ケイの読書日記

個人が書く書評

岸本裕紀子「なぜ若者は半径1M以内で生活したがるのか」

2007-11-30 12:13:27 | Weblog
 講談社+α新書。
 岸本裕紀子さんの本は今までに3冊ほど読んだ事がある。若い女性向けの恋愛エッセイとか旬の男性に対するインタビューとか。

 もともと岸本裕紀子さんは1953年生まれ。慶応大学を卒業後、集英社「non-no」編集部に勤務。その後、旦那さんの転勤に伴い、ニューヨークに滞在。ニューヨーク大学行政大学院修士課程修了。日本に帰国してからは、ライターとして活躍しているセレブな奥様エッセイストなのだ。

 初期の恋愛エッセイを読んで「鋭い指摘。やっぱり頭いいなぁ」などと評価もするが「でも良家の出身のセレブ奥様、庶民の気持ちはわかるまい」などと、少し距離を置いて読んでいたのだ。

 でも、最近の彼女は、日本大学法学部新聞学科で週1回教えているらしく、いまどきの若者を身近に見ているせいか、社会学的な考察に優れている。

○パリやニューヨークは古いのではなく「関係ない」
○若い男性の車離れが進んでいる。
○若い女性のブランド離れが進んでいる。
○ケータイとコンビニに囲まれている幸せ。etc

 私も最近そう感じていた。若い女性といえば「海外旅行にせっせと出掛けブランド品を買いあさり、『やっぱり日本はダメねぇ』が口癖」というイメージがあったが、今ではそういう人は20代後半以上ではないだろうか?
 本当に若い20歳ぐらいの人は、ケータイとコンビニ大好き。遠くに行くより近場で地元の友達とまったりしたい、という雰囲気。

 車やタバコ、アルコールもさほど欲しがらない。豊かになったという事だろうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

乙一「ZOO」

2007-11-25 11:14:32 | Weblog
 私にとっては初乙一。すごく新鮮で刺激的。やっぱり売れっ子は違うなぁ。ライトノベル系のミステリというかホラーというか。
 でも、乾いたおかしさもあり、ブラックユーモア系?

 名前もなんで”乙一”なんだろう。変わってるなぁ。本名が乙羽一郎さんとか…ね。


 表題作の「ZOO」よりも「カザリとヨーコ」「Closet」「神の言葉」などが良かった。特に「カザリとヨーコ」は、萩尾望都の短篇マンガ「イグアナの娘」を思い出させる。
 このマンガはずっと以前テレビドラマになった事があるので見た人もいるのではないか?

 母親は、最初に生まれた娘がどうしてもイグアナに見えてしまい可愛がる事が出来ない。次に生まれてきた女の子は、ちゃんと人間の赤ちゃんに見えるのに。

 この乙一の「カザリとヨーコ」は一卵性双生児の話。DNA的には全く同一人物のはずだが、一方は母親にちやほやされ、片方は母親から虐待される。だから、頬は痩せこけ服はボロボロで、ぱっと見ただけでは誰も双子だと気がつかない。

 こういった母親の心理って分かるような気がする。普遍的なもの。特に母親自身とても困難な状況下にあると、一方には自分の夢を、片方には自分のやりきれない鬱憤を投げつける。

 乙一の作品って、決してハッピイエンドではないけど、わずかな光明が差している。「そうだ、頑張れ!! 前を見て走れ!! 何をやっても生きていけるさ」と大声で呼びかけたくなる。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山本文緒「再婚生活」

2007-11-20 11:40:21 | Weblog
 図書館に予約を入れてから半年ぐらい、やっと借りる事ができた。それほど話題になった本でもないのに、やはり山本文緒は人気がある。

 タイトルは『再婚生活』だが、実際は「うつ病闘病記」といった方が近い。2003年8月から2006年12月までの日記エッセイ。病状がひどくなったり他の仕事が忙しくなったりしたらしく、所々とんでいる。

 うつ病も通院だけではすまず、入院も何度もしているようだ。

 しかし、どうしてだろう。新婚でダンナ様ともラブラブだし、大きな賞をもらって少々仕事を休んでもいいキャリアを積んでいるし、経済的にも潤ってるし、親はまだ健康で心配いらないし…。
 今が一番楽しめる時期なのに、もったいない。(もう少し時間がたつと、親の介護、親との死別、自分にも更年期障害といった婦人科系の病気も出てくるだろうし、ダンナ様ともいつまでも新婚気分ではいられない、ケンカもするだろう)


 仕事上の知り合いが、彼女のうつ病を「精神的な痛風」と言ったそうだが、なるほどと思う。


 ただ、この日記エッセイの最後の方に「ずっと私は、うつになった原因は何か心因性のものだと思っていた。仕事上のいろいろなストレスや、引越しや再婚で、感情のバランスが狂ったのだと思っていたけれど、そうじゃなかったと最近しみじみ思う。(中略)私の場合、悪い体が黒い心を生んだのだと思う。」と書かれてあり、ああ、彼女のうつ病が治るのも、もう少しだ、と安心した。
 あまりにも生活が不摂生だったのもね。

 そう”精神が行動を引っ張る”のはよく言われるが”行動が精神をひっぱる”ことも多々あるのではないか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二階堂黎人「悪魔のラビリンス」

2007-11-15 14:18:06 | Weblog
 話には聞いていたが、まるっきり”子供向けの江戸川乱歩作品”って感じですね。昭和40年代よりもっと古そうな雰囲気。
 怪人20面相やら小林少年がぴょこぴょこ出てきそう。

 ああ、私、乱歩の少年探偵団シリーズは嫌いだったんだ、と途中で読むのを止めようかと思ったけど、そのうち面白くなるかもしれないと我慢しつつ読み続けたら、正解!! 結構イケます。

 怪奇趣味は強いけど、それだけではなくトリックがしっかりしています。特に第1部「寝台特急あさかぜの神秘」。まるで引田天功のイリュージョンを見ているよう。だから、マジックに詳しい人にはこのトリックは解けるかもしれない。


 鍵がかかり走っている寝台特急の個室(その上、ガードマンが廊下で見張っている)から、男が消え、代わりに別の女の死体が発見された。しかも、その女とは、特急が東京駅を離れる際にプラットホームで見送っていた女なのだ!

 こんな不思議な事に解決なんてあるんだろうか、と興奮するが、二階堂蘭子はゴージャスな縦ロールの巻毛を指に絡ませながらスラスラ謎を解いていく。
 それも整然と。

 通路が狭い寝台車だから十分可能なトリック。ちょっと感心してしまった。

 第2部も、男色家が出てきたり若い美青年の全裸死体が氷柱中にとじこめられたり、実に乱歩チックです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

二階堂黎人「猪苗代マジック」

2007-11-10 15:10:13 | Weblog
 先日読んだ笠井潔「魔」と同じ、文藝春秋の本格ミステリ・マスターズのシリーズ。著者に対するスペシャルインタビューや二階堂黎人論が載っているので読んでみた。

 二階堂黎人の名探偵というのは二階堂蘭子が有名だが、この○○マジックシリーズの名探偵は水乃サトル。

 背がスラリとしたすばらしいハンサムで、20代後半の独身男。大手旅行会社に勤めているので、色んな土地に行っては事件に遭遇するという、ちょっと浅見光彦みたいな設定なのだ。
 大学時代は100のサークルに所属し、多趣味多芸でオールマイティの知識を持っている。
 実家は京都の和菓子屋で、美人のお姉さんが3人。一番上の姉は政治家に嫁いでいて、3番目の姉は女優。(2番目の姉は何者? 気になるね)

 コメディタッチで書かれているが、トリックはなかなか本格的。秀作です。


 しかし、しかしですよ。女連れで探偵役をやるな!!!!と言いたい。美並由加里というカワイコちゃんを引き連れているんだよね。これは邪道だと思うよ。
 御手洗シリーズにくっついている里美(里美に石岡がくっついている?)ほど邪魔じゃないけど、やっぱり読書のモチベーションが一気に下がりますね。

 名探偵よ!もっとストイックになれ!



 ところで、二階堂蘭子シリーズは昭和40年代限定なんだね。私はまだ1作しか読んでいないけど、昭和43年に女子大生という設定だから、現代ならもうじき年金もらえそうな年齢になる。
 これでは読者はひきますよ。それに、怪奇的な作風には昭和40年代以前の方が似合ってるし。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする