ケイの読書日記

個人が書く書評

神永学「心霊探偵八雲①赤い瞳は知っている」

2011-04-28 14:04:51 | Weblog
 中高生が選んだ人気№1ということで、華々しく本屋で平積みされていて、表紙イラストの片方が赤い眼の青年が気に入り、珍しく買う。
 死者の魂を見る事ができる名探偵・斉藤八雲は合格点だが、ワトソン役(?)の小沢晴香はちょっと物足りないです。


 第1話で、幽霊騒動に巻き込まれた友人の相談を、晴香が八雲に持ちかけたのがきっかけで八雲の手伝いをするようになったが、同じ大学の学生というところが、あまりにも安易。
 もう少し、キャラ設定に一工夫が欲しい。例えば、八雲よりうんと年下の小学生とか、腐女子タイプの女の子とか。
 晴香はあまりにも普通の女子大生だからね。

 この2人の間の、友達以上恋人未満、という雰囲気が私には邪道に感じられる。でも、中高生に人気なのはそこなんだろうね。

 ファイルⅠ開かずの間、ファイルⅡトンネルの闇、ファイルⅢ死者からの伝言、皆中篇でサクサク読める。病院の待合室で名前を呼ばれるのを待っている時に読むと、ちょうどいいかもしれない。
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カー「ろう人形館の殺人」

2011-04-23 13:32:11 | Weblog
 たかさんのブログで紹介されていて、バンコラン物だし面白そうなので、読んでみようと図書館で予約したが…届いたのはなんと!児童書だった。

 予約する時「ろう」と平仮名になっているから、おかしいなと思っていたのだ。

 私が住んでいる市には、公立の図書館は15くらいあると思うけど、「ろう人形館の殺人」は、この一冊だけで、大人用のは無いらしい。WHY?

 評判が良くない作品なのかな? でも、密室殺人ではないが、蝋人形館の不気味な人形達、その異形の人形の腕に、心臓を刺された女の死体が抱きかかえられていて…なんて、猟奇的なシーンはカー好み。

 上流階級の紳士・淑女の秘密クラブが舞台になっていて、パリ社交界の退廃的で享楽的な雰囲気が、私の嗜好をくすぐるが、なにせ児童書ではね。
 その雰囲気が十分に味わえないよ。それに、さし絵が児童書らしくラブリーなこと!
 若くてのっぺりした顔のバンコランのイラストを見ると、著しくイメージが壊れるね。

 これはもう、絶対に、一般の翻訳物を読まなければ気がすまないよ。
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石田衣良「シューカツ!」

2011-04-18 10:21:45 | Weblog
 大学3年生の千晴は、学内の仲間7人と『就活プロジェクトチーム』を結成。目標は最難関マスコミ全員合格!

 クールなリーダー、美貌の準ミスキャンパス、理論派メガネ男子、体育系柔道部、テニスサークル副部長、女性誌編集者志望のぽっちゃり系、といった個性豊かなメンバーの闘いはいかに?

 リーマンショック前の、ちょっと景気がよくなりつつある時の就職活動記だから、すごく明るい。
 1人、リタイアが出たが、残りの6人はほぼ希望した会社に入社できた。(4人は第一志望のマスコミに、2人は第一志望ではなかったが、有名メーカーに)
 しっかし、いくらなんでもこんなお伽噺アリ? いくら彼らの通っている大学が有名私大(たぶん早稲田がモデル)だとしても、大手マスコミなんて1000人に1人の割合でしょう?

 就活なんて30年前に終えてしまったオバハンの私でも、読んでいてムカムカするのに、現役就活生だったら、なおさらムカムカするだろう。

 この小説の始めの方に出てくる海老沢さん。彼は千晴と同じ有名私大の卒業生だが、就職氷河期に社会人となり、希望した職に就けず転職を繰り返し、今は千晴と同じファミレスでアルバイトしている。
 アルバイトから正社員への登用を期待していたようだが、まったくサービス業に向いていない。30歳過ぎてアルバイトでは、やる気が出ないのだろう。
 お客とトラブルを起こし、店を辞めてしまった。
 飲食店って、本当に厳しいみたいだものね。

 こういった人が登場すると、リアリティがありすぎて気が滅入るが、就活楽勝というのも、ノーテンキ過ぎる様な。
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泡坂妻夫「亜愛一郎の逃亡」

2011-04-13 14:36:12 | Weblog
 全部で8話収められていて、うーん「球形の楽園」が一番よかったかな。
 完璧な密室状態の丸いカプセルの中で、前頭部に打撲傷、背中に突き傷を負った男の死体が発見され…という密室モノ。

 他は、見掛け倒しの二枚目名探偵・亜愛一郎最後の事件簿という事で、愛一郎の行く先々に必ず現われる「三角形の顔をした小柄な洋装の老婦人」の正体がついに明かされる。ついでに愛一郎の素性も。

 あのバァさん、最後には黒い毛皮のコートを着て、真っ赤なスポーツカーに乗り、ブルドックのタケル君を従えて、華々しく登場するのだ!!
 実はあのバァさんは、亜愛一郎の…。2人の関係が知りたかったら、ぜひ読んでね。

 特に最後の「亜愛一郎の逃亡」は、遊び心にあふれていて回文が満載。
 主人公が亜だから、回文が作りやすいんだろう。それでも作者は苦労したと思うよ。

 「歩いている亜」「歩き飽きる亜」「歩いて寝ている亜」「歩いて舌を出している亜」
 「歩いてじたばたしている亜」「ある結末につまづける亜」
 ね、すごいでしょう?
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米原万里「魔女の1ダース」

2011-04-08 11:47:42 | Weblog
 「正義と常識に冷や水を浴びせる13章」という副題がついている。
 私達の常識では、1ダースといえば12。ところが魔女の世界では「13」が1ダースなんだそうだ。ちゃんと研究社露和辞典でも、岩波露和辞典にも載っているらしい。

 つまり、自分の属している世の中の常識と、別の常識を有する世の中が、この広い世界にはあるんだ、という実例がたくさん載っている本。

 この筆者の米村万里さんは、ロシア語同時通訳として活躍なさった才媛。過去形なのは2006年に亡くなっているからだ。享年56歳。本当に残念な事である。

 英語の同時通訳だったら、英語圏オンリーで異文化に興味を持とうと思わないかもしれないが、この人の専門はロシア語。かなりマイナーである。

 ロシア語通訳者の絶対数が少ないのに、一応、ソ連時代はアメリカと並ぶ超大国だったので、国際会議は多数あって、ひっぱりだこだったようだ。

 このエッセイ集を読んで、強く印象に残っている部分がある。それは「オウム真理教」をよく取り上げているのだ。それも最初は好意的に。
 オウム真理教はロシアに積極的に布教していて、モスクワ大学でも講義した事があったらしい。
 それが、ある時をさかいに(地下鉄サリン事件だろう)ガラッと方向転換。
 なぜ、警察やマスコミはこんな悪い噂の絶えなかった宗教団体を野放しにしていたのか、と追求している。

 アンタだって、騙されていたでしょう!? 
 麻原教祖のような最終解脱者ともなると…(中略)…煩悩や業から完全に解放された理想的な脳の状態で、最高の力発揮する、なんて堂々と書いているでしょう!
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