ケイの読書日記

個人が書く書評

「ヒトラーの娘たち」レビューその③

2021-12-30 10:04:23 | 翻訳もの
 前回のブログの続きの続き。これで完結するつもり。
 つまり筆者が言いたいことは「ホロコーストに加担したとして、収容所の看守や女医や看護師たちは、戦後法によって裁かれた。しかし、収容所の所長や看守の妻や恋人あるいは事務職員たちは、問題にされていない。彼女たちにも罪はあるはず」という事らしい。
 実際に自分の手でユダヤ人を殺害した女の人たちは、生き残ったユダヤ人たちによって告発されているが、パーセントとしては本当に少ない。
 だいたい、アウシュヴィッツの所長の妻も「夫が収容所で何の仕事をしていたか知らない。自分はただ、夫にくつろげる家庭を提供していただけだ」と申し開きして罪には問われなかったという。
 そりゃ、ゲシュタポの事務所の女性職員までも刑務所に入れていたら、ドイツの戦後復興は大幅に遅れただろうよ。でも、どういう気持ちで彼女らが、収容所に送られる大量のユダヤ人の名前をタイプしていたか、興味あります。何も考えないようにしてたんだろうね。何も考えないようにするのが得意なんだ。そうじゃなければゲシュタポの事務所で働こうとは思わないよ。ドイツ国内でも恐怖の対象だったんでしょう?

 読み終えていろいろ考える。ドイツやオーストリアにいたユダヤ人って、本当に裕福で優秀な人が多いのに、どうしてこうなっちゃったのかな? ナチスが台頭してくる時に、せっせと献金したユダヤ系企業や大金持ちのユダヤ人も多かったらしい。こんなに献金しているんだもの、ナチは反ユダヤを掲げているが、自分だけは大丈夫って思って、国外脱出しなかったんだ。
 でもナチスは知ってしまった。献金でお金を得るより、強制収容所に送り込んで財産を没収する方が、うんと大金が手に入るって事に。

 ああ、本当に連合国側が勝ってよかった。ドイツや日本が負けて本当に良かった。(日ソ不可侵条約を一方的に破棄したソ連には、いまだにムカつくけれど)
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「ヒトラーの娘たち」レビューその②

2021-12-18 13:46:29 | 翻訳もの
 前回UPしたレビューの続き。ヒトラーが1933年に政権を獲得し、1939年オーストリアを併合し(オーストラリア人は大喜び)ポーランドに侵攻、さらに東のウクライナやベラルーシなどに領土を拡大し、ソ連まで広げようとしていた。
 ヒトラーは自著の中で「ドイツにとってロシア(当時はソ連)は、イギリスにとってのインドと同じ」なんて書いている。すごく図々しい。でも、ヒトラーにとって、ロシアは劣等なスラブ人の国だから搾取されて当然、ゲルマン人に奉仕するのが当たり前なんだろう。
 イギリスがインドでやっている同じことを、なぜ我々がやってはいけないんだ?と憤慨していたかもね。当時、軍事的に強い国が弱い国を植民地化する帝国主義の思想は、広く世界に浸透していた。
 日本人も、偉そうな事は言えない。日本が満州でやった事も同じ。ただ、もう少し時間をかけてやっていた。

 考えてみれば、ドイツ第3帝国がヨーロッパ大陸の覇者になっていた時期って、結構、短いんだ。1939年9月のポーランド侵攻が第2次世界大戦の始まりとされ、1945年4月30日にヒトラーが自殺、5月8日に無条件降伏してるから5年半か…。
 1940年ごろから、ナチの信奉者たちがどんどん東のポーランド・ウクライナ・ベラルーシなどに入植していった。大農園を没収し、現地人オーナーを追い出し、使用人として現地人をこき使って、まるで領主様のような生活が出来たんだ。そりゃ、ハイル ヒトラーだよね。総統さまさまだよ。夢のような王侯貴族の生活が楽しめたんだから。2、3年は。
 ヒトラーは最初スターリンと手を結び、ソ連と平和条約を結んでいたが、1941年にそれを破棄して突如ソ連に侵攻、最初のうちは優勢だったが、1943年スターリングラードで大敗し、それからはどんどん支配地域を失って追い詰められていく。
 イギリスとの戦いも、最初は有利に進めていたが、これも早々に逆転され、連合国側がノルマンディ上陸作戦でフランスに上陸してからは、ドイツは窮地に追い込まれる。空爆でベルリンは瓦礫の山。

 西からは連合国軍、東からはソ連軍が迫ってくる。ドイツ兵は、ソ連兵じゃなくて連合国側に捕まりたかったみたいね。独ソ戦があまりにも悲惨だったので、復讐されると思ったんだろう。
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「ヒトラーの娘たち」 ウェンディ・ロワー著 武井彩佳監訳 石川ミカ訳

2021-12-11 10:45:11 | 翻訳もの
 ヒトラーの実際の娘という意味ではなく(ヒトラーは結婚しなかったし子どももいないはず)彼の影響をうけた同調者という意味。「ホロコーストに加担したドイツ女性」というサブタイトルが付いている。
 こういったナチ関係の本を読むとき、いつも思うんだけど、そもそもアーリア人種とかユダヤ人とかの定義が曖昧。金髪で青い目がアーリア人種の典型となっているが、そもそもヒトラー自身、金髪でも青い目でもない。
 だいたいプラチナブロンドって、本当に数が少ないらしいね。(だからこそ価値があるんだろうけど)あのマリリン・モンローだって、本当はブロンドではなく茶色の髪を染めていたとか。
 ドイツが占領したポーランドなどで、金髪で青い目の子どもをさらって、ドイツに連れて行きドイツ名を与え、ドイツ人として子どものいない夫婦に養子に出したそうだが、ポーランド人はスラブ系だから、ヒトラーからすれば劣等民族のはずなのにね。もうメチャクチャ。外見から人種を識別する事なんか出来ないよ。

 ナチ政権下では学校で、典型的なユダヤ人の骨格や容貌などを教えたらしいが、ハッキリした特徴なんて分かる訳ないよ。ユダヤ人国家が滅亡して2000年たってるんだから、いろんな民族と混血してるのが当たり前。結局、ユダヤ人というカテゴリーは、ユダヤ教を信じる人たちの事なんでしょ?
 ユダヤ教を捨て、カトリックやプロテスタントに改宗した人たちは、ホロコーストを免れたんだろうか? その辺の疑問が、昔から燻ぶったままです。

 とにかく、この本を読み始めてまだ1/4ほどなので、この先じっくりと読んでいきたいです。(なにせ12月は主婦にとって本当に忙しい時期なので)
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岸本葉子  『捨てなきゃ』と言いながら買っている  双葉社

2021-12-04 09:39:40 | 岸本葉子
 この「お買い物エッセイ」シリーズ、すごく好き! 日常エッセイ、読書エッセイもいいが、買い物に女の人の本質が現れる。その人の事がよく分かる。

 岸本さん、ネット通販のヘビーユーザーなんだ。お気に入りのブランドがあり、デパートにせっせと通って店員さんと仲良くなる話を以前よんだから、他のものはともかく、洋服は実際に見て試着して買う事がほとんどだと勝手に思っていたが、オンラインでぽちっとクリックして買う事も多いらしい。
 で、そうなると、どうしても避けて通れないのが返品手続き。相手側のミスで、注文したら違うものが届いたなら返品は当たり前だが、こちらの都合で返品でも、通販大手はOKだと思う。ただ、返品OKとしても、実際には気が引けて、返品しない人が多いんじゃないだろうか?

 通販はどうしても、届いてから「思ってたのと色がビミョーに違う」「サイズが大きい」などなど不具合が出てくるんだよね。だから利用頻度が多い人ほど、バンバン返品していると思う。
 そういえば、ちょっと前、靴の通販のCMがよく流れていたような。ほら、デビィ夫人の。靴って、洋服以上に通販で買うのが難しい。いくらデザインが気に入っても、靴に足を入れた時の微かな違和感は、たいてい正しい。だから絶対、試し履きした方が良いんだ。
 靴の試し履きし放題をやってる通販もあるみたい。例えば、お客は気に入った靴を5足送ってもらって、家で試し履きし、良いなと思う靴を買って他は返品。もちろん全部気に入らなければ、全て返品OK、なんて買い方もある。
 でも、お客様が丁寧に試してくれればいいけど、乱暴に扱ったら…トラブルにならないかな?

 私が大好きなこの「お買い物エッセイシリーズ」は、この「捨てなきゃと言いながら買っている」がラストになるらしい。うーーーん、残念!「小説推理」に連載されていたらしいが、今度は「暮らしの手帳」にでも鞍替えして、お買い物エッセイを続けてほしいなぁ。
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