ケイの読書日記

個人が書く書評

クリスティ作「リスタデール卿の謎」を読んで

2005-08-31 16:14:20 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 これは1934年に刊行されたノンシリーズ。だからポアロもミスマープルも出てこない。12の短編が収められている。
 クリスティの作品としては珍しく市井の人々が主人公になっている短編が多い。
 クリスティの作品を読んでいつも楽しめるのは、その当時のイギリスの風俗がよくわかるから。
 例えばこの短篇集の中の『ジェインの求職』には、目下失業中で懐具合がかなり逼迫し始めているキレイで頭のいい若い女性が出てくる。彼女は目玉焼きを一皿とお茶を一杯やっとのことで注文し、新聞の求人欄を見ている。
   経験豊かな速記タイピスト、投資のできる商社の支配人、養鶏の女性共同経営者、コック、メイド、小間使い・・・・・・

 厳しい、本当に厳しいね。明日は目玉焼き一皿さえも注文できないかもしれない。1934年だったら、まだ社会保障制度がきちんとしていないから、なおさら厳しい。
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斉藤美奈子「誤読日記」を読んで

2005-08-22 00:02:39 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 本の帯に「ミーハー書評の決定版」「ワイドショー気分で読みまくり全175冊!!」とある。¥1575だが、買って損は無いと思う。
 ただ一応書評なので話題の新刊の紹介がほとんどで、古典的な名作はない。また、タレント本、ハウツー本、政治家本がほとんどで、小説の書評は27編のみ。

 とにかく、どんな本に対しても(彼女の読書に対する情熱がなせるわざか)イチャモンつけまくり。小姑根性丸出し、だからおもしろい。

 しかし、一番興味深いのは著者自身。斎藤美奈子って誰?本の最後にある略歴を読んでも、どうもピンとこない。作家のようだが、たいした作品を書いているわけでもないらしい。でも、私は名前を聞いた覚えor見た覚えがある。
 ずいぶん前、本屋で表紙にデビ夫人ばりのケバい化粧をした女の人がアップで写っている本(どうやら著者らしい)を見たことがあるが、その人の名が斎藤美奈子だったような・・・・。それとも別人だろうか。フェミニストのところで斎藤美奈子のことを読んだような気もするが。
 誰か斎藤美奈子のことを知っている人がいたら、教えてください。

 『鋼の錬金術師』見てきました。とてもおもしろかったです。観客も思ったより大人が多くて、少し驚きました。子どもを連れた大人ではなく、カップルとか大人ファミリーとか。内容もちょっと難しい。見る前にパンフレットを読んだのでなんとか理解できましたが、なんの予備知識もないと一度で理解するのはなかなか大変だと思います。
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クリスティ「ヘラクレスの冒険」を読んで

2005-08-17 11:30:23 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 ジャップ警部、ポアロの秘書のミス・レモン、ポアロのそば仕えのジョージ、といったポアロオールスターズが勢ぞろいしている12の短篇集。
 この短篇集が発表されたのは1947年。クリスティの後期の作品には、ジャップ警部やミスレモンはあまり出てこなくて少し寂しい気がするが、この時代では、しっかり活躍しているんだ!!(ちなみにジョージは前期中期後期通してよく登場する)

 12の短編は、それぞれ皆面白い作品だが、特に印象に残ったものを2つ紹介します。
 『ゲリュオンの牛たち』
 いつの時代も、宗教と麻薬というものは切っても切れない関係にあるらしい。ちょっとオウム真理教を思い出した。
 『ケルベロスの捕獲』
 ポアロ自身の恋愛が語られるのは、この1篇だけじゃないだろうか。ポアロはデビュー作からして、もう老人だったし、生涯独身だったので、他の人の恋愛について、とても含蓄のある警句を述べることはあっても、自分自身の恋愛経験を話題にすることはほとんど無かった。
 ポアロにとってヴェラ・ロサコフ伯爵夫人は、ホームズにとってのアイリーン・アドラーなんだろうか。クリスティはやはり意識していただろう。
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恩田陸「不安な童話」を読んで

2005-08-09 16:03:05 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 テーマサロンの皆さんにとても評判のいい恩田陸さんを私も読んでみた。さすが直木賞候補になるだけあって実力派。読み応えある。
 しかし私は、些細なことでイチャモンをつけたい。主人公ではないけれど主要な登場人物の高槻秒。『秒』なんだこりゃ?!いったいどうして『秒』?名前に凝るのもいいかげんにしてほしい。それとも何か意味でもあるのだろうか。

 最近の子どもの名前の凝り方はすごい。学校の名簿は今ほとんどが男女混合名簿だから、読み方どころか性別もわからない名前が多い。少子化だから本当に親の期待や夢をひしひし感じる名前ばかりだ。
 虐待されて死んだ子どもたちも、ゲームのキャラクターのようなカッコイイ名前を持っている。少なくとも子どもの名前をつける時点では、親は夢や愛情を持っていたんだ。かえってやりきれないね。
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岸本葉子「女の底力、捨てたもんじゃない」

2005-08-04 14:03:12 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 サナダ虫さんが京極夏彦「姑獲烏の夏」のことをブログに書いていらっしゃて、それを読んだらむしょうに「姑獲烏の夏」を読みたくなって本屋に買いに行ったが無い。信じられないかもしれないが、本当に無い。
 で、せっかく来たんだからと、ぶらぶらしていたら、大好きな岸本葉子さんの最新刊エッセイを見つけた。すごく得した気分。
 やはり、用はなくてもたまには本屋をぶらぶらしてみるものだ。

 日常生活のエッセイだから、あっという間に読めてしまう。でも『ブックオフ』いきには決してならない。特別な事が書いてあるわけではない。本当にささいな日常の出来事を題材としている。ちょっと文章がうまい人なら、すぐ書けそう。でもこういうエッセイは誰にでも書けそうで、書けないのかも。
 とりとめの無い話だが、独特のユーモアがあって、あたりハズレが無く、楽しく読める。
コメント (2)
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