ケイの読書日記

個人が書く書評

藻谷浩介「デフレの正体」

2011-05-28 18:34:14 | Weblog
 私もミステリばかり読まないで、たまには社会科学系の本も読もう!と思って本屋さんで選んだ本。池上彰も自分の番組で紹介していたしね。

 「経済を動かしているのは、景気の波ではなく人口の波、つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」この本の要旨を一言で言えばそうなる。
 生産年齢人口というのは、働いてお金を稼いでたくさん消費する世代の人口の事。

 このいっぱい消費する現役世代の人口が、どんどん少なくなり内需が小さくなっているのが今の日本。
 景気は少しずつ改善しているが、従業員の総数がリストラなどで減少しているので、企業の人件費総額は増えない。
 だから、株の配当などで企業の儲けを個人へ所得移転するが、その恩恵を受けられたのは裕福な高齢者。
 だが、そのお金持ちのお年寄り達は、将来寝たきりになった時のためにと、貯めこむばかりでちっとも消費しない。だからお金は回らない。
 これが今日本が抱えている問題。

 では、どうすればいいのか、筆者は3点あげている。
① 高齢裕福層から若者へ所得の移転を
② 女性の就労と経営参加を当たり前に
③ 労働者ではなく外国人観光客・短期定住者の受け入れを

 若者や女性の賃金を上げて、内需を拡大しようというのは、的を得た対策だと思うが、内需は拡大するだろうが、商品の値段が上昇し、国際競争力が落ちるのではないだろうか? それは素人考え?

 
 とにかく、この本は今まで常識だと思っていたことが、データによりひっくり返されて驚かされることが多い。

 例えば、女性が働くと子どもを産まなくなると思うでしょう?ところが、若い女性の就労率の高い県ほど、出生率も高いんだって。データによると。

 日本一出生率が低い県は東京都。では東京都は女性の就労率が高いか低いか? 高いと思いがちだが、実は最も就労率が低い県で専業主婦の率が最も高いらしい。
 まあ、お金持ちが多いだろうし、専業主婦でいたいから子供は要らないor子どもは1人でいい、という人もいるだろう。
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北村薫「冬のオペラ」

2011-05-23 15:19:31 | Weblog
 先日、NHKで3週連続「探偵Xからの挑戦状」という番組をやっていて、その中の一つが北村薫の書き下ろし原作ミステリドラマだった。

 そこに名探偵・巫(かんなぎ)弓彦が颯爽と登場。ワトスン役は姫宮あゆみ。

 へぇー、巫(かんなぎ)弓彦か…。知らんなぁ。どうも、北村薫の『冬のオペラ』という作品集で活躍する名探偵らしい。
 ということで、さっそく『冬のオペラ』を読んでみる。

 ミステリ作品としては、北村薫らしく上品。トリックも北村薫らしく博識が必要で、種明かしされても、そもそも知識が無いので「ふーん、そうなの」で終わる。「やられたっ!!」という悔しさは無い。

 ただ、この名探偵・巫弓彦がユニーク。
 職業探偵で、一応、探偵事務所を構えてはいるが、お客さんはサッパリ。当然食べていけるわけが無く、定休日の月・水・金はバイトにあけくれている。
 それもそのはず、取り扱うのは「人知を超えた難事件(本人いわく)だけで、身元調査等、一般の探偵業は行ないません」と看板に書いてあるし、依頼も断っている。

 でも最初は何でもない事件と思われても、重大な犯罪につながっている事は、ホームズの事件簿を読んでもよくあるでしょう。(例えば、消えた料理女を捜して、とか、家庭教師に行ってもいいかという相談etc)
 そういった展開になれば面白いと思うけど、巫先生はスパッと門前払いだからなぁ。

「名探偵は、なるのではない。ある時に自分がそうであることに気付くのです」巫先生のこの言葉は名言ですね。
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泡坂妻夫「乱れからくり」

2011-05-18 15:18:52 | Weblog
 以前読んだ「11枚のとらんぷ」が、あまりにも傑作だったので期待しすぎたせいか…これはイマイチですなぁ。
 一応、日本推理作家協会賞受賞作だけど。

 おもちゃ会社部長から、妻の素行調査を依頼された興信所の社員は、夫妻の乗った車を尾行する。
 ところが、その車を隕石が直撃するという奇禍で、部長は死亡してしまう。
 そして、この事故が幕開けを告げるかのように、不可解な死がおもちゃ会社創業者一族を襲う!!

 なんと、次から次へ人が殺され、あるいは事故死し、2/3位のところで容疑者は、ただ一人になってしまった!!
 まったく金田一耕助も真っ青な連続殺人で、あとの1/3はどうするんだろうと心配したが、なんとか格好がつき事件は収まる。

 しかし…ねぇ、2歳の幼児が50錠もの睡眠薬を間違って飲んで事故死…というのは、アリエナイ。
 親は、子どもが病気の時、薬を飲ませようとすごく苦労する。粉薬でもなかなか嫌がって飲まない。というか飲めない。ましてや錠剤なんて、2歳の幼児には無理!!!
 小学生でも、ノドに引っ掛かる気がすると嫌がり、錠剤を飲めない子がいっぱいいるのに。

 こういう箇所を作者が書いていたら、編集者がチェックすべきだろうに、編集者も分からなかった?
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ディクスン・カー「蝋人形館の殺人」

2011-05-13 14:53:22 | Weblog
 前回読んだのは児童書だったので、今回は県立図書館から取り寄せてもらった。
 たかさんがコメントで書いていらしたとおり、ハヤカワポケットミステリでしか出版されていないみたいね。
 つまり、評判があまりよくないという事か…。でも、私は興味深く読めた。

 
 蝋人形館に入館したオデットという元大臣の令嬢が行方不明になり、翌日水死体で発見される。その事件を調べていたパリ警視庁のバンコランは、オデットの友人・クローディンの刺殺死体を蝋人形館で発見する。
 さらに捜査を進めていくうちに、パリ上流階級専用の秘密クラブの存在が浮かび上がり…。

 それにしても、元大臣の奥方(オデットの母)が秘密クラブの会員だったとは…。元大臣がピストル自殺したのは、それを強請られたからだろうか?(ハッキリした事は書かれていない)

 ミステリというよりサスペンス。たいしたトリック無し。


 気に入ったのは、やはりバンコラン。容姿はメフィストフェレスを枯らしたカンジらしい。やっぱり名探偵はこうじゃなくっちゃ。
 赤ら顔でビヤ樽体型の、有名なフェル博士やヘンリ・メルヴェル卿は私としてはNG。
 もっとアンリ・バンコランを活躍させて欲しかったのに、初期の作品にしか登場しないようだ。

 アングロ・サクソン系のカーにとって、フランス人探偵はあまり魅力が無いのかな?
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東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」

2011-05-08 15:25:31 | Weblog
 あまりにもマンガチックで華々しい表紙の装丁なので、さほど期待せずに読んだが、これがよい意味で期待を裏切り、すっごく面白い!! 驚いた!

 正統派のド本格。作者の東川篤哉氏は、赤川次郎の作品にすごくハマったらしいけど、赤川次郎よりうんと面白いと思う。

 この東川氏は2002年にデビューして、もう何冊も書いているらしいが、私はこの「謎解きは~」を読むのが初めて。
 きっとキチンとした本格ミステリなんだろうけど、登場人物の魅力がイマイチで、あんまり売れなかったんだろう。

 この「謎解きは~」は、キャラの魅力が爆発…というか暴走しちゃってる。

 国立署の令嬢刑事が毒舌執事に「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」とコキおろされながらも、難事件を解決していく。
 そこに、花形満が阪神タイガースに入団しそこなって、仕方なく警察官になったというカンジの風祭警部が参入し、シッチャカメッチャカ。
 皆さん、花形満ってわかる?『巨人の星』の。

 全部で6話収められている。第1話と第6話だけがイマイチで、あとは珠玉の作品。4/6つまり2/3だから名作率がすごく高い。
 特に第3話「綺麗な薔薇には殺意がございます」 第4話「花嫁は密室の中でございます」は、出来がいいと思う。
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