観察や撮影を繰り返していると,じつにふしぎな事象に巡り合うことがあります。目にしたことのない場合,めったに見ない場合,「こんなこともあるのか」とすっかり驚いてしまいます。
ヤマトシジミの卵が襲われる例もその一つです。襲う昆虫を見たことはありますが,この昆虫をこんなにくわしく撮影したことはありません。名はもちろんわかりません。小さないのちを狙う小さないのち,というほかありません。卵の直径は0.5mm程度。襲う側の昆虫の体長は1.5mmぐらいでしょうか。からだが反り上がっています。精悍な印象で,翅があるように見えます。
卵には口が食い込んでいます。中身が食されしまい,すっかり変形しています。考えてみれば恐ろしい場面です。撮影で卵の付いたカタバミの葉を何度か動かしたのですが,昆虫のこの姿勢はまったく変わりませんでした。執拗な食べ方に見えました。
この昆虫も同じ行動をしています。もしかすると,同じなかまかもしれません。ただ色が異なり,翅は見えません。色はいかにも毒々しい感じです。卵の上の方がやや黒っぽいのは,孵化間近だからです。この卵も,これでいのちがストップします。自然の宿命です。
見ていけば見ていくほど,ふしぎな世界です。