ケイの読書日記

個人が書く書評

三浦しをん 「のっけから失礼します」 集英社

2023-01-10 14:17:04 | 三浦しをん
 三浦しをんの小説も好きだがエッセイはもっと好き!女性誌『BAILA』に2014年6月号から2019年5月号まで連載されたもの。

 しをんさんは1976年東京生まれ。だからこのエッセイには、しをんさん30歳代の終わりから40歳代にかけての日常生活が書かれている。彼女のエッセイには恋愛的要素がほとんどなく、あったとしても彼女の脳内でのことなので、心穏やかに読むことができる。時事ネタもあまりなく、ヨタクのしをんさんが映画やお芝居やコンサートや宝塚を見に行ったり、マンガや本の感想を色々書いている。しをんさん、楽しそう。
 ちょっと意外だったのは、この人、ゲームをあまりやらないんだね。ゲームの事は皆無。ほぼ同世代の津村記久子さんはゲームが好きで、エッセイにも小説にもゲームが出てくるけど。ただ、しをんさんがお気に入りのゲームを見つけちゃったら大変だろうなぁ。生活に支障がでるほど、のめり込むだろうな。だからやらない方が良いかも。

 彼女のエッセイの特徴だけど、家族がよく登場するのだ。父、母、弟。しをんさんは実家から歩いて数分の所に住んでいる。母親がエッセイに登場するのは、女性エッセイストのあるあるだが、弟さんが頻繁に登場するのだ。そう、家族の仲がとても良いのだ。なんせ、エッセイ本の中に、奈良に家族旅行する話があるし、別に住んでいる弟さんが、お母さんに高級ケーキをたくさん買って持って行く話もある。昔からこの弟さん、お友達と一緒に、しをんさんのエッセイに登場する。年齢が近い姉弟らしく、仲が良いんだ。
 そして弟さんは、体を鍛えるのが大好きらしい。お正月に家族で鍋を囲んで食べていたら、弟さんが暑い暑いと服を脱ぎ、その時チラッと見えた腹筋が割れていたらしい。見た目がカッコいい人なんだろう。だから自分では意識してないだろうが、しをんさんは弟さんを自慢したいような気持があるんじゃないかな?
 で、この弟さんも40歳くらいだろうが、独身なのよ。WHY?

 有名小説家を姉に持つ弟って、モテるんじゃないの? 私のカン違い? 群ようこさんのエッセイを読んでる時も、そう思う。群さんのエッセイには弟さんの事はあまり出てこないが、それでもたまに登場する。「ねえ、あの人、有名な小説家の〇〇の弟なんだって。やっぱりちょっと違うよね」なんて噂され、弟さんに近づいてくる女の子っているんじゃないかな? それとも、そういう女の人が多すぎて、かえって煩わしいんだろうか?ちなみに群さんの弟も独身。
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三浦しをん 「むかしのはなし」 幻冬舎文庫

2018-12-23 11:33:32 | 三浦しをん
 日本の昔話を、三浦しをんが現代風にアレンジした短編集と思って読んだが、どうも日本昔話は関係ないような気がするなぁ。
 それより「3ヵ月後に隕石がぶつかって地球が滅亡し、抽選で選ばれた人だけが脱出ロケットに乗れる」というSFでよくある、重苦しい状況が全編を流れている。どうする?!人類!

 先日読んだ、たもさんの『カルト宗教 信じてました』の中でも、小学生のたもさんが、世界の滅亡を心底恐れていたことが描かれている。彼女の小学校の頃、ノストラダムスの大予言が流行っていて、小学校の教室では、その話でもちきりだった。
 それが、「エホバの証人」の教義 ハルマゲドンで世界は滅亡し、エホバを信じる人たちだけが生き残る という教えに関心を向けさせる引き金になったのだ。

 でも、世界中のほとんどの人が死んで、エホバの証人だけが生き残った世界で「神さま、ありがとうございます。ほとんどの人は死んでしまったけど、私は生き残ることができました」なんて神さまに感謝する事ができるんだろうか?周囲には累々と死体が積み重なっているのに?
 自分たちだけが生き延びて、そんなに嬉しい?

 
 3ヵ月後に隕石がぶつかって地球が滅亡する…案外、地球と運命を共にしたいと思う人が多いんじゃないかな? そう考えるのは、私が年を取ったから?
 1000万人しかロケットに乗れないとしたら、若い人に乗ってもらいたい。特に出産可能な若い女性。そして、子どもたち。高度な技術や能力を持った若者。年寄りは、船長みたいに船と運命を共にするのよ。今までお世話になった地球とともに。

 そうそう、この中の第5編「たどりつくまで」に興味深い箇所があった。
 地球が滅亡するまで、あと2か月という中で、1人のタクシードライバーが淡々と働く。客はうんと少なくなったが、それでもいるので車を走らせる。仕事を終え部屋に戻ってもすることは特にない。パソコンで営業日誌を付けるが、翌日にそれを観葉植物に読み聞かせるのだ。
 地球が滅亡することを植物は知らない。植物を不安にさせたくない。毎日、声という名の空気の振動を植物に与える。

 いいなぁ、この習慣!! あまりにも静的だけど。自分の老後を考える。我が家のみい太郎が死んだ後の事を考える。猫でも20年近く長生きすることがあるから、次の猫は気楽に飼えないよ。植物にシフトするか…。だっこして、ふわふわの毛に触る事はできないけど。
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三浦しをん 「桃色トワイライト」 新潮文庫

2018-12-06 09:31:08 | 三浦しをん
 面白い!!! 1976年生まれのしをんさんの20代終わりころの日常を綴ったエッセイ。先回呼んだ『乙女なげやり』より少し後。私の中学・高校時代に、しをんさんのような同級生がいたら、仲良くなれたのに…なんて妄想している。私の方が18才も年上だけど。

 エッセイを読んで驚かされるのは、仕事関係では無い同年代の友人が本当に多く、頻繁に会っていること。彼女は私立の中高一貫の女子校を卒業していて、結束が強いんだろうか? さぞ楽しい学校生活がおくれたんじゃないかと思う。うらやましい。

 女性の20代終わり頃って、同級生が次々結婚したり出産したりと忙しくなり、今まで仲良しでも徐々に疎遠になることが多いのだ。
 しかし、しをんさんと彼女の周りの人たちは、オタク道をバク進。よくもまあ、こんなに真性オタクが集まってるな、と思うほど。脳内で十分楽しんでいるから、現世での喜びはさほど追求しない。

 ずいぶん前に、しをんさんと中村うさぎさんとの対談を読んだことあるけど、誰が企画したのかな? 彼女は中村うさぎとは真逆のタイプであり、正反対の道を追求している。
 例えば、映画の試写会で、大ファンのオダギリジョーと引き合わせてもらえるチャンスがあった。しをんさんは、仮面ライダークウガを観て、オダギリジョーの大ファンになり、このエッセイでもオダジョーの事ばかり書いてあるのだ。
 でも、しをんさんは会うのを断る! ビックリでしょ? でも、その気持ち、わからなくもない。同じオタク気質の私としては。
 しをんさん本人は「断食明けに、いきなり満漢全席を食ったら、腹下しちゃうだろ」と答えているけど、ビミョーに違うと思う。生身のオダジョーに会いたくないんだよ。脳内のオダジョーが壊れてしまうから。

 また、他の章では友人と『物陰カフェ』を考案する。女性客を狙ったコスプレ喫茶。かっこいい男の子たちを集めたカフェだと、ホストクラブと同じになってしまう。あくまでもオタク女性たちのための『物陰カフェ』
 具体的には、店員さんである素敵な殿方とおしゃべりして親しくなろうとするんじゃなく、かっこいい男性たちの仲良く働く様子を物陰から見守るカフェ。従業員と客との会話は禁止。

 なるほどなるほど。ただ、いくら容姿は優れていても生身の人間。嫌な部分だっていっぱいある。自分の脳内で考えているように都合よく行動してはくれないよ。

 という事は、演技を要求されるわけだから、テーブルにコーヒーを置いて小芝居を観劇という事じゃない?
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三浦しをん 「まほろ駅前多田便利軒」 文春文庫

2018-11-30 15:37:20 | 三浦しをん
 巻末の解説で鴻巣友季子が「読んでいて気持ちがいい」と書いている。鴻巣は、文章・文体で気持ちがいいと表現しているみたいだけど、私は…登場人物が読んでいて気持ちがいい、読後感が気持ちがいい、作品全体が気持ちいいと表現したい。

 そう、清々しいのだ。もちろん、主要登場人物の多田や行天にも、内面にマイナスの感情は渦巻いているが、それすらドロドログチャグチャしない。女流作家にしては、珍しい人だと思う。

 まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。(どうも町田市をモデルにしているらしい) 駅前で便利屋をやっている多田のもとに、高校の同級生・行天が転がり込んできた。といっても2人は高校時代、仲が良かったわけではない。多田は調子のいい男だったし、行天は変人奇人だった。偶然、再会した2人。会社を辞め、行くところのない行天が転がり込んだのだ。

 便利屋の経営も大変だと思う。庭の草むしり、ペット預かり、塾の送迎、納屋の整理などなど。「自宅前にバス停があるが、どうもバス会社が間引き運転をしているようだ。1日見張ってチェックしてくれ」という変わった依頼もある。自宅前だったら、カメラでも設置してチェックすればいいのにと思うが、便利屋さんに頼んだ方が安いんだろう。いったい時給いくらなんだろうか?

 そういえば、私の実家の近くで、便利屋を開業した夫婦がいた。実家の母も、時々片づけを頼んでいたが、いつのまにか転職していた。やっぱり儲からないよ。12月のように忙しい月ばかりではない。

 なぁんて、いらぬ心配をしてしまう。だって金が無いからといってエアコンを付けないのだ。ヘビースモーカーだし、大酒を飲むし。特に行天。
 行天は、下っ端ヤクザにもケンカをふっかけるクレージーな所がある男だ。彼のおかげで、覚せい剤の売人と知り合うが、この売人をも爽やかに描いちゃうから、しをん先生、いけません。

 どうして、こういうサッパリした雰囲気なんだろうな? 性的なドロドロを書かない(書けない)せいなんだろうか?
 行天の元妻が言う。「健康上の理由や信条のために禁欲しているひとなんて、いっぱいいますよ。べつにおかしくないでしょう」その他の理由で、いや理由なくても禁欲している人、いっぱいいる。
 女流作家にありがちな「恋愛こそすべて」「男を発情させてなんぼ」「性交回数、性交人数は多いほど素晴らしい人生」なんていう押し付けがましさが、三浦しをんには無い。

 そこが、コットンの下着のように気持ちいい。
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三浦しをん 「乙女なげやり」  新潮文庫

2018-11-20 15:22:03 | 三浦しをん
 三浦しをんさんは、デビューが結構早い。24歳。で、このエッセイ集は、彼女の20代半ばから後半の日常を綴ったもの。
 まだ実家暮らしだが、だんだん仕事量も増えてきて収入もUP! 仕事場を外で借りようとしている。おお! 順調な仕事ぶり!

 エッセイ内では、よく弟さんの事を書いている。どうもまだ学生さんらしい。勤め人ではないようだ。しをんさんは全く男っ気がないので、弟さんといちゃつこうとするが、すげなくあしらわれる。「あっ、ブタさん」とか呼ばれて。
 弟さんの動向にも興味を示す。弟さんと近所の友人ジロウ君が、深夜のドライブを楽しんでいるのに嫉妬し、あれやこれや邪推する。どーーーして、しをんさんはいつも話をBL仕様にするのかね。まっ、楽しいけど。

 私には弟はいないからよく分からないが、やっぱり姉にとって弟とは可愛いものなんだろうか? 出産する時も、一姫二太郎。最初は女の子が生まれ、次に男の子が生まれるのが望ましいなんて言われる。(女の子1人、男の子2人の割合が望ましいという説もある)

 姉弟と言うと、私には真っ先に、群ようこ姉弟を思い出す。今は、お母さんの介護や経済的なあれこれがあって仲が悪いが、子供の頃は仲良しで、群さんのエッセイによく弟さんが登場した。 お姉さんが売れっ子作家になってからは、そのお金をあてに、弟さんのおねだりが激しくなったが、何百万もするようなエレキギターの購入費用をポンと出してあげるんだもの、やっぱり可愛かったんだろう。

 そうそう、現役時代はロッテで三冠王を獲った元中日監督の落合も、お姉さん大好き子だったみたいね。奥さんも9歳年上姉さん女房。
 お姉さんがいる男って大成するって話を聞いた事がある。坂本龍馬と乙女姉さんなんて有名。でも龍馬が結婚すると、新妻に邪魔にされちゃうんだよね。現代でも同じ。

 しかしね、しをんさん。エッセイに弟など登場させてどうする? 元カレ、今カレを登場させんしゃい!! 20代半ばから後半、人生で一番フェロモンが出ているであろうこの年代に、異性の登場が父親と弟だけとは…。
 低恋愛体質のしをんさんが大好きだが、やはり現世の幸せも追求してもらいたい。
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