ケイの読書日記

個人が書く書評

東野圭吾「探偵倶楽部」

2012-11-27 22:32:48 | Weblog
 VIP専用の会員制調査機関 ≪探偵倶楽部≫が、難事件を鮮やかに解決する5編のミステリ集。

トリックは凝っているし、最後にどんでん返しもあるので、秀作揃いとは思うが…今一歩、面白みに欠けるのはなぜ?

 私なりにいろいろ考えたが、名探偵が登場しないから魅力が半減するのではないか?
 いや、名探偵は登場するのだ。
 黒っぽいスーツを着た長身の男と、同じ色のジャケットを羽織った女。男は30歳代半ばで、彫が深くハーフのような顔立ち。女は20歳代後半か。真っ黒な髪は肩まで達して、目は切れ長、口元も引き締まった美人。

 このコンビが難事件を次々解決していくのだが、冷静沈着、無駄口を一切たたかず、淡々と推理を述べ、まるで黒子のような存在。キャラが立っていないのだ。まあ、キャラが立っていないキャラという設定なのだろう。

 だから、ホームズ役とワトソン役の掛け合いを期待すると、全くのハズレ! 純粋に推理を楽しもうとする人には良いかもね。
 また、動機の面で後味が悪い作品が多いのもイヤだなぁ。

 それに、VIP専用とうたっているが、それにしては依頼人が高校生だったり、普通のサラリーマンの女房だったりして、ショボいのも減点材料。だいたいVIP専用なのに、なんでその存在を庶民が知っているのか?

 まぁ、ゴルゴ13が、各国情報機関のトップシークレットのはずなのに、一般人がその顔を知っているようなものかしらね。
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村上春樹「レキシントンの幽霊」

2012-11-22 15:14:39 | Weblog
 「レキシントンの幽霊」「緑色の獣」「沈黙」「氷男」「トニー滝谷」「七番目の男」「めくらやなぎと、眠る女」の7編を収めた短編集。

 どうなんだろう? 若い女性を意識したのか、彼女らに好まれそうな7編。小さくて硬くキラキラ光る鉱石のような作品たちだが、私が若くないせいか???これって一体どういう意味?という箇所もあり、春樹ファンに尋ねてみたい気分。
 例えば「レキシントンの幽霊」の文中にある「つまり、ある種のものごとは別のかたちをとるんだ。それは別のかたちをとらずにはいられないんだ」って所。

 でもハルキストにきいても「こんな事もわからないの?」と冷たくあしらわれる様な気がして、怖くてきけないよ。


 印象に残った作品は…皆、印象に残っているが「トニー滝谷」かな…?
 買い物依存症と思われる奥さんが出てくる。サイズ7、身長161cmは珍しくないけど、靴のサイズ22は、すっごく少数派。村上春樹の好みなんだろうか? 今の若い女性で、靴のサイズ22の人を探すのは至難の業でしょう。
 小柄なおばあさんでサイズ22の人は、割といる。

 その奥さんが、部屋どころか家全体を服と靴でいっぱいにして、交通事故死した。すごいなぁ。そのコレクションを見てみたいね。

 革命で国を追われたフィリピン元大統領夫人・イメルダは1000足以上の靴を持っていたそうだけど、壮観だろうね。美術館ができるよ。
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書き足りなかった事about「カラマーゾフの兄弟」

2012-11-16 13:25:02 | Weblog
 また「カラマーゾフの兄弟」のブログなの?と、あきれる人もいるでしょうが、もう少し、お付き合いください。

 ㊤㊥㊦と細切れのように感想を書いたけど、かなりの長編だし大作なので、全体を通して書いてみたいと思って。

 私が、㊤のブログで、予想に反してすごく面白い!と書いたのは嘘ではないが、この大長編小説は様々な章から成っていて、全く面白くない章もある。
 例えば、キリスト教の神学論とか教会制度とか、興味のある人もいるだろうけど、私には読むのがちょっと苦痛だった。(それでも読みましたが)

 特に、小説内でイワンが書いたとされる『大審問官』の章は、極めて有名らしいが、私には読みにくかったなぁ。

 でもでも、そういったつまらない個所を我慢して乗り越え、読み進めてください。本当にドラマチックな展開になってくるから。

 この作品は、1860年代のロシアを舞台としている。すでに農奴は解放され、でも片田舎の小作人は解放後も解放前も生活は大して変わらない。上流階級の人たちは、自分の領地から上がってくる収入で贅沢するが、自分の領土に興味をもたず、モスクワやペテルブルグの方にばかり目を向け、ヨーロッパ(特にパリ)にあこがれ、ロシアを愛してはいるがバカにもしている。
 大都会で流行している思想(共産主義、社会主義、無政府主義etc)は、すでに片田舎まで広がる気配をうっすらとみせている。

 ああ、この50年後にロシア革命が起こるんだ。ドフトエフスキーは、革命を見ずに死んでよかったと思うよ。
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お知らせ

2012-11-11 22:45:37 | Weblog
 身内に不幸があり、時間的な余裕がないので、しばらくお休みします。
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ドフトエフスキー「カラマゾフの兄弟」㊦巻

2012-11-06 19:53:07 | Weblog
 「カラマーゾフの兄弟」って、こんな話だったんだ!!!
 結局、父親を殺したのは、長男ドミートリィかコックのスメルジャコフか、はっきりしないで終わるんだ。まぁ、この小説はミステリじゃないから、それでもいいんだろうけど。
 しかし…なんて面倒臭い人たちの集まりなんだろう!

 この事件の発端となった(父親と長男を手玉に取った)娼婦も、事件後は聖女のようにしおらしくなったようだが、それなら最初から聖女でいたら?
 冷徹な知識人のはずの二男イワンが、なぜ心の中でバカにしていた兄を救おうと、死の床につくほど悩む?
 長男ドミートリィは、父親を殺そうが殺さまいが、現世での厚生は無理! シベリアかあの世に行くしかない。

 そして主人公のアリョーシャ。小説の中では「清らかな心を持った小天使」のように形容されているが、?????
 コックのスメルジャコフが、父親の私生児(つまり自分にとっては腹違いの兄)という噂を知っていたのにもかかわらず、上の兄2人と同じように、彼を虫けらのように扱う。
 「長兄が殺したんじゃないから、犯人はスメルジャコフ」心の底からそう信じ、証言するんだから恐ろしい。

 自分たちの母親は、まがりなりにも貴族階級に属していたが、スメルジャコフの母親は狂女だったから?
 でも、先妻は若い男と駆落ちしたし、後妻はヒステリックな病で苦しみ、2人とも不幸な死に方をした。

 スメルジャコフの眼から見たカラマゾフ家を書くと、もっと面白い「カラマーゾフの兄弟」が、出来上がるかもしれない。
 とにかく、㊤㊥㊦巻とも読み応えのある作品でした。
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