ケイの読書日記

個人が書く書評

花井愛子「マネーストリッパー」

2009-12-30 10:22:31 | Weblog
 売れっ子少女小説家・花井愛子が、遺産相続でもめて自己破産した、という話はかなり前聞いた事があった。
 その花井さんの半自伝という事だが、文章はきわめてヒドイ。いくら少女小説家といったって、ひどすぎるんじゃないかと思うが、書かれてある内容は、きわめて興味深い。
 あらましはこうだ。

 花井先生の少女小説はとても売れたので、たくさん収入があり、その管理を実父に任せていた。実父が亡くなり、花井先生が管理してもらっていたお金は、どういう訳か実父の名義になっていた。
 そこに、実父の離婚した先妻のお子さん達(花井先生の腹違いの姉・兄)が、遺産を請求。しかし、実質的には実父の遺産ではなく自分のお金と花井先生は主張、泥沼の法廷闘争へ。
 その間にバブルの崩壊があり、花井先生が投資目的で買った不動産が値下がりし始め売るに売れない。肝心の小説の方もスランプに陥り書けなくなる。金利の支払いすら出来なくなり、自己破産へ。
 結局、裁判も負ける。


 しかし…どうしてお父様は自分名義にしたのかなぁ。そんなことすれば相続税だって大変だろうし、先妻のお子さんが遺産を請求する事は必至。
 それとも、先妻の子供達に苦労を掛けたから残してやろう、と思ったんだろうか?

 お母様は、お父様より先に亡くなっているようだが、証券会社のアドバイザーを長年勤め、遺産相続のごたごたを聞いた事もあるだろうに、なぜ夫や娘にアドバイスを残さなかったの?

 花井先生の見方でしか書かれていないので、真相は分からないですね。
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山本文緒「プラナリア」

2009-12-25 15:48:27 | Weblog
 忙しくて本がサッパリ読めない。でも、5日に1度の更新を自分に課しているので、何とか以前読んでメモしていた感想をUPする。


 第124回直木賞受賞作品だという事は知っていたが、読んであまり面白くないので驚いた。言葉は悪いが、え!?こんなのが受賞作!? って感じ。
 それだけではなく、この5編の小説の登場人物、誰ひとり、私が好感を持てる人は出てこない。
 やっぱり、私と山本文緒さんは合わないのかなぁ。1962年生まれ。バブルのはしりの世代の感情についていけないものがある。というか、毒がありすぎ。

 こういった小説を読むとゲンナリしちゃって、岸本葉子さんの心のキレイなエッセイが読みたくなる。
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霧舎巧「新本格もどき」

2009-12-20 16:32:30 | Weblog
 タイトルどおり新本格の名作7作品のパロディ。
もどかれた元の作品を読んでいれば面白さは倍になるが、読んでいないとシラーっとする。

 「三、四、五角館の殺人」は「十角館の殺人」のパロディ。
 「二、三の悲劇」は「二の悲劇」のパロディ。(「一の悲劇」しか読んでいない)
 「雨降り山荘の殺人」は「星降り山荘の殺人」のパロディ。
 「双頭の小悪魔」は「双頭の悪魔」のパロディ。(この有名な作品を知ってはいるが読んではいない)

 あと「人形は密室で推理する」「長い、白い家の殺人」「13人目の看護師」にも、それぞれ元になる作品があり後書きでそのタイトルについて書かれていたが、浅学な私は知らなかった。

 それよりも、この連作集は登場人物が面白い。
 記憶喪失の吉田さんは、ミステリマニアの店主が作るカレーを食べるたびに有名な名探偵になりきって推理するが、本当は…ナースのエリちゃんが事件を解決しているのだ!
 このエリちゃんが、ミステリなど全く興味が無い所が面白い。そして、吉田さんのマトハズレな推理を聞きながら色々頭が働くのであろう、決めゼリフをはく「あたし、分かっちゃったような気がするんですけど」

 推理オタクを自認する2人の男を尻目に、全くのド素人・エリちゃんが事件をバッサバッサ解決していくのだ。ああ、スッキリするなぁ。
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井上荒野「ズームーデイズ」

2009-12-15 14:06:49 | Weblog
 有名な小説家を父に持つ私。単行本を一冊出したきりロクな仕事をしてないが、一応プロフィールには職業・小説家という事になっている。
 その私が、8歳年下の男の子ズームーとの7年にわたる同棲生活を書いた作品…なんて紹介すると、恋愛小説と思われてしまうが(本の帯にも危険な恋愛小説と記されているが)そんなんじゃないのだ。

 多分これは井上荒野の、半分自伝的作品なんだろうけど、父親の事を父親神なんて表現している所に、井上光晴が娘に与えた影響の大きさがわかる。

 父親の名前で最初のうちは仕事も来ていたが、それもそのうちなくなり、同棲相手の給料だけではやっていけないので、2人で私の実家に潜り込む。
 朝起きてコーヒーを入れると、その後はどうやって時間をつぶそうと考える毎日。
 そんな怠惰な日々を過ごしているせいか、30半ば過ぎて大病をする。

 ズームーが出て行って、ズームーデイズが終わりを告げ、私はまた別の人と暮らし始める。1年ほど経ってから長編小説の依頼が舞い込み、その後なんとか小説家として生活できるようになる。

 こうやって書くと、えらく深刻な話のようだが、この"私”という女の人が生活臭が無い人で牧歌的な感じすらする。こんなんでよく生きていけるなぁ。小説家の娘だと、カスミでも食べてるのか、と思えるような印象。
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法月綸太郎ほか6人「あなたが名探偵」

2009-12-10 15:14:12 | Weblog
 以前読んだ「気分は名探偵」がとても面白かったので、これもタイトルにつられ手に取ってしまったが…ハッキリ言って期待はずれ。

 7作家の7作品が入っているが、なんとか及第点というのは、麻耶雄嵩「ヘリオスの神像」と法月綸太郎「ゼウスの息子たち」くらいかなぁ。
 それらにしたって、そんなに出来が良いわけではない。


 トリックがどうの…という前に、とにかく雑!! マンガで言えばペン入れしていないラフな下書き、という所でしょうか。
 いくら犯人当て短篇といっても、もう少し丁寧に書いて欲しい。もちろんページ数の関係もあるんでしょうが。


 最近どうも面白い作品に出会ってないので、ちょっとフラストレーション。
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