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ケイの読書日記

個人が書く書評

今村夏子「父と私の桜尾通り商店街」角川書店

2025-06-29 13:41:50 | 今村夏子
 表題作のほか5編の中短編が収められている。その中の1編「白いセーター」が、私の心に刺さった。

「わたし」フィアンセである伸樹さんと一緒に暮らしている。ホテルのクリスマスディナーを食べに行きたいと思っても、2人ともホテルに行ったこともなく、ホテルに着ていくような服も持っていない。つまり裕福ではない2人だ。
 ある日、伸樹さんの実姉から、子供会のクリスマス行事を手伝わなければならないので、子供たち4人を預かってほしいと言われ、預かることになった。4歳から小学校5年まで。

 子供が好きな人や、小さい弟妹がいて扱いに慣れている人、幼稚園の先生や保母さんといった仕事をしたことのある人は分からないかもしれないが、子どもの世話って難しいんだ。特に、この小説の主人公「わたし」みたいな非社交的な人には。私もそう。
 子供のストレートな物言いに、怖いと感じることがある。例えば、小説内にホームレスが出てくる。大人だったら、さすがにやんわりとディスる所を、子どもはストレートに「ものすっごい くっさあーいの」と言う。大人では言えないよね、このセリフ。
 その子供たちとのトラブルで「わたし」は悪者になってしまって、伸樹さんとの仲もギクシャクしてしまう。

 このフィアンセの実姉との付き合いが難しいんだ。同棲した当初、2人掛けのソファをくれるというので、「わたし」は伸樹さんと、お姉さんの住む団地に貰いに行ったのだ。ところがそのソファはボロボロで(そりゃそうだ!子供が5人もいるんだもの)苦労して運び込んだが、結局は粗大ごみに出すしかなかった。
 こういう経験ある人って多いんじゃないかな?義理の妹って便利に使われるんだよ。そんなボロボロのソファを、よく人に渡そうと思うよね。いくら実弟とその奥さんと言っても
あきれてしまう。

 とにかくギクシャクしていた伸樹さんとの関係も、元に戻ったみたいで良かった。こういったおっとりした人にとっては、パンチのある義実家だと思うけど、末永く幸せに暮らしてほしい。
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益田ミリ「小さいコトが気になります」ちくま文庫

2025-06-11 16:13:30 | 益田ミリ
 ミリさんの作品は昔から好きで、よく読んでる。創作も多いけど、自伝的なコミックエッセイも多く、彼女が正社員で働いていた大阪の会社を辞め、あてもなく上京してきた時の顛末を書いた本も読んだなぁ。そうそう、この「当てもなく上京」という所がポイント。アイドルになりたくて、女優になりたくて、作家になりたくて上京したわけではない。
 強い意志をもって上京した人って多いと思うけど、彼女はガツガツしなくても成功した。そのゆるさが良いのかも。
 ちょっと前、取ってる新聞の新刊売り上げランキングの1位に彼女の名前があった。出世したなぁ。本が売れなくて困っているこの時代にね。そうだ!何年も前だが、ミリさんの川柳エッセイが、その新聞の夕刊に連載されていた事もあったなぁ。

 今、地方の若い女性が東京に流入し、でも東京は極端に出生率が低いので、それが少子化の大きな原因になっているというニュースをやっていた。そうだろうなぁ。でも、キラキラした楽しそうな場所があったら、そこに行ってみたいと思うのは当然のことで、仕方ないんじゃないかなぁ。だから東京都が出生率上げてくれたら万々歳なんだけど。
 あんなに若い男女が集まっていて、どうして子供が生まれないんだろうね。東京に実家がある人と地方出身者で、婚姻率に差があるんだろうか? そこら辺を研究している社会学者っているのかな? それこそ気になります。

 でもこのコミックエッセイを読んで、その理由が分かる。
 帝国ホテル内でパンケーキを美味しく食べ、ホテルニューオータニでスーパーモンブランをいただき、ゆで卵でない卵焼きの辛子がきいたサンドイッチをお土産に持ち帰り、渋谷のスクランブル交差点を先頭になって颯爽と歩き、東京日比谷の宝塚劇場で胸をキュンキュンさせながらお芝居を観る。
 本当に楽しそう。一人暮らしを目一杯楽しんでいるんだもの。同居人がいる生活ってめんどくさくなっちゃうんだろうね。
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中野慧「文科系のための野球入門」 光文社新書

2025-05-29 14:50:36 | その他
 4月5日に丸善で買って、読み終えたのが昨日5月28日。とにかく読むのに時間がかかった。結構、面白い内容なのにね。
 私の方が年度代わりで仕事が忙しかったのと、スマホゲームに一生懸命で本がなかなか読めなかったから。それにgooブログのサービス終了の通知が来て、愕然としたし…。利用者がどんどん減っていって大丈夫かなあと心配していたけど、NTTの関連会社がやっているんだから、よもや無くなることはないだろうと思っていたが、無情ですね。

 そうそう「文科系のための野球入門」の感想を書かなければ。「野球部はクソを解剖する」というサブタイトルがついている。普段なら、私が絶対手に取らない新書だけど、友人の親戚の人が書いているらしく、友人に読んでみてと勧められて購入。
 野球の事が好きでもないし、詳しくもないけど、比較的楽しく読めた。まあ、私くらいの年代だと(昭和33年生まれ)サッカーより野球の方がなじみがある。三男が、小中高と野球をやっていて、練習時のお茶当番が大変だった。
 ただ、高校野球の親の熱量にはついていけなかったなあ。田舎の公立高校の野球部なのに、なぜそんなに熱心なの?! そんなに選手たちを強力に応援したいなら、どうして私立の強豪野球部に子供を入れなかったのさ、なんて周囲に聞こえないようブツブツ言っていた。きっと私立の強豪校では競争が激しすぎて芽が出ないから、弱小の公立高校野球部で主導権を取ろうとしたんだろうね。
 ああ、いやだいやだ。子どもは熱血野球少年でも、母親の私はオタク女子です。

 そのオタク女子でも楽しめる章もある。旧制高校ではサブカルチャーとして野球は流行したんだね。アメリカさんが持ってきた文化だもの。ハイカラだったんだ。それに、大正時代に福岡の女学校で女子野球部があったんだ。それをモデルにした「大正野球娘」というアニメも2009年に放映されていた。知らなかった!
 ほかにも、ジャニーズの亀梨君と野球の話とか、夏の甲子園の優勝投手が闇バイトに誘われ強盗した、とか盛りだくさん。
 皆様、どうぞご一読あれ!
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藤野千夜 「団地のふたり」 双葉文庫

2025-04-07 14:05:45 | 藤野千夜
 先日、藤野千夜の「じい散歩」を楽しく読んだので、今度この作家さんの作品を見かけたら必ず読もう!と考えていた。「じい散歩」もゆるゆるなお話だから、この「団地のふたり」もゆるゆるの話だろう、藤野千夜先生はコージイ小説の人かしら、なんて思っていたら…芥川賞作家なんだ。2000年「夏の約束」で第122回芥川賞を受賞している。 
 いやぁ、不勉強で申し訳ない。知らなかった。読んでないし。ごめんなさい。おみそれしました!

 この作品は2024年にNHKでドラマ化されている。見てないけどそれは知っていた。
 桜井奈津子(なっちゃん)と太田野枝(ノエチ)は、棟は違うが同じ団地に住んでいて、幼稚園からの幼馴染。なっちゃんは家を出てイラストレーターとして売れっ子になり羽振りの良かった時期もあったが、今は実家に戻り、フリマアプリで不用品を売買し小銭を稼いでいる。
 ノエチは子どもの時からとても成績が良く、大学院に進学して大学教員として就職しようとしたが上手くいかず、大学の非常勤講師を掛け持ちしている。一度、事実婚?していた時もあったが、今では実家で両親と同居している。

 この50になったばかりの独身二人組の、経済的には厳しいがのんびりした生活を書いている。特になっちゃん!! ノエチは職場の人間関係に疲れ切って、なっちゃんの家でごろごろ充電している。非常勤なので賃金は安く雇用は不安定でいつ首を切られるか分からない。でも不平不満は、低賃金でも不安定な雇用でもなく職場の人間関係なんだよね。いかにも日本的というか…。
 一方、なっちゃんは元気いっぱいなのだ。イラストレーターとして稼いでいた時の貯金がどっさりある訳でもなさそう。依頼されて近所のおばちゃんたちの不用品を売って、売り上げを折半している。乗り物に極端に弱いので旅行には行けない。基本自炊ですごく質素らしい。実家住まいで家賃はいらないし、服はめったに買わない、買ってもフリマアプリで。アンタ、国民年金はらってる?と心配になるが、今現在はストレスフリーの生活。

 母親は親戚の介護で田舎に帰っている。近所のおばちゃん達から「なっちゃん、いい人いないの?」と詮索されることもない。たぶん30代ごろまではあれこれお節介されたと思う。ある意味、この二人は理想的なフレンドシップ生活を送っているんだと思う。羨ましいと感じる人は多いだろう。先の事考えると不安だが、明日には明日のかぜが吹くよ。
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田中慎弥「第三紀層の魚」集英社

2025-03-26 11:07:44 | その他
 先回の「共喰い」では、やりたい盛りの男子高校生が主人公でゲンナリしたが、今回の「第三紀層の魚」では、小学校4年生の男の子・信道が主人公。
 釣りが大好きで、ヒマがあれば友達を誘って近所の海に行っては釣りをしている。友人たちが次々と塾に行くようになり、子ども心にいろいろ考えることが多くなっている。父親は早くに病死し母子家庭だが、近くに父親の実家があり、よくそこに預けられていた。今でも遊びに行く。

 この信道のお母さんがしっかりした人なのだ。お母さんはうどん屋で懸命に働いている。その働きが会社に認められ、東京に初出店する店の店長に抜擢される。そして信道を連れて、東京で働いてみようという気になっている。
 信道は、今でも学校の勉強に遅れ気味なのに、東京の学校でついていけるか、東京でも友人ができるか、心配される。でも信道なら、釣りがきっかけで友人の輪が広がっていくんじゃないかな? そんな気がする。

 私も私の周りも、誰も釣りをやらないので、イマイチその面白さが分からない。それに釣り道具の名称もはっきり理解できないので、ぼんやり想像するだけ。でも一番読むのに困るのは、魚の名前。魚って出世魚とかいって、成長に伴い名前が変わるでしょ?それに地域によって呼び方が違うから困るんだよね。
 作中にチヌ(信道の曽祖父はチンと呼ぶ)信道にとって思い入れの強い魚が出てくるが、クロダイの小さいのなんだね。小さいクロダイと記述してほしいね。ホント。

 この信道の曽祖父はかなり高齢で死にかけている。多分、大正の初めの生まれだと思う。3回赤紙が来て3回召集された。そのせいか勲七等の勲章をもらっている。
 この爺さん、国粋主義者という訳でもないだろうに、日の丸が大好きで、祝祭日になると必ず日の丸を掲揚していた。ああ、日の丸。今の若い人は意味が分からないだろうね。昔は祝祭日になると、玄関のそばに日の丸を掲げたのよ。私も覚えているなぁ。昭和40年ごろまでかなぁ。今、見ないね。
 とにかく、その日の丸を家人が失くしてしまったと大騒ぎ。でも爺さんの葬式の時、棺桶の中にその日の丸を広げて入れた。爺さん、さぞ本望だったろうね。
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田中慎弥 「共喰い」 集英社

2025-03-04 14:30:02 | その他
 第146回(平成23年度下半期)芥川賞受賞作。ずいぶん前の作品だが、受賞当時話題になって、その時、読みたいと思ったがそのままになっていた。先日、ブックオフで見つけ購入。

 性行為の最中に、女を殴ったり首を絞めたりすると、性感が高まるという父親を持つ男子高校生は、自分も父親のようになりはしないかと恐れている。男子高校生の両親は、父親のその暴力のせいで離婚し、彼は父親方に引き取られている。こんなクソオヤジでも、相手をする女はあちこちにいて、今は小料理屋の女が、彼らと同居している。
 住居は海に近い川沿いで、海水と淡水がまじりあい、魚の種類が多い。男子高校生は釣りが好きで、ウナギを釣り上げたとき、釘の両端がウナギの肉を突き破り、ウナギの頭が裂けて崩れるのに性的興奮を覚える。

 こういった記述を読むと、神戸の首切り事件を思い出すなぁ。ほら、14歳の男子中学生が、弟の友達の知的障害がある小学生を殺し首を切断、近くの中学校の校門の前に置いた事件。あの加害者も、小さいときから小動物を殺すのが好きだったんだろう。野良猫を捕まえて殺し解体するのに性的快感を覚え、やめられない。殺した猫の舌を切り取って瓶に詰め、自室の屋根裏にコレクションしていた。そして対象が、小動物から小さな子供へ移っていった。
 加虐行為と性的快感が結び付くと、本当に困る。

 女の方もちゃんとしなくちゃね。殴られて女も気持ちいいだろうと、カン違いする男もいるようだから、ハッキリNO!と言う。そうして法的な措置を取る。
 この男子高校生には一つ年上のガールフレンドがいる。何度も性行為をするが、彼はいつか彼女を殴るんじゃないかと恐れをいだいている。どうだろうなぁ。こういうのは治るんだろうか?一定の割合でいるんだよね。
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原田ひ香 「老人ホテル」 光文社

2025-02-24 09:38:53 | 原田ひ香
 最初にこのタイトルを見たとき、なんてセンスがないんだ!これじゃ誰も手に取らないよと思ったが、帯に「節約、投資、女の誇り。老女が授けてくれたのは独りでも生きていける希望。秘密を抱えた2人の投資版マイフェアレディ」とあったので、ハウツー本のつもりで読んでみることにした。

 後半は、ちょっとミステリアスな展開で面白かったよ。
 主人公は日村天使(ひむらえんじぇる)限りなくグレーに近い生活保護大家族で生まれ育った。両親と7人兄弟姉妹。小さいときには「仲良し日村さん大家族」としてTVで取材を受けていた。でも弱肉強食の家庭で、決して仲良しではない。別に住んでいる祖父母も生活保護を受給。天使の兄や姉も受給していて、三世代受給のツワモノ。
 末っ子の天使は、そこから抜け出しガールズバーやキャバクラで働いていたが、たいして稼げない最底辺キャバ嬢。そのキャバクラが入っていたビルのオーナーが綾小路光子で、後に天使に不動産投資の手ほどきをする78歳の老女。
 天使は、光子がビジネスホテルに隠れ住んでいるのを見つけ、そのホテルの清掃作業員として働き始め、光子に「極貧生活から抜け出したい」と訴える。最初は相手にされなかったが、次第に信用されるようになる。

 それにしても、ビジネスホテルと言ってもホテルだもの、お金がすごくかかるんじゃない?と思うが、連泊するとそれなりに安くなるみたいね。それに水道光熱費やお掃除料金は宿泊費に含まれているし、駅から近いだろうし、食事はスーパーで買って来たものをチンすればいいし、それほどお金はかからないかもしれない。

 不動産投資かぁ…。時たまTVでいっぱいビルを持っている女性オーナーが出てくるが、資産も多いが借金も多い。家賃を踏み倒されて夜逃げされたらどうしよう…なんて考えると眠れなくなりそう。
 綾小路光子が、稼いだお金を次の投資にまわすために子供たちに使わせなかったので恨まれた、という話はわかるような気がする。こんな立派なビルのオーナー一家なのに、なぜ小遣いがないんだ、大学進学させてくれないんだ、と不平不満を持つのは当たり前かも。それが断絶の原因なんだろう。
 お金は無いと困るが、あっても扱いが難しいねぇ。
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藤野千夜 「じい散歩」 双葉社

2025-02-04 14:13:06 | 藤野千夜
 帯に「これぞ現代のスーパーシニア小説!」とあるが、本当にそう。なんていったって主人公の明石新平と妻の英子二人合わせて、もうすぐ180歳なのだ。3人の息子は50歳前後で全員独身。まさに現代の縮図。

 この新平は、田舎から東京に出てきて小さいながらも工務店を経営。景気の良かった時もあったが、なかなか商売が難しくなってきたので会社を畳んで、今は悠々自適の生活。90歳近いが健康で食いしん坊。健脚で頭もしっかりしているので、毎日あちこちに散歩に出掛け、電車に乗り、気になっている話題のレストランや食べ物を楽しみ、女の子にちょっかいをかける。この年代の人に珍しく、和食よりも洋食が好きなので、お昼ご飯を外で食べるのが何より楽しい。そして工務店を経営していただけあって、特徴のある年代物の建物をスマホで撮るのも好き。
 つまり、東京は楽しいことがいっぱいあるのだ。今、若い女性が東京に行ってしまって地元に残らない。子どもを産める年齢の女性が地方にあまり残らないから大問題!! これが少子化の原因だ!とエライ人たちが騒いでいるが、このじいさんでも楽しいんだもの。若ければなおさら楽しいだろうね。だから行った先の東京で子どもを産んでくれたらいいんだけど、それが難しいみたい。
 だって、新平の3人の息子たちも裕福な育ちで、実家が東京にあるんだもの、すぐ女の子を見つけて結婚しそうなものなのに、なぜかそれが出来ない。地方出身で東京に実家のない女の子たちにとって狙い目だと思うけどなぁ。

 そうそう、私がこの新平じいさんに興味をひかれる理由が分かりました。新平じいさんは、たぶん大正15年生まれ、私の父と同い年なんだ。だから中途半端な戦争体験の話などもよく似てるなぁと思う。赤紙が来て入隊したけど、よくわからない訓練をやっているうちに戦争が終わったのだ。戦況が極めて悪く、外地に行こうにも船が沈められてしまって行けず命拾いした。
 その後の高度経済成長時代、皆が今日より明日の方が豊かになると信じて働いていた時代の雰囲気なども、よく書けていると思う。

 新平じいさんは、健康なので医療費を使わず、散歩するときでもお金があるので散財する。こいいったスーパーシニアが大勢いればもっと景気も上向くだろうね。
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法月綸太郎 「法月綸太郎の消息」 講談社

2025-01-27 09:47:16 | 今村夏子
 皆様、本当にお久しぶりです。お正月に、gooサイトがサイバー攻撃にあい利用できなくなりました。すぐに復旧したところもあったみたいですが、当方では10日以上かかりました。その後も、私の体調がイマイチで、気になってはいたのですが、更新はのびのび。でも今後は、月に2回ほど更新したいと思っていますので、よろしくお願いします。

 法月綸太郎シリーズは昔から好きで読んでいたのですが、これこそお久しぶりですね。「綸太郎、あんた、生きてたんだよね、」と彼の肩でも叩きたくなります。
 この中編集には、いつもの、父・法月警視が持ち出す難問を、息子の推理作家・綸太郎が鮮やかに解き明かす、おなじみの展開2編も含まれていますが、他の2編はちょっと異色。
 ホームズの生みの親コナン・ドイルとポアロの作者アガサ・クリスティ。二人の創作の背景を法月綸太郎が推理していきます。

 まず、ドイルの方ですが、ワトソンではなくホームズが書いたという形式を取っている「白面の兵士」「ライオンのたてがみ」を俎上に載せている。どんな話か忘れていたので私も読み返したけど、あまり出来は良くない。
 私は、ホームズシリーズって推理小説としてそんなに優れているとは思わないなぁ。有栖川有栖とか法月綸太郎の最盛期の方が、よほど素晴らしいと思う。ホームズ物がここまで時代を超えて読み継がれているのは、ホームズのキャラや、ワトソンとの友情、そしてヴィクトリア王朝時代の雰囲気が愛されているからだと思うよ。
 チェスタトンとドイルのやり取りまで出てきて、ちょっと深読みのしすぎ。マニアックな人には楽しいかもしれないね。

 一方、クリスティの名探偵ポアロについても、ポアロの双子の弟か兄かが取りざたされる。そういえば、小説内にそんな記述があったような…。実際、本人は登場してないが名前だけ出てきたような…。ただホームズの兄マイクラフトは作品に何回か登場したが、ポアロの双子の弟か兄は登場していない。そんなに大事なこと?この本の中では重大なことのようです。
ああ、重箱の隅をつつくような事ばっかりやってないで、もっと普通の推理小説が読みたいよお。

P.S. ポアロの助手ジョージという記述が出てきて焦る。ポアロの助手ってヘイスティングじゃなかった? ああ、助手じゃなくて従卒ですね。訳は難しい。
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絲山秋子 「御社のチャラ男」 講談社

2024-12-11 15:43:28 | その他
 「御社のチャラ男」というからには、A社のチャラ男、B社のチャラ男、C社のチャラ男…というように、各々の会社のチャラ男たちの品定めでもするのかしら?と思って買ったが、どうもチャラ男は、ジョルジュ食品の三芳部長一人のことらしい。
 しかし…うーーーん、この人、チャラいかなあ。

 縁故採用で40歳くらいで入社して、いきなり部長。前は何をやっていたかといっても、大した事はやってない。アメリカの西海岸で自分探しをしていたなんて言うと、人は感心したような顔をするが、実際いたのは半月にも満たない。もちろん英語もしゃべれない。
 日本に帰ってきてから、あちこちでバイトをしていた時に知り合った、資産家の一回り年上の女性と、意気投合して結婚。その奥さんの従兄弟がジョルジュ食品の社長だ。

 三芳部長は仕事ができない。でも、できなくたっていいんだ。部長だから。仕事は叩き上げの部下がやってくれる。三芳部長は、説教するだけ。そして、働き方改革と称して、さっさと帰り、休みもきちんと取る。ワークライフバランスを実践して、部下の手本となりたいみたいだ。

 こういう人って、どこの組織にもいる。チャラ男と特筆すべき人とも思わない。それよりも、筆者の絲山秋子さんは、男に対して辛すぎるような気がするな。例えば、総務のかなこさん(24歳)は、中途入社してきたイケメン社員に最初はときめいていたのに、彼が宴会で下ネタを連発したらしく、評価がダダ下がりだった。
 でもアルコールが入って「うんこ」「ちんこ」を連発するのは、女の人にも結構いるよね。異性にボディタッチが多くなるのも、男性だけではない。

 絲山さんは、早稲田の政経を出て一流企業(住宅設備機器メーカー)に入社し、総合職営業として各地を転勤してまわった。すごく優秀な人だから、男だから出世が早いとか、ポジションが自分より上、という例をたくさん経験してきたんだろうね。

 ああ、ごめんなさい。自分はそういった経験がないからか、あまり共感はできないな。たぶん私は、性別に関係なく無能に分類される人間だからだと思う。
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