ケイの読書日記

個人が書く書評

群ようこ 「しない」 集英社

2022-11-22 15:32:48 | 群ようこ
 私は、どうして群ようこのエッセイを好んで読むのだろうか?と時々考える。(彼女の小説はあまり読まない)もちろん人気作家の日常をちょっと覗いてみたいという気持ちもあるが、それ以上に、自分のロールモデルを群さんに見ているんだろうと思う。
 もちろん年齢こそ4歳年上だが、あと共通項はあまりない。東京生まれ東京育ち、東京を離れて暮らした事がない群さんだし、本人も独身、周囲の友人も独身または結婚していても子どもがいない夫婦ばかりだそうだ。
 そのせいか、子どもや子持ち主婦にはなかなかシビアな見解を持っていてドキリとすることもある。でも、感覚的な所は似てるんじゃないかな。

 例えば、このエッセイ本に「必要のない付き合い」という章がある。
 群さんは、すごく付き合いの悪い人だったようだ。大学生の時も、コンパにほとんど参加しなかったみたいだし、社会人になって同僚と晩ご飯を食べて会社の悪口を言いまくる事はあっても、その後のお酒の飲める場所へ移動することはなかった。お酒が飲めない体質だからかもしれないが。
 もっと驚いたのは、『本の雑誌社』に勤めていた時、手伝いに来ている学生さんたちにバイト代の代わりにご馳走するのが会社の方針だったのに、仕事が終わると一人だけ「それでは失礼します」と言ってさっさと帰っていたらしい。
 上司が誰もおらず、本当なら群さんが学生たちを飲食店に連れて行く役目のはずなのに、群さんは一番年長の子にお金を渡して「これでみんなを連れて行ってあげて」と頼んで、自分はいつものように帰ったらしい。
 すごいなぁ。私も飲み会などあまり好きではないので、さっさと帰る方だが、自分しか連れて行く役目の人がいない場合、しぶしぶながら、どっかの居酒屋に流れると思う。
 それだけ群さんは自分の時間を大切にしているんだろう。

 ママ友の間でも、そういう問題はおこる。私は保育園に子どもを預けたので、さっと仕事に行く人ばかりで助かったが、幼稚園バスにお迎えに来てもらうパターンだと、子どもをバスに乗せた後もえんえんと母親同士でおしゃべりしていて、帰りにくいという話を聞く。家事が片付いていないので早く帰りたいが、自分だけ早く帰ると、その後何を言われているか分からず怖いので、その場に残ってダラダラしゃべってしまう。それどころか連れだって近所のファミレスまで行く事もあるらしい。
 そんなにヒマなんだろうか? 皆さん?
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「たべる生活」 群ようこ 朝日新聞出版

2022-11-13 15:35:05 | 群ようこ
 群ようこって、こういう人だったっけ?! もっとゴーイングマイウェイというか、自分の事に口を出されたくないから、他の人の事にも口を出さないといったタイプの人だと思っていたが…。このエッセイ集の中で群ようこ自身が「思考回路が姑と化している私」と書いていたが、その通り!!! 自分の周囲にいる親子連れ、友人知人から話を聞いた親子連れの食習慣にイチャモンを付けまくる!!

 1954年生まれの群ようこが、自分の健康に気をつかって食習慣もちゃんとしている事は知っている。もともと料理が苦手だけど、仕事での付き合いや友人とのランチで、月に数回外食する以外、自炊しているのは立派。1人暮らしだから、ついつい自炊は面倒になってしまうだろうに、スゴイ!とは思う。
 でも、自分がやれているんだから「子どもがいる母親は料理して当然」と考えるのは、ちょっと違うような…。

 子どもを育てながらフルタイムで働いて、その上、食事の支度までってすごく大変。総菜やレトルトを使うのは当然じゃない?と私は思うけど。
 もちろん人間は食べたもので出来ているので、外食や中食で少ない野菜料理をパパっと作って1品加えるとか、どうしても肉料理の方が多くなるから意識して魚の缶詰を使うとか、工夫しなければならないとは思うが、クタクタに疲れて帰って来て、ギョーザを手作りなんて出来ないよ。冷凍で十分だと思うよ。(そうそう、冷凍食品のクオリティって最近ものすごく上がって来てる。お店で食べるよりおいしいじゃん!!という冷凍食品もある)

 一番やるべきなのは、家族みんなで食卓を囲むこと。まあ、会社員のお父さんが平日の夕食の席にいないのは仕方ないが、お母さんや子どもたちはTVを見ながらでいいから一緒にご飯を食べてほしいな。
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「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳 早川書房

2022-11-02 15:30:51 | 翻訳もの
 最初のページで「介護人」とか「提供者」という単語が出てくるので、なんとなく、ああ臓器移植の話か…という事が分かる。でも「4度目の提供」なんて文章も出てくるので、その臓器移植が一般的なものではなさそうだという事も分かる。
 提供される方が4度目ならまだしも、提供する方が4度目なんておかしいよ。

 優秀な介護人キャシーは、提供者と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムで一緒に育ったトミーやルースも提供者になっていた。キャシーもそのうち提供者になるだろうと思われる。
 この施設ヘールシャムが、すごく奇妙な場所なんだ。普通の孤児院ではなくて、保護官とよばれる教師たちが、実に熱心に授業をする。なかでも、美術や文学に力を入れ、素晴らしい絵画や工芸品、詩などを生徒に作り出すようにうながし、特別に優れた作品は、どこか遠くの展示館に展示されるらしい。
 ただ、芸術に力を入れるにしては音楽の授業は少ない。なぜか? その理由は想像できる。ピアノやヴァイオリンの演奏や声楽などは、展示館では発表できない。なぜなら、彼らはヘールシャムから出ることを許されないから。
 彼らが一定の年齢になって出て行ける場所はコテージで、そこで彼らは介護人や提供者になるための準備をする。

 そう、彼らには「介護人」や「提供者」になる未来しかない。どんなに頭が良くても、容姿が優れていても、素晴らしい絵が描けても、美しい歌が歌えても、彼らには学者やモデルや女優や画家や歌手になる未来はない。

 この小説はミステリ小説ではないからネタバレでも書くけど、ヘールシャムでは、人間を養殖しているんだ。臓器を取り出すために。そのために作られたクローン人間だから、最初のうちは劣悪な環境で育てられていたが、あまりにも酷いと声を上げる人がいたので、待遇を良くし教育に力を入れるようになった。素晴らしい美術品や詩は生徒たちの作品ですと言って、金持ちや有力者から寄付を集めた。

 しかし、声を上げるべきは劣悪な環境改善ではなくて、人間を養殖するな!!!って事だろうと思う。でも、大多数の人たちは、クローン人間は人間ではないって考えなんだろうね。
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