日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

COP10とジレンマ

2010-05-19 16:43:18 | アラカルト
おそらく、全国的には余り注目されていないと思う「COP10愛知・名古屋」が、この10月開催される。
名古屋の地下鉄に乗車すると、扉には「COP10」のポスターなどが目に付くのだが、どれほどの県民・市民が興味・関心を持っているのかは・・・???だ。

そしてここにきて、注目を浴びていることがある。
それは「トヨタ自動車のテストコース建設問題」だ。
建設計画が発表されたのは随分と前で、地元住民の方々や環境保護団体の方々は、建設計画発表時から反対運動を繰り広げてきたようだ。
ただこの問題が急に(という感じがする)クローズアップされてきたのは、「COP10」と関係が無いとは思えない。
というのも、トヨタが建設予定をしている場所が「COP10」を開催するに当たり、「貴重な里山」と指定した地域だからだ。

建設反対・中止を求めている人たち(音声に注意してください)は、既に造成された他の場所での建設を求めているコトを考えると、「テストコースを造る」コトに反対をしているわけではない。
ただ「他の場所に移して欲しい」と言っているだけなのだ。
そして「移して欲しい場所」というのは、「山などの遮蔽物などが無いため、開発中のクルマが見えてしまう」と、トヨタ側が難色を示している。
個人的には、「遮蔽物を作ってしまえば良いだけの問題ではないか?」と思ってしまうのだが、トヨタの考えとしては、違うようだ(地元志向が強いトヨタですから・・・。セントレアも愛知万博もトヨタさんの意向が反映された場所でした)。

もう一つ、反対・中止を求めている人たちが違和感を持っているコトが「愛知県が、用地買収に乗り出し・造成する」という点だ。
「あくまでもトヨタという企業の事業に、県が用地買収に乗り出し、造成こと自体、おかしいのではないのか?」という、指摘である。
この点については、「確かに!」と思うところだが、トヨタのお膝元新聞である中日新聞には、課長級以上のトヨタの定期人事異動の記事が掲載される。
それほどまでに、トヨタという企業が与えている影響力は大きい。
愛知県にとっては、巨額な法人税を納税してくれる「上得意さま」というトコロだろう。

「生物多様性」を謳いながら、一方でその環境を壊しかねない一企業の施設建設に積極的な、自治体という姿が浮き彫りになっている。
もちろん、トヨタ自体もこの「COP10」の協賛企業として名を連ねている。

右手で「環境企業を目指す」と言っておきながら、左手で「自社に近いトコロに、自社利益優先でテストコースを造る」というトヨタ。
そしてそれを支持する「COP10」の開催自治体(名古屋市も開催自治体となっている)。
大きな矛盾とジレンマが、垣間見れる。