日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

そごう・西武労働組合のスト決行

2023-08-31 22:29:39 | 徒然

昨日、拙ブログでもエントリした通り、西武池袋本店のヨドバシカメラへの譲渡について、今日決議され譲渡が決定した。
Diamondon-line:セブン&アイのそごう・西武「売却スキーム」判明!ヨドバシ入居の難航で株式譲渡延期か 

Diamondon-lineの記事は、有料会員向けの記事なのだが今回期間限定で無料公開となっている。
経済誌が改めて無料公開するほど、衝撃的というか「百貨店と家電量販店」の勢いを感じさせる譲渡劇であった、ということだろう。

今回のセブン&アイによる、そごう・西武のヨドバシカメラへの譲渡については、外資系ファンドが取り持っていた。
このことも、今までとは違う譲渡関係となったのかもしれない。
何より、百貨店従業員による「ストライキ」が、行われたのが60年ぶりということも「労使関係」について、改めて考えさせられるところとなったような気がする。

私と同世代の方なら、「ストライキ」と言って思い浮かべるのは、国鉄のストライキなのではないだろうか?
現在のJR各社が、ストライキをしたため電車が遅れたり、運休したりという記憶はない。
しかし、JRに分割される前の1960年代~1970年代までの国鉄時代には、毎年のようにストライキが行われ、ストライキ当日、線路を歩いて出勤する人達の写真がお約束のように、新聞やテレビのニュースで取り上げられていた。
そして「利用者の身にもなって欲しい」という趣旨のコメントが、毎回のように取り上げられていたと、記憶している。
結局、国鉄が分割されJRとなったことから、このような光景を見ることは無くなったのだが、このような国鉄時代の労働組合のストライキのやり方に対して、多くの利用者から共感されなかったというのは、上述の「利用者の身にもなって欲しい」というコメントからも、分かると思う。

確かに「ストライキ」は、労働者が持っている権利の一つではあるが、労働組合員以外の人達から共感され、支持されなくては「効果がない」ということが、この国鉄時代の度重なるストライキによって様々な労働組合が理解した、ということになるのかもしれない。
その為?今では労働組合が世間に登場する時は「春闘」と「メーデー」の時くらいに限られてしまっている。
しかも「御用組合」と呼ばれるほど、経営者側の意向を汲む傾向が強くなっている。
もはや、国鉄時代のような過激なストライキは、過去のモノとなっている。

それだけではなく、労働組合に参加(組合費を払っている従業員)も年々減っている、と言われている。

厚生労働省・労働組合基礎調査より

このグラフの通り、全従業員数に対して加入者そのものが、年々減少している。
このような状況になると、「労働者の権利」を訴えるにしても、企業側(経営者側)にとっての脅威にはならない。
そもそも今の若い人達は「労働組合」そのものの存在を知っているのか?と、疑問に感じる。

そのような状況の中で行われた「ストライキ」に対して、同業他社の労働組合からも賛同の声があったという。
外資系ファンドがヨドバシカメラとの譲渡交渉を担当していた、ということもあり、労働組合側がどれだけ交渉の場に参加できていたのかは、わからない。
ただこれまでのような「御用組合」から、労働組合の在り方そのものを見直す切っ掛けとなったかもしれない。

池袋の顔ともいえる場所が、百貨店から家電量販店へ変わるコトで、街の雰囲気も変わるだろう。
その時、池袋を利用する人達がどのように変わるのか?
その変化が、もしかしたら「ストライキ」に対する答えの一つとなるかもしれない。


有力テナントが反対表明。今後の影響は?

2023-08-30 17:45:18 | ビジネス

今週月曜日だったか?現在交渉が進んでいると言われている、西武池袋店の買収問題で、従業員側がストを行うという報道があった。
そして今日、「スト決行」が決まったようだ。
テレ東Biz:【速報】西武池袋本店 明日31日スト決行 

日本の百貨店が、苦境に立たされたのはバブル経済が崩壊した直後からだった。
そして全国展開をしている百貨店は、他の百貨店と一緒の「持ち株会社」をつくり、何とか経営を維持している、というのが現状だろう。
今回の西武百貨店も破綻した(?)そごうと一緒になり、持ち株会社をつくり営業を続けてきた。
今回問題となっている西武池袋本店は、その名の通り西武百貨店の本店として創業をしている。

しかし、現実は厳しく池袋本店を家電量販店であるヨドバシカメラへ譲渡する話が、海外のファンド会社が進めていた。
そのことに対して、従業員側が「ストライキ」という方法で、阻止するという行動を起こす、というのがこのニュースダ。

従業員がストライキを決行する、ということは譲渡の話そのものが、上手くいっていないと考える方が自然だろう。
あくまでも西武・そごうの持ち株会社とヨドバシカメラとを結びつけたファンドの間での話であって、そこには「百貨店で働く人達」の考えは汲み取られていない、と考えてもよいと思う。

そのような状況の中、意外なところから「反対!」の声が上がった。
百貨店のテナントとして入居している、ルイ・ヴィトンが反対を表明したのだ。
テレ東Biz:【独自】そごう・西武の売却めぐりルイ・ヴィトン改装案「承認しない」 

この記事を読んで、「ルイ・ヴィトンだけの話だろう」と思われた方もいらっしゃるかもしれない。
実は、「ルイ・ヴィトン」を運営しているのは、「LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)」という企業だ。
名前を見てお分かりになると思うのだが、モエというのはシャンパンの代名詞とも言われる「モエ・エ・ド・シャンドン」のことだ。
そしてヘネシーは、、コニャックに代名詞と言っても過言ではないだろう。
それだけではなく、LVMHのファッション部門にはルイ・ヴィトンだけではなく1990年代~2000年代に経営不振に陥ったファッションブランドを積極的に買収し、傘下に収めている一大高級ファッション企業でもある。
おそらく、百貨店の海外の高級ブランドが集まっているフロアの半数以上が、このLVMHの傘下ブランドだと言ってもよいかもしれない。

それほどの企業が、難色を示しているということは、テナントとの話し合いも上手く進んでいなかった、ということを示しているだけではなく、今後の改装計画そのものが、白紙になる可能性もある、ということになるだろう。
何故なら、LVMH側としては、単独で路面店を展開だけで全く経営的には影響がないと思われるのに、あえて「百貨店」という売り場に魅力を感じている、ということを示しているからだ。
まして、ファッション分野だけではなく生活全般にかかわる「ラグジュアリーブランド」を展開している、LVMHにとって「ワンストップでLVMH傘下のブランドを購入できる場所」としての百貨店という、見方をしているのかもしれない。

このLVMH側の発想は、バブル崩壊後日本の百貨店が「売り場貸し業」と揶揄されるようになってしまったコトとも、関係しているのかもしれないし、今後の百貨店の在り方を再考する切っ掛けとなるかもしれない。



オーバーツーリズムとインバウンド政策

2023-08-29 18:05:35 | ビジネス

中国から日本への観光客が、再び戻り始めたようだ。 
Reuters:焦点 爆買いは過去の話か、中国団体観光客解禁「コト消費」に商機 

改めて書く必要もないと思うのだが、「コト消費」とは、いわゆる「体験型消費」だ。
ディズニーリゾートやUSJに行く、ということではなく、日本文化を体験することで発生する「消費」のことだ。

今まで「インバウンド=爆買い」という意味で、使われるコトが多かったが「コロナ禍」の2年ほど前から、この「コト消費(=体験型)ツーリズム」が、増え始めていた。
目だって多かったのは、やはり京都だろう。
清水寺周辺に行くと、季節を問わず着物を着た中国を含むアジアからの観光客の姿を数多く見かけた。
何故、観光客だと分かるのか?と言えば、季節を問わず薄い化繊の着物を着ているからだ。
日本の女性であれば、それなりの質の着物を着ているだろうし、まして場所は京都だ。
着る着物の柄一つとってみても、四季折々の季節感を重視し柄の着物を、季節ごとに合わせて着ている。
季節感を無視したような素材に柄を見れば、やはり「観光客相手の着物レンタル」だと、わかってしまうのは仕方のないことかもしれない。

このようなサービスそのものが悪い、とは言い切れない。
「日本の文化を知ってもらう」という、きっかけづくりとなれば、その後の日本の観光産業にもプラスになるのでは?と、考えられるからだ。
ただ問題なのは、「オーバーツーリズム」と呼ばれる、「観光害」が各地で起きている、という点だろう。

例えば今年の夏(まだ夏は終わってはいないが)、富士登山で問題になった登山者の中には、海外からの観光客だった。
服装がカジュアルすぎるコト。登山靴ではなくサンダルで登山をしようとしている、など「富士登山」を丘陵地の散歩気分で訪れる、海外からの観光客が急増した、ということだった。
「富士山」の世界遺産登録時、ユネスコからは「富士山だけでは、世界遺産登録は難しい」と言われ、「富士山を中心とした山岳信仰」という文化的な要素を含めたコトで、世界遺産に登録されたという記憶がある。

しかしながら、新幹線の車窓から富士山が見えると、海外から来たと思しき人達は、一斉にスマホやビデオカメラを向け撮影を始める。
「山岳信仰」等の意味を含ませる必要がないほど、海外からの人たちにとっても「富士山」という山には、魅力があるのだと思う。
とすれば、当然のように「登ってみたい!」という気持ちになるのも、理解できる。
しかし、いくら警告的な案内をしても、解決とはならなかった、というのが今年の「富士登山」だったのではないだろうか?

このような、地元の人たちにとって「迷惑」と感じる「観光」のことを「オーバーツーリズム」というのだが、このような「オーバーツーリズム」の問題は決して、日本に限ったコトではないようだ。
朝日新聞:700人の村に押し寄せる観光客「生活空間を守る」住民が抗議 

記事の下にある「関連記事」の見出しを見るだけでも、このような問題は日本に限ったコトではない、ということが分かる。
人が少ない村に、観光客が気軽に行けるようになったのは「交通網の発達」と「経済的豊かさ」によるものだ。
「交通網の発達」が十分にされたとしても、観光に行く人達がいなくては「オーバーツーリズム」にはならない。
この二つの要素があって、初めて「観光をしたい」という、気持ちに人はなるのだ。

今の日本は、経済的落ち込みが続き、有名観光地もあり、そのような観光地へのアクセスも十分に整っている。
だからこそ、観光地のオーバーツーリズムが、問題になっているのだ。
日本政府は、インバウンドの拡大と観光客による収益増を考えているようだが、観光地に生活する人達のことは全く考えていないだろう。
まして「インバウンド~爆買い」だと信じ込んでいれば、現在の「オーバーツーリズム」の実態を、把握できていない可能性もある。

上述した内容から感が無くてはならないのは、個々の自治体が「自分たちの考えるオーバーツーリズムにならない観光誘致」ということになるような気がする。
そのアイディアと対策がとれる自治体が、どれほどあるのだろうか?と、心配になる。


中国国内の「ガス抜き」に使われていないか?

2023-08-28 23:53:15 | アラカルト

今月24日から始まった、福島第一原子力発電所事故で発生した「処理水」の海洋放出。
このことに対して、中国側が「日本からの水産物の輸入禁止」を発表した。
海洋放出に関しては、国際原子力機構(「IAEA」)が認めていることなので、放出そのものは国際ルールにのっとったものである、というのが日本のスタンスだ。
それに対して、「食の安全が確認できない」として、日本からの水産物の輸入禁止を決めたのが、中国および香港政府ということになる。

ここまでの話は、外交によって問題解決を図らなくてはならないコトだと思うのだが、中国側の「日本からの水産物輸入禁止理由」が、中国国内で独り歩きをし、結果として週明けである今日から、日本あてに中国からの嫌がらせ電話がされている、という。
「国際電話を使ってまで…」とは思うのだが、インターネット回線を使えば思うほどの通信料金はかからないのだろう。
そもそも、ネットを利用したプリペイドカード詐欺などの多くは、中国から発信されていると言われている。
ネットの世界では、中国という国は隣国どころか近隣住民のような距離なのかもしれない。

そのような通信環境ということもあり、中国から嫌がらせ電話をする人達は「日本に電話をする」という心理的ハードルが低いのかもしれない。
と同時に、中国側の「ガス抜き」的意味合いもあるのでは?という、気がしている。
というのも、中国の不動産大手である恒大集団が、ニューヨークで破産申請をしたのは、つい最近のコトだ。
しかし、中国の不動産バブルは10年以上前に破綻しており、その結果として内情としての中国経済を危ぶむ声は、随分前からあった。
表向きは、順調な経済状況を言いつつ、その実態は違っていた、ということになる。
それだけではなく、先日エントリしたように、「EVバブル」も弾けてしまった、という見方もある。
実態として、決して中国経済が順調ではない、ということは国際市場の中では「暗黙の了解」のようになっているのでは、無いだろうか?

とすれば、当然中国国内には国民の中特に、都市部の経済的に余裕があった層に経済的不満がたまっていてもおかしくはないだろう。
良くも悪くも日本人は苦渋に耐える傾向があるのに対して、中国にはそのような耐性があるとは思えない。
独裁的な体制を整えつつある習近平氏に対して、歯向かうようなこともできない不満のようなモノも、中国の生活者に溜まりつつあるのかもしれない。

そこへ「福島第一原子力発電所事故」の処理で発生した「放射能を含んだ処理水の海洋放出」は、中国政府にとっても中国の生活者にとっても、恰好の「日頃の不満に対する、ガス抜き」の対象となってしまったのではないだろうか?
それに拍車をかけるように、中国外務省は「中国からの嫌がらせ電話」の実態を把握していない、とコメントを出してしまった。
Yahoo!トピックス(FNNプライムオンライン):【処理水放出】中国からの迷惑電話中国外務省、定例記者会見で「状況を把握していない」

元々言論統制の厳しい中国において、中国政府側がこのような発言をするコトで、「嫌がらせ電話をする」という行為にお墨付きを与えてしまっているようなモノなのだ。
これでは、いくら日本側が「遺憾である」と言ったところで、効果があるとは思えない。
とすれば、日本「処理水の海洋放出の正当性と中国側からの嫌がらせ」を、世界に向け発信するしかないだろう。
確かに中国は、経済パートナーとして重要な国の一つであるとは思うのだが、公正で平等な経済パートナーとして付き合う為には、時には強硬な態度も必要なのでは?と、思うのだ。


視点を変える、違った市場が見えてくる?

2023-08-27 21:10:27 | Weblog

一昨日、中国から通達された「日本産水産物の輸入禁止」。
中国のこの対応については、以前から言われていたことなので、驚くほどのニュースではなかった。
もちろん、海産物を扱う当事者ではないので、「驚くほどのニュースではない」と言えるのであって、当事者とすれば大変なことだろうと、想像することはできる。
実際、政府でもこの中国側の措置に対して、話し合いの場を設けるなどの呼びかけをするなどしているようだが、日本の思惑通りにはならないだろう。

確かに、マグロの初セリなどでは中国から資金を提供されている卸会社が、高額で競り落とすなどが毎年の話題となっていた。
中国では、日本産マグロが人気である、ということを示す一例だろう。
実際JETROのサイトで、対中国の輸出について今回の件も含めてリリースが出ており、主な水産輸出品が分かる。
JETRO HP:中国、日本産水産物の輸入を全面停止 
     :香港政府、福島原発ALPS処理水放出に伴い10都県の水産物輸入禁止措置を発表

このJETROが発表したリリースによると、対中国への輸出が一番多いものが「ホタテ貝」、次いで(意外な印象だが)「なまこ(調製)」、そして「カツオ・マグロ」となっている。
「なまこ」に関しては「調製」となっていることから、干しなまこか調理・加熱された物かもしれない。
干したなまこを「海参」と言い、高級料理や薬膳の材料として使われることがあるようだ。
古月(会席中国料理店):「海参」ー海参の歴史 

確かに今回中国が水産物の輸入全面停止に至った理由が、東京電力福島第一原子力発電所事故の処理で溜まってしまった「処理水の海洋放出」だった。
そして「ホタテ貝」も「なまこ」も、東北近辺が一大産地だったと思う。
輸入品目の1位。2位が、処理水の放出の海域ということになれば、中国側は神経質になってしまうのかもしれない。

確かに、水産業者さんからすれば今回の輸出全面停止となれば、大打撃と言えるだろが、JETROの記事にあるように、中国への輸出で金額的に多いのは「ホタテ貝」で、次の「なまこ」は別にしても、カツオやマグロといった魚介類が中心だ。
イワシやサバ、サンマなどの「大衆魚」等が、大きな割合を占めているわけではない。
メディアの報道では、「日本の水産業に大打撃!」というようなニュアンスで受け止めてしまうのだが、限定された魚介類が中心である、と分かれば、対応そのものも変わってくるはずだ。

もちろん、昨今の世界的日本食ブームで、これまで「大衆魚」を言われていた魚介類を中国へ売りだそう!と、考えていたのだとすれば、それは大きな痛手だろう。
だからこそ、市場を国内に目を向ける必要があるのでは?
今回の「処理水の放出」によって、海が放射能に汚染されるという懸念はあるが、世界の原発によって排出されている「処理水」を考えれば、既に「世界中の天然魚介類は食べられない」ということになるかもしれない。
それほど、「原発の処理水」は既に海洋に放出されている、ということでもある。

「処理水」に対して嫌悪感を抱く方の考えを否定する気はないが、この機会に「産地ならではの美味しい食べ方。伝統食」のような情報を発信し、国内の水産物需要を高める、という政策を農林水産省が各地の漁協と協力しあって、情報発信をしてもよいのでは?
実際、時折SNSでは農協が発信した「料理」が話題になったりしている。
中国への輸出9割という地域では、不安が広がるのは分かる。
だからこそ、国内市場へ目を向けるチャンスなのでは?と、思うのだ。


EV車の未来図なのか? 中国で始まったEVバブルの崩壊

2023-08-25 19:05:39 | ビジネス

Yahoo!のトピックスにも取り上げられていた、「中国都市部で見つかったEV車の墓場」という内容の記事。
Bloomberg:まるでEVの墓場、中国都市部に大量の廃棄車両ー急成長の負の遺産 

確かに記事に掲載されている写真を見る限り、大量に廃棄された車が放置されている。
この大量に放置されている車全てが、EV車なのか?ということは一見するだけではわからない。
ただ、世界のEV車市場をけん引してきたのは、確かに中国だったということには、間違いないところだ。
何故なら、「世界に先駆け、国内で販売される車を全てEV車にする」と、発表をしたからだ。
その後、欧州などでもEV車の開発が一気に進んだことは言うまでもない。

このような状況下の中、日本は「エコカーとしてのハイブリッド車」の市場が既に出来上がりつつあったこともあり、各自動車メーカーがEV車へ全面的切り替えをすることができなかった。
日産が、本格的にEV車を製造・販売するようになり、その車種が増え始めたのはここ2,3年のことだろう。
トヨタにしてもマツダやホンダなどは、EV車の研究・開発と並行するようなカタチで、ハイブリッド車を製造・販売しているというのが、現状なのではないだろうか?
このような状況の中で、Bloombergが「中国のEV車の墓場」という見出しの記事を出した、ということになる。

それだけではない。
先日WallStreetJournalが「EVバブルの崩壊が始まった」という記事を掲載している。
(都合上、記事を引用したDiamondon-lineを紹介)
Diamond on-line:【社説】EVバブルの崩壊が始まった 

記事の趣旨としては、中国のEVバブルを模倣しようとしている、米・バイデン政権を批判する、という内容のようだが、翻って日本ではどうなのだろうか?

そもそも中国がEV車に力を入れていたのは、環境問題を踏まえた訳ではなかった、と言われている。
むしろ、国際市場の中心であったガソリン車やハイブリッド車、特に環境負荷の軽減が謳われているハイブリッド車などの研究・技術開発が追いつかない為、比較的簡単に組み上げることができるEV車で国際市場を獲りたかった、と言われている。
その結果として起きたのが、「EVバブル」であり、「EV車の墓場」ということになるのだろう。

この中国の状況を見て、日本はどうすべきなのか?ということを、考える必要があると思う。
何故なら、それが国際市場における「スタンダードを獲る」という切っ掛けとなるのでは?と、考えられるからだ。

そもそもEV車の普及の目的の一つが、「環境負荷の少ない車」だったはずだ。
とすれば、EV車を充電させる充電器や充電ステーションで供給する電力そのものも「環境負荷の少ないシステム」でなくては、意味がない。
同様に廃車するときも「環境負荷の少ない方法」である必要がある。
それは車をつくる過程から、考えられるべき問題でもあるし、廃車に至るまでの販売ルートや廃車工場まで、「ゆりかごから墓場まで」というトータル的な考えが必要、ということになる。

そのような「トータル的な考え」が不十分であり、「EV車をつくる」ということに対するフィロソフィー(哲学)が無かった、ということなのではないだろうか?
そして、日本が国際市場で「スタンダードを獲る」ということを考えた時、技術や研究だけではなく、このような「トータル的哲学」を持つことが重要な気がするのだ。







歌舞伎とジャニーズ

2023-08-23 19:40:28 | アラカルト

タイトルを見て、「ジャニーズと歌舞伎を一緒にするな!」と言われそうな気がするのだが、今年の春ごろから話題となっている故ジャニー喜多川氏に対する小児性愛的な問題は、収まることなく続いている。
ご存じの方も多いと思うのだが、この問題の火付け役となったのはBBC制作のドキュメンタリーだった。
BBCテレビ:J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル 

この番組が全世界で放送された直後は、日本では今ほど話題になってはいなかったような気がする。
それが、現在のように連日何かしらのカタチで報道されるようになったのは、被害当事者である男性が海外記者クラブで話したからだろう。
BBCが放送した頃は、日本の大手メディアの多くはいわゆる「スルー」状態だったような印象を持っているからだ。
それが、海外記者クラブでの記者会見という場が設けられたことで、「実は被害にあっていたのは彼だけではない」と、実名公表をする男性が次々と現れ、1か月ほど前(だったと思う)には、70年前から同様の被害を受けていたという、著名な作曲家の息子さんまで登場し、ジャニー喜多川氏の「小児性愛」の傾向は若いころからであった、ということまで判明してしまった。

一連の報道を見ながら、「日本のメディアがスルーしてきたわけ」を考えるようになった。
その理由の一つが「歌舞伎」の歴史の中にあるのでは?ということに気づいたのだ。

高校の日本史などでは。「歌舞伎の祖」と言われているのは、出雲大社の巫女であった「出雲阿国」だと習ったはずだ。
彼女が、出雲の地を離れ京都の三条河原で、男物の着物を着、歌い踊ったのが始まりだと言われている。
その後、出雲阿国を真似るように、女性だけの歌舞集団「女歌舞伎」が登場する。
ところが、時の権力者が「風紀を乱す」という理由で、「女歌舞伎」は無くなってしまう。
その後登場したのが、美少年たちで結成された「稚児歌舞伎」だ。
その「稚児歌舞伎」もまた、「風紀を乱す」という理由で無くなることとなる。
その結果、現在の「野郎歌舞伎」となったわけである。
和楽:歌舞伎とは?なぜ男性だけが演じるの?歴史をわかりやすく紹介 

他にも、時の権力者が「小姓」と呼ばれる美少年を侍らせる、ということも実際にはあった。
有名な「森蘭丸」等は、小姓の一人だと言われている。
そしてこの傾向は、日本に限ったことではない。
時折欧米の修道院でも修道士が見習いの少年を性的にもてあそぶ、という事件が後を絶たない。

だからと言って許される問題ではないのだが、歴史的なことを考えた時、日本のメディアがジャニー喜多川氏の事件をスルーしてきた背景というモノが、見えてくるような気がしたからだ。
と同時に、現在のメディアの取り上げ方にも疑問を感じている。
何故なら、被害にあった当時の少年たちとジャニー喜多川氏との「力関係」に言及することが無いからだ。
あくまでも個人的な考えだが、この一連の関係は「ジャニー喜多川という、芸能界で権力を持つ男性が、その権力にモノを言わせ少年たちを屈服させた」という印象を持っているからだ。
言い換えれば、「ジャニー喜多川氏による、少年たちに対するパワハラ」のカタチが「小児性愛」であった、と考えた方が良いのでは?ということなのだ。
だからこそ、現在でもジャニーズ事務所に所属しているタレントや関係者を含め、歯切れの悪い言葉しか出てこないのではないだろうか?
小児性愛を良しとしているのではなく、その行動を許すことができた立場であったからこそ、実行できたのでは?ということなのだ。

問題の本質部分とその付属となる問題を一緒にするコトで、「社会的問題・事件」ではなく「ゴシップ」になってしまうのでは?と、懸念している。








「気合と根性」で、難局を乗り切ろうとするのはなぜか?

2023-08-21 20:37:24 | ライフスタイル

先週末、Yahoo!のトピックスだったと思うのだが、「まだ、こんなことが話題になるのか…」と思うような記事が取り上げられていた。
現代ビジネス:未だに「マスク」と「ワクチン」を崇め奉る日本人は、一体いつまで”コロナ禍プレイ”をやり続けるのか 

今年のGWが終わってから、新型コロナの感染症としての扱いは、2類相当から5類の「季節性インフルエンザ」と同等の扱いになった。
これを機に、マスクの着用は基本「個人の判断にゆだねる」ということになった。
しかし、熱中症アラートが連日のように発令される中、マスクを着用して出歩く人達がまだいる。
マスク着用そのものは個人の判断なので、そのことに云々する気はない。
ただ、「熱中症が怖くないのかな?」と、心配をするだけだ。

この記事が、Yahoo!のトピックスで取り上げられると、ヤフコメとして様々な意見が飛び交うようになった。
「マスク着用は、個人の自由なのだから、着けているからと言ってこのような取り上げられ方をしてほしくない」という意見もあれば、「マスク着用なんて、エアゾル感染のコロナでは意味がない。なのに、何故まだ続けているの?」という、意見。
中には、高齢者福祉施設で働く人が「マスクを着用することが難しい高齢者施設で、クラスタ―が発生すると大変なことになる実態を理解して欲しい」という趣旨のコメントまで、実に様々だ。
コメントを読む限り、それぞれの立場や考えがあって意見を述べ、理解を求めようとすることはとても重要なことだと、改めて実感をした。

ただその中で、気になったことがある。
何故「マスク」にばかり注目をし続けるのか?という点だ。
上述したように、「マスク着用」そのものは個人の判断だし、以前から言われていることだが「マスクによる(コロナ)予防効果は、限定的であり、しかも『正しい着用をした場合』」という注釈が付く内容だった。
感染症2類相当から5類に移行したとき、「マスクをし続ける理由」として、「周囲の目が気になる」とか「マスクを外すことが怖い」いった「感染症予防」目的ではない理由が上位に挙がっていた。
高齢者福祉施設や病院などに勤務する人達に限定すれば、「感染予防」が目的である、ということでもある。
そして今でも「クラスタ―発生施設」として挙げられるのは、高齢者福祉施設がほとんどだろう。

このような話が取り上げられる度に、感じることなのだが「科学の力で解決できるなら、科学の力を借りる」ということを何故しないのか?ということだ。
「新型コロナ」の感染拡大が問題になり始めた2020年には、既に「UVC紫外線照射による新型コロナの不活性化」が認められている。
藤田医科大学:UVC紫外線照射装置による新型コロナウイルスの不活性化を国内初確認 

「マスク着用が難しい人達」が集まりやすいところだからこそ、このような装置を積極的に設置させることで、現在に至るまでのクラスタ―の発生を抑制させることができるはずなのだ。
より有効性を確認するための「大規模実証実験」の募集を政府が行ったような記憶がないし、このようなクラスタ―が発生しやすい施設に設置補助などを実施した記憶もない。

現代ビジネスの記事を読んでいても感じるのは、「気合と根性で、難局を乗り切る」ということなのだ。
「気合と根性で、難局を乗り切る」というのは、決して美談ではないと思う。


アクセスする自由があるなら、ブロックをする自由も‐マスク氏のブロック機能廃止‐

2023-08-19 19:59:45 | アラカルト

イーロン・マスク氏が「Xのブロック機能は、意味がないので廃止する」と、発表している。
日経新聞:イーロン・マスク氏、Xでブロック機能の廃止を表明 

旧Twitterを利用している方ならご存じだと思うのだが、自分とは関係なく「フォロー」をしてくる人達がいる。
この「フォロー」をしてくる人達の多くは、アダルトサイトや詐欺まがいの儲け話への誘導を目的としている。
そもそも「人」である野かも疑わしい。
正しくは「人」ではあるが、乗っ取ったアカウントで、このような迷惑行為を行っている可能性が高い。
実は、私のフォロワーさんも「最近おかしなリツイートをするな~」と思っていたら、アカウントの乗っ取りにあっていた、ということが判明したことがあった。

その方が、誤って怪しげなアカウントをフォローした為に、このようなことが起きたのかは不明だが、SNSではこのような「アカウントの乗っ取り」等が、当たり前のように起きている。
当然、SNSサイト側もそれなりの注意喚起をしているはずだが、ユーザー側もそれなりの防御策をとらなくてはならない、というのが現実だろう。

まして、「簡単にお金が儲かるから」という理由で、アダルトサイトや詐欺まがいの儲け話に誘導させるためのアカウントを使い、ランダムにフォローをしてくる人達も少なからずいるはずだ。
現在、このような行為に対する厳重な罰則がないと思われるので、ますますこのようなフォローが、後を絶たないのでは?と、思っている。

そのようなフォローに対して、ユーザー側が手を煩わすことなく接触しない方法が「ブロック」だろう。
相手は、捨てアカウントを使って、あの手この手でやってくるので「いたちごっこ」のようになってしまうとはいえ、「ブロック」という方法はユーザー側にとって有益な方法なのだ。

マスク氏は「ミュート機能があるから、それで十分」と言っているが、ミュート機能だけでは不安が残る。
というのも「ブロックをする」ということは、「今後一切関わらずに済む」という、安心感があるからだ。
その「安心感」は、SNSを提供する側にとって大きな「信用価値」を生み出していることになる。
だからこそ、AppleやGoogleがインストールアプリの条件として「ブロックができる」という項目を付けているはずだ。

これまでマスク氏の旧Twitterに対する、変革を見ていると「良い方向へと向かっているのか?」という、疑問を感じることが多々あった。
確かにMeta社の「Threads」は、発表当初話題になり登録者数もわずかな期間で1億を越したと言われたが、その後目立った話題も無く、話題という点だけでいえば、マスク氏の方が多く注目を浴びることも多かった。
「だから戦略的に、マスク氏有利」という声も数多くある聞くようになった。
確かに話題の数はマスク氏の方が多く、旧Twitter利用者が現在の相互フォローをしている人達を引き継ぐことの大変さを考え、居残っているという状況を考えれば、マスク氏の戦略勝ちのように思える。
しかし、もし相互フォローなどの乗り換えのめんどくささが解消される方法が「Bluesky」等が発表すれば、一気に流れが変わっていく可能性がある。
何故なら、市場は「話題性」だけで動いているわけではないからだ。
むしろ、SNSの重要性はユーザーが安心して使える、信頼できるという点なのではないだろうか?
その点で、マスク氏のこれまでの発言内容から感じるのは、「儲け優先」のような印象を持っている。
そう考えれば、マスク氏がTwitter社を買収した大きな理由の一つは、登録ユーザーの個人情報集め、企業へ売ることだったのでは?という、気すらしてくるのだ。

 


恒大集団の実質的破綻は、中国経済の終わりの始まりなのか?

2023-08-18 20:10:14 | ビジネス

今朝、ビジネス関連のニュースでトップ扱いとなったのは、中国の不動産会社・恒大集団の実質的破綻のニュースだろう。
Bloomberg:中国恒大集団、NYで連邦破産15条の適用申請ー米国内資産保全 

恒大集団の破産手続きそのものは、米国内における資産保全の為のモノであって、中国本土とは関係がない、ということになる。
しかし、米国内での資金繰りが上手くいっていない、ということは中国本土での資金繰りも同様の可能性がある、と考えるのが自然だろう。
まして、中国の企業の多くは中国政府との関係が深い(と、考えるのが当然かと思われる)。

恒大集団が、破産に追い込まれるようになった要因の一つは、金利が上がったことで売れ残っている不動産が経営の重荷になった、ということも考えられる。
ただ、記事にあるのだがこの恒大集団は香港とケイマン諸島でも再申請を行っている。
ご存じの通りケイマン諸島は、「タクスへブン」と呼ばれる場所だ。
本社事務所をケイマン諸島に置くことで、「納税義務を逃れている」という可能性もある、ということだ。

そのような「懐が潤う」ことをしていながら、破綻申請をせざる得ないという状況。
その額も、日本円にして約48兆円という、これまでの企業は反額とは比べモノにならないほどの額だ。
Reuters:中国恒大集団、米で破産法申請

この春シリコンバレーの銀行が倒産したが、この時の倒産額を遥かにしのぐ額なのではないだろうか?
そして、シリコンバレーの銀行の倒産理由の一つが、スタートアップ企業向けの融資を行っていた、という点も大きな違いだろう。
ご存じの通りスタートアップ企業というのは、これから事業化していく為の資金を必要としている企業のことだ。
そこに、金利が上昇したことで融資先企業からの資金回収が上手くいかなかった、と言われている。
今回の恒大集団とは、破綻理由が全く違うのだ。

そして不動産絡みの破綻というと、思い出すのは「リーマンショック」かもしれない。
この時は「債務支払いが難しい」と思われる人に、不動産購入の資金を融資し、回収ができず破綻ということになった。
と言っても、この時の「債権化」の仕組みが複雑すぎて、何が何だか?という印象を持っている。
すなわち、「リーマンショック」の破綻と今回の恒大集団の破綻は、違う要因と考えるべきだろう。

恒大集団の場合は、もっと単純な「過剰投資」による、債権回収ができなかった、という印象があるからだ。
その意味では、日本のバブル経済の崩壊時と、似ているのかもしれない。
中国国内では建築途中のマンションなどが建築業者が倒産をし、建築途中の建物が野ざらしになっている、とも言われている。
さすがに、北京では見ることが無いかもしれないが、地方に行けばそのような建築途中で野ざらしになっている建物を見ることができる、と言われるようになっている。
とすると、今回の恒大集団の米国での破綻申請は、中国経済の終わりの始まりかもしれないのだ。