ケイの読書日記

個人が書く書評

津村記久子「ポトスライムの舟」

2011-07-09 17:13:33 | Weblog
 第140回芥川賞受賞作。

 製造ラインで働く契約社員ナガセは、29歳独身。実家で母親と一緒に生活し、物欲も強くないので、質素ながら生活は成り立っている。
 そのナガセが、会社の休憩室に貼ってあった世界一周船旅のポスターを見て、行ってみようと費用を貯める目標を立てる。
 総額は、彼女の年収とほぼ同じ163万円。

 本当に穏やかな日常が書かれていて、私はこういった作品は好きだが、読んでいて眠くなってくる人も多いだろう。

 薄給だが職場の人間関係が良く、大学卒業後、新卒で勤めた職場を、上司のパワハラで辞めた主人公にとって、今は心のリハビリ中。

 この上司のパワハラ描写がとても詳しいので、作者の津村さんもこういった職場で強いストレスがあったんだろうか?



 同時収録されている「12月の窓辺」には、さらにパワハラ・職場でのイジメが前面に出てくる。

 ツガワは印刷会社に入社したての新入社員。古参社員のV先輩にイジメ抜かれている。愚痴を言おうにも、そもそも同期の女子総合職はほとんどおらず、2~3歳年上の先輩達も、とばっちりが自分達に向かないようにと、見て見ぬふり。
 実際、殴られることは無いが、言葉の暴力を浴びるサンドバック状態。

 一種のマインドコントロールだね。これは。スパッと辞めればいいんだろうが、それも出来ない。
「あんたなんか、どこでも使い物にならない」「何よ、その顔」「辞めても、お前になど行き場がない」などと脅されて、小突き回されている。

 録音して公的機関に訴えでたら?

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