日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

権力者だからこそ、その力を見せつけより強固なモノにしたいのか?

2022-02-27 22:34:14 | 徒然

ロシアがウクライナに侵攻して、数日たったような気がしている。
そして日々報道される状況に、様々な思いをこの日本で持つようになってきている人たちがいる。
特に、女性は「何故、権力者になればなるほど。そしてその権力を持ち続ける期間が長ければ長いほど、このような無益なことをするのか?」という、疑問を持つ傾向があるようだ。
確かに、第二次世界大戦で戦争に駆り出され、従軍した女性たちの事を描いた本「戦争は女の顔をしていない」には、女性だからこその苦悩が描かれている。
そして皮肉なことに、この「戦争は女の顔をしていない」の著者アレクシーエヴィチは、旧ソ連邦出身のノーベル文学賞受賞者だ。
岩波書店:戦争は女の顔をしていない

ロシアというよりもプーチン氏がウクライナへ侵攻した理由については、以前エントリをさせていただいている。
乱暴だが、わかりやすく言うなら「俺の言うことが聞けないなら、殴ってやる」的な考えが、プーチン氏の中にあるということなのだ。
考えてみれば、プーチン氏がロシアの顔となってから、随分長い。
いわゆる長期政権を維持している。
その期間は約20年を超すはずだ。
そんなに長く政権を取っているのか?と、感じられる方もいらっしゃると思うのだが、実はこの20年余りロシアの政権の中心にいた人物は2人しかいない。
プーチン氏とプーチン氏の子飼い(といっては失礼かもしれないが)メドジェーベフ氏の2人だ。
プーチン氏とメドジェーベフ氏の2人が、交代を繰り返しながら大統領という座に収まっているのだ。
その意味で実質的な政治の中心にいるのは、プーチン氏一人ということになるのではないだろうか?
何故なら、後継者として互いに指名しあっているからだ。

日本のように首相が毎年のように変わることも問題だとは思うのだが、長期政権になればなるほどその権力は一人に集中しやすくなり、権力が集中した人物が強権を発動するようになる。
それは権力が集中することで、様々な特権を得られることになり、一度手にした特権を手放すことができなくなり、権力者は常に特権である自己益を失うことに疑心暗鬼となり、他者を信頼できなくなり、自分の都合の良い人たちが集まることで、政治は腐敗していく。
それは歴史を見てもわかる話だろう。
それだけではなく、プーチン氏はKGBという諜報機関出身ということもあり、より政治統制の意識が強いのでは、という指摘は過去されてきたように思う。
だからこそ、自分の意に反してNATOへの参加を表明したウクライナに対して、強権的な態度を示し、果ては武力を持ってでも自分の言うことに従わせたい、ということになるのではないだろうか?
そしてそれは、中国も似たようなところがあるようにも感じている。

ただ中国と違う点は、ロシアの人たちが「プーチンとは違う」ということを、様々な手段で発信しようとしている点だ。
勿論、政権側は言論統制を厳しくしていくだろうし、すでにそのような動きは出ているようだ。
讀賣新聞:ロシア国内でウクライナ侵攻への抗議、治安当局が1600人超拘束 プーチン政権が侵攻への反発封じ込め

このような情報が、全世界に発信されればされるほど、プーチン氏の国際的立場は弱くなっていくだろう、ということは想像することはできる。
しかし、一度手にした権力を手放すことができない権力者だからこそ、その力を見せつけようとし続けるのでは?という気がしている。
結果、プーチン氏の権力維持がウクライナやその周辺諸国の旧ソ連邦の同盟国に対しても、甚大な損失を与えるだけではなく、ロシアがはぐくんできた文化なども壊してしまっているのではないだろうか?
自分の権力を見せつけようとすればするほど、その国は荒れ果ててしまう、ということを権力者は知る必要があると思う。


動物保護と自然環境は両立するのか?

2022-02-26 16:33:33 | ビジネス

ここ数年、世界各地の動物愛護団体が、ムートンを含む毛皮や水鳥のダウンを人が獲ることに対して、反対の声を上げている。
その効果もあって、欧州の名だたるファッションブランドでは、毛皮をファッション素材から外すようになった。
代わりに登場したのが「エコファー」と呼ばれる、化学繊維でできた素材だ。
ダウンにしても、「エコダウン」という名前で、化学繊維を使った商品が数多くなってきている。

確かに、動物愛護という観点で考えれば、代替素材として化学繊維を使い、同等の暖かさ・心地よさを得られるのであれば、そのような商品を選ぶことは、選択肢としてあっても良いと思う。
ただ自然環境という視点では、どうなのだろう?と、常々疑問に思っている。
それは「化学繊維=石油由来の繊維」だからだ。
かつて「木綿」と呼ばれていた、セルロース繊維であるレーヨンなどもあるが、それらの製品を作るために膨大なエネルギーが消費されているのでは?と、考えるとどうなのだろう?という、ことなのだ。
その中でも、ポリエステル繊維のものは洗濯をするたびに、マイクロプラスチックを吐き出しているようなものだ。
海洋汚染の要因の一つとされている、あのマイクロプラスチックを、何気ない日常の中で作り出している、という指摘がされるようになってきている。

また、第2次世界大戦前に国策として輸入された動物が野生化し、生態系を脅かし始めているという問題も、出てきている。
代表的な動物は、大型のネズミといわれるヌートリアだろう。
国策として輸入された理由は、「毛皮を獲るため」。
水辺に生息するヌートリアの体毛は、外側の毛は硬く水を弾くが、内毛はとても柔らかく、暖かい。
ムートンなどよりも肌触りは良いかもしれない(以前、仕事でヌートリアの毛皮に触ったことがある)。
そのヌートリアが、国策に合わず野生化し全国各地の河川域で繁殖し続けているのだ。
元々外来種だったこともあり、外敵となる動物は少なく、またネズミ目の動物ということもあり「鼠算式」に繁殖する、という状況になっている。
動物愛護団体の方々からすれば、人間の都合で日本に持ってこられたヌートリアが可哀そう、ということになるのだと思うのだが、その一方で河川域で繁殖されることで、貴重な日本の在来種が減少しているという懸念もあるのだ。
このような問題は、感情的な「可哀そう」では片づけられない問題なのでは、ないだろうか?

このような外来種による自然環境という問題のみにフォーカスするだけではなく、他の方法はないのか?ということも、同時に考える必要がある。
例えば、上述した「ダウン」に代わる自然素材の利用だ。
「ダウン」の主な産地というのは、欧州の中でもポーランドのような寒い地域のものが最高級といわれている。
そして面白い(といっては変だが)ことに、注目されている代替品がインドネシアで育つ「カポック」という樹木の実だという。
既に、日本の社会起業家がこの「カポック」に注目をし、製品化にこぎつけている。
KAPOK-KNOT:カポックとは

この「カポック」の栽培によって、インドネシアの栽培地域では安定的な収入を得られるようになる、というだけではなく雇用の創出という点でも注目されるようになるだろう。
とすれば、化学繊維に代わる自然繊維で環境と現地での雇用や安定的な収入が得られるようなシステム作りができる企業が、これから先求められることは暗に想像できるだろうし、そのような素材を世界中で見つけようとするのではないだろうか?

かつて家庭用洗剤のエコ化として注目されたパームやしを求め、大規模農場化され逆に生態系の破壊という指摘がされるようになった。
それと同じことが起きないようにするためには、どうしたらよいのか?ということを、優先して考えることが、これからのビジネスセンスとして必要のような気がする。




ロシアは、ウクライナを戦場とするのか?

2022-02-24 20:53:49 | アラカルト

今月に入り、日に日に緊張感が増していたウクライナとロシアとの関係。
今日になり、ロシアがウクライナに対して実質的な侵略を始めたのか?という、報道がされるようになってきた。
おそらく、ロシア側は「侵略」そのものを認めるとは思えないのだが、西側諸国とすれば「侵略」とみなされているはずだ。

ロシアがウクライナに侵攻する理由は、以前から言われている「天然ガスパイプライン」を止め、欧州諸国にロシアの力を見せつける、ということにあるのか?といえば、決してそれだけではないはずだ。
というのも、今回のロシアの動きに合わせ欧州各国だけではなく、米国からの要請もあり、日本は欧州向けに天然ガスを提供する、と表明しているからだ。
「エネルギー」という視点は、複数ある「侵攻」の理由の一つでしかないようなのだ、
テレ朝ニュース:読めば流れがわかるウクライナ危機の背景 プーチン大統領は何を恐れているのか(前編)     
        読めば流れがわかるウクライナ危機の背景 プーチン大統領は何を恐れているのか(後編)

ウクライナをロシアに併合することで、欧州諸国への恨みつらみを晴らしたい!という気持ちが、多少なりともあるのかも知れない。
何故なら、ウクライナがNATOへの参加を希望しており、ウクライナがNATOに参加すれば、旧ソ連邦の中心であった現ロシアの影響力が弱まってしまうからだ。
何より、ウクライナはパイプラインだけではなく、積み出し港としての役割を担っていることから、ウクライナ侵攻は欧州全土に対する対抗策の一つだと考えても良いのかもしれない。
Bloomberg:ウクライナにはパイプラインや積み出し港など重要なインフラ網

Bloombergの記事にあるように、ウクライナは、ロシアにとっても欧米諸国にとっても、様々な意味を持つ重要な国なのだ。

そして興味深いのはウクライナの中にある「親ロ派」といわれる地域の独立を、ロシアが認めたという点だ。
ロシアにとって、ウクライナの一部であっても自分たちと友好な国を持つことが、重要でありそれを足掛かりとし、ウクライナを配下に置くことを狙っているはずだ。
しかし現在の状況は、ウクライナだけではなく周辺のキエフなども巻き込むカタチで、ロシアのウクライナ侵攻が進んでいる。
このような暴力的な方法は、周辺諸国にも多大なダメージを与えることになるのだ。
そして「戦争」とは、このような形で始まるのではないだろうか?

軍事侵攻といっても、ミサイルなどによる武力だけではない、というのが今回の特徴かもしれない。
それは今日の昼間に報道されたロシアによる、ウクライナ軍の防空システムの制圧、というニュースがあったからだ。
AFP:ウクライナ軍、ロ軍機撃墜 ロシアは防空システム制圧発表

コンピューターによって、ミサイルを発射させたりするのではなく、コンピューターシステムそのものを使えなくしてしまう、という10年以上前から指摘されてきた「新しい戦争」という姿を、ロシアが示したのだ。
この方法であれば、自国の軍を大きく損なうことなく、相手国に多大なダメージを与えることができる。
おそらく米国などでも、このような「相手の国の重要システムを制圧・破壊」という技術は、持っているだろう。
(何となくだが、世界中の先進諸国といわれる国々の中で、このような防空システム制圧・破壊や生活インフラシステム制圧・破壊に対してのリスク管理ができていないのは、日本だけのような気がしている。)

今や西側諸国にとって、脅威となり始めている中露が、国連の常任理事国である限り、和平への話は進まないのではないだろうか?
そんな問題も含んでいる、ロシアのウクライナ侵攻だと考える必要があるのでは?


日清「どん兵衛」のCM

2022-02-18 21:08:46 | CMウォッチ

2月16日から公開された日清の「どん兵衛」のCMが、話題になっている。
現在の「どん兵衛」のCMのシリーズは、5、6年ほど前から始まったのでは?という気がしている。
ドラマ「逃げ恥」の主題歌「恋」で、一躍世間に知れ渡った星野源さんが起用された、ということで話題になったCMのシリーズだからだ。
そしてこの日清「どん兵衛」のCMも、人気シリーズとなっていった。
その人気シリーズのCMが終了か?ということで、話題になっているのだ。
日清どん兵衛:さよなら、どんぎつねさん

以前から、日清のCMの評価は高く「Hungry?」というCMは、CMのカンヌと呼ばれる「カンヌ国際広告映画祭」で、グランプリを受賞している。
日清食品:1993年カンヌ国際広告映画祭でグランプリを受賞

「どん兵衛」のCMも、日清食品らしさを感じさせるユーモアのあるCMシリーズだった。
そのCMが終わってしまうのか?と思うと、残念な気がしないわけではない。
半面このCMの最後、老夫婦が去っていく狐の姿を見ながらつぶやく「だましていたのは、狐ではない」というところが、個人的に気になる点でもある。
最後のセリフが「マーケティングだ」だからだ。

マーケティングという仕事は、別に人(=生活者)を騙すために、企業が行っているわけではない。
逆に言うと、マーケティングをしっかり行ってきた企業だからこそ、このような自虐的なセリフが、堂々と言えるのでは?ということなのだ。
生活者が今どんな感覚で、日々の生活をしているのか?
夢を語るばかりで、現実を見ないような広告をたくさん作り続けても、受け手となる生活者は空々しさを感じるだけでは?という警告もあるだろう。
時には、生活者の気持ちを逆なでするような(=炎上するような)広告もある。
「生活者に寄り添う」という、自己満足で完結しているような広告は、面白くもなければ、生活者の印象には残らない。

マーケティングの中の4P(=価格・売り場・製品・プロモーション)の内、プロモーション以外がしっかりできていたとしても、最終的には受け手となる生活者からの共感や惹きつける何かを持っていなければ、マーケティングができているとは言い切れない。
そして皮肉なことに、日本の企業は「製品が良ければ」とか「価格が安ければ」、「人目を引くような目立つ広告なら」商品やサービスが生活者に受け入れられると、勘違いしてしまっている企業が少なくない。
特にここ10年くらいは、このような傾向が強くなっているのでは、という気がする時がある。

勿論、若い世代の人たちには、このようなマーケティングの在り方に、疑問を感じている人たちもいるように感じている。
マーケティングとは、即物的に「売るためのknow-how」を提供するものではない。
「売れればよい」と考えるのであれば、それは生活者を騙してでも、目先の売り上げに邁進しすればよい、ということにもなってしまう。
「今やそんな時代ではない」ということも、この「どん兵衛」のCMは言っているのかもしれない、と感じたのだ。

お知らせ:諸事情により、ブログの更新が数日できません。
     次回再開は週明けになります。







イノベーションの目的は、人を幸せにするものでありたい

2022-02-15 20:52:10 | マーケティング

今朝、FMを聴いていたら面白い商品があることを知った。
「商品」といっても、まだ販売には至っていないようなのだが、数年後子育て世代の家庭には一つ常備されるかもしれない?という、気がした商品だ。
その商品名は「魔法の虫めがね」。
作っているのは、大日本印刷株式会社という、日本の二大印刷企業の一社だ。
大日本印刷:魔法の虫めがね

今や「印刷業」といっても、新聞や雑誌などの印刷物だけを、作っているわけではないようだ。
IT技術などを使い、遠隔地から参加できる「バーチャル株主総会」などの運営サポートといった、今という時代に合わせた事業の展開もしている、ということがニュースリリースなどからわかる。
かつてのような「紙に印刷をする」という技術だけではなくなりつつある、というのが印刷業界の動きだということになるのだろう。

そのような社会変化の中で誕生したのが「魔法の虫めがね」ということになるのでは?と、考えるのだが、このアイディアの元になったのが、子育て中の社員たちが、「最近、(自分の)子供が虫めがねで、絵本や図鑑を見ている」という話しから始まったようだ。
一見すると、普通の虫めがねのように見えるのだが、絵本や図鑑にかざし、持ち手のボタンを押すと虫めがねで見ていた絵本や図鑑をAIが読み取り、読み上げてくれる、という。
それだけではなく、子どもが読んだ絵本や図鑑のデータを親のスマートフォンに送信してくれる、ということになっているようだ。
FM番組の中でも話されていたのだが、保育園などに子どもを預けている親からすると、保育園で過ごしている自分の子どもが何に興味をもって、その虫めがねをかざしているのか?ということが把握できる、ということになるのでは?という指摘もされていた。

「子どもの興味を見つけ出す」というのは、とても大変なことだろうし、親が付ききりでいてもそれがわかるわけではないだろう。
逆に親が付ききりでいることで、子どもに対して親が先回りをし子どもの興味のある・なしにかかわらず、あれこれと与えてしまい、結果として本来の興味とは違う方向へ行ってしまう可能性もあるのでは?
「子どもの個性を大事に伸ばす」といっても、親としての主観で見ることとこのような知育玩具を通して客観的に知る、ということはその意味が大きく違ってくるはずだ。
「子どもの好奇心」を上手に育めば、「子どもの自主性」を育てることにもつながるだろう。

そのような視点で見るだけではなく、「読み上げ機能」という点だけを取ってみると、番組でも指摘をしていたが「高齢者の生活ツール」ということも考えられる。
緑内障などの目の病気により、本や新聞・雑誌などを読むことが大変になった高齢者に対して、本の読む楽しさを「朗読」という方法で、再び楽しむことができれば、嬉しいだろうし生活そのものの充実感を感じることにもつながるだろう。
そのデータが遠く離れて暮らす成人をした子どもに送ることができれば、「今日、本を読んでいた(正しくは、朗読を聞いていた)」という、日々の生活の把握もできるかもしれない。

このようなAIを活用したイノベーションは、企業としての「社会的責任」を充実させるものだろうし、何より人の気持ちや心に寄り添うことができる、という点では今後期待したい「イノベーション」という気がしている。

ちなみに、現在テストマーケティングを実施するためのクラウドファンディングを実施しているようだ。
Makuake:「わかる」って楽しい!子どもの興味関心を育むAIデバイス『魔法の虫めがね』DNP


ネット上に表示される広告は、なぜ直接的なのだろう?

2022-02-14 17:32:38 | CMウォッチ

スマホの普及により、多くの人は1日2~3時間くらいはスマホの画面を見ているのでは?という、気がしている。
勿論、2~3時間見続けているのではなく、合間合間にちょこちょこと見ている時間を積み重ねた時間、ということだ。
そうなってくると、気になるのはネット上で表示される広告ではないだろうか?

通信費などはかかるにしても、多くの情報にアクセスし・情報を得るサービスに関しては、ほぼ有料ではない。
多くの人たちが利用している情報サービスは、意識をしている・していないに問わず、ほぼ無料で情報を得ている、ということになるはずだ。
とすると、それらの情報を提供している側は、何で収益を上げているのか?といえば、アクセス件数に応じて企業の広告が表示されることによって、収益を上げているということになる。

この仕組み自体は、民放のテレビ番組などと基本的には同じだと考えてよいだろう。
実際、アクセス件数が多くある程度の長さのあるYouTube番組などは、途中で広告が入るようになっている。
いわばYouTube版のCMというわけだ。
Yahoo!などで取り上げられている、トピックスなどにも同様の広告表示がされているのだが、その広告表現がとても直接的な気がするときがある。
それも、直接的な表現広告が徐々に増え始めているような、印象を持っている。

1960年代前半、テレビが一般家庭に普及し始めた頃、短い時間のCM枠の中で「商品名を連呼する」というCMが、流行したことがあった。
あまりにも商品名を連呼するので、テレビ番組を見ている人たちからは「うるさい!」と不評を買い、次第にそのようなCMは無くなっていった。
当時は映像や録音技術などは、今と比べモノにならないほどアナクロな時代で、表現方法も限られていたということがあったとは思う。
しかし、広告の受け手となる生活者から「うるさい!」とそっぽを向かれては、CMを流す意味はない。
意味がないどころか、企業イメージ・商品イメージを悪くさせるだけだ。

勿論、1960年代前半でも優れたテレビCMはあった。
植木等さんが出演されていた「アイディアル洋傘骨」のCMなどは、わずか10秒ほどだがインパクトがありながらも受け手に不快感を与えず、強い印象を与えることに成功している。
同じようなCMといえば、1960年代後半の大橋巨泉さんが出演されていた「パイロット万年筆・エリート」だろうか?
大橋巨泉さんがその場のアドリブで言った言葉が、その年の流行語になるほどだったように子供ながら覚えている。

植木等さんの「アイディアル洋傘骨」は、商品名を1回しか言わないのに植木さんの当時の人気と合わさり、強い印象を残すことに成功している。
大橋巨泉さんの「パイロット万年筆・エリート」は、意味をなさない言葉をリズムよくいうことで、どこかしらユーモアを感じさせながらも「何か意味があるのかな?」という、一瞬の戸惑いを受け手に与えることに成功している。
どちらも、どこかしら「クスっと笑える」CMなのだ。
そのような受け手にやさしく微笑みかけるような広告が、今のネット広告には感じられない。
せっかくビジュアルという表現方法があるにも拘わらず、そのビジュアルが直接的過ぎて、不快に感じる人がいるのでは?と、感じられるほどなのだ。

何事においても、何かを作り出すためにはそれなりの費用が必要だ。
低予算の中、良い広告を作るという努力をしている企業もあるはずなのだが、最近目立つのは「受け手となる人は、どんな気持ちでこの広告を見ているのかな?」と、疑問に感じる広告が増えている、ということなのだ。
「目立つことが広告である」かのような広告、といっても良いのかもしれない。

ネットメディアそのものは、新しいメディアだから仕方がないのではない。
受け手となる人たちは、常にいてそれは時代の変化によって変わるわけではない。
とすると、ネット広告もまた「広告とは何か?」とい、う本来あるべき姿に立ち返る必要があるのでは?と、感じるのだ。


バレンタインとチョコレート、そして経済

2022-02-13 22:00:17 | ビジネス

明日は「St.Valentine Day」ということで、今日のチョコレート売り場は賑わっていたことだろう。
最近の傾向としては、職場に配るいわゆる「義理チョコ」購入は激減し、友人や家族に贈るチョコや自分のためのチョコなどが、主流になってきている、といわれている。
そのような変化もあってか、いわゆる「高級チョコレート」のほうが売り上げが伸びているのでは?と、百貨店の売り場などを見ると感じるようになってきた。
「量より質」ということだろう。

特に名古屋にあるJR名古屋高島屋で展開している「Amour du Chocolate!」は、百貨店の中では日本一の売り上げといわれるほど、毎年盛況になる。
昨年・今年は売り場の入場制限がかけられている、ということだが、意外なほど人出がある、とは知人から聞いた話だ。
勿論、オンラインでの販売があるため売り場に足を運ばず、オンライン購入をされる方も多いことを考えると、贈る相手はともかくヴァレンタインで消費されるチョコレートの量は年間の7~8割というのも納得できる。

しかし、数年前からチョコレートに関しては、様々な問題の指摘がされるようになってきている。
理由はチョコレートの原材料となるカカオの産地での、子供の人権をはじめとする「現地の人たちの人権」と、低賃金という経済的な問題の指摘だ。
そのため昨年だったか?日本でも人気の高いゴディバが、この問題に取り組んでいないと、人権団体から指摘をされるということも起きている。

確かに、カカオの産地となっている地域はいわゆる「途上国」と呼ばれる地域の国々であり、このような国の特徴として一部の権力者に富が集中し、国民の多くが貧困にあえいでいる、という点だろう。
結果として、子供が労働力として使わるだけではなく、その労働環境も劣悪な環境である、ということなるのだろう。
そのようなことが、良いはずはなくそのような地域からカカオを調達しない、という方法も考える必要がある、といわれてはいる。
問題は、カカオの産地は世界的に限られている、という点がある。

そのため、新しいカカオの産地を求め現地の人たちの生活を十分に支えるだけの価格で、カカオを買取るなどをしてチョコレートを販売している小さな企業も出てきてはいる。
勿論、チョコレートの価格は、割高なモノになってしまう。
その割高なチョコレートを普段から食べられるほどの収入が、今の日本の生活者はなかなか得られる環境にない、という現実にも目を向ける必要があるかもしれない。

チョコレートは、食事として食べるものではなくし好品の一つだとしても、「社会に良いものを食べたい=企業の社会的責任を果たしている企業」の商品を選びたいという生活者が増えることは、グローバルな視点で考えても良い動きだと思う。
問題は、その考えや行動を支えるだけの経済が、今の日本にはあると実感できない(実際ここ30年日本の経済成長は諸外国よりずいぶん低い)という点も問題なのでは?という気がしたのだ。

チョコレートというし好品から見たとき、日本の生活者の可処分所得を増やすことで、遠いアフリカの人たちの暮らしを改善・向上させることができるかもしれない。
そんな視点もまた、必要な時代なのでは?という気がする。


ミスよりも成功を見たい‐冬季オリンピック北京大会‐

2022-02-10 19:41:21 | スポーツ

今日の午後行われた、北京オリンピックの男子フィギュアスケートのフリー。
SPでは、氷に足をとられ?思いがけず、7位という成績になってしまった、羽生結弦選手。
フィギュアスケートのファンならずとも、羽生選手の活躍を期待していた人たちが、国内外を問わずいたことだろう。

羽生選手自身が、どのような気持ちで今日の演技に向かわれたのかは、わからない。
ただ、果敢に4回転アクセルに挑戦をし、着氷に失敗し転倒したとは言え、世界で初めて「四回転アクセル」を認定されることとなった。
その挑戦し続ける、というアスリートとしての姿勢は、多くの人たちに感動を与えただろうし、キッチリと順位を上げ4位入賞というのは、とても立派な成績だったのではないだろうか?
もちろん、本来の羽生選手の実力をもってすれば、金メダルを獲っただろうが、「オリンピックには魔物がいる」といわれるように、予想していないことが毎回起きている。
ソチ大会の時は、浅田真央さんが「どうしたの?」と心配するほどSPでは不調のように思えた。
しかし、フリーの演技では多くの人に感動を与えるほど、素晴らしいもので今でのYouTube上には、当時の浅田真央さんの動画を見ることができるほどだ。

その男子フィギュアの結果が出た後、なぜかテレビなどでは羽生選手の失敗映像が度々流れる、とTwitterの友人がつぶやいていた。
その方は、「失敗した映像よりも、四回転アクセルを成功させた映像がたくさん見たいのに…」という気持ちだったようだ。
そのtweetを見て、全てではないが日本のスポーツ映像では、なぜか失敗とか厳しい状況に置かれた映像を、繰り返し流す傾向があるように感じることがある。
その理由を考えると、「失敗から成功」というストーリーを見せているのかな?という気がしたのだ。

しかし、メディアが考える「失敗から成功」という、まるで「お涙頂戴サクセスストーリー」のような構成の映像を、生活者は見たいのだろうか?
今回の羽生選手の場合、4回転アクセルの着氷→転倒というのは、失敗シーンなのかもしれない。
同じシーンを流すにしても、視聴者が「果敢のチャレンジする羽生選手は、やはり凄いな~」と感じさせるようなコメントや映像編集を、生活者は期待しているのではないだろうか?

ここ数年感じることなのだが、メディア側が考え・出す内容と生活者の感覚が、大きくずれ始めているのでは?
今回の羽生選手の場合、北京に入るのが遅かったのか?まるで不参加のような表現を一時期していた。
おそらく事前にフィギュアスケートの協会などには、事前に連絡をしていただろうし、開催をする側は把握していたのでは?と、想像をしている。
取材をすれば判るのでは?と思うのだが、「不参加なのか?」と、随分騒がれたような気がしている。

そして、ジャンプ団体で失格となった高梨選手についても、彼女が泣き崩れる場面が数多く流れているように思う。
ドーピング違反ではなく、ウェアの問題であり、高梨選手以外にも4人の選手が同じ理由で失格となっているにも拘わらず、メディアに登場するのは高梨選手ばかりだ。
その結果?高梨選手がSNSで謝罪することにまで、なってしまっている。
高梨選手を責めても意味がなく、一番傷つき悔やんでいるのは高梨選手自身なのに、これでもか!というくらいの報道をしている感があるのだ。
メディア側は「決してそんなことを考えているわけではない」といわれるかもしれないが、そのような報道が、より高梨選手を傷つけているのではないだろうか?

オリンピックという晴れの舞台に立つ選手たちは、その日のために様々な努力をして来ている。
「悪いことには悪い」と、メディアが言う必要があると思うのだが、予期せぬことで実力が十分発揮できなくて、一番悲しく悔しい思いをしているのは、誰でもないアスリート本人である、という考えをもって報道をしてもらいたい、と思うのだ。



BRICsと呼ばれた時代とは違う

2022-02-09 11:36:16 | アラカルト

2000年代「BRICs」と呼ばれた国々があった。
国土が広く、経済発展が伸びていた国々だ。
「B」はブラジル、「R」はロシア、「I」はインド、そして「C」はご想像通り中国だ。
確かに2000年代これらの国々は、経済成長も目覚ましく、欧米の経済力をしのぐほどの経済成長を見せるのでは?と、期待された。

それから20年余り、結果はどうだろう?
ブラジルは、経済発展を呼び水にして「夏季オリンピック・リオ大会」を開催するなどしたが、現在では目立った経済成長の印象はない。
むしろ、逆のイメージすらあるのでは?
インドに関しても、インドの子供たちが3桁の掛け算を暗算で素早く正解を答えるなど、期待はあったが「外国人旅行者、特に女性に対する暴行事件などが相次ぎ、インドの知らざれる一面が表面化したことで、経済発展よりも「国としてどうなのか?」ということが問われるようになったこともあった。
このようなことが世界中に知られてしまうと、経済発展云々ではなくインドに対する諸外国からの投資などのダメージを受けてしまったような気がするのだ。

そして「R」のロシア、「C」の中国は、この20年間国境を接する国々とのイザコザがあとを絶たず、現在はロシアがウクライナへ侵攻するのを阻止すべく、NATO軍がウクライナ国境に集結しさせ、東欧に米軍を派遣する、と米国・バイデン大統領は発表をするなど、緊張感が高まっていたが、今日になり、フランスの仲介でウクライナとロシアとの間で合意がなされるのでは?という、報道がある一方、米国が日本にLNGの一部を押収に融通してほしい、という打診があるなど、最悪の状況を回避するために少しづつ動き始めるが、欧州でのエネルギー不足回避のための動きがある、という状況に変わりつつあるようだ。
BBC News:ウクライナめぐりロ仏と米独、それぞれ首脳会談 パイプライン稼働への影響も
朝日新聞:欧州にLNGの一部を融通へ ウクライナ侵攻に備え

中国についは、国境を接する国々との間で「国境問題」というものを抱えている。
これまでは、インドと中国、ベトナムと中国という状況だったのが、今ではネパールにまで及んでいる。
BBC News:中国、国境を越えてネパールに侵入か ネパール政府報告書をBBCが入手

中国は領土侵略という問題だけではなく、香港や台湾に対しても自己都合の良い主張をし、何とか取り込もうとしている。
香港は、すでに取り込まれた状態だといってよいかもしれない。
それが顕著に表れたのが、現在行われている「冬季オリンピック北京大会」だろう。
オリンピックの開会式の各国の入場の時、中国国内において台湾の入場では習近平氏の顔写真が使われ、台湾が正式名称としている「ChineseTaiwan」と呼ぶことがなかったといわれている。
また、開会式で見られた少数民族の衣装を着た人たちは、いわゆる漢民族であり少数民族ではなかった、という指摘もされている。

かつて「BRICs」と呼ばれた国々は、ここ20年で欧米諸国の評価が随分変わってしまった気がしている。
経済発展という点では、中国はトップクラスの成長を見せたが、その裏側では「新疆ウイグル自治区」や「チベット問題」に象徴されるような「人権問題」がクローズアップされて来ている。
何より、周辺諸国を取り込み、中国という「帝国」をつくりたいという、20世紀前半のような思想の中で強権を振るい、押さえつけようとしている感がある。
それは、ロシアも同じなのかもしれない。

様々な情報が国境を越え行きかう時代になっても、「帝国主義」的な思考から逃れられないというのは、人の性のようなものなのだろうか?
今回の「冬季オリンピック北京大会」では、ジョンレノンの「イマジン」が起用されたようだが、ジョンレノンが訴えた「イマジン」の考えとは大きくかけ離れているように思うのだ。

 


新しい「脱炭素エネルギー」となるか?核融合発電

2022-02-07 11:37:42 | アラカルト

日経新聞のWebサイトに、京都大学のスタートアップが13億円の資金調達ができた、という記事があった。
日経新聞:京大発核融合スタートアップ 日揮などから13億円調達

「核融合」という言葉だけで、拒否反応を起こす方は少なからずいらっしゃると思う。
第二次世界大戦で広島・長崎に投下された「原子爆弾」、東日本大震災時に事故を起こした「東京電力 福島第一原子力発電所事故」などによる、放射能被害。
特に「東京電力 福島第一原子力発電所事故」による、地域全体の避難地域指定は、すべて解除されたわけではない。
10年余り経過しても、元に戻ることはなく、解除地域においても住民の方々の中には戻ることを諦めた方も少なくない、という報道がある。
避難地域の人たちだけではなく、一時期東京を中心に関西以西に「放射能疎開」をされた方々も数多くいらっしゃった。
そのような方々にとって「核融合」とか、「核融合発電」という言葉を見たり・聞いたりするだけで、一種のアレルギーのような拒否感を持たれるのは、当然ではないだろうか?

その一方で、この京大のスタートアップ企業が手掛けるような「核融合発電」そのものが、世界から注目されている、という点も見逃せないところだろう。
何故なら、記事にある通り現在研究が進んでいる「核融合発電」は、「CO2削減の切り札」とも言われている「発電システム」だからだ。
そのため、米国のみならず欧州でも研究を進め、「世界の核融合発電システム」の覇権をとろうとしている、といっても過言ではない、という現状なのだ。

気になるのは、13億円の資金調達という額だ。
記事にある通り、米国などとは比べモノにならないほどの少額なのだ。
有利性があるとすれば、発電技術に必要な「プラズマ」という分野の研究が、比較的有利という点かもしれない。
10年ほど前に、名古屋大学の市民公開講座で「プラズマの医療分野への活用」というテーマで、話を聞きに出かけたことがあり、以来「医療技術としてのプラズマ」とは違う分野での活用の話を、何度かお伺いすることができたからだ。
その話では、研究レベルとしては決して海外から遅れを取っているわけではないどころか、相当進んでいるということだった。

そしてもう一つ注目すべき点は、この「核融合発電」に使われる放射性物質が「トリチウム」である、という点だ。
「トリチウム」という名前の放射性物質は、過去何度も私たちは耳にしているはずだ。
それは「東京電力福島第一原子力発電所事故」で問題になっている「汚染水」に、大量の「トリチウム」が含まれている、というニュースだ。
その「トリチウム」を大量に含んだ「汚染水」を海に放出する、という方法での処理をする、ということで周辺諸国が反対をしている、という現状がある。
半減期が13年くらいだとすると、事故が発生してから11年経過しているので、問題にならない状況かもしれないが、やはり「放射性物質が海洋に放出される」ということは、「環境問題」として反対されるのも当然だろう。
その「汚染水」と「トリチウム水」が分離することができ、「トリチウム」を「核融合発電」に使うことができれば、「負の遺産」である「東京電力福島第一原子力発電事故」であっても、わずかでも社会還元できるのでは?ということなのだ。
事実、すでに「汚染水」と「トリチウム水」を分離する、という技術は、確立してるようなのだ。
電気新聞:トリチウム水の分離可能に。近大などが装置を開発(2018年7月3日記事)

もしかしたら、日本の弱いところはこのような技術がここに確立しているのに、垣根を超えた活用ということが苦手ということなのかもしれない。
厄介者であっても、新しい技術で生活者に還元できるのであれば、しっかり国がサポートをして「世界の基準」を獲ってほしい。