる危うい場面を目撃できたら,これもスゴイでしょう。

食べる,食べられる,これらの事実は生態の核心部分です。単純に昆虫のすがたでなく,生々しいいのちの動きにこそ,接写の醍醐味が秘められている気がしています。 

 


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