ケイの読書日記

個人が書く書評

ティム・オブライエン 村上春樹訳「本当の戦争の話をしよう」(22編中3編)

2013-07-29 14:27:05 | Weblog
 授業で必要だったんだろうか、子どもが少し読んでほかってあったので、私が読んでみる。ティム・オブライエン、現代アメリカ作家らしいが、知らないなぁ。まぁ、村上春樹が訳しているんだから、つまらない訳ないだろう。

 タイトルになっている「戦争」は、ベトナム戦争のこと。
 このブログを読んでくださっている皆様は、ベトナム戦争が終結後、生まれた人が大多数で、ベトナム戦争というのは、教科書に載っている歴史の一つと思っていらっしゃるだろう。
 でも、1958年生まれの私には、うっすら記憶がある。新聞やTVニュースで、ベトナム戦争の事がいろいろ取り沙汰されていた。


 子どもの頃から少女マンガが大好きだったが、その少女マンガの世界にも、まれにベトナム戦争の欠片が紛れ込んでくることがある。
 当時のアメリカに徴兵制があると知ったのは、少女マンガからだった。
 その時までの私は、ベトナム戦争というのは、軍人がやっている事であって、普通の若い男が徴用されるとは、信じられなかった。アメリカ人の男に生まれなくて本当に良かった、日本人の女に生まれたことを感謝した。


 ベトナム戦争って有名だけど、イマイチよく理解していないので、今、ウィキペデイアを読んでいるんだが…開始がハッキリしないんだ。宣戦布告があったわけじゃない。インドシナ半島というのは、清やヨーロッパや日本に植民地にされて、混乱が続いていたから。
 終戦はハッキリしている。1975年。サイゴン陥落。
 このサイゴン陥落については、ゴルゴ13によく出てくる。南ベトナムの政府高官やら、政府を支えてきた裕福層やら、アメリカ軍人やらが、サイゴンから逃げ出そうとして大混乱に陥るのだ。


 この気の重くなるベトナム戦争の話を、この先、読み続けられるかな。ちょっと心配。
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Cデイリー・キング「タラント氏の事件簿」

2013-07-24 11:18:17 | Weblog


 第1話と第2話は、前回のブログで紹介。あとの第3話~第8話を読む。第8話は、推理小説ではない。オカルト的ヨタ話。

 探偵役のタラント氏は、並外れた知性と推理力を持ってはいるが、お金持ちの常識人なので、ホームズのようなエキセントリックな探偵を期待していると、肩透かしを食う。
 ただ(第8話を除いて)すごく真面目に推理小説に取り組んでいるという印象を受ける。真面目過ぎてひねったところが無いのが、少し寂しい。

 例えば、実際にあった有名なメアリ・セレスト号事件(無人の船が沖を漂っていて、船内は整っているし、料理も食べかけのまま。何が原因で乗組員や乗客がいないのか、彼らがどこに行ったのかサッパリ分からない、まるで集団神隠し)や、カリブ海の呪術ヴードゥ教など、怪奇幻想の趣味がふんだんに盛り込まれているのに、この人の小説は、まったく怖くない。さっぱりと明るい。
 同じ題材で、ディクスン・カーが書いたら、夜一人でトイレに行けないようなミステリになるだろうに。



 この作品集で特筆すべきなのは、やはり、タラントの執事兼助手・日本人スパイ・カトーだろう。
 作者のキングという人は、少々、神秘主義的傾向のある人なのかな。極東の島国・日本に並々ならぬ興味と好奇心を持っていたのかもしれない。
 第7話「三つ眼が通る」では、カトーが殺人容疑で捕まるが、タラントもその友人もその妻も「カトーがそんな事をするはずがない」と、カトーの無実を信じ、行動を起こすのだ。
 1930年代のニューヨークで。ちょっと信じられないね。

 何か悪い事件が起こったら「無表情でのっぺりした顔の日本人が、やったに決まっている」という暗黙の了解が、この時代のアメリカ人の間にあったと思うよ。
 日系人が、強制収容所に連行されたのは、何年だったっけ?

 でも、この時代でも、ドナルド・キーンのような人がいてくれたんだ。嬉しいです。
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C・ディリー・キング「古写本の呪い」「現れる幽霊」

2013-07-19 13:42:37 | Weblog
 ごめんなさい。皆さん。私、読書スランプ。仕事が忙しい訳ではないが、なかなか読めない。 暑いから? いやいや、本当の事をいうと、老眼が進んできたせいだと思う。読書していると、肩が凝ったり、軽い頭痛がすることがある。
 困ったな。読書しか楽しみがないのに。

 
 この「古写本の呪い」と「現れる幽霊」は、たかさんが、自分のブログで紹介していた『タラント氏の事件簿』の中の第1話と第2話。
 副題が ≪エラリー・クインのライバルたち≫と銘打っているように、1930年代のアメリカが舞台。
 都会風でカッコいいタラント氏が探偵役で、なんと!!!!!彼の執事兼従僕カトーが、日本のスパイなのだ。
 その事については、タラント氏もカトーもオープンにしている。
 このカトーが、本国・日本では医者をやっているせいか、知性も教養もあり、おまけに気が利いて料理が上手く、マッサージも上手。
 ただ、少し英語の発音が悪く、東洋人だから仕方がないが、極めて小柄な男性に描写されていて、ここら辺が日本人読者としては、ビミョーな所。

 しかし、こういった人物を登場させるとは、筆者のキング氏は(本職は心理学者らしいが)第2次世界大戦前の日本に好意を持っていてくれたんだろうか?ありがたいことです。



 まだ、2編しか読んでないけど、どちらも難度はさほど高くなく、さらりと読める。どちらかと言えば、ユーモアミステリの部類だろうか? 残りの第3話~第8話を読むのが楽しみです。
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東野圭吾「嘘を もうひとつだけ」

2013-07-14 13:20:28 | Weblog
 前回読んだ『アルカトラズ幻想』が、あまりにも冗長だったので、次はもう少しラクに読めるものをと探していたら、この5編の中・短篇を見つけた。
 さほど期待しないで読んだが、これが予想以上に面白い。
 
 すべてに加賀恭一郎が登場。犯人も最初からだいたい分かる。ほのめかされている。加賀は、刑事コロンボのように、邪険にされても「あと、ほんの一つだけ質問が」と犯人に食いついて嫌われている。
 トリックというより、この人がどうしてこういった犯行に及んだのか、その一見不可解な動機が主な読みどころ。

 『嘘をもうひとつだけ』『冷たい灼熱』『第二の希望』『狂った試算』『友の助言』これら5編は、すべて水準以上だと思うけど、最後の『友の助言』が、一番良かったかな?
 これは、ガリレオシリーズの『聖女の救済』と、ちょっと似たところがある。友とは、加賀恭一郎のこと。

 殺されかけた男は、重傷を負いながらも助かり、そうすると殺そうとした人間が誰か、その疑念に苦しめられることになる。
 打ち消しても打ち消しても、その疑惑は振り払えない。そうだよね。その人、すぐそばにいるんだもの。
 結局、殺されかけた男は、加賀の助言によって、最後にアクションを起こすのだが、それが正しかったか分からない。

 困るよね。こういう場合。しかし、いくら自分の大切な人が悲しんだり、苦しんだりするからと言って、事件を無かった事にはできないよ。
 そんな事をしたら、第二第三の犯罪を助長することになってしまう。
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島田荘司「アルカトラズ幻想 後半」

2013-07-08 09:22:36 | Weblog
 

 後半は、前半ほど退屈ではなく、なかなか面白かったが、しかし長い!!

 主人公バーディが、アルカトラズの要塞刑務所から、仲間に脅されるようにして脱走し、見つかって撃たれる場面から、一気にパンプキン王国というファンタジーの世界にワープする。
 
 パンプキン王国というのは、どうも日本の小さな島がモデルのようだが、メルヘン過ぎて私には理解不能。
 地球内部の地下都市とか、亜空間とか、そういう事なのかな?と読み進めていくと、4枚の図形が出てきて、それをバーディに選ばせる場面がある。この図形がとても重要な意味を持っているようだが、これもサッパリわからない。
 そして、バーディから聞き出した日付が8月9日。まてよ、8月9日と言えば、長崎に…とぼんやり考えているうちに、小説内では「まばゆい閃光がガラスの外の世界を覆いつくした。これまでの人生で一度も見たことがない強烈な光だった」

 そうだ、前半部分から「ナチが新型爆弾を作っている。アメリカも、その先を越さなければやられる」といったような記述が、あちこちにあったのは、ここに関係してくるのだ。

 最後のエピソードの章で、謎が解き明かされる。特にパンプキン王国についての謎が。あれは、バーディの妄想ばかりではなかったのだ。



 後半はなかなかの力作だと思うが、主人公バーディが猟奇犯罪を犯す前半部分が、なぜ必要なのか、分からない。それぞれ独立した話だったら、もっとスッキリしただろう。
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