ケイの読書日記

個人が書く書評

東野圭吾「赤い指」

2012-08-29 09:25:33 | Weblog
 あらすじは知っていたが…衝撃的な作品ですね。私が母親だからかな? しばらく考え込んでしまった。

 中2の少年が、7歳の女の子を自宅に誘い込み絞殺。帰宅して、それを知った両親は、なんと!!死体を遺棄し、通りがかりの変質者の仕業に偽装する。
 しかし、捜査が進むにつれ、自分たちが疑われている事を悟った両親は、社会的に無抵抗な人間を真犯人にでっち上げようと、極めて卑劣な行動に出る。

 もちろん最後は、刑事・加賀恭一郎の働きにより、悪事は暴かれるが、あまりにも酷い家族に衝撃を受けた。

 自分は被害者。悪いのは自分以外の周囲の人間、かたくなに主張する中2の息子。
 なにがあっても息子を守ろうとする母親。
 最初は警察に通報しようとするが、妻に引きずられ、死体を遺棄する父親。
 そして、認知症のおばあさん。(父方の祖母)

 私がこの中2の息子の母親だったら…どうしただろう。
 そういえば、10年ほど前、同じような事件があった。高校生の息子の所に遊びに来ていたガールフレンドが、些細な事で息子と口論になり殺された。始末に困った息子が母親に相談し、母親が車で死体を捨てに行ったのだ。

 この事件の後、ワイドショーが「なんて母親だ!」と盛り上がったね。この母親と息子には、偽装しようとする意図は無かったようだ。単に、目の前の死体を無くしたかったのだろう。

 母親って難しい。大津市のいじめ自殺事件の問題も…結局は加害者とされる生徒の家庭、特に母親の問題ともいえる。我が子を守ろうとして、かえって我が子を苦境に追い込んでいるんだよね。
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今野浩「工学部ヒラノ教授の事件ファイル」

2012-08-24 16:15:26 | Weblog
 新聞の書評欄で取り上げられていた。中央大学キャンパス刺殺事件(卒業後の人生がうまくいかない男が、大学時代の指導教官のせいだと逆恨みして、学内のトイレで教官をメッタ刺しにした事件)の事が載っているとあったので、興味深く読んでみたが…ほんの数ページ。がっかりした。

 そりゃそうだろう。筆者は、その当時、同じ大学に勤務していたが、大学の健康診断でちょっと言葉を交わしただけで、ほとんどどんな人か知らないのだ。

 ただ、こう言った事件は、数は少ないが昔からあったようだ。特に、理系の場合、指導教授の紹介で就職することが文系に比べ多いので、就職先でうまくいかないと、教授に人生を狂わされた、と思い込む人も多いのだろう。

 筆者は、東京大学工学部応用物理学科卒業。筑波大学、東京工業大学、中央大学で、それぞれ教鞭をとり、現在は東京工業大学名誉教授。すっごーく!頭の良い人なのだ。
 しかし、学内で出世しようとすると、政治力・処世術が必要で、そこらへんの事は「論文盗作とデータの捏造」「領土侵略事件(ポストの奪い合い)」「大学という超格差社会」「セクハラとアカハラ(アカデミックハラスメント)」などに書かれている。なかなかえげつない。


 また、日本の大学が抱える犯罪的「非常勤講師制度」についても書かれてある。
 最近よく聞く「高学歴ワーキンクプア」のこと。
 非常勤講師はアルバイト職員だから、ボーナスは出ないし、昇給もない。夏休みで講義が無くなると無給。だから、年収200万円にも届かない人が多いという。
 常勤職に拾い上げてもらうことを目指しているが、ポストの空きがなく、難しい。

 この非常勤講師問題は、大学だけでなく、公立の小中学校でも問題になっている。
 父兄の中には「あの先生は非常勤講師だから」と、差別的な言動をする人もいるしね。こうなると、子どもはますます言う事を聞かなくなるだろう。
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奥田英朗「用もないのに」

2012-08-19 21:37:57 | Weblog
 図書館の書架で、この奥田英朗のエッセイを見つけ借りたが…家に帰って激しく後悔。

 一番最初の章のタイトルが『再び、泳いで帰れ』(北京ー結局、星野ジャパンは弱かった。本当にがっかりした)だったから。

 あーーーーー!思い出したくない古傷!
 北京オリンピックで野球競技が最後になるという事で、日本は星野を監督にすえ、プロのすんごい人ばっか集めドリームチームを作ったんだ。星野監督は、元は中日の選手だし、長く中日の監督を務めていたので、中日の選手を多くひっぱった。(投手は川上、岩瀬、野手は森野、荒木、だったと思う。他にもいたかな?)

 それで、WBCのように勝てば万々歳だったのだが…弱かったんですね。
 全然、打撃がふるわなくって、川上や岩瀬はボロボロに打たれるし。
 結局4位におわり、メダルを取れなかった。それに、あのGG佐藤の歴史的落球!
 (GG佐藤って今、イタリアのプロ野球チームにいるんだってね。『笑ってこらえて3時間SP』で見た。なかなかナイスガイだよね。)

 とにかく、オリンピックから帰ってきても、しばらく川上や岩瀬の調子は悪かったよ。

 帰国した時の記者会見で、星野監督が記者団の質問に「被告席に座っているみたいだ」と言ってたけど、苦しかっただろうね。

 オリンピックでは、自分の内にあるナショナリズムに驚くことがある。私って、こんなに日本が好きだったって。
 韓国大統領の「天皇訪韓なら謝罪を」には、本当にショックを受けた。 昭和天皇に謝罪を求めるなら、まだわかるが、今の天皇は戦争中はまだ、ほんの子供だったんだよ。
 結局、100年たっても200年たっても、謝罪を要求されるんだ。よくもまあ、ノーテンキに韓流スターの追っかけをやってるなぁ、と思います。
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水木しげる「ねぼけ人生」

2012-08-14 20:28:00 | Weblog
 「ゲゲゲの女房」は、奥さんから見た水木しげるの半生だったから、水木しげるの子どもの頃の話は出てこなかったが、この「ねぼけ人生」には、ガキ大将時代やのんのん婆の話にも多くのページがさいてある。

 水木しげるのお父さんは、裕福な家の出で、境港で初めて東京の大学に行ったらしいが、親戚にも変わった人が多かったらしい。
 家の二階には、英語の原書を読む以外、何の仕事もしないという親戚のおじさんがいたようだし、蔵の中で一生を働かずに過ごした人もいたようだ。
 母方の祖父も風流人で、俳句とか書画をひねくるばかりで、仕事というものを全くしなかった人らしい。

 つまり高等遊民で、先祖から受け継いだ財産をきれいさっぱり使い切って、水木しげるの代になるとオケラになってしまったんだろう。

 しかし水木しげるは偉いなぁ。昔、裕福だと過去の栄光にすがり「オレの母の実家は、元禄時代から今日までずらりと墓が並んでいるほどの旧家で」とか「我が先祖は、江戸時代には廻船問屋をやっていて、幕末の頃はかなりの金持ちだった」なんて、周囲がうんざりするほど、自慢話をくどくど話すものだ。

 でも、水木しげるは「赤貧、芋を洗うがごとし」の貧乏暮らしの中で黙々と漫画を描き、質札の束が厚さ3cmになっても、わずかばかりの原稿料が入ると、プラモデルを買って組み立てた。 
 こういう所が、先祖と似ているような気がするね。

 水木しげるは、貸本マンガから週刊マンガに移って大成功したが、もちろんそう出来なかったマンガ家はどっさりいる。
 水木しげるの家に居候していた、渡辺あらき、という貸本マンガ家の話は、本当に気の毒だ。
 1975年頃、1人の少年読者から、手紙が水木しげるの所に来た。この人は、この少年の家の近くの小屋に住んでいて、口癖のように「水木しげるとは友達だった」と話していたらしい。久しぶりに行ってみると彼は餓死していたようだ。
 なんとか、ほかの業種に移れなかったのだろうか?
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池田暁子「貯められない女のための 今度こそ!貯める技術」

2012-08-09 14:47:01 | Weblog
 タイトル通り、筆者は「貯められない女」   30代後半、東京都在住のイラストレーター(2007年の時点) 

 ある日、ホチキスを買おうと財布の中を見たら、お金が¥162。 ATMでお金をおろして…と残高照会すると\11,652。これが筆者の全財産。ほかに貯金なし。
 えええ???いつの間に、こんなに減った?! この金額で、月末までの10日間、生活しなければならない危機的状況。
 その上、月末までに、電話代、水道代、電気代、ガス代の引き落としをされると困るので、全額引き出して手元に置いておく。

 しかし、仕事で必要なコピーのインク代、顧客にイラストを送る宅配便代を払うと、手元に¥6,374しか残らず。つまり、1日600円くらいしか使えない。
 で、筆者がやった事といえば、お米のおかゆに塩を振って食べること。
 いやー、節約レシピとかズボラ飯とか、いろいろあるが、塩だけを振りかけたおかゆを食べている40歳手前の女の人を想像すると、胸が痛みます。

 しかし、いくらなんでも、この人、無計画すぎるんじゃない? 男より女の方が、金銭的にしっかりしているから、30代後半でマンションを購入するという女の人は、少なくないと思う。私の敬愛する岸本葉子さんも、その一人。フリーランスだったら、なおさらお金の管理はキチンとすると思うけど。
 これじゃ、病気になっても医者に行けないよ。

 さすがに筆者も、これではマズイと思ったらしく、「貯金するぞ!」と決意。
STEP1 まず、コインを集め始める。
STEP2 何にお金を使っているか知る。(削れる所を見つけます)
STEP3 今使っていいお金を決める。(現状をよく知ったうえで、無理のない金額に)
STEP4 今使わないお金を隠す。(専用の口座を新しく開きます)
STEP5 ペースを守る。(10日あたり、1日あたりの予算を意識して守ります)

 筆者の成功を、私も応援します。
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