ケイの読書日記

個人が書く書評

芥川龍之介 「黒衣聖母」 青空文庫

2024-02-19 10:35:57 | 芥川龍之介
 「マリア観音」という観音像を直接見たことはなかったが、話には聞いていた。キリスト教が禁止だった江戸時代、周囲にクリスチャンだとバレないように聖母マリアのかわりに、観音様に似せたこのマリア観音を礼拝したという。そのマリア観音についての、ちょっとしたホラーを芥川が短編にしている。

 田代という友人のコレクターが私の家に来て、一体のマリア観音を見せ、それにまつわる怪異を語りだした。この像は、新潟県のある町の素封家にあったものだが「禍を転じて福とする代わりに、福を転じて禍とする縁起の悪い聖母」らしい。実際、そういう事実が持ち主にあった。まあ、その禍が起こったのは江戸時代末期の話だし、医療技術がなかった時代の話だから、病が流行すればバタバタ人が死ぬのはよくあることだろう。怪異というほどの事でもないと思う。

 私が気にかかったのは、マリア観音が新潟にあったという事。長崎じゃなくて? この稲見の先祖は、長崎から新潟に流れてきて、そこでずっとひっそり信仰を続けてきたのだろうか?江戸時代の間ずっと?!
 それともキリスト教の宣教師は、新潟まで布教に行って、そこで信者を増やしていったんだろうか?うーーーーん、分からん!誰か教えてくれ!

 でも、どうやって信仰を伝えていったんだろうね。表向きは仏教徒のはず。キリスト教を信仰していると死罪になるから、我が子であっても子供のうちは知らせないだろう。事の重大さを認識できる年齢になってから伝えるだろう。ひょっとしたら、死の間際に伝えることになるかも。その時、伝えられた子どもは、どういう反応をする?うすうす知っている子供もいるだろうが、驚いて困惑する子もいるに違いない。それどころか、迷惑だ、聞かなかったことにする子供もいると思うよ。

 だって、この新潟の稲見という素封家に代々あったマリア観音を、持ち主は田代というコレクターに渡した訳だからね。200年以上も隠れ忍んで信仰していた先祖代々の守り神を。信仰心なんてものは、時間がたつにつれて薄れていくものだ。
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