恩師の御著書「真理を求める愚か者の独り言」より
第一章 或る愚か者の生涯
◆高橋信次先生との邂逅と天職を見出すまで◆
昭和四十九年十一月に高橋信次先生の講演をはじめて聴きました。
しかし、直接お会いして先生から指導を
受けることはついにありませんでした。
ただ、演壇に立ってお話されるのを群衆の一人として拝聴したのみでした。
高橋先生の伝えられる正法にふれて、
まず「足ることを知る」ということの大切さを改めて知りました。
講演の中で聴いたこの言葉は、
自分に向かって言われているような気がしました。
ちょうど商売を少しでも大きくしようとか、
もっと儲けようとかして、この世の現実と
四つに取り組んでいる頃でした。
事業を拡大しようとすれば、借り入れが増えます。
すると銀行はいい顔をしない。
手形を割ってもらおうと思って銀行に行くと、考えておきますと言われ、
こちらはどうしても期限内に手形を落とせないと
困るから頭を下げて頼みこみます。
もう朝から晩まで寝ていても頭の中ではお金の算段ばかりで、
心の休まる暇はありませんでした。
商売というのは下手だから倒れるのであって、
倒れないためにはあらゆる頭を使わなくてはなりません。
お金を動かすのはたいへんだとつくづく思います。
その当時は自分の工場で稼働している織機は三台でして、
ほかに三十台分は外注に出して、
毛布の製造を下請けしてもらっていました。