ケイの読書日記

個人が書く書評

有栖川有栖「火村英生に捧げる犯罪」

2009-08-27 13:10:30 | Weblog
 2002年から2008年にかけて発表された8つの中短篇が収められている。

 作者も「あとがき」で書いている通り『火村英生に捧げる犯罪』とは華やかさがある題名だが、内容は…うーん…。
 タイトルだけ見ると、火村と連続殺人鬼との対決をイメージするが、実際の内容は、チンケな殺人犯が姑息な手段を使って…という内容なので、タイトル負けしているね。

 『あるいは四風荘殺人事件』が一番、有栖川有栖らしいかも。トリックのアイデアはとても良いが、しかし長い間使われず、忘れられていたような仕掛けが、音も立てずスムーズに動くだろうか? とは思う。
 新本格だから、まっ、いいか。

 私が一番読み応えあると思ったのは『雷雨の庭で』
 売れっ子放送作家が、パソコンのモニターを使って相棒の作家と打ち合わせをしていた。ちょうどその頃らしい。お隣のダンナが不審死したのは。
 しかも、そのお隣と売れっ子放送作家は、モメにモメていたのだ。

 犯人は一人に絞られた。問題はどうやって犯行を行なったか。
 なるほど、こういう状況になって、こういう対応をしたら、こういう結果になった、ということか。無理なく理解できる。
 さすがは有栖川有栖。
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三浦展「女はなぜキャバクラ嬢になりたがるのか?」

2009-08-22 17:22:06 | Weblog
 あまりにも挑発的なタイトルだったので、いつも図書館で借りる私が買ってみた。
 帯にある『15~22歳の女子の2割がキャバクラ嬢になりたい!』って本当!?

 筆者はキャバクラ嬢になりたい女子が増えているその原因を、大きく2つあげる。

 ①『小悪魔ageha』というキャバクラ嬢とその予備軍向けの雑誌が部数を伸ばし、紙面に登場する人気キャバクラ嬢が着ている服が、あっという間に売り切れるほどの影響力を持つようになった。 
 またCDを出したり、テレビのバラエティ番組に出たり、華やかな職業として社会に認知されるようになった。

 ②は、もっと重要。明らかに格差社会が広がり、雇用情勢の変化によって、地方の高卒女子がまともに正社員になれないという状況が、キャバクラ嬢になりたい女子を増やしている。



 確かに①は思い当たる。「ラクしてお金が欲しい」「自分の若さをお金に換えたい」と考える女は昔から大勢いた。
 しかし、水商売・日陰の職業というイメージはなかなか払拭できず、やる人は少なかったと思う。
 それが今では、それこそ芸能界へのステップ、みたいな華々しさだ。

 ②も、確かに感じる。とにかく一般事務という職種が激減し、あっても派遣社員のやる職種になった。女子正社員になりにくくなった事は確か。


 しかし、リーマンショックはキャバクラ嬢にも大きな打撃を与えたはずだ。そこらへんの意識の変化を、筆者にはもう一度、調査してもらいたい。
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村上龍「わたしは甘えているのでしょうか27歳・OL」

2009-08-17 16:38:57 | Weblog
 月刊『SAY』連載の人生相談を加筆・修正したもの。相談者は『SAY』の読者という事で20歳代後半~30歳代前半の女性。

 暇つぶしに読もうと手に取ったが、あまりにも簡単にサクサクと読めてしまうので、暇つぶしにもならないほど。
 相談内容も、恋愛問題がほとんどかなと思ったら、大部分が仕事関係(会社での人間関係、待遇、収入、転職etc…)

 その中で一つ印象に残った相談と回答があったので抜き書きしておきます。


相談者
 テレビや雑誌に登場するカリスマ主婦などは、楽しそうで充実しているように見えて、うらやましく思ってしまいます。

 
回答者・村上龍
 あまりテレビや雑誌にヒョコヒョコ出てくる人は信用しないほうがいい。本当にハッピーで充実していたら、べつに出る必要は無いですから。
 これは偏見かもしれないけど、タレントでもないのにテレビに出る人ってすごく変な感じがするんです。
 ある意味で、自分のプライバシーを売っているわけだから、基本的に寂しい人なんです。そういう人に影響を受けるのは良くないと思う。
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岸本葉子「40代のひとり暮らし」

2009-08-12 16:51:31 | Weblog
 岸本さんは吉祥寺に住んでいるんだ。吉祥寺ってマンガ家が多く住む町というイメージがあるが、文筆業の人も多いんだろうか?
 本の最後の方に『岸本さんの愛する吉祥寺マップ』が載っている。いろいろ魅力的な情報が小さな字で書き込まれているが、そろそろ老眼が入りかけてきた私の目には読みづらいです。

 いいなあ。関東方面に行く用事があったら、吉祥寺に寄って「ああ、この吉祥寺の空の下で岸本さんは生活しているんだ」と感慨にふけってみたい。


 さて、この本は、岸本さんや彼女の愛用品を被写体にした写真集+エッセイ。

 彼女はとても丁寧に暮らしている。例えば、売られている液体類(シャンプーや台所洗剤)の容器は色が落ち着かないので、買って来てすぐ白い無地のボトルに移し替えるらしい。
 彼女らしいこだわり。

 すんでいるマンションは単身者向けでなく、ファミリータイプのものらしく結構広くて、彼女のお気に入りの家具が並んでいる。1Fなので、ちょっとした庭が付いていて草むしりが大変らしい。

 でも、素晴らしい夢のような40代女性のひとり暮らし。男の一人暮らしだったらこうはいかない。
 それを岸本さんは親の資産を当てにするわけでもなく、自分の力で手に入れたんだよね。
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島田荘司「御手洗潔の挨拶」

2009-08-07 10:11:49 | Weblog
 比較的初期の御手洗作品。四つの中篇が収められている。

「数字錠」  トリックよりも、なぜ御手洗と石岡がコーヒーを飲まず紅茶を飲むのかという理由が、これを読むと分かります。

「失踪する死者」  奇抜なトリックばかりに目が向くが、そもそもどうして常習犯罪者が、こんなリッチなお宅に招待されていたのか、それが不思議。

「紫電改研究保存会」  これを読めば、誰でもホームズの『赤毛同盟』を思い出すと思う。このカモになった男は新聞記者なのに、この話を読んだことないのか?!
 でも登場人物がユーモラスで4作品の中では一番好みの作品。
 そうだよ、くれてやりなよ。そんな物。

「ギリシャの犬」  うーん、あの暗号にはこういった意味があったのか。でも読者の中で、この暗号を解いた人がいるんだろうか?


 最後に島田荘司は「新・御手洗潔の志」を後書きとして載せている。
 御手洗潔を、テレビドラマの原作に欲しいと言われることが多いそうだ。ただ、島田荘司は、それをすべて断っている。その理由が書かれているが…よくわからんなぁ。彼の日本人論は。
 日本人は、日本人は…って繰り返し何度も書いているが、どうして1億3千万人いる日本人を一括りにするんだろうか。
コメント (4)
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