ケイの読書日記

個人が書く書評

リリアン・J・ブラウン「猫は泥棒を追いかける」

2006-02-28 17:01:58 | Weblog
大好きな本・読んだ本


 wataさんの愛読シリーズの1冊。

 私はこのシリーズを「我輩は猫である」のように猫の一人称で書かれているのかと思ったら違いました。

 ハンサムで大金持ちの元新聞記者のクィラランが主人公で、その飼い猫のココに、優れた犯罪感知能力がある(ように思える)という設定。


 舞台となるムース郡ピカックスは架空の場所だけど、カナダとの国境沿いにあるらしく、恐ろしく寒い。強風が吹くと、体感温度マイナス60度。バナナで釘が打てるかも?


 このピカックスは私にミス・マープルの住んでいるセント・メアリ・ミード村を思い出させます。

 住民同士のつながりが強く、ゴシップ大好き。「ここだけの秘密よ」と言葉に出したとたん、すぐに町中に知れ渡る。
 お金持ちで、すごく保守的な人々の住む町。
 青い目、ばら色のほほの、詮索好きなミス・マープルが出てこないのが、ふしぎなくらいです。



 シリーズ物なので、登場人物が多く、また以前の事件の話が当たり前のように文中に挿入されているので、前半は読みにくかったですが、中盤以降慣れてきて、ストーリーもつながりが出てきたので、面白かったです。

 ミステリのシリーズ物は、最初の方が出来がいいことが多いので、次は「猫は手がかりを読む」「猫はソファをかじる」を読んでみたいですね。
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横溝正史「本陣殺人事件」

2006-02-24 13:39:09 | Weblog
大好きな本・読んだ本  


 横溝正史の古典的名作。


 すごく有名な作品なので、前々から読んでみたいと思ってはいたんですが、実はこのトリックを、読む前から知っていたので、今まで本を手に取らなかったんです。

 子どものころ雑誌の付録に付いていた推理小説のトリック集を読んで、覚えていました。

 クリスティの「オリエント急行殺人事件」もそう。はっきり覚えています。優れたトリックほど印象に残るから困ります。

 だから誰が犯人か、どういったトリックを使ったかは、前もって知っているけど、別の意味で十分読み応えありました。


 この「本陣殺人事件」は、探偵金田一耕介のデビュー作なんでしょうか。だって金田一耕介のプロフィールまで本文中に紹介されています。


 東北の出身で東京の私立大学に籍をおいてゴロゴロしているうちに、ふと思いついて渡米する。そこで、麻薬中毒になりかかったが、サンフランシスコの日本人間で奇妙な殺人事件が起こり、それを見事解決。それが縁でスポンサーがつき、カレッジを卒業。日本に戻って探偵事務所を開く。


 ミルン「赤屋敷の殺人」に出てくる素人探偵アントニー・ギリンガムがモデルらしいけど、このギリンガム探偵もさえなかったなぁ…。


 アメリカ滞在中、麻薬常習者になる、という設定は、ホームズがコカイン常習者だったという所からきているのかなあ。



 しかし、金田一君がアメリカのカレッジを卒業しているとは!だったら出る所に出る時、背広ぐらい着てほしいです。


 横溝正史の中では、比較的論理的でスッキリした作品。いつもは金田一君が登場しても何件も殺人事件が起こり、この人何のためにいるんだろう、と不思議に思うことも多いんですが、この作品では金田一君活躍しています。
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村上春樹文・安西水丸画「象工場のハッピーエンド」

2006-02-19 11:11:26 | Weblog
大好きな本・読んだ本

 「ノルウェイの森」を読もうと一大決心をして、図書館の村上春樹の書架の前に立つ。
 しかし「ノルウェイの森㊦」はあるが「ノルウェイの森㊤」は無い。誰かが借りているらしい。ちょっとホッとして代わりにこの「象工場のハッピーエンド」を借りてくる。
 3/4が安西水丸さんの画だから、私にも読めそう。

 だって、サナダさんが「海辺のカフカ」がすごく難解だということをブログに書いていらしたので、「ノルウェイの森」が、ちぃっとも理解できなかったらどうしよう…と内心ビクビクしていたのだ。



 この「象工場のハッピーエンド」最初の方は、カタカナ固有名詞が氾濫していて少しげんなりした。何これ?まさかこの人、進駐軍の米兵に群がり「ハロー!ギブ ミー チョコレート」と、ねだっていた世代じゃないでしょうね。

 アメリカに、精神的に植民地化されているというか…。


 ウイスキー、ビール、コーヒーの事は、よく書かれているが、清酒や昆布茶やほうじ茶は飲んだこと無いのだろうか?それについても、ぜひ書いてもらいたい。

 でも、私が知らないだけで書いているかも。
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メアリー・w・ウォーカー「神の名のもとに」

2006-02-14 20:42:40 | Weblog
大好きな本・読んだ本


 優美さんに教えていただいた作品。1995年アメリカ。

 最初、題名から、アメリカの片田舎の自警団が悪党を殺しまくる話かしら、と想像していたのですが、まったく違っていました。

 
 テキサスのカルト教団が、世界は黙示録に予言されている通り滅亡するので、神に捧げる子羊が必要だとして、スクールバスを襲撃し、スクールバスの運転手と子どもたちを人質にとります。

 そのスクールバスの運転手がベトナム帰還兵で、いつ発狂してもおかしくない絶望的な状況の中(地面に掘った穴の中に閉じ込められている)、子どもたちと共に生き延びる方法を探します。

 FBIは、カルト教団の主宰者『預言者モーディカイ』と交渉しますが、世界は1995年4月14日に滅びると主張する彼とまったくかみあわず……。


 カルト宗教とベトナム帰還兵。アメリカの2大トラウマ。
 アメリカ人でない私には、正直よく理解できない所もありました。

 しかし、聖書の黙示録ってすごく怖いですよね。こんな話を、日曜学校ごとに小さな子どもの頭の中に刷り込んでいけば、大人になってカルト教団に走る人が出てもおかしくない気がします。
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岸本葉子「歳時記を生きる」

2006-02-10 10:33:47 | Weblog
大好きな本・読んだ本


 本当に岸本さんらしいエッセイ。トシを取ると、歳時記という言葉に惹かれますね。

 いろんな雑誌や本に掲載されたエッセイを寄せ集め一冊にまとめた物ではなく、『歳時記を生きる』というテーマで書き下ろしたもの。なんて素敵な企画でしょうか!

 自然の風物や古くからの年中行事ではなく、バーゲン、人事異動、税の確定申告
など情緒に欠けるけど「またその時期がめぐってきたか」と思い出させる出来事の数々。


 例えば、岸本さんのエッセイでは
1月  ・風邪は万病のもと
2月  ・冬物一掃は早すぎる
3月  ・いよいよ花粉症?
    ・税金の月          などなど


 特に7月の、女だったら誰でも気になる化粧崩れや紫外線対策の話は身につまされます。(若い人はそうでもないか)
 岸本さんとデパート化粧品売り場の美容部員との、果てしない攻防はものすごく面白い!!
 まさに、仁義無き戦いです。


 岸本さんの言葉を借りれば、

 「1年365日、ただ慌ただしく過ぎるようでも『折々の自分』が、そこにいます」

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