ケイの読書日記

個人が書く書評

島田荘司「龍臥亭幻想」(上)(下)

2008-08-31 10:01:34 | Weblog
 もともと龍臥亭事件と言う事件があって、その8年後、同じ場所を訪れた石岡が再び事件に巻き込まれる、という設定。

 いつものようにスウェーデンにいる御手洗に電話で助けを求めるのだが、御手洗は後半ほんの少ししか出てこない。それも声だけ。
 だから石岡君1人で、お話を上手く引っ張る事ができるんだろうか心配だったが、結構面白く読めた。


 衆人環視の神社から神隠しのように消えた巫女。切断された遺体を鎧兜におさめると、悪人を成敗するために森孝魔王として甦る謎。 
 どうしてこんな事が起こりうる? という謎をそれなりに論理的に解決している。トリックに関して言えば出来が良い。


 この作品には、本編の他、色んな伝説やら昔話やら手記がはめ込まれている。本編は面白く読めるが、その他の挿入話が…ねえ。
 島田荘司って色恋の話が本当に下手だね。つまらない。

 『ロシア幽霊軍艦事件』でもアナスタシア(と自称する女性)と日本の軍人との恋物語が書かれていたが、あまりにもつまらないのでその箇所はナナメに読み飛ばした。
 この『龍臥亭幻想』でも、奥方と使用人の情事が描かれているが…うーん。


 私はミステリ以外の島田荘司の作品を読んだ事は無いが、やっぱりイマイチなんだろうか?
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

島村麻里「うつ暦十年、色恋妄想」

2008-08-26 09:55:44 | Weblog
 私の目がタイトルの「うつ」を検索してしまったので、読んでみる。

 島村麻里という人は、私にとっては女流小説家という分類だったのだが、一般的にはコラムニスト、それも英語が堪能なので国際問題を取り扱うコラムニストという事らしい。いやぁ、出世しました。

 その彼女は、37才の時に同棲相手が家を出て出来ちゃった結婚をしてから、うつ症状を自覚するようになり、10年たっても(一時ほどひどくは無いにせよ)スッキリしない。布団をかぶって寝る日がよくある。

 若い頃はすごくモテて、いくらでも恋人の補充ができたが、37歳で男とサヨナラしてからは、中々そういった機会に恵まれない。
 あったとしてもごく短期間、一夜限りということもある。でも彼女はそれでもOKだからCOME ON!ということらしい。

 しかし、そんなに恋人が欲しいなら、イタリアとか南米といったラテン系の国に移住すればいいのに。
 本人は移住したくてもお金が無いからできないと書いているが、東京で高い家賃を払って一軒家を借りているぐらいなら、十分可能だと思うなぁ。
 スペイン語ができなくても英語ができるなら、コミュニケーションなんとかなるだろうに。
 パソコンさえあれば仕事はできるし。

 若い頃モテまくった人は、トシ取ると寂しさが一層こたえるんだなぁ、とモテたこと無い私は少し同情しました。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

M&Mハードウィック「シャーロック・ホムズの優雅な生活」

2008-08-21 12:56:48 | Weblog
 コメディタッチのホームズ贋作。

 ブックオフでパラパラ立ち読みをしていた時、どうも読んだ事があるような気がしたが、訳者あとがきを読んで分かった!! テレビの○○洋画劇場で見たことがあるのだ。
 1970年に映画は製作されたらしいが、テレビで放映されたのはかなり後。いつごろかなぁ。25年ほど前?
 その時、ホームズがえらく若いので、すごく違和感を覚えた。

 この映画は、途中ホームズがバレリーナに求愛されるあたりから見ていた。
 本では、この部分もすごく面白かったが、それより前もうんと面白い。ハドソン夫人とホームズの小競り合い(そうだよね、部屋代はキチンと払ってくれるだろうが、ホームズという人は大変やっかいな下宿人だろう)も、すごく面白い。
 ホームズとワトソンの言い争いも!!

 ホームズがコカインを常用しているのは有名な話だが、私が子供向けのホームズを読んだ時は、そのへんはカットされていた。
 わずかに『唇のねじれた男』だったと思うが、密偵のためアヘン窟に行った時、麻薬を少々やっているという話が出てきたに過ぎない。

 しかし大人になってから読んだ『四つの署名』の最初のところでホームズがコカインを使用する部分があり、本当に驚いた。
 ダメだよ、ホームズ。ワトソン博士の言うとおりだ。コカインなんかやっちゃあダメだ。
 しかし、暇だとやるので、忙しいとやらない。彼はワトソンが事件を小説にして発表しだしてから、大忙しになったはずなので、もうコカインとは縁が切れただろう。

 この『優雅な生活』では、ホームズがバレリーナから迫られた時、ワトソンとの仲をでっちあげて逃げ出したが、大の男2人が何年も仲良く同居するというのは、不思議なことなのかなぁ。だからワトソンを結婚させ別居させたのか。

 それにしても、結婚してからの奥さんの情報がほとんどない。これじゃ、結婚生活がうまくいかなくて当たり前。
 シャーロキアンの間では、ワトソン先生は3回結婚しているそうだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

川崎昌平「若者はなぜ正社員になれないのか」

2008-08-16 13:34:25 | Weblog
 川崎昌平という人は、前作『ネットカフェ難民』の時もそうだったが、何を書いても自慢話にしかならない人だ。

 東京藝術大学大学院修了後、2年間ぶらぶらしていたが、これではいけないと正社員目指して就職活動をする、その奮闘ぶりを書いている。
 しかし、別に正社員になりたいわけではないのだ。本を出版するそのネタに就職活動をしてみたにすぎない。
 『ネットカフェ難民』という本を出版したいがために、1ヶ月ネットカフェに寝泊りしたように。

 だいたい、大学院を出てから2年間、本当に何もやってないわけではない。日雇いのアルバイトをやりながら、この本を含め3冊本を出しているので、職業”文筆業”で通ると思うけど。


 本人は謙遜のつもりか、自分のことを頭が悪いとかグズ・ノロマとか書いているが、そんな頭の悪い人がどうして東京芸大にストレートで入学できるんだろう?
 何年浪人しても入学できない人が読んだら、秋葉原で暴れたくなっちゃうんじゃないだろうか。

 また、そういう筆者の元には、同じような学歴・教養はすごくあるのに、就職しない、できない高等遊民的な人たちが集まるのよね。


 最終的に筆者は「ウチに来ないか?」という入社の誘いを断り、現状を選んだ。ハナッから勤め人になるつもりなど無いのだ。
 真面目に就職活動をしている人には、すごく迷惑な1冊である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

島田荘司「ネジ式ザゼツキー」

2008-08-11 11:00:25 | Weblog
 記憶の一部をなくした男が書いた奇妙な童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』。
 蜜柑の木の上にある村、ネジ式の関節を持つ妖精、人口筋肉で羽ばたく飛行機…妄想としか思えない男の話から、前代未聞の異形な死体が見えてくる。
 御手洗が、その謎から導き出した真実とは…?

 前半がとても良かったので(特にファンタジー童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』は素晴らしい)後半も期待したが、うーん、ずいぶん無理な終わり方。

 このミステリ最大の謎、1976年フィリピンのバタンガスで発生したネジ式殺人事件。
 被害者は胴体と頭部が切断され、それぞれ直径9cmほどのオネジとメネジがはめ込まれていた。
 いったい誰が何のためにそんな馬鹿げた事をしたのか、それについては論理的に解決されていて、島田荘司の力量には感心するが、それ以外はどうもいただけないなぁ。

 とにかく、解決部分で意外すぎる人たちが唐突に登場する。
 それに、御手洗の研究室の中だけで、パソコンと電話を使って全てが解決するって…そんなのアリ?!
 それほど御手洗の頭脳が優れていると言いたいんだろうが、周りが皆無能と強調しているようで、いい気分ではない。


 話は変わるが、島田荘司の小説に記憶障碍の人間が度々登場するが、そこら辺の記述は中々正確らしい。
 先日、新聞を読んでいたら、ナントカいう精神科医がその事について感心していた。 
 島田センセイ、ちゃんと調べてるんだ。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする