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本を読むスタイルが変わる?

2010-05-20 22:04:22 | ライフスタイル
作家の京極夏彦さんの最新作「死ねばいいのに」が、iPadで読めるようになるという。
以前、エントリした渡辺淳一さんや五木寛之さんの作品のように、ハードカバーの本を買ってもらうために、期間限定で配信するというのではない。
「電子書籍」として、出版元が配信をし販売をするのだ。

京極さんといえば、ファンも多く新作が発表されればベストセラーになる、という人気作家でもある。
その京極さんの本が、iPad対応の電子書籍で配信するとなると、予約当日、iPad予約のために行列を作った「新モノ・話題モノ」好きな人たちばかりではなく、京極ファンも「iPadで読んでみたい」という気になるだろう。
何よりも、ハードカバーの6割程度の価格で読めるというのは、魅力なのではないだろうか?

iPadの登場で、俄然注目を浴び始めた「電子書籍」だが、この「電子書籍」は出版業界にどんな影響を与えるのだろうか?
先例として挙げられそうなのが、「音楽配信」だ。
今では、自分が気になった音楽をレコードショップ(とあえて言う)に行くのではなく、PCや携帯電話からダウンロードし、携帯音楽プレーヤーで聞くというのが、一般的になってきた。
その結果、CD1枚を通して聞くというスタイルから、ヒット曲や自分のお気に入りの楽曲だけを聞く、というスタイルが一般的になってきたように思う。
それも、「ながら聞き」というスタイルだ。

このような音楽を聴くスタイルの変化は、意外なトコロにまで影響を及ぼしている。
先ごろ発表された、ジャズ専門雑誌「スィングジャーナル」の休刊(実施的廃刊)などだ。
休刊の理由に、発行部数の減少とレコード会社からのCD広告などからの減収が、上げられていた。
「ジャズファンが減った」というコトもあるとは思うが、音楽そのものの聴き方の変化も大きかったのではないだろうか?
「スィングジャーナル」には、「ブランド・フォールドテスト」という、人気の高い企画があっただ。
このテストは、「音楽を聴いて演奏者を当てる」という一種のお遊びなのだが、そのお遊びレベルは「ながら聴き」では、到底無理なレベルのモノだった。
一種の「音楽と向き合う」とか「演奏者と対決する」という感じがある、お遊びだった。
それが、「ながら聴き」が主流になり、当然真逆の聴きかたのジャズは新しいファン層を獲得し難い環境となっていったような気がしている。

本が同じ様な道筋を辿るとは思わないし、思いたくないのだが、「活字文化」がお手軽な流行モノだけのモノになってしまうのでは?という、心配をしている。
個人的には、本はともかく、新聞はiPadでも・・・という気がしている。
とすれば、本よりも新聞(紙)の方が危機に直面しているのかな?
いずれにしても、出版物を作るための製紙業や印刷業という産業と、iPadは大きく関係していきそうだ。
そこには、生活者のライフスタイルの変化が影響している、というコトだけは確かだろう。