ケイの読書日記

個人が書く書評

太宰治「おさん」「家庭の幸福」「桜桃」

2022-04-10 14:42:30 | 太宰治
 これら3編は太宰の最晩年の短編。3編とも、愛人のいる夫・その妻・彼らの子どもたちといった家庭を題材にしている。もちろん小説であって創作だが、太宰の私生活が色濃く反映されている…と思われる。

 この夫は出掛けたら何日も帰って来ず、金遣いが荒く、大酒のみだが、暴力はふるわない。妻も、お金は夫が遣ってしまうので貧乏に苦しんでいるが、ヒステリーを起こすわけでもなく淑やかな良妻賢母だ。子どもたちも両親に懐いている。お金は無いが絵に描いたような素敵な家庭だが、夫婦の間には、目に見えない神経戦が始まっている。それが彼らを疲弊させている。でも、ほとんどの夫婦はそうじゃない?
 「家庭の幸福は諸悪のもと」なんて書いてある。だったら結婚するなよ。自分の意志で結婚したんだろう。

 太宰の不幸は…女にモテすぎる事なのかなぁ。作中の人物にも「自殺の事ばかり考えている」「自殺したい」なんて言わせているが、そんなに死にたいなら、なぜ一人で死なない?女に引きずられなきゃ、死ぬことすらできなかったんだよね。
 自分一人で死ねないんだったら、やっぱり心の底では死にたくなかったんだよ。

 神奈川県座間市で、10人近くの死にたいと言ってる若い人を殺した男がいたけど、彼が言うには「本当に死にたい人は一人もいなかった」らしい。「死にたい」と外に向かって発言するという事は、誰かと繋がりたいという気持ちの表れ。結局「死にたいほど辛い」「死にたいほど苦しい」という事で、本当にこの世とバイバイしたい訳じゃないんだ。
 太宰も女性と情死する間際、くだらない事やってるなぁと後悔したんじゃないだろうか。太宰ファンには怒られるかもしれないが。
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